ダンジョンにバゲ子がいるのは間違っているだろうか?   作:猪のような

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暑いから薄着でいたら急に寒くなって日本の気象が怖くなった作者です。どうも。いつも8000文字ですが今回はなぜか10000文字までいってしまいました。なお質は保証しません。ぶっちゃけバゲ子の水着書けたからメレン編もう満足してます。それではどうぞ。


第十七話 分裂

 

 

 

バーゲストは宿屋の自分の部屋の窓から外を見ながら考えていた。

 

(カーリー・ファミリア…)

 

カーリー・ファミリアのアルガナの拳を受け止めた時に、バーゲストは完全に相殺することが出来なかった。

 

(レベルの差から考えれば当たり前どころか、受け止めただけで異常ですけれど、それでもやはり、聖者の数字を使った状態でこれはキツいですわね…)

 

どうしたものか、と考えていると、部屋のドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

「入るで〜」

 

入って来たのはロキだった。

 

「バーゲストたん、怪我大丈夫か?」

 

「ええ、あの程度問題ありません。それよりティオネの様子は?」

 

「ん〜…さっきティオネをオラリオに戻すか話し合ったんやけど、やっぱダメだったわ」

 

「そうでしたか…それで?私の用は何でしょう?」

 

「実はちょっとバーゲストたんに頼みたい事があってなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある場所ではカーリー・ファミリアとあるファミリアが話し合っていた。

カーリーと対面しているのは、女神イシュタル。

イシュタルはカーリーにフレイヤ・ファミリアを潰す為の依頼をしており、今日は打ち合わせをしていた。

 

「運び屋に『必勝の策』を移送させている。お前等にもおこぼれをくれてやろう…それを受け取った後、宴の始まりだ」

 

「その『切り札』とやらが気になるが…まぁ、いいじゃろう。話は把握した。取り敢えず、戦まで時間はあるという事じゃな」

 

「ああ」

 

「ならイシュタルよ、先に報酬の件について済ませておきたいのだが」

 

「報酬の財宝ならいくらでもくれてやる。好きなだけの額を…」

 

「金は要らん、要らなくなった。別の報酬を貰いたい」

 

「?」

 

「付け加えると、その報酬は先に貰い受けたい」

 

「…言ってみろ」

 

「今、ロキ・ファミリアがこのメレンにおる。おっと、勘違いしてくれるな?妾達が此処に居る事とは関係無い、ただの偶然じゃ。何でも、食人花だとかのモンスターを追っているらしい」

 

「食人花…?ああ、()()()。それで?まさか貴様…」

 

「ご明察の通り、あの者たちと戦いたい」

 

カーリーがそう言った瞬間、イシュタルは立ち上がって怒鳴りつける。

 

「ふざけるなっ!フレイヤの眷属どもも馬鹿げているが、あそこの連中も大概だ!フレイヤと一戦やる前に大事になるに決まってる!必ず取り返しのつかない事になるぞ…!」

 

「すまんすまん。あのファミリア、というには語弊がある。妾達の狙いは…とある姉妹じゃ」

 

「姉妹…?」

 

「ロキのもとには妾の子がおる。元、が頭に付くがのう…情けをくれてやって手放したのじゃ……ちと後悔しておるがのう」

 

イシュタルは元カーリーの子で双子となれば真っ先にあの姉妹を思い浮かべる。

 

「…あのアマゾネスの姉妹の事か?」

 

「おうよ。あの姉妹と、アルガナとバーチェ。互いを戦わせたいのじゃ」

 

「……!」

 

「……」

 

カーリーの言葉を聞いてアルガナは嬉しそうな表情を浮かべ、バーチェは変わらず無表情を貫いている。

 

「妾のもとから飛び出していったあの姉妹と、妾のもとに残ったこちらの姉妹…どちらが強いのか。どちらが勝ち残り、限界を超えるのか、『器』を昇華させるのか…」

 

