引けたのは3章紗夜さんです。違う、そうじゃない
最近平均文字数がどんどん上がっていってる・・・。おかしいな、最初のころは4500文字くらいを基準にしてたのに
6月15日・・・
連日の雨で湿気を鬱陶しく感じる梅雨。
先月破壊されつくした東京ももう復興を果たしつい先日、ついに学校が再び始まるなど日常が返りつつあった。
この1ヶ月、今まで日本に集中していた怪獣災害だがその規模は世界各地に広がっていた。ハワイでバードン、アラブにタッコング、ドイツにディノゾールなど数多く出現し、その度にウルトラマンティガこと円日 光輝は世界を飛び回っていた。
『ピロン』
今日もまた光輝愛用の携帯電話一体型腕時計から怪獣出現の通知が鳴る。
「まりなさーん!買い出し行ってきます!」
「OK!みんなの分のアイスも買ってきてー!」
「分かりました!」
circleを勢いよく飛び出した光輝は走りながら腕時計からニュースを確認する。
「えっと今回は・・・アメリカか」
光輝は懐からスパークレンスを取り出し光に変わる。光となった光輝はそのままアメリカに飛び立ちあっという間に怪獣の暴れている農村部に辿り着いた。
クワガタを彷彿とさせる顎、甲虫そのものの強靭な体をした磁力怪獣 アントラーとの戦の火蓋は切って落とされた。
「ただいま帰りました~」
「「「「「「こんにちは~」」」」」」
アントラーを撃破した光輝は買い出し帰りにたまたま出会ったRosaliaの面々と共にcircleに帰ってきた。
「はーいいらっしゃい。光輝君もシフト上がって練習に行ってね」
「ありがとうございます。それとこれ、釣銭と買ってきた物です」
カウンターの上に買い物袋をドンと置き、練習部屋の鍵を持ってRosaliaを案内する光輝にまりなが声を掛ける。
「光輝君、結局明日のロッキンスターフェスには・・・」
「すいませんやっぱり行けません」
ロッキンスターフェス。それは年に一度開催されるバンド界のお祭りである。そしてここ、circleからはRosaliaのライバルバンドであるPoppin'Partyが出場するのだ。さらに今年のフェスではライブ配信を行うという前代未聞のプロジェクトも行われるため運営スタッフは大忙しである。ここcircleからも園崎 花子(ソノザキ・ハナコ)と大空 晴人(オオゾラ・ハルト)の2人が現在応援に向かっているのである。
「まあ明後日がFWFなら仕方ないか~。うん、頑張ってね、みんな」
そう、なぜ光輝がそんな大忙しの時期に手伝わないのか。それは明後日にRosaliaの目標であるライブ、FWFが控えているからである。ロッキンスターフェスの翌日ということで遠方から来た人には両方を楽しみやすいという日程であるのだが、その両方に関係する者からしたら過酷な日程なのだ。
そもそも今年の開催が危ぶまれていたFWFだったが、ガゾート出現から復興を果たしてすぐに街の活気づけの意味も込めて急ピッチで準備が進められFWFの予選が開催。そこでRosaliaは堂々の1位の評価でFWF出場権を獲得したのだった。
そういう訳で光輝はRosaliaの練習を優先し、明日は練習に参加することにしていたのだ。
「あ、まりなさん。明日は俺たちが貸し切りってことでいいですか?スタッフは俺以外総出ですし俺もみんなに付きっ切りになっちゃうので」
「OK!ちゃんと片付けと翌日の準備してくれればいいから~」
2日後・・・6月17日
あれからいつの間にか2日経ちFWF本番、Rosalia7人は楽屋にて本番前最後の準備をしていた。
「間もなくですね」
準備を終え、紗夜が呟く。
「ええ、いよいよね」
「・・・すごいね。思い描いていたステージに立つ前ってこういう気分なんだ」
友希那、リサと言葉を繋げる。
「どんな気分?」
光輝が問う。
「ん~、なんていうかな。・・・『無』、かな」
「『無』?リサ姉どういう事?」
「こう・・・緊張しない、落ち着いた?っていうか・・・」
「確かにそんな感じはするわね。不思議と落ち着く」
「懐かしいな~最初はあんなにガチガチだったのに・・・」
リサのその一言を皮切りに思い出話に花が咲く。最初のライブから各々の成長、そして今の自分。
