ダンジョンにバゲ子がいるのは間違っているだろうか?   作:猪のような

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何かやる気に満ち溢れたんで連続投稿!但しオリジナル展開なので質は保証しなぁい!皆さん、バゲ子がどうなるか気になりますよね。猪、投稿します。最近はあらゆるガチャ運が悪い気がする!気のせいかな!?それではどうぞ!


第十三話 天蠍を喰らいし黒犬

 

 

 

━━━暗い…此処は…?

 

彼が目を開けると、そこは何も無い、ただ闇に包まれた空間だった。

 

━━━俺は…確か、アルテミス様を庇って、アンタレスに…

 

「おや、今度はちゃんと覚えているみたいだね」

 

━━━!…その声は…うわっ…!?

 

何処か聞き覚えのある事が聞こえた瞬間、彼の視界に光が現れ、映像が映し出される。

 

「私はずっとあなたを探していたんだ『オリオン』」

 

 

「お、女の子は守るものだってお祖父ちゃんが、だから…!」

 

「ふっ…そんな事を言われたのは初めてだ…!」

 

 

「二人の心が通じ合うほど、槍の力は強まる…」

 

「本当に…本当にこの槍じゃなきゃダメなのか!?」

 

 

「苦しい戦いになるだろう、犠牲者も出るかもしれない。しかし、成し遂げてほしい。私達の愛する下界の為に!」

 

 

「それでも、一人の少年に押し付けるんですか。神殺しの大罪を!」

 

「僕はそんな事のためにあなたと!」

 

「ベル君、お願いだ、立ってくれ…!」

 

(そうだ、これは、女神を殺す物語じゃない。これは……君が泣いてる女の子を救ってあげる物語だ)

 

 

「次にあった時は、一万年分の恋をしよう、ベル!」

 

 

彼の視界に映るそれは、彼にとっても見覚えのある光景だった。しかし、同時に彼が知らない物語の姿でもあった。

 

 

━━━あれは…キャストリア…?じゃあこの映像は…

 

「そう、これは君が死んでしまった後に訪れる、月女神の運命だ」

 

━━━…神、様…

 

「久しぶりだね、ずっと見守っていたよ。君のことを」

 

━━━…俺は、死んでしまったんですか…?

 

「死ぬ一歩手前かな、これから君がどうするのか聞いてみたくて」

 

━━━……俺では、アンタレスに勝てないんでしょうか…

 

「ふむ…そうだね、君はそもそも偽物だ。あの円卓の騎士ガウェインにも、妖精騎士ガウェインの足元にも及ばない、ちっぽけな冒険者だ」

 

━━━…俺は、きっと大丈夫って思ってたんです。油断はしなかったけど、心の奥底で、きっと大丈夫、上手くいくって…楽観視してました。

 

「………」

 

神は何も言わず、彼の言葉に耳を傾ける。

 

━━━きっと、誰も犠牲者を出さずに、アンタレスを倒せる…そんな理想を抱いて、戦ってきたのに…結果がこれじゃ、自分に呆れてしまいます…私は、傲慢だったでしょうか。

 

「…いや、君は頑張っているよ。僕が保証する」

 

神の顔はぼんやりとしていて分からないが、優しい声で彼に語りかける。

 

「君は確かに偽物だったけど、君が抱いた信念は紛れもない本物だ、助けたかったんだろう?君は、自分の力を人の為に振るった」

 

━━━………

 

「ずっとそうしてきたじゃないか、もし仮に君がアンタレスに立ち向かわなかったとしたら、君は君じゃない。僕の知っている君は、前世から誰かの為に頑張れるとんでもないお人好しさ」

 

━━━……っ

 

「君は騎士として、正しい事をした。その身に相応しい振る舞いを、刻まれた名に相応しい行いを。君は、一度でも、戦いから背を背けた事はあったかい?」

 

━━━…俺は、上手く、やれていたでしょうか…

 

「上手くやれていたじゃないよ。君は…素晴らしい人間だ、誰がなんと言おうとね…だから…もう一度、立ち上がってくれ…私はとっくに君のファンなんだ。君の物語を、まだ見ていたい」

 

━━━けど、俺はもう死ぬ直前で…出来る事なんて…

 

「今回はハプニングがあったけど、それ以上に足りなかったのは、君の覚悟だよ」

 

━━━…!