その時、カーリーは目を見開き、恐ろしい笑みを浮かべた。

 

「闘争が見たい、血が見たい。一体どちらの選択が正しかったのか……血潮の雨を啜りながら、この(まなこ)で拝みたい」

 

『っ…!!』

 

カーリーの表情を見てイシュタル・ファミリアの面々はたじろぐ。カーリーは表情を戻して続けた。

 

「お主等には姉妹以外を足止めしてほしい。今日アルガナ達をけしかけてみて分かったが…ロキ・ファミリアには【剣姫】など面倒そうな者がおる、特にあの角の生えた女騎士…」

 

「角の生えた女騎士…?」

 

「なんじゃ、知らんのか?」

 

「…いや、知ってはいるが…奴はロキの眷属では無い筈だ。それに昨日ギルドからLv.2に上がったと伝えられたばかりだぞ…?」

 

「ふむ…とにかく、妾が望むのは姉妹同士の決闘よ」

 

「勝手な事を…!そんな条件、呑むわけが…!」

 

「ゲゲゲゲゲゲッ。やらせなよぉ、イシュタル様ぁ」

 

そう言ったのは、イシュタル・ファミリアの団長であるアマゾネスの、フリュネ・ジャミールだった。

 

「フリュネ…」

 

「いいじゃないかぁ、フレイヤのところと戦る前の前哨戦さぁ。それに遅かれ早かれこの連中がメレンに居座っているのはオラリオに知られちまうよぉ。なら、ロキ・ファミリアと戦うことが目的だったと思わせちまえば…」

 

「…ギルドにもフレイヤ達にもそれ以上の警戒はされない。そう言いたいのか?」

 

「ああ、【剣姫】はアタイが押さえといてやるよ。ゲゲゲゲゲッ…」

 

イシュタルがフリュネの進言を聞き、椅子に座って少し考えると…

 

「いいだろう、フリュネの言うことも一理ある。それに…私はロキ達も気に食わない。ただし、分が悪いようなら私達はすぐに手を引く。後の事は全てお前たちが責任を取れ」

 

「勿論だとも。飛び散る血は妾を興奮させ…死線の咆哮(こえ)は腹の底を熱くさせる…この上ない馳走じゃ…不真面目な神々同士では味わえん、命を賭けた闘争…これこそ、妾の追い求めていた下界の醍醐味よ」

 

カーリーは再び恐ろしい笑みを浮かべる。

 

「闘争と殺戮こそが、子の真理。闘争の行く末、それが見たいのじゃ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ロキ・ファミリアの面々は今日の方針を決めていた。

 

「今日から調べる範囲を絞る。ニョルズ・ファミリア。ギルド支部。街長(マードック)の家。調べるんはこの三つや。疑われとるって気付かれたら面倒やから、あくまで昨日のノリと一緒。何も掴んでへん風を装って、こそこそ嗅ぎ回る。

 

ロキは次にそれぞれが担当する場所を説明する。

 

(ニョルズ)んところに探りを入れたらすぐバレるから、あっちはうちがつく。リヴェリア達はギルド支部と街の長んとこを頼むなー」

 

「カーリー・ファミリアは?」

 

「基本無視や、ただ、またちょっかいを出してくる可能性はある。必ず集団で行動する事。それと…ほら、出てきいや」

 

ロキがそう言うと、バーゲストの召喚する黒犬が数匹現れる。

 

「この子達を一組に一匹ずつ付ける。何かあったら直ぐに分かる様になってるからな…頼むで、お前たち」

 

『ワンッ!』

 

「ティオナとティオネには、アイズとリヴェリアが付いたって。因みに、拒否権は無しや」

 

「っ…!ロキ、私は…!」

 

「オラリオに戻らんっちゅうなら、大人しく言うことを聞くんや、ティオネ」

 

「っ…!」

 

