ダンジョンにバゲ子がいるのは間違っているだろうか?   作:猪のような

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あ、あの〜…お久しぶりです…あ、待って!物投げないでください!ごめんなさい!あの、一言だけ言わせてください!夏から本当に忙しかったんですね!過労とストレスで帯状疱疹に罹るくらいには…あの、だからその…ホント、すいませんでした…


第十九話 演奏閉演

 

 

 

 

「彼女を倒したければ、先ずは私を倒していけ!とな」

 

海蝕洞に突然現れたバーゲストは、カーリーやバーチェに向かってそう言った。

 

「………」

 

「くくっ…いきなり来て何を言い出すかと思えば、馬鹿げた話じゃのう。ティオナを倒したければ先ずはお主を倒せ?一体どういうつもりじゃ?」

 

バーチェがバーゲストを睨みつけ、カーリーは少し笑いながらバーゲストに問う。

 

「言っただろう、勝負は私が預かったと。ティオナと『儀式』をしたければ…私とバーチェがその『儀式』をして私を倒せば…今繋がれているティオナを解放しよう」

 

「はっはっは!意味が分からんぞ、今は夜…お主に味方してくれる太陽はおらんぞ…?」

 

カーリーがそう言うと周囲のアマゾネス達が降りてバーゲストに近付く。

 

「ふっ…」

 

バゴンッ!!

 

バーゲストが突然地面を力強く踏みつけると、地面に亀裂が走り、その亀裂は近づこうとしたアマゾネス達の足元に及び、アマゾネス達はそれを見てたじろぐ。

 

「ほう…」

 

「太陽が無いから…何だ?」

 

バーゲストがそう言うと、背後から黒犬達が現れる。

 

「こちらの要求を呑むなら、私も鎧を脱ぎ、素手で戦おう。だが、もしそうならない時は…」

 

「後ろの黒犬共々、お主の相手をせねばならんと……」

 

カーリーは目を細めてバーゲストを見据える。ティオナやアマゾネス達は緊張した様子で行く末を見守っていた。

 

「お主、そもそも何故この場所が分かった?」

 

「それは…【目覚めよ】」

 

「…?え、なになに?」

 

バーゲストが唱えると、ティオナの懐がモゾモゾと動き、黒い卵が出て来て地面に落ちる。すると…

 

「キシャァァァ!」

 

地面に落ちた瞬間に卵が割れ、黒い靄が溢れ出すと、中から小さな蠍のモンスターが現れる。

 

「うぇぇぇぇ!?バーゲストから貰ったお守りが、蠍に〜!?」

 

「落ち着け、それは私の眷属…この黒犬と同じだ。さて、これで分かっただろう、女神カーリー」

 

「なるほど、それを頼りにお主はティオナを尾けてきたと…鎖といいその召喚魔法といい、中々器用なことをするのぅ」

 

「それで、私の要求は呑んでくれるのか?」

 

カーリーは「ふむ」と言って考え始める。

 

(受ける必要は無い。黒犬達はこの場にいる者たちで十分対処出来るじゃろう。しかし…)

 

カーリーはバーゲストをジッと見る。

 

(今のあやつ、太陽が無くても普通に強そうじゃな。何故じゃ?何か他のスキルが働いているのか?とにかく、あれの相手はバーチェにしか出来そうにない。それにバーチェの話では、アレはまだ隠し玉を持っている……)

 

「……いくつか聞きたいことがあるのじゃが?」

 

「何だ?」

 

「お主、本気でバーチェに勝てると思っておるのか?しかも殴り合いで」

 

「さぁな、この先の勝敗なぞ分からんが…私は勝てると思っている」

 

「ふむ…なら、何故ここまでする?お主はティオナ達とは違う派閥の者じゃろう。何が狙いじゃ?」

 

「狙い…?ふむ…私が私であるため、だろうな」

 