 

「相手はあのアンタレスなんだぞ?神話ではあのオリオンの命を絶った化け物だ。そんな相手に、まさか聖者の数字が使えなくなった君が普通に戦って勝てる訳ないだろう?君は、もうどうするべきか、分かっている筈だ」

 

それは、彼にとっての枷。理性を保つ為の、最後の鎖。

 

━━━けど、もしアンタレスを倒したとして、その後に俺が、皆を手にかける様な事があれば…!

 

「ねぇ、目を閉じて」

 

━━━えっ…?

 

「いいから!早く!」

 

━━━は、はい…

 

彼は神の言う通りに目を閉じる。

 

「君は、ある平穏な村の真ん中で捨てられていた、赤ん坊だった」

 

その言葉を聞いて、彼の脳裏にこの世界に来てからの最初の記憶が蘇る。

 

「村の人達は君を大切にした。まるで家族のように…そして、君は大きくなってから村の為に一生懸命働いた。君はその村の英雄になった」

 

バーゲストとして暮らした村の日々。モンスターなどに襲われる事もあったが、彼は村の人々の平和を守った。

 

「君は村を旅立ち、オラリオに来た。来た初日から色んな事があったね」

 

ベート・ローガに喧嘩を売り、その後ベルを回収し、翌日にはヘスティア・ファミリアの一員となった。波乱の幕開けだった。

 

「リリルカ・アーデと出会い、彼女を守ると誓った。君とベルは、彼女の英雄になった」

 

騙されながらも、リリルカを救った。理由はリリだからとか弱肉強食だからとか。二人のお人好しが生んだ結果だったが、悪いことでは無かった。

 

「ベルの冒険を見守ったね、あの子に戦う勇気を与えたのは、君でもあるんだよ」

 

ベルとミノタウロスの死闘を目の当たりにし、その姿を見てアンタレスに立ち向かう勇気を貰った。二人は知らず知らずのうちにお互いを支え合っていた。

 

「そしてアルテミス・ファミリアと出会い、共に戦い、アンタレスに立ち向かっている…目を開けてごらん」

 

彼は目を開き、神を見据える。

 

「きっと、君は色んな人を支えてきたし、色んな人に支えられてると思う。君は、アルテミス・ファミリアの皆が大事?」

 

━━━…はい、アルテミス様が…レトゥーサさんやランテが…アルテミス・ファミリアの皆が、大事です

 

「なら大丈夫!君は素直だ、心の奥底から本当にそう思っている!それがあるなら大丈夫!だから…いっちょやろうぜ!冒険!」

 

━━━神様…はい!俺、頑張ります!

 

瞬間、彼がいる場所から光が溢れ出し、視界が白く染まっていく。

 

「頑張れ!少年!君の冒険、物語、運命の先に、幸福がある事を願っているよ!」

 

その言葉を最後に、彼は再び戦場へと戻っていった。

 

「大丈夫だよ、君には立派な()があるじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーゲスト…!しっかり、するんだ…!バーゲスト!!」

 

アルテミスは倒れ伏すバーゲストに必死に呼びかけている。

 

(ポーションを使っても、傷が治らない…!万能薬(エリクサー)はランテや他の団員に使ってしまった…!このままじゃ、バーゲストが…!ヘスティアの子が…!)

 

「……あ……あ…」

 

「!バーゲスト、目が覚めたのか…!しっかりしろ、今治療を…!ダメだ、血が止まらない…!」

 

「…み……な…」

 

バーゲストは意識が朦朧としている中、視線をアンタレスの方に向けると、レトゥーサ達がボロボロになりながらも必死に戦っていた。しかし、既に負傷で動けなくなっている団員が殆どだ。

 

(このままじゃ…さっき見た光景に…ベルに辛い運命を背負わせてしまう…だから…!)