「っと・・・もう時間だ。そろそろ俺たちは行かなきゃな。行くぞ、光輝」
「了解。みんな、最前列で応援してる。頑張って」
「一発かましてこい。俺たちの分も、頼んだぜ」
光輝と翔がにかっと笑い部屋を後にする。
「ええ、行ってくるわ」
そして友希那も紗夜、リサ、あこ、燐子を率いてステージへと歩みを進めた。
楽屋を出た光輝と翔は早歩きで観客席に向かう。
「にしても、まさかこんなに早く目標に届くとは。信じてはいたけど・・・やっぱり驚くな」
「そうだな。2年か、あっという間だったよ。始めの俺が紗夜にくっつく様にいた頃が懐かしい」
2年前、その頃の紗夜は信条の問題でバンドを転々としており、光輝はただそれに付き添っていた。そんなある日、偶然友希那の歌を聞き紗夜は友希那とバンドを組むことを決心。それがRosalia誕生の瞬間だった。
「あの頃はまだ紗夜と日菜の仲が良くなかったからな・・・。そんな気持ちをぶつけるような演奏が見てて苦しかった。悔しそうに、悲しそうに弾くその姿は俺にとっては自分の力のなさの象徴でもあったんだ。変な話だけど」
「ずっと言ってたもんな。どうやったら紗夜ちゃんと日菜ちゃんが仲良くできるか、昔みたくなるかって」
翔も自らの記憶に残っているその頃を思い起こす。
「それでも2人はまた仲良くなった。紗夜ちゃんも前向きにギターに向き合えるようになった。それは勿論2人の力もあるけど光輝。お前自身の力も間違いなくある。そこは誇ってもいいんだ」
「・・・それもそうだな。ありがとな、翔」
お礼を言いつつ翔の肩を軽くはたく。
「お安い御用さ。・・・よし、しんみりしたのはここまで。これからは・・・」
そう言いつつ翔は背負っていたリュックからハチマキとペンライトを取り出す。
「本気の応援モードだ!楽しんでいくぞ!」
「おお!」
光輝も同じものを取り出す。そして2人は席を取ってくれている日菜の所に向けて歩く速度を更に速めた。
「改めましてお疲れ様、りんりん、あこ」
FWFは大盛り上がりの後に幕を下ろし、翔、燐子、あこの3人は感想を言いながら帰ろうとしていた。
「えへへ、それほどでもあるよ!なんたって我が名は大魔姫あこ!だからね!」
「私も・・・今日は頑張ったって・・胸を張って言える」
「よし!今日は俺がなんか奢ってやる!」
素直に喜ぶ2人を見て翔は慰労会を提案する。
「やったー!」
「いいの?翔君?」
両手を上げ、万歳しながら喜ぶあこ。それを見ながら翔は燐子に返事をする。
「勿論。みんな頑張ったんだし、それにあんなに凄いライブを見せて貰ったんだ。そのお礼も兼ねてだよ」
「じゃああこはポテト!」
「それだけでいいのか?FWFの大舞台を終えたんだぞ。もっと贅沢していいから」
翔は生活費があまりかからないため光輝に比べるとかなり懐が暖かい。夕食2人分などそこまでダメージにならないのだ。
「じゃあお寿司!」
「回るやつな」
「ふふ・・・」
仲良く歩く3人は、街の光に溶け込んでいく。
「「いただきます」」
一方、光輝と紗夜はファミレスで2人だけの打ち上げをしていた。
紗夜は運ばれてきたパフェをまじまじと見つめ、それからソフトクリーム部分をすくい口に運ぶ。
「美味しい」
口の中を甘味で満たし、それからソフトクリームを喉に流し、端的に感想を述べる。
「?光輝は食べないの?」
「っ!ああ、食べるよ今すぐ食べるうん(紗夜に見とれてたなんて言えない)」
光輝も恥ずかしさと一緒に餡蜜を掻き込む。だが・・・
「ゲホッ」
きな粉を気道に入れてしまいむせてしまう。
「もう・・・何やってるの」
そんな光輝を見て呆れた様子で紗夜が光輝の世話を焼く。
「ごめ・・・。ふぅ、ありがとね」
紗夜からタオルを受け取り口元を拭い取りつつ感謝を伝える。
「美味しいのは分かるけど急いで食べるのは感心しないわね。ゆっくり味わって食べないとダメじゃない」
「あはは・・・(確かに美味しいけどそういう理由じゃないんだよなあ・・・)」
その後、2人はゆっくりとスイーツを楽しみ、一息ついたところで光輝が改めて紗夜に労いの言葉を掛けた。
「紗夜、FWFお疲れ様。演奏すごくよかったよ」
「ありがとう。でもそれは光輝や影山さんが私たちのために色々頑張ってくださっているからよ。だから私からもお礼を言わせて。ありがとう、光輝」