「なんじゃそれ!?あっはっはっ!……じゃが、その言葉に偽り無し…それにお主には個人的興味もある…良かろう。バーチェ、すまんが彼奴の相手をしてやれ」

 

「カーリー、それは…!」

 

「バーチェ、殺すとしたら此奴とティオナ。どちらが良い?」

 

「!!」

 

「もしかしたら、ティオナを殺さずに済むかもしれんぞ?」

 

「…分かった」

 

バーチェも納得したところでバーゲストが鎧を脱いでいく。剣と盾を捨て、鎧の下にあった服が露わになる。

 

「ば、バーゲスト!」

 

「ティオナ、申し訳ありません。勝負がつくまでは鎖に縛られたままですわね」

 

「いや、それより何で来たの!?ていうか約束と違うじゃん!」

 

「単独行動をすると言っただけです。アイズ達とも接触させていませんし、黒犬も一度は撤収させました。約束は全て守っています」

 

「そういうの屁理屈って言うんだよ!?バーゲスト、お願いだがらこの鎖ムグッ!?」

 

ティオナの口を鎖で塞ぐと、バーゲストはバーチェの方を向く。

 

「待たせてしまったな。では、始めるとしよう」

 

「……」

 

バーチェはバーゲストの言葉を聞いて静かに構え、バーゲストも構えた。

 

「【食い殺せ(ディ・アスラ)】……【ヴェルグス】」

 

バーチェが詠唱し、左腕が毒に覆われていく。

 

「… 【鎖は我が猟犬達、我が敵を捕らえる牙となれ】【チェーン・ハーディング】」

 

バーゲストもそれに対抗する様に詠唱し、鎖が腕に巻き付き、スキルを使って炎を付与する。

 

「いくぞっ…!」

 

「来い、バーチェ・カリフ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ヘスティア・ファミリアのホームである教会の地下では…

 

「やるじゃないかベル君!いやぁ、君がケンカをして帰ってくるなんて意外だなぁ…」

 

ボロボロになって帰って来たベルやヴェルフをヘスティアやリリルカ、アルトリアの3人が手当していた…

 

「仕方ないですよ、ベルさんの性格上。自分の事ならともかく、ヘスティア様の悪口を言われたんですから」

 

「そういうお前もバーゲストの悪口言われて若干キレてたじゃねーかイテッ!?」

 

「何か言いましたかヴェルフ?」

 

「え、バーゲスト君の悪口?」

 

「そうなんですよヘスティア様!!アイツら、バーゲストさんの事を角が生えてて気持ち悪いとかなんとか訳分かんない事言ってたんですよ!?アイツら絶対いつか私の武器の実験体にしてやる…!」

 

「落ち着いてください、アルトリア様…バーゲスト様ならきっともっと穏便に事を済ませた…いえ、あの方も手を出しそうな気が…とにかくベル様が怪我を負うような事にもならなかったでしょう」

 

「……そっか、でも、やっぱりケンカは良くないぜ。こんな怪我までしてるじゃないか」

 

「だって、あの人達…バーゲストさんだけじゃない、神様の悪口まで言ったんです。それを聞いたら思わず…」

 

「……君がボクの為に怒ってくれるのは、とても嬉しいよ。でも、それで君が危険な目に遭う方が、ボクは悲しいな」

 

「神様…」

 

「それに、バーゲスト君だって、この事を聞いたら自分の所為でベル君が傷付いたーって自分を責めると思うな」

 

「そんな、コレは僕が勝手に」

 

「ベル様がそう思っても、バーゲスト様はご自身を責めますよ」

 

「リリ…」

 

リリルカはヴェルフに薬を塗りながら続ける。

 

「あの人は自分が強いと分かっているから、自分より弱い人を護らなければならないと必死になっているんです…失礼ですが、ベル様の実力はバーゲスト様には遠く及びません…バーゲスト様からすればベル様は仲間であり、守るべき人なのですから」

 

