ダンジョンにバゲ子がいるのは間違っているだろうか? 作:猪のような
神の宴でアポロンからの宣戦布告を拒否したヘスティア達は、翌日、ホームでいつもと変わらぬ朝を過ごしていた。
「
「ああ。ルールを取り決めた上でぶつかり合う総力戦さ。勝った方は負けた方の全てを奪う……団員からお金から、何から何までね…アポロンめ、ウチのファミリアに居るのが二人だけと分かっててあんな手を…」
ベルとバーゲストはダンジョンに行くための準備を済ませ、ヘスティアと共に階段を登る。
「今日はダンジョンを潜ったら、真っ直ぐ帰って来ましょうか、バーゲストさん」
「ええ、そうしましょうか…ん?」
「うん、ボクもバイトを早く切り上げ…って、バーゲスト君?どうしたんだい?」
「……外にアポロン・ファミリアがいます」
「え!?」
「本当かい!?」
バーゲストは地下から上に上がり、教会の中からスンスンと匂いを嗅ぐ。
「昨夜、黒犬達を予めホームの警護にあたらせておいて正解だったわね…黒犬達が危険を知らせていますし、教会を囲むように人の匂いがします…どうやら神アポロンは、是が非でも私とベルの事が欲しいみたいですわ」
「ぐぬぬ…アポロンめ…」
「ど、どうしますか?大人しくホームの中に籠ってます?」
「いえ、不自然に思われて教会に魔法でも放たれたら堪ったものじゃないわ…ヘスティア様、ここから選ぶ道は三つです」
「なんだい?」
「先ず、アポロン・ファミリアとの戦闘は必須ですわ。そこからの行動が肝心です。この状況を終わらせる為の選択肢に先ず一、ギルドに逃げ込む。二、アポロン・ファミリアのホームに行って
「…バーゲスト君はどれが良いと思う?」
「二ですわね…ギルドに逃げ込んだところでその場凌ぎにしかなりません、それにこの場でアポロン・ファミリアと派手にやり合えば私達もギルドからペナルティを受けるかもしれません。こうなってしまってはもう、真正面からやり合うしかないと思いますわ」
バーゲストの言葉にヘスティアは考え込み、ベルは不安そうな表情でそれを見守っている。
「…バーゲスト君は、アポロン・ファミリアとの戦争遊戯…勝てると思っているのかい?」
「勝てます」
「!」
バーゲストの即答にヘスティアは目を見開く。
「私とベルでしたら、必ず」
「……分かった…けれど、一先ずギルドに向かおう」
「ギルドに?」
「バーゲスト君を信じたいけれど…ボクは戦争遊戯を受ける事は出来るだけ避けたい。何があるか分からないし…その場凌ぎでも良いから、一旦ギルドに行って落ち着こう」
「…分かりました、では、少々お待ちを」
「ヘスティア・ファミリア…早く出て来い……っ!」
ヘスティア・ファミリアのホームを包囲する部隊の指揮を取っているアポロン・ファミリアのエルフ、リッソスはベル達がホームの扉から出て来るのを待ち構えていた。
するとホームの扉が開き始め、魔導師に魔法を放つ合図を送る為に手を挙げると…
「う、うわぁぁぁぁぁ!?」
「っ、どうした!?」
「こ、コイツらがいきなり…!」
リッソスの後方に居た魔導師達は突然黒犬の奇襲を受け、準備していた魔法が解除されてしまう。
「な、何だこの黒い犬どもは…まさか…!」
リッソスはホームの方に振り返ると、既にベルとヘスティアを乗せた黒犬と、バーゲストを乗せた黒犬がホームから離れ始めていた。
「くっ、気付かれていたのか…!奴等を追え!」
「ワオォォォォォォォン!!」
「なっ…」
「リッソス!教会から黒犬達が…こっちに向かってくる!」