 

「ア……テミ…さま…」

 

「バーゲスト!喋るな、無理に喋ると…!」

 

「私…角…」

 

「バーゲスト…?どうした…!?」

 

アルテミスはバーゲストが何かを伝えようとしている事に気付き、バーゲストの口元に耳を寄せる。

 

「私の…角を…引き抜いて…」

 

「角を引き抜けば良いのか!?分かった!」

 

どっちにしろこのままじゃバーゲストは死んでしまう。アルテミスはバーゲストの言葉に賭け、バーゲストの右角を…

 

「頼む…!」

 

勢いよく引き抜いた。

 

 

 

 

バチッ

 

瞬間、バーゲストの体に赤雷が走る。バーゲストの身体を炎を赤黒い靄が覆い、アルテミスは慌ててバーゲストから離れる。靄はどんどん大きくなり、アンタレスが靄に目を向けレトゥーサ達も動きが止まる。

 

「これは…なっ、角が…!?」

 

するとアルテミスが握っていた右角がどんどん大きくなり、アルテミスが咄嗟に手放すと、それは剣となって地面に突き刺さり、更に大きくなる。

 

━━━その()の名は、妖精剣『ガラティーン』バーゲストの理性そのもの。

 

剣の巨大化が止まった瞬間、靄から巨大な腕が伸びる。それはガラティーンの柄を掴み、そして靄の中から赤い眼光がアンタレスを捉えたその時…

 

「ウオオオォォォォ!!」

 

アンタレスは靄に向かって光線を放った、そしてその瞬間、靄が晴れ、赤雷が周囲に迸る。靄の中にいたのは…

 

「アアアァァァァァァァ!!」

 

その身を巨人の様に巨人化させ、右目を黒く染め、獣の様な咆哮を発するバーゲストだった。

 

ドゴォォォォォォォン!!

 

バーゲストは光線に対してガラティーンを振り抜き、相殺する。

 

「バーゲスト…なのか…?」

 

「アルテミス様、こちらに!」

 

唖然としているアルテミスをレトゥーサが回収し、アルテミス・ファミリアの面々は向かい合うバーゲストとアンタレスから距離を取る。

 

「ウオオオォォォォ…!」

 

「グルルルルルル…」

 

睨み合う両者、その様子を見ていたアルテミス・ファミリアの面々に異変が訪れる。

 

「だ、団長、私なんだか、力が抜けていきます…」

 

「私も…」

 

「何?まさか、バーゲストが何か…?」

 

「グルァァァ!!」

 

バーゲストはガラティーンに炎を宿し、アンタレスに振り下ろす。アンタレスは防ごうと残った上半身の腕を全てクロスさせるが、いとも簡単に腕は全て切り裂かれ、首の直ぐ横から胸の中心…魔石がある部分に向けて剣が食い込む。

 

「ウオオオォォォォ!!」

 

アンタレスは下半身の腕2本をバーゲストの身体に左右から突き刺すが…

 

「ウオォォ…!?」

 

「グルァァァ!!」

 

バーゲストの身体にその腕は少ししか傷を与えられず、バーゲストは魔石に向かって更に剣を押し込む。

 

「ウオオ…ウオオオォォォォ!!!」

 

アンタレスは口を開きバーゲストの顔面に向けて…

 

「バーゲスト!」

 

光線を放った。

 

ジュウウウウウウウ…

 

バーゲストの顔面に光線が直撃し…バーゲストは仰け反る。しかし…

 

「グ…ル…アアアァァァァ!!!」

 

バーゲストは勢いよく体勢を戻すどころか、その勢いを利用してアンタレスの胸元に噛み付いた!

 

「ウオオオォォォォ!?」

 

バーゲストはアンタレスの胸元の一部を噛みちぎると、ぐちゃぐちゃと口で咀嚼して飲み込む。

 

「グルルルルルル…!」

 

バーゲストが唸ると、ガラティーンは更に強力な炎を発し、アンタレスを剣が食い込んだ部分から内側を焼いていく。

 

「ウオオオォォォォ…!!」

 

身体を節々や、バーゲストに噛みちぎられた箇所から炎が溢れ出し、やがてアンタレスの口や目からも炎が溢れ出す。

 

「ウオオ…オ…」

 

アンタレスは全身を焼かれ…最早下半身と上半身の繋ぎ目が炎で溶けている。バーゲストはアンタレスの首を掴んで持ち上げると、先程まで下半身と繋がっていた部分からボトボトと肉片が落ちる。

 

「ウオオオ…ォォォォ…」

 

「グルルルルルル…グルァ!!」

 

バーゲストはガラティーンを手放し、アンタレスの首を両手で掴むと、首からギチギチと音がし始める。

 

「ウオオオ…オ゛!?」

 

ブチィ!!