「そうだぞーベル君。バーゲスト君がミノタウロスと戦う君の事をどれだけ心配していたと思っているんだい?一休みしたら眠っている君の近くにずっと居たんだぞ、彼女…それに、中層の事でも説教喰らったよね〜?」

 

「それはヘスティア様も同じではなかったでしょうか?」

 

「あ、あはは…」

 

ヘスティアは引き攣った笑顔を見せながら説教された時の事を思い出していた…

 

「アルテミス様の様に戦う術を持つ神ならともかく、戦いとは全く無関係なヘスティア様がダンジョンに潜るとはどういう事ですかっ!!」

 

「だ、だって、ベル君達が心配で…」

 

「先ずは自分の心配をしてくださいっ!!ヘスティア様が送還されれば、ベルは更に危険な目に遭っていたでしょう!!私も、今回の依頼を果たす事は出来なかったでしょう!!」

 

「う、うう…」

 

「ベルが心配なのは分かります、ですが私もヘスティア様の事が心配なのです!もしヘスティア様に何かあったら、私は、私は…」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「うわー…大変そうだな、ヘスティア…」

 

「ヘルメス様、あなたにも話があります」

 

「マジかよ」

 

 

 

 

「…うん、ボク、もう絶対バーゲスト君の説教は喰らいたくないな…」

 

「まぁ、バーゲスト様はヘスティア様の事が大好きですからね〜」

 

「え?」

 

「あ、それ私も思いました。凄く大切に思っているのが少し見ただけで分かりましたもん」

 

「確かに、へファイストス様も、バーゲストを見て何か安心してたな確か…「あの子が眷属でヘスティアは幸せ者ね」って言ってたな」

 

「幸せ者……そうだね…とにかく…今度は笑い飛ばしてやってくれよ。僕の神様は、そんなことで怒るほど器の小さいやつじゃない、ってね」

 

「……はい、次は我慢します…」

 

ベルがしょんぼりした表情でそう言い、ヘスティアは頷いた。

 

「でも、相手方の反応は気になります。逆恨みをしてこなければいいのですが…」

 

「相手はどこだい、サポーター君」

 

「アポロン・ファミリアです」

 

「何だって?」

 

そのファミリアの名を聞いた瞬間、ヘスティアが顔を顰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティア・ファミリアでそんな会話があった頃、バーゲストとバーチェは死闘を繰り広げていた。

 

(……ステータスでは…勝っている…恐らくレベルが上がりたてのせいで身体にズレが生じているが…鎖でその差をカバーしている…しかし…妙だ)

 

バーチェが感じている違和感を、闘争を見届けるカーリーも感じていた。

 

(やはりおかしいのぉ…ステータスが昼間とは違うが…総合力なら今の方が上か?力は下がっている様に見えるが、その他のステータスが昼間の時より高く感じる…ふむ…)

 

バーチェとカーリーが冷静に分析している時、バーゲストは内心少し焦っていた。

 

(勝つつもりですが…持久戦は不味いですわね…今の私は海蝕洞の外にいる黒犬達も含めたワイルドルールのスキルによってステータスを大幅に上げた状態…)

 

そう、バーゲストがなぜ夜にも関わらずここまで戦えているのか。それはバーゲストのスキル、ワイルドルールの効果によるものであった。

 

(黒犬達が多いほど私のステータスが上がる…しかし裏を返せば、外にいる黒犬達の数が減っていけば私のステータスは元通り…早く決着をつけないと…!)

 

「……お前、焦っているな?」

 

「!!」

 

肉弾戦を繰り広げる中、バーチェが突然そう言う。

 

「動きを見れば分かる、お前はこの戦いを早く終わらせたがっている…私の毒のダメージを気にしている訳では無いな…ならば、やはりそのステータス、何らかのスキルの力か?」

 

(気付くの早すぎですわ…!?)