ティオネはロキに抗議しようとしたがそれは許されず、ティオネは渋々ロキの言うことを聞いたのだった。

 

「質問は〜?」

 

「…ロキ、バーゲストさんは?」

 

アイズがバーゲストがいない事に気付いてロキに訊く。

 

「あ〜…バーゲストたんはちょっと別の事を頼んどってな、今日は同行出来んわ。他は無いな〜?ほんじゃ、解散。みんな頼むでー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、バーゲストは街の外側の方をマントを羽織って走り回っていた。

 

「カーリー・ファミリアの動向をチェックしてほしい?」

 

「そうや、連中が何かしそうになったらすぐに伝えて欲しいねん。バーゲストたん、召喚魔法が使えるけん楽勝やろ?」

 

「なるほど…分かりました、やってみます」

 

(とは言ったものの…)

 

バーゲストは現在かなり焦っていた。

 

(カーリー・ファミリアが宿から消えていたとは…!)

 

カーリー・ファミリアの姿は既に宿から消えており、バーゲストは黒犬達を使いながらカーリー・ファミリアを捜索していた。

 

「向こうの黒犬から反応が…何か見つけたか?」

 

黒犬達の反応を頼りに移動するバーゲスト。

 

「ロキ様に伝言は出したが、流石に奴等を野放しには…」

 

その時、バーゲストはある事に気付く。

 

(捜索に当たっていた黒犬達が消えていく…?カーリー・ファミリアの仕業か…?)

 

黒犬達が消えていくのを感じていた瞬間、バーゲストはその場から飛び退く。

 

ドゴォン!!

 

バーゲストが居た場所に何かが叩きつけられ、周囲にヒビを入れていく。バーゲストが自分の居た場所を見ると、そこには赤いフルプレートを身に纏ったモンスターの様な体型の人物が居た。

 

「フリュネ・ジャミール…!イシュタル・ファミリアかっ!!」

 

「ゲゲゲッ、ばれちまったかい。鎧越しでも分かっちまうなんて、美しいっていうのは罪なもんさ〜」

 

「まぁ、ある意味特徴的と……言えるだろうなっ!」

 

ガギンッ!

 

バーゲストは次に背後から迫った大剣に盾を振り、弾く。

 

「ちっ、バレたか。良い勘してるじゃないか。角女」

 

「次はアイシャ・ベルカか…いや、それだけでは無いな」

 

周囲からぞろぞろとイシュタル・ファミリアの団員が現れ、バーゲストを包囲する。

 

「ふん、これがつい最近Lv.2になった冒険者に対する仕打ちか?イシュタル・ファミリア。何故今襲って来る?」

 

「惚けんじゃないよ、アンタの力はLv.5に匹敵すると情報は出てんだ。それに耐久においてはそれ以上の評価を受けてる…更には召喚魔法の使い手、これくらいは当然さ…それと理由についちゃ、教える訳ないだろう?」

 

「ゲゲゲゲゲ、そういう訳だ。悪いけどアンタには此処で死んでもらうよ」

 

「随分と物騒だな、此処は外の方とはいえまだ街中。それも昼のうちに始めるつもりか?住民が少ないとはいえ、そんな事をすればすぐ騒ぎに…」

 

「安心しなよ、ここら一帯の人間は何も言わないさ。それにロキ・ファミリアなら、今はそれどころじゃ無いだろうしね」

 

「…美の女神とは、狡いものだな」

 

バーゲストは剣と盾を構える。

 

(恐らく女神イシュタルの魅了でこの辺りの人間はダメになっているのでしょうね…敢えてこの場に残したのは私に対する人質。周りに一般人がいるなら炎は扱い辛い……黒犬達を釣って私を誘い込んだ…)

 

「本当に用意周到だな、だからこそ解せん。何故私にそこまで…」

 

「だから教える義理は…無いって言ってんだろ!!」

 

アイシャが近付き、バーゲストに大剣を振るう。バーゲストはそれに対処していると、反対側にいたフリュネが斧を振るう。

 

「ぐっ…!」

 

バーゲストは盾でアイシャの大剣。背中に剣を回してフリュネの斧を受け止める。

 

「はぁ!」

 

二人を押し返して、バーゲストはアイシャの横を抜けてその場から離れようとする。

 

(一先ず人が多い方に向かわなければ…イシュタル・ファミリアに狙われていては、捜索どころではっ!?)