 

次の瞬間、アンタレスは頭と上半身が引き千切られ、アンタレスは最早虫の息だ。分断された上半身と下半身がまだピクピクと動いているあたり恐ろしい生命力だが、もう何も出来ないだろう。

 

「グルルル…フシュー…」

 

バーゲストはアンタレスが動かなくなったのを確認すると、アンタレスの頭を食べ始めた。

 

「アンタレスを…食べている…!?」

 

(まるで、あの冒険者の様だな…)

 

レトゥーサはバーゲストの行動に驚愕し、アルテミスはある冒険者の事を思い出していた。

 

ガリッ!ボリッ!グチャ!ネチャ!

 

やがてバーゲストはアンタレスの頭部を完食し、次にアンタレスの上半身と下半身に目を向けると…

 

「グルル…?」

 

そこにはもうアンタレスだったものの灰と、アンタレスの魔石しか無かった。頭部を食われたことにより、アンタレスは遂に討伐されたのだ。

 

「やった…のか…?」

 

「アンタレスを倒したの…?」

 

「いや、皆、気を抜くな!」

 

バーゲストはガラティーンを拾うと、アルテミス達の方に向かってズシンズシンと歩き始める。

アルテミス達を見るその眼は、正に獣そのものだった。

 

「グルルルル…!!」

 

バーゲストはアルテミス達を睨み、ガラティーンを強く握り締める。剣を振り上げようとした瞬間…!

 

「バーゲスト君、ベル君はボクに任せて、アルテミスを頼んだよ。それと、絶対に無事に帰って来るんだよ」

 

「はい、誓います」

 

バーゲストの脳裏に、主神との約束がよぎる。

 

(ヘス…ティア様…アルテミス…様…皆…)

 

視界がクリアになり、バーゲストの目に理性が戻る。そしてその瞬間、バーゲストは気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ…」

 

バーゲストが次に目を覚ますと、そこはテントの中だった。

 

「………私…は…」

 

「あ、バーゲストさん!目が覚めたんですね!?」

 

「…ランテ」

 

「大丈夫ですか?どこか痛かったり、気分が悪かったりしませんか?」

 

バーゲストの直ぐ側にはランテが居た。

 

「私は大丈夫よ…あなたこそ、怪我は?」

 

「私は大丈夫です!万能薬(エリクサー)使ってもらいましたし!…あ、団長とアルテミス様呼んできますね、待っててください!」

 

ランテは慌ててテントから出て行き、バーゲストはボーっとしながら待っていると、レトゥーサとアルテミスがテントに入ってくる。

 

「バーゲスト、調子はどうだ?」

 

「レトゥーサ殿…」

 

「胸を貫かれたからな、もうダメかと思ったぞ」

 

「アルテミス様…」

 

「…何があったか、覚えているか?」

 

「ええ…なんとなくですけれど…皆さんは、無事でしたか?」

 

「ああ、怪我人はいるが死者は出ていない。バーゲスト…私達は勝ったんだ」

 

「そう…ですか…」

 

アルテミスとレトゥーサは微笑みながらバーゲストに話すも、バーゲストの表情はどこか優れない。

 

「…どうした、バーゲスト?」

 

「…私は、自分が恐ろしいのです。アンタレスの頭を食らった自分が…きっと皆さんにも恐ろしく思われているでしょう…」

 

バーゲストがそう言うと、アルテミスとレトゥーサは顔を見合わせると…

 

「「あっはっはっはっ!!」」

 

「なっ!笑うとは何ですか!こっちは真剣に悩んでいますのよ!?」

 

「ふふふっ…すまない、君は案外自分を過小評価するな…レトゥーサ」

 

「はい、ほら行くぞ、バーゲスト」

 

アルテミスが立ち上がり、レトゥーサがバーゲストをお姫様抱っこする。

 

「なっ、一人で歩けます!降ろしてください!」

 

「大人しくしろ、傷が開いたらどうする」

 

「くうぅ…!」

 

レトゥーサにお姫様抱っこされたまま、バーゲストがテントを出ると…

 

『バーゲスト(さん)!!』

 

「うひゃあ!?な、何ですの!?」

 