 

「おかしいと思った、もし私がお前なら、陽が昇るまで時間を稼ぐ、そうすれば勝算が高くなる…しかしお前はその選択をしない、いや、する事が出来ない…それはつまり、陽が昇るまで耐え切る自信が無いという事だ」

 

「意外と饒舌だな」

 

「ああ、私は興奮するば饒舌になるタチなんだ…何が言いたいか分かるか?」

 

「何だ?」

 

「お前との闘争、想像していた何倍も良い…!私はお前を糧とし、更なる力を手に入れる…!!」

 

バーチェはそう言って猛攻を仕掛ける。バーゲストは炎を纏った鎖で牽制しながら応戦した。

 

「私が、短期戦を望んでいるとっ、分かりながらっ…付き合ってくれるのかっ!?」

 

「ああ、お前が何の言い訳も出来ない勝ち方をしてこそ意味がある…!私の毒を炎で弱めているとはいえ、効果が薄すぎるな…対異常か?」

 

(…天蠍、まさか対異常を少し備えていたなんてね…嬉しい誤算ですわ…)

 

「ならば…コレはどうだ…!」

 

バーチェの毒が左腕から全身に広がっていく。

 

(嘘っ、バーチェの毒…昔は左腕だけにしか…)

 

「…全身に纏えるのか?」

 

「昔は左腕だけだったがな…私の魔法(ヴェルグス)も全身を覆えるほど強くなった…鎧…とまではいかないが、私の魔法は相手に痛みと苦しみを強いる」

 

(攻守一体…猛毒の鎧…毒が蓄積すれば私の身体も無事では済みませんが…簡単な話ですわ…)

 

「用は、貴様が倒れるまで毒に耐え続ければいいのだろう?短期決戦は、私から望んだ事だっ!!」

 

バーゲストは臆せずバーチェに立ち向かい、拳を突き出すが、バーチェは少し屈む様に避けてバーゲストの懐に入ると、強烈なアッパーカットを入れる。

 

「ぐっ…!!」

 

「む…」

 

(痛い…咄嗟に炎で弱めましたが、大分毒を貰いましたわね、今のは…それに…)

 

(先程より明らかにキレが無い…それに少し柔かった…やはりステータスが先程より下がっている)

 

「しかしっ!!」

 

「っ!」

 

バーゲストはそれを気にせずバーチェ拳を振るう、バーゲストの右ストレートをバックステップで避けたバーチェに、右腕から鎖が伸びる。

 

「ハアッ!」

 

「ぐっ…」

 

右腕を引くと同時に左腕を引っ張られたバーチェの顔面に叩き込み、バーチェば吹き飛ばされながらも受け身を取る。顔を上げてバーゲストを睨むと、ペッと血を吐いて再び近付く。

 

全身に火を纏うバーゲストに全身に毒を纏うバーチェ。二人の闘争は更に激化していく。

 

「くっ…くくく…!」

 

カーリーは目の前で行われる闘争を見て心躍らせていた。

 

(バーゲストが乱入してきた時は少し残念じゃったが…それは間違いじゃったか…!こんなにも素晴らしい闘争を目にする事が出来るとはのう…!しかし…それもここまでかの…)

 

「ぐうっ!!」

 

「どうした、もう終わりかっ!」

 

時間が経てば経つほど、バーゲストのステータスが下がっていく。外にいる黒犬達はかなりの数を減らしていた。

 

「…ぷはぁっ!」

 

ティオナが頭を何度も振り、自身の口を塞いでいた鎖を外すと、カーリーに叫ぶ。

 

「カーリー!今すぐ闘争をやめさせて!カーリー達の狙いは私でしょ!?バーゲストは何も関係無い!」

 

「ダメじゃ、もう今は無関係では無い。あやつは自分から命を賭けてこの闘争に割り込んできた。それにせっかくここまで面白くなったんじゃ、最後までちゃんとやり切らねば面白く無くなってしまうではないか」

 

「カーリー…!くっ…バーゲスト、今すぐこの鎖を解いて!私が戦うからだから!」

 