 

バーゲストは足を止め、目の前にいる人物を見て驚愕した。

 

「バーチェ…!?」

 

「………」

 

そこに居たのはカーリー・ファミリアの頭領姉妹の片割れであるバーチェが居た。後ろからバーゲストを追って来たアイシャ達がバーチェを見る。

 

「おい、何でアンタが此処に居るんだい。それじゃ私らが手を組んでるってばれちまうだろ?」

 

「…ここで殺せば、問題無い」

 

「ゲゲゲ!全くもってその通りだねぇ!」

 

前に居るバーチェが拳を、後ろにいるアイシャ達が武器を構えて、バーゲストを挟み込む。

 

(…まずい、本当にまずいですわ。これ、マジで私死んじゃうんじゃないかしら?)

 

イシュタル・ファミリアだけならともかく、バーチェまで加わるとなると話は変わってくる。バーゲストは冷や汗を流しながら必死にこの場から逃げる方法を考えていた。

 

「…お前は、何だ」

 

「何?」

 

必死に考えているバーゲストにバーチェはそう問いかけた。

 

「カーリーが言っていた。お前は何か矛盾していると。その身体とその力は、本来合わさる事の無いものだと」

 

「何を言って…」

 

「話してるところ悪いけどっ!!」

 

背後からアイシャが切り掛かり、バーゲストはそれをしゃがんで回避する。するとバーチェがすかさず拳を突き出し、バーゲストは今度はそれを飛んで回避する。

 

「ゲゲゲ!デカい的だねぇ!!」

 

「ぐぅ!」

 

フリュネが二本ある斧の片方を空中のバーゲストに向かって投げ付け、バーゲストはそれを弾いた瞬間…

 

「なっ…」

 

「ふっ…!」

 

バーチェが眼前に現れ、空中で回し蹴りを繰り出し、バーゲストを吹き飛ばす。

バーゲストは遠くの方の地面に激突しながら転がっていく。

 

「馬鹿!飛ばしすぎだよ!お前たち、追え!!」

 

バーゲストは剣を地面に突き立てて立ち上がると、イシュタル・ファミリアの団員達が次々と襲いかかって来る。

 

「はぁ…はぁ…… 【黒犬よ、お前の爪と牙を以って我が敵の肉を喰らえ】…」

 

バーゲストはそれを迎え撃ちながら詠唱を始める。

 

「【お前は大地を駆ける勇猛な黒犬だ】【ブラックドッグ】…!」

 

バーゲストの足元から出て来たのは、大きな体躯を持つ黒犬だった。バーゲストは隙を突いてその黒犬に跨り、黒犬はイシュタル・ファミリアとバーチェから逃げる為に駆け出した。

 

(これで逃げられるか…?…いや)

 

バーゲストが後ろを見ると、バーゲストを追う人物が二人居た。

 

(バーチェとアイシャか…!まずい、二人とも俊敏はかなり高そうだ…!私を乗せたコイツでは逃げ切れん…!)

 

「逃がさないよ…!」

 

「………」

 

バーゲストに迫る途中で、バーチェはカーリーが言っていた事を思い出していた。

 

『しかし解せんなぁ、あの騎士。何故あのような力を持っていながら、その身に太陽の輝きを宿しているのじゃ?』

 

カーリーはバーゲストに対してそのような疑問を抱いていた。バーゲストが戦う姿を見て、そしてバーゲストが黒犬を召喚した瞬間、カーリーはバーゲストの力とその内にある何かに勘づいた。

 

『恐らく、昼にやり合ったらそれなりに苦労する相手じゃろうなぁ、アレは。しかしアレを野放しにすると後々面倒そうじゃ。バーチェ、お主も手伝ってアレを始末…いや、出来れば捕まえろ』

 

(カーリーがあれほど興味を持つなど…貴様は一体…ん?)