バーゲストが出てくるのを待っていたのか、アルテミス・ファミリアの面々が待ち構えていた。

 

「バーゲストさん、お疲れ様でした!」

 

「カッコよかったぞ!」

 

「アンタレスを食べ始めた時はちょっと驚きましたけど、あの大っきい姿!とても頼もしかったです!」

 

アルテミス・ファミリアの皆はバーゲストにお礼や称賛を送る。その光景を見てバーゲストはポカンとしていた。

 

「君を怖がる子など、私のファミリアにはいないさ。さあ皆、そろそろ夕食にしよう」

 

そしていつの間にか皆で焚き火を囲い、手に夕食を持っていた。アルテミスが立って皆を見渡しながら話し出す。

 

「皆、今日は良くやってくれた。これで下界に残る脅威がまた一つ取り除かれた。宴はオラリオに戻ってからまた開くが、誰も失っていない事を祝して、今日は存分に楽しんでくれ!……そして、我が神友、ヘスティアの眷属、バーゲスト」

 

アルテミスはバーゲストを見つめ優しく言う。

 

「ありがとう、君が居てくれたお陰で、誰も失わなかった。君は私達の英雄だ、君と共に戦えた事とても誇りに思う。君から受けた恩を、忘れる事は無いだろう」

 

バーゲストはその言葉を聞き、口元を緩める。

 

「…私も、忘れられません。皆さんと一緒に戦った事…私も誇りに思います。私も皆さんから受けた恩は、忘れません」

 

「…それでは、乾杯!」

 

『乾杯っ!!』

 

 

 

 

 

 

 

「…本当に、よく頑張ったね…」

 

楽しそうにアルテミス・ファミリアの皆と共に食事をするバーゲストを別次元から覗き見する神は、そう呟いた。

 

「本当に凄いよ、君は…本能ですら誰かを守りたいという願いが根底にあるなんて…君はこれから多くの人達を救う為に、その力を振るうのだろう…それはきっと…とても素晴らしい事だ」

 

神はこれからもバーゲストの行く末を見守る。それはまるで、子の成長を見守る親の様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、もう行っちゃうんですか?」

 

「ええ、主神や仲間を待たせていますからね。貴方達も出発するのでしょう?先に行って待っているわ」

 

翌日、バーゲストは飛竜に乗ってオラリオに向かう事にした。

 

「良いな、飛竜…」

 

「私達全員分の飛竜は用意出来ないからな、仕方ない」

 

「ふふ…皆さんが戻ってくる時には美味しい店で予約を取っておきますから、楽しみにしてなさい」

 

「やったー!あ、その時はバーゲストさんの主神様の恋の話、聞かせてくださいね!」

 

「ええ、分かっているわ」

 

「バーゲスト」

 

「レトゥーサ殿」

 

「道中には気をつけるんだぞ、昨日は重傷を負ったんだからな?巨大化から戻ったら塞がっていたが…」

 

「分かっています。そちらこそ、長い道ですけれど、どうかご無事で」

 

「ああ…アルテミス様、お待たせしました」

 

最後にアルテミスがバーゲストの前に来る。

 

「ヘスティアに伝えてくれ、『良い眷属と巡り会えたな、大事にするんだぞ』と…それと『ありがとう』も」

 

「ありがとうございます、必ず伝えます」

 

バーゲストは飛竜に跨がり、上空に飛び上がる。アルテミス・ファミリアが手を振って来るので振り返しながら、バーゲストはオラリオに向かい始めたのであった…

 

 

 

 

 

かくして、黒犬は見事に月女神の運命を勝ち取った。

 

「ホームには誰も居ませんでしたわね…ヘスティア様もダンジョンに向かったと見て間違いなさそうですわ…」

 

バーゲストが仲間と主神を探して回る。

 

「取り敢えずダンジョンの中に…あら?」

 

バーゲストがバベルの前の広場まで来ると、丁度バベルから見知った顔ぶれが出て来る。

 

ヘスティアとベル・クラネルにリリルカ・アーデ。依頼をしてきたヘルメスにアスフィ。恐らくバーゲストがいない間に仲間になったであろうヴェルフ・クロッゾにアルトリア・キャスターにタケミカヅチファミリアの面々。そしてリュー・リオン。

 

全員くたくたの様で、黒犬が近付いてくるのにも気付かない。

 