「ぐっ…おのれ、ヘスティア・ファミリア…!」
「先ずは順調だな、このままギルドに向かうぞ」
「はい!」
「えっとえっと…次は右だ!」
ヘスティアが地図を見ながらギルドの最短ルートを指示する。道が狭まり、建物の壁と壁に挟まれながら黒犬は疾走する。
「この黒犬達なら、アポロン・ファミリアの人達も追いつけないですよね?」
「追いつけはしない。だが、アポロン・ファミリアは我々がギルドに向かう事を予測し、ありとあらゆる場所で待ち構えている筈だ、例えば…」
その瞬間、上から矢が迫り、バーゲストは瞬時にそれを剣で弾く。
「早速出て来たな」
「ちょっと何よあの犬、聞いてないんだけど!?」
「だから言ったのに〜!」
バーゲストが屋根の方に目を向けると、アポロン・ファミリアの一員であるダフネとカサンドラが複数の団員を引き連れながら屋根伝いに追ってきていた。
「【鎖は我が猟犬達、我が敵を捕らえる牙となれ】【チェーン・ハーディング】」
「弓兵、黒犬の脚を止めろ!」
アポロン・ファミリアの団員達が弓矢を放つが、バーゲストは当たりそうな矢を鎖で弾き、黒犬達はどんどんダフネ達を引き離す。しかし…
「二人とも!前にもいるよ!」
「っ!邪魔だ!」
「【ファイア・ボルト】!」
バーゲストは前に現れた敵に対して剣先を向け、炎を放ち、ベルも魔法を放った。しかし…
「!サラマンダー・ウール…!」
前方に居たアポロン・ファミリアの団員はサラマンダー・ウールを身に纏っており、二人の攻撃を防がれてしまう。黒犬も脚を止め、ベル達は再び包囲される。
「ヘスティア・ファミリアの団員は二人とも炎を扱うって聞いたから、サラマンダー・ウールを用意してたんだけど、どうやら正解だったみたいね」
屋根の上からダフネが脚を止めているバーゲスト達に対してそう言う。
「ふん、しっかり準備してきたのだな、少し感心したぞ」
「感心している場合かいバーゲスト君…!ここからどうするんだ…!?」
「……(私が足止めして二人を逃す…いえ、ダメね…私が足止めするならヒュアキントス…彼を足止め出来ればベルだけでもヘスティア様を連れてギルドに行ける…恐らくリリ達も向かって来ている筈…ならばこの場は…強行突破するしか…!)」
バーゲストが剣を握りしめ、ベルに指示を出そうとした瞬間…
「ふん、随分と小賢しい真似をしてくれたようだが、それもここまでか?ヘスティア・ファミリア」
「なっ…!?」
「!ヒュアキントスさん…!」
なんとバーゲスト達の真正面に立っていたサラマンダー・ウールを身に纏う部隊の後ろから、ヒュアキントスが現れる。
「どうする?私としてはここで貴様らの腕を一二本は切り落としても良いのだが」
「ちょっと、やめなよヒュアキントス…大人しく降伏してくれない?私達もこれから仲間になる子に手荒な真似はしたくないんだけど」
「それは…って、バーゲストさん?」
喋ろうとしたベルをバーゲストが手で静止する。バーゲストは頭の中で思考を巡らせていた。
(何故ここにヒュアキントスが…?出て来るのはもう少し後だと思っていたのだけれど…いえ、落ち着きなさい。むしろこれは好都合。匂いの多さからしてもアポロン・ファミリアの戦力が大分ここに集まっている…それに)
バーゲストは空に目を向けると、太陽の光を遮ろうと雲が動いていた。
(この後、暫くは太陽が見えなくなる。そうなれば聖者の数字は使えなくなる。ベルならこの後出てくるソーマ・ファミリアの団員にも対処出来る筈だわ、なら…!)