 

するとバーゲストが手を翳し、その手から鎖が何本も伸びる。それは炎を纏ってアイシャとバーチェに向かっていく。

バーチェはそれを素早い身のこなしで、アイシャも同様だが時折大剣で弾きながらバーゲストへ更に接近する。

 

(これではダメね、どうしましょう。二人だけのうちに迎え撃つ?いえ、二人を相手してる間に他の連中が来たら本末転倒…他の眷属を召喚して足止め…いや、二人には意味は無いでしょうね……ぐっ…!?)

 

すると突然黒犬のバランスが崩れ、バーゲストは地面に放り出される。すぐさま状況を確認すると、黒犬の後ろ足が無くなっており、先程まで居た場所の地面に大剣が突き刺さっていた。

 

「グ、グォ…ギャ!?」

 

足を無くし、もがいていた黒犬をバーチェが上から踏み潰し、黒犬は塵と化す。そしてバーチェはすぐさま倒れた状態のバーゲストに接近し、足を振り上げる。

 

「ふっ!」

 

「ぐうっ!!」

 

バーゲストは膝を着いたままバーチェの踵落としを盾で受け止めると、衝撃がバーゲストを伝って地面にヒビを入れた。

 

「はなっ…れろっ…!」

 

「!」

 

バーゲストは盾に炎を纏わせると、その直前にバーチェは離れる。バーゲストが盾を見ると、バーチェの踵が当たった場所がへこんでいた。

 

「すまない、アルトリア。受け取ったばかりだというのに…」

 

バーゲストは立ち上がり、バーチェとアイシャを見据える。二人は様子を伺っており、まだ動く気配は無い。

 

(他の団員が来るまで足止めのつもりでしょうね…詠唱は…恐らくさせて貰えないでしょうね…)

 

「どうした、来ないのか?相手はお前たちより格下だぞ」

 

「そんなに慌てなくても、他の連中が来れば存分に相手してやるさ」

 

「…この後に本命が控えている、お前で力を使い切る訳にはいかない」

 

「なるほどな…本命か…」

 

バーゲストと二人は睨み合いを続け、焦りからかバーゲストの頬に汗が流れる。そして次の瞬間…

 

「ふっ!」

 

バーゲストは咄嗟に左腕を突き出すと、盾の裏側から鎖が飛び出して来る。

 

(!盾の裏側にずっと隠していたのか)

 

(だけど、さっきみたいに炎を纏っていない。それをすると隠せないからね…!)

 

パシッ

 

っと、二人はほぼ同時に鎖を掴んだ。そして鎖を引っ張ると、バーゲストが二人の方に引っ張られていき、バーゲストはなんとか踏ん張る。

 

「ぐっ…」

 

「さぁ、次はどうするんだい?さっきみたいに鎖に火をつけるかい?」

 

「……」

 

二人は再び鎖を引っ張ってバーゲストを近づけようとした瞬間、バーゲストは右手に持っていた剣を手放した。

 

ジャリン!!