「黙れ、ティオナ!」

 

「っ…バーチェ…」

 

「今、コイツは私と戦っているのだ。己の全てを賭けて…!私とコイツの戦いに、お前が割り込む余地は無い!」

 

「その通りだっ!勝手に割り込んだ身で申し訳ないが、私は私の為に、この戦いから、逃げる訳にはいかん!!」

 

「バーゲストっ…けどっ、それじゃ…!」

 

「いい加減にしろ、ティオナ…それがバーゲストのした選択じゃ、この闘争においてお前はただの観客じゃ、選手に野次を飛ばすでない」

 

「っ…どうして…他のファミリアの…私の為に…そこまで…」

 

「他のファミリアだから、何だ!?」

 

「っ!?」

 

「私は、ティオナの事を友だとっ、思っている!!ティオナはっ、違うのかっ!?」

 

「バーゲスト…!」

 

「バーチェと戦いたく無かったのだろう?苦しんでいる友をっ、私は見捨てる事などっ、出来んっ!!理由など、それだけだっ!」

 

「うわ、今の言葉に嘘が無いとか、マジか」

 

カーリーは少し引いた感じでバーゲストを見る。ティオナは瞳に目を溜めてバーゲストを見る。

 

「お喋りとは、余裕だな!!」

 

「ぐふっ…!」

 

「まだだっ!!」

 

バーチェの蹴りがバーゲストの腹部に命中し、バーゲストは怯むと、バーチェは更に顔にストレートを叩き込み、バーゲストが仰け反る瞬間に頭を掴み、勢いよくバーゲストの頭を自分の方に振り下ろし、それと同時に脚を曲げ、膝を上げてバーゲストの顔面に膝蹴りをかます。

 

「があっ…」

 

「バーゲスト!!」

 

「コレで、終わりだっ!!」

 

ティオナが叫び、よろけたバーゲストにバーチェは回し蹴りを繰り出し、それはバーゲストの横顔に叩き込まれバーゲストは横に吹き飛ばされて壁に激突した…大きく土煙を上げてバーゲストの姿が見えなくなってしまう。

するとティオナを拘束していた鎖が消える。

 

「ハアッ…ハアッ…ぐふっ…」

 

「あ…バ、バーゲスト…」

 

「最後の方はもう炎で毒を弱める事すら出来ておらんかったな。お主の拘束も解けたし、これは決まったかの」

 

ティオナは膝を着いて震えながらバーゲストが吹き飛ばされた方を見ており、カーリーは黙って様子を見ており、バーチェも息を整えながらバーゲストが飛ばされた方をずっと見ていた。

 

(おかしい…)

 

バーチェには確信があった。戦いはまだ終わっていないという確信が。

 

(ティオナを縛っていた鎖が、アイツが死んで消えたのなら…)

 

バーチェはチラリと横目である存在を見る。

 

(何故あの黒犬は消えない…!)

 

そう、黒犬達は未だ健在、それはつまり…

 

バリッ…

 

黒犬の長は、まだ息があるという事だ。

 

「っ!?」

 

バーゲストが居る土煙の方から何か飛んできたのを確認したバーチェは咄嗟にそれを避けると、それはバーチェの後ろに居たカーリーに向かっていく。

 

「カーリー!」

 

ドゴォン!!