「ベル!ヘスティア様!!黒犬にしっかり掴まれ!!」
「「っ!?」」
二人はバーゲストの言葉に驚きつつも、言われた通りに黒犬にしがみ付く。
「はわぁっ!ベル君がボクを覆い被さるように!」
「す、すみません神様!」
「いくぞっ!!」
「「えっ、ちょ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
バーゲストが二人の乗る黒犬に鎖を巻き付けると、思いっきり上に引っ張りあげ、二人はギルドの方へ飛んでいく。
「ば、バーゲスト君!君はっ!?」
「私は後で合流します、二人は早くギルドに!」
「っ…絶対合流するんだぞ!次会ったら説教だからなー!!」
ヘスティアがそう叫びながら遠ざかっていくのをバーゲストは少し見つめ、そして正面に立つヒュアキントスを見据える。
「ふん、無駄な足掻きを…」
「ヒュアキントス、私達は【リトル・ルーキー】を」
「構わん、奴は後で良い。それより、コイツを先に潰す方が後から楽だ」
「ほう、吠えたな【
「吠えたのはどちらだ、Lv.2になったばかりの分際で…やれお前達!!」
ヒュアキントスの号令により、バーゲストに向けて一斉に矢や魔法が放たれた。しかし、バーゲストはそれを物ともせず、ヒュアキントス達に立ち向かう。
しかし、バーゲストはこの時自分が取った選択が間違いだったとは、今は知る由も無かった…
「バーゲストさん、大丈夫でしょうか!?」
「信じるしかない…!助けに戻るにしても、ボクが居るんじゃベル君の邪魔になる。早くギルドに向かうぞ、ベル君、黒犬君!」
「はい!」
「ワン!」
あの後着地したベルとヘスティアはギルドに向けて黒犬を全力疾走させていたが、再び目の前に冒険者達が現れる。
「っ!あれば…?」
しかし、よく見れば服にあるファミリアのマークがアポロン・ファミリアのマークでは無い事にヘスティアが気付くと…
「キャウン!」
「ぐっ!」
「うわっ!?」
二人を乗せた黒犬の身体に矢が突き刺さり、黒犬は倒れ、二人は投げ出される。ベルがヘスティアを抱き抱えて着地する。
「神様!大丈夫ですか!?」
「う、うん…けど、バーゲスト君の黒犬が…」
バーゲストの黒犬は最早走れそうな状態では無く、ベルはヘスティアをお姫様抱っこする。
「べ、ベル君!?」
「神様、しっかり掴まってください!」
ベルはヘスティアを抱えながら冒険者達を避け、突破し、ギルドに向かう。
「よし、この調子なら…!」
「ああ、ギルドに…っ!?」
狭い脇道を走り抜け、追手を蹴散らし、撒きながら進むと…ガシャリ…と音がした。
「っ!」
ベルは脚を止めると、少し先にある曲がり角から音の正体は現れた。
「ベル君…!」
「神様、退がっててください」
ベルはヘスティアを下ろして退がらせると、目の前に現れた存在を見据える。それは、体格はバーゲストに並び、重厚な鎧を全身に身に纏い、剣と盾を持っていた。その存在は、ある世界ではこう呼称している。
─────粛正騎士と。
「………」
粛正騎士はゆっくりとベルの方へと歩み、そして…
「……っ、ぐっ!?」
素早く上から剣を振り、そして素早く下から上へと切り返す。ベルは最初の一撃目はなんとか防いだが、次の二撃目を防ぎきれず、胸に切っ先が及ぶ。
「ベル君っ!!」
(強い…!夢であったあの騎士ほどじゃ無いけど、物凄く…!)