 

と音がして、気付けば二人は宙を待っていた。

 

「…は?」

 

「っ…!!」

 

二人が地上にいるバーゲストを見ると、バーゲストは二人と繋がっている鎖を持つ左腕を掲げており、右手には()()()()()()()()()()()()()()()があった。

 

「アァァァッ!!」

 

バーゲストが叫びながらガラティーンを二人に向けて振るうと、黒い炎の斬撃が二人に向かって放たれる。

二人に炎が迫り、アイシャは当たると思った瞬間…

 

「ふっ…!」

 

「なっ…!?」

 

バーチェがアイシャを足場にしてその場から移動する。アイシャも蹴られた衝撃でその場から動き、二人に炎は命中しないという結果になった。

 

「グゥゥゥ…!!」

 

バーゲストは遠くに落ちていく二人を睨みながらガラティーンを角に戻し、頭に戻した。

 

「はぁ…!はぁ…!───ふぅ…初めて使ったが、なんとか制御出来たな。よし、今の内に行くか」

 

バーゲストは再び黒犬を召喚し、ロキ達の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーゲストがイシュタル・ファミリアとバーチェに襲われている時、レフィーヤ達もカーリー・ファミリアに襲われていた。神威を消し、ただの少女に扮したカーリーに誘導され、レフィーヤは攫われてしまった。

 

「アルガナ…!」

 

「………」

 

「グルルルル…!」

 

そしてその時、ティオネとリヴェリアはアルガナと対峙していた。アルガナはニヤニヤとしており、反対にティオネは怒りを見せ始めており、バーゲストの黒犬も唸っていた。

 

「またのこのこと…!」

 

「ティオネ、下がっていろ」

 

ティオネを制してリヴェリアが前に立つ。

 

「用件があるなら私が聞こう。無いのなら、去れ」

 

「…ラダ・ファ・アーロ。ナハーク・ジ・ディナ、ノイ・フィ・ギャラード・ソア・ディ・ヒュリテ」

 

アルガナのその言葉を聞いた瞬間、ティオネは固まった。

 

「アマゾネスの言語…?いや、闘国(テルスキュラ)の?ティオネ、どうした!」

 

「!ワンッ!ワンッワンッ!!」

 

すると今度は黒犬が何か異変を察知したように吠え始める。

 

「バーゲストの眷属まで、一体何が…」

 

「どういう事よ!説明しろっ!」

 

激昂したティオネがアルガナに詰め寄ろうとし、リヴェリアがなんとかそれを止める。

 

「リヴェリア様!」

 

するとアリシアが慌てた様子で現れ、リヴェリアに呼びかける。

 

「どうした、何があった?」

 

「エルフィ達が、レフィーヤが…!」

 

「っ!アルガナァッ!!」

 

アリシアの言葉を聞いてティオネはアルガナに対する怒りを爆発させる。しかしアルガナは言うだけ言ってその場を離れていった。

 

「ティオネ、今は構うな!早く戻るぞ!」

 

「くっ…!」

 

リヴェリアは状況を確認にする為にティオネを引き止め、アルガナを見逃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ・ファミリアの面々は一旦港の方で合流し始めた。

 

「ごめん、ロキっ…やられちゃった…」

 

「ロッド、手当しろ!急げ!」

 

「分かりやした!おいてめえ等、手を貸せ!」

 

ボロボロになって連れられてきたエルフィ達をロッド達が治療する。その姿を見たロキは明らかに怒っていた。

 

「これをやらかしおったんは…」

 

「カーリー・ファミリアです…いきなり、襲われて…」

 

「ごめん…!レフィーヤが、連れていかれちゃった…!」

 

「…大丈夫や。すぐにレフィーヤは助けに行く。自分らは今は休んどきや。な?」

 

悔しそうにしながら涙を流すエルフィとリーネにロキは優しくそう言った。

 

「ロキっ…本当に、ごめん…!」

 

治療の為に連れていかれる二人を見送った後、ロキは再び怒りの表情を露わにする。

 

「あンのクソチビ。うちに喧嘩売りおったなぁ…!!」

 

「…ロキ。殺気、漏らさないで。他の団員()が怯える…」

 

「おいおい、頼むからこの街の中で抗争なんておっ始めないでくれよ…」

 

殺気を漏らすロキにアナキティが注意し、巻き込まれたメレンはどうなるのかが心配になるニョルズ。ロキはカーリー・ファミリアの目的は何なのかを考える。

 

