人って訳の分からないモノや理解出来ないモノに対して
嫌悪感や拒否感を抱く様ですね。
線引きがよく分からない....
鍵を差し込み鍵を開け、ノブを回せばガチャリと音を立て扉を開ける。
開けた隙間からは何とも言えない匂い、埃っぽいモノや少し湿り気のあるモノ。ゴミを出し忘れていたのを思い出し少し顔を顰めるも、ゴミ出しの日は疾うに過ぎている為全てを諦めて中に入る。
中に入れば案の定、玄関にゴミが袋に包まれたまま放置されており異臭を放っていた。床には埃が溜まり靴を脱ぐのにも躊躇いが浮かび、今度纏めて掃除をする事にして今回は土足のままにする。
長居したくは無いが、この部屋が私の部屋である以上どうする事も出来ない。窓を開けようにも窓の鍵は数週間前の災害の影響で開けることも出来ず、電気や水道ガスも全て既に止まっている。
渋々と玄関からリビングに入れば私を迎えてくれるのは異臭のみ、小さく誰にも聞こえないよう「ただいま」と呟き、手に持っていた荷物をそのまま床に落とす。グシャと音を立てる荷物に視線を見やるが、流石にこの匂いの中で食事を取るのは如何なものかと思案して諦めて寝る事にする。
寝室もあるが普段から寝室は同居している人間が独占している。この時間だと寝息をたて夢の中だろう。同衾する気にはならなかった為、今日はこの部屋で寝床を軽く掃除し人一人寝れる場所を確保して横になる。
季節柄か日が昇る時間が早いせいか、遮る物の無いこの部屋に朝日が差し込む。暗がりの所為で見えていなかった天井が、視界に映る。元々は白い天井だったのだが、いつの日からか黒よりも暗く冷たい感情を与える黒がソコにあった。最初はシミか何かだろうと考え、拭ったり擦ったりしていたのだが特に変化がなく、水で滲む事もましてやとれることもなかった。
今ではそういう物だと考え諦めている。だが少し、前よりも少し私が家を出るときに比べれば少しだけ拡がっている気がする。まあ、気の所為だろうと考え私は目を閉じた。
遠くから聞こえるサイレンの音で目が覚めた。どの位時間が経ったのだろうか、外に目をやれば太陽は既に視界に映らない程の高さまで登っている。既に明るくなった外から目を外した。近くからクチャクチャと音を出しながら食事をしている同居人に軽く目をやり、ため息をつく。同居人は、私の事など気にする素振りを見せずに一心不乱に食事をしていた。
起き上がり、私の落としていた荷物が開けられているのを確認すれば同居人が食べているのは、私が私の為にと用意した物だと気付き同居人に目を戻すが既に食事も終盤。これは私のだからと取り返したところで、意味の無い事だろう。
同居人が食事を終えた様で、ふらふらと立ち上がり覚束無い足取りで歩き出した。どうやら寝室に戻り食後の睡眠を取りに行くようだ、食べた物はそのままだ。以前はしっかり片付けるよう言っていたが、改善する素振りが無かった為に今では私の仕事になっている。どうせ部屋の掃除もする予定だったのだ、ゴミが増えただけだと自分に言い聞かせ小さく舌打ちをする。
寝室の扉が閉まった音を確認すれば、まず初めに全ての扉と玄関を開けて気持ちばかりの換気を施す。ゴミを近くの集積所に持っていき、台所が使えないので風呂場にて貯水しておいた水を使い食べ残しや、汚れ物を処理しておく。ある程度綺麗にすれば、近くの銭湯で私自身の汚れや疲れを落とそうと考えた。念のために同居人がいる寝室に声をかけたが、返ってくる声は無く寝息とイビキが聞こえたので寝ているのだろう。
リビングに戻り、荷物を手に取るが中に入れておいてモノの液体が漏れていたのか、中身から少し異臭と湿り気があったので舌打ちと共に風呂場へと放る。また後で新しいのを準備すれば良いかと諦めて、外へ出た。
掃除をしていた事もあり、既に太陽は沈みかけた時間。この時間ならばついでに食事も済ませる事が出来そうだ、場所によっては量が多かったり少なかったり最悪の場合は質が悪かったりする。この近辺はそれなりに網羅してるのでちょっと遠出するのも良いだろうか、そう考えながらもやはり近辺で済ませてしまった方が良いと考え小道に入る。
目に入ったのは一軒の建物、最近新しく出来たらしいが人入りは余り宜しく無いと聞く。丁度良さそうだ、軽く唇を舐めながら建物に入る。我が家とは違って異臭もしない、勿論埃が目につく事も無く掃除はしっかりされている様だった。特に物音もしないので、今この建物に居るのは私だけだろうか、この場合は食事には期待できそうに無い。それでも綺麗なお風呂に入れるならばそれで良いと思い風呂場を探しだし、服を脱ぎ風呂に入る事にする。
浴槽に浸かり一息付く、これで食事が出れば文句なしだったが期待するだけ無駄。仕方がないとは思うが風呂に入れるだけでもマシだろう、同居人を少しだけ呪う気持ちが芽生えるが汚れと共に水に流してしまおう。
「お母さん?帰ってきてるの?」
嗚呼、食事の用意もされているじゃないか。
「あれ、もうお風呂に入ってるの?」
その後の記憶は朧げで余り覚えていない、私は一心不乱に無我夢中だったから。あぁまた汚れてしまった、お風呂に行く度に汚れてしまっている気がする。まあそれも仕方がないと、どこか諦めている私がいるのも確かだろう。今一度お風呂で汚れを落とし、服を着替えて新しく準備した手荷物に同居人へのお土産を詰めて外に出る。
既に完全に日が落ちており、街頭の少ないこの場所では凄く不気味な印象を強く与えているのだろう。そろそろ住処を移しても良いかも知れない、この街は本当に住みやすくて素晴らしかった。今ではこの近辺では人攫いや殺人が多く起きているらしい、恐ろしい話だ。
「すみません、池田瑠李を探しているんですけど知りませんか?
髪は黒色で肩くらいに切り揃えている、身長150cm位の女の子何です。先月の10日から行方がわからなくなっているんです。どんな情報でも構いません、見かけた場合や心当たりがある場合は教えて貰えませんか?
今は覚え出せなくても覚え出した時はこの紙に書いてある番号に電話をしてください。ご協力お願いします!」
と、こんな感じで至る所で声をかけられる。本当に恐ろしい。一度同居人に話をしてみても良いだろう、と言えども今回の同居人は余り会話をする相手では無いのだけれども。さて、今日で丁度一月か。同居人と同居を始めてから、更にはこの街に来てからもう一月が経つ。次はどこに行こうか、そんな事を考えていれば自宅に到着していた。
ノブを回して、あぁまだ匂う。流石の同居人も寝室からは出て来ているのだろうか、寝室のドアが開いているのが見える。
「るり、お土産持って帰ってきたよ。後で一緒に食べようか」
私は、リビングにいる筈の同居人に対して極めて明るく、優しい声音で声をかけながらリビングに入った。
部屋を出るまでには天井にしか無かった筈の黒は部屋中に拡がっており、部屋は湿り気と異臭を放っていた。
「嗚呼、また掃除をしなくてはいけないね」
全ては暗がりの事。
実は私の描く作品のオリ主達にもこういう事をしていって貰いたいですねぇ
掃除は苦手そうな子達ばかりですが.....