その後も粛正騎士はベルに剣を振るい、ベルは防御だけで手一杯で反撃出来ず、防戦一方になる。
「くそっ【ファイア・ボルト】!」
「……」
ベルが下がって魔法を放つが、粛正騎士はそれを盾で防ぎながらベルに接近し…
「がはっ…!」
ベルにシールドバッシュを喰らわせ、建物の壁に叩きつけると、ベルは血を吐き出しながらダラリと座り込んでしまう。
「はあっ…はあっ…」
「ベル君!しっかりするんだ、ベル君!」
ヘスティアがベルに駆け寄ると、ベルは血だらけでボロボロになっており、もう戦えそうに無い。そして粛正騎士が二人に近づこうとすると…
「…!」
突如、遠くに立っている塔の方から粛正騎士に矢が三本迫り、騎士はそれを盾で防ぐ。そして二人から一旦距離を取ると…
「おい、面白そうな事をやっているな?」
その言葉に粛正騎士が動きを止め、振り返ると、そこにはタケミカヅチ・ファミリアの桜花、命、千草の三人が居た。
「三人とも、どうして此処に…」
「無事か、ヘスティア、ベル…は、無事そうでは無いな…」
「ミアハ!という事は、今の狙撃はナァーザ君か!」
ミアハがベルにポーションを浴びせると、ベルの怪我が治っていく。
「うぅ、み、皆さん…」
「ベル殿!ここは自分達にお任せください!」
「ああ、お前達は先に行くのだ」
「け、けど…!」
ベルは自身を完膚なきまでに叩きのめした粛正騎士を相手すれば皆が無事じゃすまないと思い、この場から離れるのを躊躇う。
「ベル様!」
「大丈夫か!?」
「リリ、ヴェルフ!」
そこにリリとヴェルフの二人が現れる。粛正騎士はベルの方に向かおうとするが、ナァーザの狙撃が放たれ、咄嗟にそちらを防ぐ。
「行って、ベル…!」
「ベル様!ここは皆さんに任せて、行きましょう!」
「…分かった。皆さん、気をつけてください!」
ベル達はその場を離れ、粛正騎士が追おうとするが…
「どこをっ!」
「見ているっ!」
桜花と命が粛正騎士の背後から左右に切り掛かると、粛正騎士は背後を見ずに斧を盾で、刀を剣で受け止め、押し返す。
「「ぐっ…!」」
粛正騎士は既に見えなくなったベル達の方を少しだけ見つめると、振り返り、桜花達へと構えた。そんな粛正騎士にナァーザは再び矢を放とうとした瞬間…
「…っ!?」
ドゴォン!!と音が響き、ナァーザが居た塔の頂上部分が崩れる。
「ナァーザ!!」
ミアハがナァーザの方へと駆け出すと、崩れていく塔の一部に紛れてナァーザが落下していくのが見えた。
「今のは…」
「千草殿、見えましたか!?」
「うん…今のは、魔法じゃない…今の攻撃は…弓矢…!」
「ナァーザさんの居た塔が…!」
「心配だが、今は自分の事で精一杯だ!先を急ぐぞ、ベル!」
「…うん!そういえば、アルトリアさんは?」
「あの人はバーゲスト様の方に向かいました。直した盾を届けに行くって」
「そっか…っ!皆、来るよ!」
ベル達の前方に冒険者達が現れ、戦闘態勢に入る。リリルカが後方でヘスティアを守りながら、ベルとヴェルフを前に出して突破していると、ヘスティアは倒した冒険者達のマークを見る。
「…やっぱりだ」
「神様?どうしたんですか?」
「サポーター君、コレを見てくれ」
「?何ですか…っ!?こ、このエンブレムは…!」
「ああ…ソーマ・ファミリアだ」
「!おいおい、ソーマ・ファミリアって…」
「リリの所属ファミリア…?どうしてソーマ・ファミリアが、アポロン・ファミリアと一緒に僕達を…」
「ここに居たか、アーデ」
『っ!!』
襲って来たのがソーマ・ファミリアだと判明し、何故ソーマ・ファミリアが襲ってきたのか不思議に思っていると、屋根の方から声が聞こえ、ベル達はそちらを向くと、そこにはメガネを掛けた男の冒険者が居た。
「ザニス…様…」
「元気そうで何よりだ。お前は死んだと、聞かされていたからなぁ」
「リリ、あの人は?」
「…ソーマ・ファミリアの、団長です…ザニス様、なぜです…なぜアポロン・ファミリアに協力をっ!?」