(街中で堂々と仕掛けてきおった…宣戦布告のつもりか?いや、エルフィ達だけは見逃して、レフィーヤを連れ去った──)

 

「ちっ…そういう事か。アキ!ティオナとティオネ、呼び止めるんや。どこにも行かせたらアカン!」

 

一方、まだ状況が把握出来ていないティオナとアイズは、街中での騒ぎに混乱していた。

 

「何、この騒ぎ…?何が起こっているの!?それに…」

 

「ワンッ!」

 

「この子もずっと鳴いてるし…まさか、他の皆に何か…!」

 

「!急ごう!」

 

そう言って走り出したアイズにティオナも続こうとするが、

 

「ティオナ、来て」

 

「えっ、ティオネ!?」

 

いつの間にか現れたティオネがアイズに気付かれない様にティオナを捕まえる。

 

「!」

 

側にいた黒犬がティオナを連れて行こうとするティオネを見て、アイズに気づかせる為に吠えようとした瞬間…

 

バシュ!

 

と音が鳴り、黒犬は鳴き声を上げる間もなく頭を蹴り飛ばされ、塵となっていった…

 

「え、ええっ!ちょ、何やってムグっ!?」

 

「いいから!」

 

戸惑うティオナの口を塞いで、ティオネは強引にティオナを路地裏へと引き込んだ。

 

「何すんのティオネ!?何かあったんでしょ、どうしてこんなところに…」

 

人質は預かった(ラダ・ファ・アーロ)返してほしければ夜(ナハーク・ジ・ディナ)造船所に(ノイ・フィ・)姉妹だけで(ギャラード・ソア・ディ)来い(ヒュリテ)

 

「!!」

 

「さっきアルガナが私に言った言葉よ。襲われたのはエルフィ達。その中で…レフィーヤが攫われた…ふざけやがって、あいつ等…!私達を釣るためにファミリアに手を出しやがった!」

 

「…どうするつもりなの?」

 

「聞かなくても分かってんでしょ、アンタ。私達の手でケリをつける」

 

「ティオネ……アイズ達を頼っちゃ、ダメなの?」

 

ティオナの言葉は、ティオネを更にイラつかせた。

 

「あんた、この後に及んでどこまですっとぼけてんのよ!私達のせいでレフィーヤ達は…!」

 

「でも私達、家族(ファミリア)でしょ?もう私達、前とは違うよ?」

 

「っ!カーリー達の考えなんて、あんたも分かってるでしょ!あいつ等の狙いは『儀式』!闘国(テルスキュラ)でやっていた、闘争のその先!」

 

『儀式』それは真に最強の戦士を生み出す為に闘国(テルスキュラ)で行われていたもの。カーリーは闘国(テルスキュラ)で強くなったアルガナとバーチェ。外の世界で強くなったティオネとティオナのどちらが最強の戦士に相応しいのかを知りたがっている。

 

「私達が『儀式』に応じないと、あいつ等はまた今日みたいな事を繰り返す!何度でも、いつまでも!」

 

「………」

 

「私達の手で終わらせるしかないの。アイズ達にも…団長達に頼っちゃ、絶対にダメ」

 

「…分かった。アイズ達に隠し事はやだけど…これは、そういう風にしないと、いけない気がする」

 

「…なら行くわよ、夜まで、誰にも見つからないように身を隠す─!?」

 

瞬間、二人の頭上を何かが飛び越えようとしていた。二人が頭上に視線を向けると、そこには屋根から屋根へと飛び移ろうとしている大きな黒犬と、それに跨るバーゲストの姿があった。

 

「…ティオナ、ティオネ?」

 

バーゲストは二人の姿を確認し、屋根に着地すると、二人の方へ降りてきた。

 

「あんた、何で此処に…」

 

「それはこちらの台詞だ、お前たち、此処で何をしている?」

 