 

「……ほう」

 

飛んできた物体…黒い大剣をカーリーの頭の直ぐ横を通って壁に突き刺さっていた。

それを確認したバーチェは直ぐにバーゲストの方を見る。

 

ジャラララ…

 

「フゥゥゥゥゥゥゥ…」

 

ズシリ、ズシリと、重たい足取りで少しずつ土煙から出て来たのは、鎖を地面に引き攣らせている、先程までと雰囲気が明らかに違う角が片方だけのバーゲストだった。

 

「バーゲスト…!」

 

「その姿、昼間に一瞬だけ見えた、あの時の…!」

 

ティオナの表情が明るくなり、バーチェが昼間にバーゲストを襲った時に起きた事を思い出していると…

 

「くくく…あっはっはっはっはっは!!」

 

『!?』

 

カーリーが突然高笑いし、その場にいるバーゲスト以外の人物が驚く。

 

「ふ、ふふ…なんじゃお前、太陽の加護なんぞ持っておる癖、本性はそれか!!実に面白いのう!お主は太陽の下で戦う崇高な騎士などでは無い!夜に紛れて獲物を狩る恐ろしい獣そのものよ!!三つ目の気配が、こんなものとはな、はっはっは!!」

 

「カーリー…何を…なっ!?」

 

バーチェが動揺していると何本もの鎖がバーチェに向かい、バーチェは何度も避けるが、余りの数の多さに捕まってしまう。そしてバーゲストはバーチェを自分の方に引っ張り…

 

「ア゛ア゛ッ゛!!」

 

「ガッ…!!」

 

勢いよく近付くと同時に特大の頭突きをかました。

 

(あ、頭が…揺れ…る…)

 

バーチェが定まらない思考の中でバーゲストの姿を捉えると、バーゲストは右腕に鎖を何重も巻き付け、それに黒い炎を付与していた、周囲に赤雷が走り、バーゲストはゆっくり右腕を引き…

 

(ま、不味い…早く、動かなくて───)

 

バーチェの記憶は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥッ…!フゥッ…!」

 

バーゲストは息を荒げながら、倒れ伏すバーチェを見下ろす。右足を上げ、バーチェの頭を踏み潰そうとした瞬間…

 

「バーゲスト、ダメッ!!」

 

「っ!!」

 

ドゴォン!と地面が割れる音がする。バーゲストの足は、間一髪でバーチェから逸れて、直ぐ横の地面を踏みつけていた。

 

「………」

 

そこからバーゲストはゆっくりとカーリーの方へ歩いていく。直ぐに周囲のアマゾネス達が動こうとするが。

 

「よい、動くな」

 

「しかし」

 

「動くなと言っておる」

 

アマゾネス達は動きを止め、行く末を見守る。やがてバーゲストがカーリーの前に立つと、手を伸ばし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーリーの顔の直ぐ横に突き刺さっているガラティーンを引き抜いた。ガラティーンは小さくなり、角に戻るとバーゲストは角を頭に戻す。

 

「……私の勝ちだ、バーチェはもう戦えん…『儀式』はここで終わりだな」

 

バーゲストはカーリーに静かにそう告げた、しかし…

 

「いや、まだじゃ。『儀式』は相手の命を奪うまで続く…先ほどティオナが邪魔をしなければ、『儀式』は完了だったんじゃがのう…」

 

「…私に、バーチェを殺すつもりは無い…」

 

「そうか…ならば、お主を闘国(テルスキュラ)に連れて帰る」

 

「…何?」

 

「バーゲスト、お主の事が欲しくなった、お主ならば、必ずや妾が求める存在へそう『最強の戦士』へと…!」

 

「成れんさ、私は…」

 

「───」

 

「私は…『戦士』では無い…私は…『騎士』だ…強くあるのは…自分の為では無い…大切な…人の為だ…だから…わたし…は…」

 

ドサリ…

 

「バーゲストっ!!」

 

そこまで言ってバーゲストは地に倒れた。直ぐにティオナが駆け寄り、バーゲストを抱き抱える。

 

「…で、あるか…」

 

「ティオナ!!」

 

「あ、アイズ!!」

 

「ウチもいるでー…何やティオナ、案外無事や…って、バーゲストたん!?ボロボロやん!?え、どゆこと!?」

 

ティオナの居場所を突き止めたアイズとロキが海蝕洞に入ってくる。アマゾネス達が直ぐに戦闘を始めようとするが…

 

「やめろ、お主ら」

 