「どうやら、私がいない間に色々あったようですわね」

 

「え?…ば、バーゲストさんっ!?」

 

「バーゲストくん!戻って来たんだね!」

 

ベルが驚き、ヘスティアが歓喜しながらバーゲストに飛びつく。慌ててキャッチしたバーゲストをギューと抱きしめる。

 

「本当に、良かった…!お帰り…!」

 

「…はい、只今戻りました、我が主神」

 

「バーゲスト様ー…本当に、本当に大変だったんですよ〜…!」

 

「リリ、ベルと一緒に居てくれてありがとう」

 

「バーゲスト様、お疲れ様です」

 

「ありがとう、リューさん、なんだかベル達が世話になったみたいね」

 

「あー!おっほん!」

 

するとヘルメスが態とらしく咳込み、バーゲストに話しかける。

 

「バーゲスト君、先ずは生還おめでとう。君が無事に帰って来た事を嬉しく思う…それで、クエストの方は…?」

 

「ええ、なんとか誰一人犠牲にせずに、アンタレスを討伐しました」

 

「そうかそうか!それは良かった!いやー、ベル君達も、バーゲストやアルテミス達も皆無事!一件落着だね!」

 

「ああ…という訳で、今から皆でご飯だ!タケも呼んで、パーティータイムと洒落込もうじゃないか!」

 

「あ、じゃあリューさんにお世話になりましたし『豊穣の女主人』に行きませんか?」

 

「ええ、私もそれで良いと思います」

 

「じゃあ、皆一旦帰って、『豊穣の女主人』で宴だー!」

 

(そういえば多分ロキ・ファミリアも『豊穣の女主人』で宴会じゃ…まぁ、良いですか。ヘスティア様とロキ様が喧嘩を始めたら止めれば良いでしょう)

 

「ヘルメスー!バーゲスト君の件があるんだ、奢るんだぞー!」

 

「はいはい分かってるよ」

 

「あ、バーゲストさん!新しい仲間が増えたんですよ!」

 

ヘスティアがヘルメスから言質を取っているのを見ていると、ベルがそう言ってアルトリアとヴェルフを連れて来る。

 

「ヴェルフ・クロッゾだ、よろしくな」

 

「ええ、よろしく…確かベルの防具の製作者だったかしら?」

 

「お、知っててくれたのか!ベルとは専属契約を結んだんだ。んでこっちが…」

 

「あ、アルトリア・キャスターです、よろしくお願いします…」

 

「ええ、あなたは…私が使っていた盾を作った人ね、よろしく」

 

「うわぁ…」

 

「どうした、アル坊?」

 

バーゲストに対してタジタジなアルトリアにヴェルフが疑問を抱く。

 

「いや、話には聞いてましたけど、見てくださいよこの圧倒的に恵まれた肉体に丁寧な立ち振る舞い…!絶対良いとこのお嬢様ですよ!私みたいな田舎育ちの村娘が、こんな人と専属契約を結べるんですか…!?」

 

「えっと…勘違いしてるようですけれど、私も田舎育ちの村娘よ。貴女と同じだわ」

 

「」

 

「あ、アル坊こりゃ少しダメだな…じゃあ俺たちは先戻りから、ベル!リリ助!また後でな!」

 

「あ、うん!」

 

えっ、同じ村娘なのに…この差は…?と、表情が宇宙猫になってるアルトリアをヴェルフが抱えて連れて行く。他のファミリアの面々もいつの間にか居なくなっていた。

 

「ではお三方、リリも戻りますね。また後で」

 

「うん、また後でね」

 

リリルカも去って行き、いつの間にかヘスティア・ファミリアの面々だけになっていた。

 

「それじゃ、僕達も一旦ホームに帰ろうか」

 

「はい!久しぶりですね、神さまやバーゲストさんと一緒にホームに帰るの」

 

「ええ…本当に…帰りましょう。私達のホームへ」

 

こうして、黒犬の物語の一頁は終了した。

 

これからは再び、主神や白兎、仲間達と共に更なる困難へと立ち向かっていくだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、という訳で…アンタレス編!終了しました!ようやく一区切りつきましたよこの野朗!(謎のテンション)次からは二期の話に入って行きます。これからも楽しみにして頂ければ幸いです!それではまた次回!
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