「そんなことないよ。俺はできることをしているだけ」
「それがすごく助かっているって言ってるのよ」
「そっか・・・」
光輝は思わず笑みをこぼした。今まで幾多の感謝を言われてきたが何度言われても少し照れてしまう。
「紗夜。これからも頑張ろうね。Rosaliaとして」
「そんなの当たり前じゃない。FWFはあくまで目標。頂点を目指すのがRosaliaよ」
「さ、帰るわよ」
「そうだね。早く帰って、日菜からのマシンガントークを貰いますか」
「ええ、そうね」
互いを見つめ合い笑う。そして店を出た2人を乗せたバイクは夏の夜を駆けていった。
「・・・」
友希那は夜空を眺めながらゆっくり歩いていた。
「ゆ~きな。どうしたの~、そんなに難しそうな顔してさ☆」
そんな友希那にリサは両肩を叩きながら呼びかける。
リサの手を優しくどけながら友希那は答える。
「ついに・・・FWFを終えたのだと思うと・・・不思議な気持ちになったわ・・・」
「・・・そっか・・・」
「でも、悪い気持ちじゃない。寧ろ、誇らしい」
友希那の口角が少し上がった。
「友希那、よっぽど嬉しいんだね」
「嬉しい?」
友希那がリサの方を見て問う。
「うん。こうやってみんなの目標を超えて、友希那自身の悩みも乗り越えて。お疲れ様、これからも・・・頑張ろうね、友希那」
「ええ」
友希那が力強く頷き、2人は夜空を眺めた。その時、1本の流星が空から流れ落ちる。やがてそれは数を増していき、無数の流星が空を覆った。
「あら、流れ星」
「縁起いいね~☆何お願いしよっか?」
リサの提案に同意し、2人は胸の前で手を合わせて祈る。
「(これからもずっと・・・Rosaliaのみなと大好きな歌が続けられますように)」
「(これからもずっと・・・Rosaliaのみんなも、友希那も、私も、幸せでいれますように)」
「・・・さ。友希那。帰ろ?」
しばらくの沈黙の後、顔を上げ、組んでいた手を解きつつ提案する。
「そうね。お父さんも、お母さんも、待ってる」
友希那もそれに応じ、また歩き出す。
流星群に埋もれながらも輝く月が2人を優しく見守っていた。
翌日・・・6月18日
光輝は今日も降り続ける雨を眺めながらため息を吐く。
「全く・・・こんな雨じゃ誰も練習しに来ないだろうに・・・」
今日はcircleで店番だ。特に客も来ないのにただレジ前に立ち尽くす事に嫌気を覚えつつ他にできないことを探しては既に全部終わっていることを思い出す。こんなことをもう何回しただろうか。
「全く、先明るい若者がそんなでっかいため息吐くんじゃないの」
「そう言いますけどね花子さん」
光輝は目を細め少し睨むように目線の先にいる女性を見る。少しウェーブのかかったポ二ーテールに目を引かれるが顔やスタイルの良さも光っており、ぱっと見は光輝と同年代だ。これでももう四半世紀は生きているのだから人間見た目で分からないものだと実感せざるをえない。
「確かに今日はお客さん少ないね~。ま、あたし的には楽でいいけどね」
花子は手を後ろに組み、鼻歌を歌いながら語る。
「ま、それもそうですけどね・・・」
基本じっとすることのできない光輝は同調するフリをしながら会話を終わらせる。これ以上花子と話し続けていたら地雷を踏むことが目に見えているからだ。
再び沈黙が訪れる。何分経っただろうか。そんなことさえ忘れて暇を持て余していた頃、店のドアが開く音がした。
「よっ、おつかれさん」
ドアを開けて入ってきたのはガタイのいい大男、晴人だった。
「あ、晴人さん。お疲れ様です」
「光輝もお疲れさん。すまんな、今日急にシフト入ってもらう感じになっちゃって」
晴人は傘を雑に丸め、近くにある傘立ての端にねじ込む。丸め方が適当すぎるせいで深く刺さらず無理矢理押し込んでいた。
「それくらい構いませんよ。そんなにすることありませんでしたし。確か・・・会議でしたっけ」
この男、今何気に嘘を吐いた。光輝ももう高校3年生、そう、受験勉強をしなければならないのだ。バイトに喜んで飛びついたのはただ受験勉強をサボる口実が欲しかっただけに過ぎない。
「その通り。ついでに接客もお願いしようってなったんだけど・・・この有様よ」
がらんとした店内を見渡しながら晴人は語った。
