IFルートは暗く、淡々と物語が進んで行きます。
前提として「闇の書の完全破壊の際はやても命を落としている」というものがあります。
これらを踏まえてどうぞ。
「霧島八雲……関わらないでくれると嬉しい」
あれから6年と少し、あの日僕は全てを失った。僕は何一つ守れなかった。
だから、しがらみも人の付き合いも全て棄てた。突き放してもアイツらは挫けなかったけど、俺はそれを無視し続けた。
僕は今、死に場所を探している。僕は罪人だから、守って戦って、死んでいく。それが俺の贖罪。出来る事なら早く死にたい。でも、なまじ僕が強いから、そう簡単に死ねない。ならば燃え尽きるその日まで戦い続けるだけだ。
ちょっとした事でISが動かせる事が分かって、ここIS学園に入れられた。
小中と不登校で、管理局の仕事だけをしてきた。休む事は僕自身が許せない。だから戦い続けた。今回の事でも無視して、仕事をするつもりだったけど、管理局の上の方が消化していない数年分の有給+αを使わせるために、アリサに色々手回しして、僕はここに入る事になった。
死ぬのがちょっと遅くなっただけだ。
「更識楯無よ、よろしくね、霧島君」
彼女は生徒会長、更識楯無。アリサが頼んで僕のルームメイトにしたらしい。……アリサは何を考えてこの人を僕のルームメイトに選んだんだろう?
僕にはもう何もいらないのに。
「よろしくです、会長さん」
たった二年だ。それだけの関係。卒業して、忘れてくれればいい。
「よろしくです、会長さん」
私が彼、霧島八雲君の護衛に着くことになったのは、他ならぬ友人の一人で、彼を保護している、企業の社長令嬢、アリサ・バニングスの頼みからだった。
そして、挨拶の時、彼の眼は見た事も無い位、深く暗い眼をしていた。立場上、色々な人間を見て来たと自負する私でも見た事も無い位、深く暗い眼。そこには感情を読み取れなかった。
霧島君はクラスでも、誰とも話さないと、彼のクラスメイトであり、私の幼馴染の布仏本音ちゃんは言う。彼女は感情の機微に鋭いので、彼の事を「多分、世界のすべてに絶望した眼ってああいうのを言うのだと思う」と言っていた。
確かに、調べると彼は小学生の時に家族を事故で失っている。しかし、その後も普通に生活をしている。彼が決定的に変わったのは小学三年のクリスマス、それ以来、彼は学校にすら行かなくなったらしい。まるで、世界から関わりを絶つかのように……。
関わらないでくれと言ったけど、クラスメイトはそれを許さない。僕は何故かクラス代表に推薦されてしまった。とりあえず、男は珍しいからだと思う。
それに噛みついたのは一人のイギリス人。もう一人の男子が何かを言っていたけど、僕にとってはどうでもいい。
イギリス人の方は何も言わない僕を「軟弱」だとか言ったけど、どうして喋らなければ軟弱になるのだろうか? その辺がよく分からない。無視を決め込むと勝手に逆上した。さらに訳が分からない。自己紹介の時に関わらないでくれって言ったのに。
結果的にクラス代表を決める戦いをする事になった。
これに近い事が別の時にもあった。もう一人の男子が話しかけた時の事、僕はいつも通り無視をしていた。すると、彼の横に居たポニーテールの女子が何故かキレた。人と関わりたくないと言っているし、今まで誰かに話しかけられても無視をして来たんだから、それぐらい分かれと思う。その女子は竹刀を突然、取り出し振り回したけど、そんなんに当たるほど、僕は甘くない。魔力で拳にバリアを張って、迎撃、竹刀をへし折った。もちろん、周りが見ていて正当防衛だったから、おとがめは無しだ。
しかも、都合よくほとんど話しかけられなくなった。ただ一人、
「きーりん、一緒にご飯を食べようよ~」
僕に妙なあだ名を付け、間延びした喋り方をする女子だけ。どうして、彼女は僕なんかに話しかけるんだろう。それが一番分からない。