「…あんたには関係無いわよ」

 

「……お前たちの方に置いていった黒犬が三匹消えている。何があった?」

 

「ロキ達に聞けば?」

 

「なら、一緒に戻る──」

 

「放っておきなさいよ!私達の事は!」

 

「っ!?」

 

「ちょ、ティオネ…!」

 

ティオネの怒号にバーゲストは若干たじろぎ、動きを止める。

 

「そもそもあんたは、他派閥の人間で、今回同行しているのは食人花の調査の為でしょ!?なら、そっちに専念しなさいよ!私達とカーリー達の件に関わろうとするのはやめなさい!」

 

「…カーリー・ファミリアが、何かやったのか」

 

「っ!」

 

つい勢いで自分の発言が墓穴を掘った事に気付くティオネ。ティオナはバーゲストに説明をする。

 

「エルフィ達が襲われちゃって…レフィーヤが攫われちゃったんだ…カーリー達は、私達だけで夜、造船所に来いって…」

 

「それでロキ達から離れたのか…自分勝手だな」

 

「うっ…それは」

 

「…あんたに何が分かるのよ、あの場所を…闘国(テルスキュラ)を知らないアンタに、何がっ!」

 

「…確かに私には何も分からない。だが、貴公らが、ロキ・ファミリアの皆を想ってこの選択をしたのは分かる」

 

「っ!」

 

「二人がどれほどロキ・ファミリアの事を大事に思っているかも私には分からない。だが二人が皆を大事に思っているように、皆も二人の事を大事に思っているのは、付き合いが短い私でも分かる」

 

「バーゲスト……」

 

「…ならどうするつもり?今から私達を皆の元に連れて帰るつもり?」

 

「生憎と先程襲撃から逃れたばかりでな、少し疲れている。それに、お前たち二人を相手に勝てる自信は私には無い…お前たちは、どうして欲しい」

 

「それは…」

 

「…あんたはもう、関わらないで。出来るなら私達がケリをつけるまでアイズ達にも接触しないで。黒犬も撤収させなさい」

 

ティオネがそう言うと、バーゲストは「ふむ」と言って顎に手を当て、暫く考えると。

 

「…分かった。今回の件が収束するまで、私は単独行動を取らせてもらう。アイズ達にも接触しない。黒犬も撤収させる。これでいいか?」

 

「えっ、いいの?」

 

「…どういうつもり?」

 

「嫌ならやめても良いが」

 

ティオネはバーゲストを見つめ、ため息を吐く。

 

「分かったわ、ありがとう。それじゃ私達はもう行くわよ」

 

「ああ」

 

ティオネは振り返ってその場を離れていく。ティオナも後に続こうとすると…

 

「ああ、待て、ティオナ」

 

「ん?何〜?」

 

「渡したいものがある」

 

バーゲストがそう言ってティオナを呼び止めると、ティオナに背を向け、何かぶつぶつと呟き始めた。

 

「よし、これだ」

 

バーゲストが再びティオナの方を向き、手を差し出すと、バーゲストの掌に何かがあった。

 

「何これ…黒い卵?」

 

「お守りのようなものだ」

 

「ふーん…」

 

「ちょっとティオナ!早く行くわよ」

 

「はーい!ありがと、バーゲスト。またね!」

 

そう言って走り出してその場を去っていくティオナの背をバーゲストは見えなくなるまで見つめていた。

 

「さて…私も、準備を始めようかしら」

 

バーゲストはそう言ってティオナ達とは反対方向に歩き始めたのだった…

 

 

 

 




ティオネさーん!あんた黒犬殺しすぎぃ!仲間やでそれぇ!前回で一匹…今回で二匹…今のところ黒犬討伐数ランキング一位…何故だ…!因みに水着書けたから満足って言いましたけど、実はまだメレン編でやりたい事があります。それがなんなのかは、次回をお楽しみにしていてください。
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