「それは俺の考えが及ばなかっただけです。今日のお客さんは少ないなんて簡単に想像できたのに断りを入れなかった、それだけです」
「でも光輝君の頼まれたら断らないところ、あたしは好きよ」
「はは・・・ありがとうございます・・・」
またこれだ。思わず光輝は顔をしかめた。花子は何かにつけて光輝に好意を伝えてくることがある。しかも毎回お茶らけていうのだ。そして大概この後に続くのは・・・
「ねえ~光輝君、やっぱりあたしと付き合わない?大人の魅力、教えてあ・げ・る」
こうやって交際の申し込みをしてくるのだ。毎回やけにノリが軽いので返答に困ってしまう。冗談に本気のことわりを入れことがつまらないし場の空気を悪くするのだ。
「は~な~こ~?光輝が困ってるからやめろって言ってるだろうが!」
花子の前に晴人が立ち怖い顔で睨む。花子はヘビに睨まれたカエルの様にその場で固まって動かなくなってしまった。
「全くお前は、いい加減妥協をして男と付き合えばいいだろ!どうせお前のことだからモテてるんだろ!未成年の、しかも既に好きな子がいる奴に手を出そうとして恥ずかしくないのか」
ガミガミと叱る晴人から視線を逸らした光輝は今日何度目かのため息をまた吐いた。
その夜・・・
いつの間にかcircleのドアノブに掛けてある『OPEN』の看板も『CLOSE』に変わっていた。だがそんな時間帯でも従業員は働かなければならない。光輝、花子、晴人、そしてロッキンスターフェス関係で先程はいなかったまりなの4人はcircleの従業員室で会議をしていた。
「(毎度思うけどここ絶対もっと人増やした方がいいよな・・・)」
全従業員たったの4人という絶望的人材不足を憂いながら光輝はまりなの話に耳を傾ける。
「というわけで・・・ロッキンスターフェスを受けまして、うちのとこもリモートライブをすることになりましたー!」
「会議の意味は?」
「まりちゃんあたしたち置いてけぼりなんだけど」
まりなの宣言に晴人と花子がツッコミを入れる。
「みんな慌てないの。今日はの議題はそのライブの日程と参加バンドをどうするかや準備の役割なのよ」
「先に聞きたかったです」
光輝も負けじとツッコむ。漫才をしに来たのだろうか。
「という訳でまずは日程なんだけど・・・」
「2週間あればなんとかなるんじゃない。所詮リモートを付け加えるだけでしょ」
手を元気よく上げつつ花子が意見を出す。だがまりなはその意見を人差し指を左右に振りながら否定した。
「ところがどっこい、チケットをどうするかが一番の問題よ」
「そんなのロッキンスターフェスと一緒じゃ・・・」
晴人が言いかけた所でハッとする。
「そう、ロッキンスターフェスは元々大きなイベントなの。だから結構あっさりチケットが売れた。でもここ、circleは所詮東京の1ライブハウス。そこが主催するイベントに対して日本全国のどれだけの人数が見たいのかなんて未知数なのよ」
「普通の料金で売ったら・・・」
「予算が分からないわ」
この一言で場がシーンと静まり返った。予算が決まらないなら動きようがないではないか、皆の考えることは一致した。
「もしこれでリモートのチケットが売れないのに高い機材を買ったらどうするの。大赤字をどう対処するの。そもそも起こさないためにはどうしたらいいの。それをみんなで話し合うわ。そしてもし、大赤字が出た際は・・・」
全員が息を飲む。
「連帯責任ということでみんなのお給料を減額するわ」
話し合いは夜通し行われた。
ウルトラマンティガ マルチタイプ
出身 不明
身長 ミクロ~53メートル
体重 4万4千トン
活動時間 3分
東京の高校生、円日 光輝が変身する光の巨人の基本形態
能力のバランスが優れており、多種多様な光線技を駆使する
キックと投げ技をメインとした格闘を繰り広げ、そこに光線技を絡めてどんな状況でも一定の活躍を見せる
必殺技は『ゼペリオン光線』。エネルギーを貯め、腕をL字に交差させてから放つ。威力はティガの技の中でもトップクラス
次回予告
circle主催のライブが決定し、忙しく日常を送る光輝
だがそんな時でも魔の手は迫っていた
頑張れウルトラマンティガ、紗夜を取り戻せ
次回、『幸せを届けたいから』