「カーリー…」

 

「もう良い…残念ながら、此度はコレでしまいじゃ」

 

アマゾネス達はその言葉を聞いて拳を下ろす。

 

「え、何?ホンマ何があったん?」

 

「ロキ!それよりも今は早くバーゲストの治療を!」

 

「せ、せやな!アイズたん、ポーション!」

 

「分かった!」

 

「お主らも、早くバーチェを治療してやれ」

 

「わ、分かった…」

 

こうして、ロキ・ファミリアとカーリー・ファミリアの抗争は幕を閉じたのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……知らない天井ですわ…いや、よく見たら泊まっている宿の天井ですわね…」

 

バーゲストは目が覚め、窓の外を確認すると、なんとも気持ちの良い日差しが部屋に差し込んできていた。

 

「…っ…ふぅ…まだ所々身体が痛いわね…しかもなんだか身体が重…ん?」

 

バーゲストが違和感を覚えて、ふと自分にかけられた布を捲ると…

 

「……え゛」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ、ニョルズ、カーリーは、今回起きた抗争の事や食人花の事で話していると、カーリーは絶望した感じの表情を浮かべていた…理由は、アルガナが救援に来たフィンに倒されてフィンの事を好きになったり、他のアマゾネス達もガレスとかにやられて皆恋する乙女となってしまい、以前の様な牙がすっぽり抜けてしまった為である。

 

「やっぱ雌なんじゃなーあやつらも…もう皆使いものにならぬわ…」

 

(うわっ、死んだ魚みてーな目をしてる…)

 

「ま、自業自得やな〜…取り敢えずコレで『儀式』も無くなりそうやし、ティオネらの心残りもこれで大丈夫やな」

 

「うぅ、妾の楽園が〜……大体……っ!」

 

カーリーはプルプルと震え、机をバンッと叩きながら立ち上がると、ある方向を指差す。

 

「妾が一番ふざけんなって思ったのアレなんじゃが!?」

 

「…うん、ウチもアレはマジで分からん」

 

「だな、どうしてそうなったって感じだ」

 

三神がそう言いながら見つめる方向には…

 

「いや、だからその、私達は女同士で…」

 

「騎士とはお堅いのだな、こっちでは当たり前だぞ」

 

バーゲストに必死に迫るバーチェと、苦笑しながら丁寧に対処するバーゲストの姿があった。

 

「嘘吐けバーチェ!!アマゾネスの女が女を好きになるなぞ闘国(テルスキュラ)どころか世界規模で前代未聞じゃぞワレェ!!」

 

「そうはならんだろ〜…」

 

「なっとるやろが〜い…」

 

そう、何故か、本来ならアマゾネスは自分を負かした異性にしか恋愛感情を抱かない筈が、バーチェは何故か同性のバーゲストの事を本気で好きになったようで、コレにはカーリー達もビックリ。「起きたら速攻でバーゲストのいる宿に向かって夜這いならぬ朝這いをした。反省も後悔もしていない」との事である。

 

「いや〜…けど百合ってええなぁ、ウチも間に挟まったりしてみたい…」

 

「それやったら多分お前天界に帰る事になるぞ」

 

「え、ウチってそれ(百合の間に挟まる男)と同じ枠なん?」

 

「うん」

 

「これからどうすれば良いんじゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「バーゲスト、これから一緒にお昼でもどうだ」

 

「テ、ティオナ達も一緒なら…」

 

まぁ、変な感じになったが、これにて閉演…太陽と月のデュオは黒犬の遠吠えで掻き消されたがそれが好きだという人も、居たのだろう。

 

 

 

 

 




久しぶりに書くと何かめっちゃ描写が難しい気が…取り敢えず港町編はこれにて終了ですね…やっと次回からウォーゲームに入れる…いや、私が悪いんですけど…はい…これからもこんなダメダメな駄文作者で良ければ、よろしくお願いします…それでは次回もお楽しみに…
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