ザニスはリリルカの問いに冷静に答える。
「依頼されたのは勿論だが、我々には、この争いに参加する理由がある」
「理由…?」
「お前を取り戻すためだ、アーデ」
「っ!?」
「リリを、取り戻す…?」
「お前はかけがえのない同胞だ、他のファミリアに奪われたままにはしておけん。正義は、我々にある」
「そんな…私のせいで…?」
「おいリリ助!あんな奴の言葉を真に受けるな!」
「安心しろアーデ。お前を騙し、脅し、利用してきたヘスティア・ファミリアは間もなく壊滅する…」
「なっ!僕はリリを騙してなんか…」
「黙れ【リトル・ルーキー】!貴様が何と言おうがアーデは我々のファミリアに帰ってきてもらう。その為に、お前達ヘスティア・ファミリアは邪魔なのだ!」
「っ…」
リリルカは考える。どうすれば良いのかを、ベル達がソーマ・ファミリアの襲撃を受けない為には…
「まぁ、しかし…大人しくアーデをこちらに差し出すのならば、我々がお前達と争う理由は無くなるなぁ?」
「っ!!」
「サポーター君、ダメだよ」
「…ヘスティア、様…」
「君、今自分を犠牲にしようとしただろ」
「……」
「嘗めるなよ、ベル君も、バーゲスト君も、半端な気持ちで君を助けたんじゃない。あり得ないけれど、君がここで犠牲になる事があったら、ベル君もバーゲスト君も、君を助けに行くだろうね」
「………」
リリルカにとって、ベルとバーゲストは自身を救ってくれた命の恩人だ。その恩人に傷ついて欲しくないのは当然だ。しかし…
『僕、リリだから助けたかったんだ。リリだから居なくなってほしく無かったんだ』
『お前を虐げる全てから、お前を守ろう…だから、これからも私達の為に、頑張ってくれるか?』
あの時、二人は何故、自分を助けたのか、リリルカは思い返す。
「さぁ、アーデ?どうする?」
「…私は…」
「リリ…!」
「私は…帰りません…!」
「…聞き違いか?もう一度言ってほしいのだが…」
「っ…ですから、リリは…もう、ソーマ・ファミリアには戻りません!!」
「リリ…!」
「よし!よく言ったリリ助!」
「…本気か、アーデ?」
「ええ、本気です!リリの居場所はもう、ベル様やバーゲスト様のお側だとリリが決めたんです!私はもう、ソーマ・ファミリアに戻りたくありません!ですから、私の事は諦めてください!!」
「……そうか、残念だ、アーデ…お前がそこまでヘスティア・ファミリアに毒されているとは…」
ザニスはそう言うと指を鳴らす。すると…
「なっ…!?」
「おいおい、ふざけろ…!」
ベル達の居る道の脇道から、ベル達を前後挟む様にして粛正騎士が4人現れる。
「少々痛い目に遭わなければ…お前の目を覚ます事は出来ないようだ…」
「そんな…」
「悲しいが、コレもお前のためだ…行け」
ザニスの言葉で粛正騎士達が、ベル達へと歩みを進み始めた…
「…!あの塔…」
ナァーザの居た塔の頂上が崩壊した頃、バーゲストはアポロン・ファミリアの殆どを一人で受け持っていた。
(魔法の光は見えなかったわ…一体何が…それに…)
バーゲスト自身を囲んでいるアポロン・ファミリアの冒険者達の数を見て疑問を抱く。
(数が多すぎる。いつの間にかホームを囲んでいた部隊もいるし、変ね…何か嫌な予感がする…)
バーゲストの中に、少しずつ不安が生まれていく。それは動きにこそ出ないが、バーゲストは直ぐにこの場を離れてベル達と合流したがっていた。すると…
「バーゲストさん!」
「アルトリア!何故此処に…」
「他の二人はベルさんの方に行ったので、私だけでもって…盾です!」
アルトリアから盾を受け取ったバーゲストは、直ぐにそれを装着する。アルトリアも杖を構え、アポロン・ファミリアと向き合っていると…
「ちっ…しぶとい奴だ…それに援軍も来た…おい!アレはまだか?」
「もう来たってよ」
「なら良い、今すぐ出せ」
(アレ…?一体何を……っ!?)