新学期が始まって数日、今年の目玉の男子生徒二人の評価はたった数日でほぼ確定した。織斑一夏君は「イケメン」「男らしい」霧島八雲君は「近付きたくない」「気味が悪い」と両極端になった。
しかし、そんな評価すら、彼は意に返さない。
周りに何を言われようが、全く気にしない、いつも無視をする。彼には感情があるのだろうか? 私は本気でそう思う。
さらに、気味悪さに拍車を掛けたのは、篠ノ之博士の妹、篠ノ之箒ちゃんが起こした暴力未遂事件。
話しかけても返事をしない霧島君に怒った彼女は何故か持っていた竹刀で彼を攻撃。しかし、霧島君はあろう事かそれを拳で殴り、へし折った。
そもそも、竹刀はそう簡単に折れないし、折れたとしても手は重大な怪我を負うだろう。その事件の後、彼は何事も無かったように授業を受けている。つまりは無傷だったのだ。
この一件で、彼に関わろうとする人間はほぼ皆無になった。例外は本音ちゃんだけ。彼女曰く「なんだかほっとけないんだ~」との事だ。
僕はあの日から不眠症だ。たとえ薬を使っても寝れない。寝ようとすると、悪夢を見てしまう。僕が守れなかった人達が目の前で消えていく夢。それにうなされて目が覚める。睡眠時間が一時間程度なんて当たり前だ。だから、僕の目の下の隅は取れた事は無い。
僕はこれを受け入れている。これは僕が受け入れるべき罰なんだから……。
彼と生活していて気付いた事がある。彼は夜、全くと言っていいほど眠っていない。私は寝付が悪い方なので、ベットに入っても中々眠りに入れない。そうしている時、横の霧島君はうなされて、起きて、そして、たまに泣いている。うなされている言葉と泣いている時に呟いている言葉は全部「ごめんなさい」。
彼は一体、何に謝っているのだろうか? 一つ分かるのは彼がその夢を長年見ているという事。それは、刻み込まれた眼の下の隅が如実に語っている。
入学から一週間、僕はアリーナでイギリス人と戦っていた。最初は相手の実力を見るために回避に専念してたんだけど……大口を叩いた割に大した事がない。6年半ひたすら戦い続けたイカれた僕と比べるのは間違っていると思うけど。
空戦のスキルを全て活かせるとは言わないけど、8割位は活かせている。生半可な実力じゃ僕を落とせない。
それと、「逃げてるだけの臆病者」と声高に侮辱するけど、英語には様子見って言葉がないのか? ……もういいや、終わらせよう。
てっとり早く終わらせるために、僕はイギリス人の武器を破壊した。まあ、こんなものだろう。
もう一人の男子は素人。しかも剣一本の近接特化だったから、距離に入れさせず遠距離で倒した。猪を倒す事は難しくない。
そして、嬉しい事に実力がありすぎるせいでクラス代表からも外れる事になった。担任にお礼を言いたい。
私は一年一組のクラス代表決定戦に来ていた。今年の入試主席や男性操縦者の実力を測るために。
普通に考えたら、入試主席でイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットちゃんが勝つのが当たり前。私を含め、見に来ていた大半の生徒、教師の意見だろう。しかし、その予想は裏切られた。
霧島君が勝ったのだ。一方的と言ってもいい内容で。
最初彼は回避に専念していた。オルコットちゃんはそれを「逃げているだけの臆病者」と罵ったけど、どう考えても彼のそれは様子見、相手の実力を測るための観察だ。観察している彼の眼は冷徹と言う言葉がぴったりの冷たい眼だった。
そして、彼は攻撃に転じた。攻撃してきたビット『ブルーティアーズ』のレーザーを持っていたエネルギーライフルで迎撃。点と点で迎撃した技術でも十分凄いのだけど、彼は同時に二発撃っていた。一発目でレーザーを迎撃、その後ろの二発目でビットを破壊。全ての武器を同じ手段で壊してしまった。
もし私が同じ事をやろうと思っても出来ない。悔しいけど多分、彼の実力は私を超えているだろう。戦い方次第では織斑先生すら超えるだろう。
どうして、彼がそんな強さを持ったのか、これまでの事も含めて。興味を持った。