バーゲストは『アレ』と呼ばれるものが現れた瞬間、思考が一瞬停止した。
(粛正…騎士…!?何故、アレがオラリオに…!?)
「ば、バーゲストさん、あの騎士、何か凄く強そうですけど…」
バーゲスト達の目の前に現れた粛正騎士は三人。いずれも槍斧を持っており、バーゲスト達に向けている。
「……何だ、その騎士達は?」
バーゲストは今までとは違い、明らかに動揺した様子でヒュアキントスに問う。
「これか?コレはゴーレムだ。最近アポロン様が仕入れてな、それなりの額はしたそうだが性能は折り紙つきだ…癪だが、私よりも強い」
「だね、多分さっきの塔を崩壊させたのもコレの仕業でしょ?一体どこでこんなの作ったんだか…」
「まさか…!」
バーゲストはギルドに向かったベル達の方を向くと、表情に焦りが見え始める。
「ば、バーゲストさん?」
「アルトリア、今すぐここを離れてベル達と合流っ!!」
ガギンッ!!
バーゲストが話していると粛正騎士達は動き出し、バーゲストは粛正騎士達の攻撃を防ぐ。
「アルトリア、行けっ!!」
「け、けど、バーゲストさんが…!」
「私に構うな!ベル達が危険かもしれん、頼む!」
「っ…!」
アルトリアは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらバーゲストに背を向けて、走り出した。
「リッソス、お前達は奴を追え!」
「了解」
「待てっ、ぐうっ…!」
バーゲストは粛正騎士三人の連携攻撃と、他の冒険者の攻撃によりアルトリアの援護が出来ない。
(どうする、角を抜く!?けれど、この状況で街に被害を出さない自信が無い!けど…!)
「迷っている暇は、無い…!」
バーゲストは角を引き抜き、ガラティーンを構える。
「ひっ、ダフネちゃん、アレ…!」
「自分の角を引き抜いて…剣にした…!?」
「ふん、全くどこまでも気味が悪い…アポロン様は何故このような輩を…」
「貴様等の事なぞ、どうでもいい…だが…!」
周囲に赤雷が走り、ガラティーンが黒い炎を纏う。
「お前達は、邪魔だ…!!」
(お願い、ベル、ヘスティア様、皆…どうか、無事で…!)
「ぐっ…くそっ…」
ヴェルフは地面に倒れ伏し、粛正騎士に踏みつけられていた。
「べ、ベル様…」
リリルカは左肩から血を溢れさせており、粛正騎士に髪を掴まれて持ち上げられている。
「はぁ…はぁ…くっ…」
「ベル君…!」
ベルはボロボロになりながらも、二人の粛正騎士を相手取っていたが、限界を迎え、膝を着く。ヘスティアがベルに寄り添うと、粛正騎士が二人の前に立って剣を振り上げる。
「ぐっ…!」
ヘスティアがベルを守る様に抱きしめる様子を見て、ザニスは笑みを浮かべる。
「残念だったな、アーデ。お前が素直に戻って来れば、こんな事にはならなかったものを…」
「や、やめて…ください…」
「もう遅い…やれ」
ザニスのその言葉で、粛正騎士は剣を振り下ろした。
はい、如何だったでしょうか。アポロン・ファミリアは全然怖く無いと言ったな。アレは嘘だ。いつから、アポロン・ファミリアとの戦いは楽勝だと錯覚していた?という訳ではい、粛正騎士の皆様に登場していただきました。私が考えついたアポロン・ファミリア強化案がコレってな感じでやっていきますので、次回もお楽しみに〜。