クリスマスには甘い話が良く似合う!
「「「メリークリスマス!」」」
僕が訓練から帰ってくると、部屋は装飾されていて、しかもミニスカサンタが三人いた。
「メリークリスマスは良いんだけど、三人ともミニスカートで寒くないの?」
確かに寮の中はばっちり空調管理をされていて、そこまで寒くは無いけど、それでも結構露出度の高い服だから寒いと思う。
「八雲、開口一番それを聞く?」
「だってさ、アリサ、外凄い寒かったもん」
「アンタが寒がりなだけでしょうが。だから、寒くなってきたら炬燵を寮に持ち込んで」
僕は非常に寒がりだ。と言うより中学くらいの頃から寒暖差に弱くなった。だから、一気に気温が上がったり下がったりすると辛い。
「三人で買い物に出かけて帰ってきたら、六畳の畳に炬燵、箱に一杯のみかんがあったものね~」
「まあ、日本の冬らしいと言えばらしいけどね」
僕としてはやっぱり日本人として冬を過ごす上で炬燵は欠かせない物だと思うし、炬燵にはみかんだと思う。
この冬は炬燵で勉強したり、そのまま居眠りをしてしまって、起きたら三人に抱きつかれていたり、皆で鍋をつっついたり、その時に食べさせ合いをしたりと、まあ色々あった。
「僕がそう言ったのはさ、僕の為にやってくれたんだろうけど、それで風邪ひいたら嬉しくないんだよ。それが心配なだけだよ」
こんなにかわいいミニスカサンタを見れた事は確かに嬉しい。でも、自分の体にも気を使ってほしい。まあ、お前が言うなって言われそうだけどね。それはそれとして、僕にとっては皆と一緒に居るだけで幸せなんだから。
「……分かったわよ。これと同じ感じの長袖の上着もあるし、それを着るわ」
「下は炬燵に入るしね~」
「色々用意してあるから、食べよ?」
「そうだね」
あの後、クリスマスパーティーは途中でやって来た簪、本音、虚さんを交えて結構盛り上がった。
僕はクリスマスプレゼントとして手編みのマフラーを送った。今回が初めてだったけど、案外できるものだな。
ちなみに色はアリサがピンクっぽい赤、すずかが濃い青、刀奈さんが水色、簪が白めの水色、本音が黄色、虚さんが臙脂色にした。専用機を持っている四人はイメージがしやすかったけど、本音と虚さんは何色を使うか結構迷った。本音はこの前部屋にお邪魔した時の狐のキグルミパジャマの印象で黄色に、虚さんは一番落ち着いてるから大人っぽい色って事で臙脂色を選んだ。
ちなみに、練習の為に僕は自分用に白と黒のチェックで自分のを作った。
お開きになって、僕達四人は炬燵に入ってのんびりしている。
「はあ~、自分で淹れておいて言うのもなんだけど、暖かい緑茶美味しいな~」
「いやでも、八雲君の言う通り美味しいわよ。紅茶は虚ちゃんに軍配が上がるけど、緑茶とかの日本のお茶は八雲君の淹れてくれたのが一番よ。虚ちゃんにも教えているんでしょ?」
この部屋でお茶を出した時に教えて欲しいと虚さんに言われたので、美味しい紅茶の淹れ方を教えてもらう代わりに日本茶の美味しい淹れ方を教えている。今ではもう遜色ないレベルで淹れれる。虚さんのお茶は美味しい。
「そうだね~。ウチのお姉ちゃんも言ってたし、桃子さんも翠屋で働かない? って何度もスカウトしてたもんね」
「そんなのをいつでも飲めるんだから贅沢な話よ。……にしても、アンタ相変わらず暑苦しい恰好ね」
アリサの言った僕の格好と言うのはタートルネックの厚地のセーターに、マフラーを巻いてその上から綿入れ半纏を羽織っている。
「これが日本の冬の部屋着の正装だよ?」
「いや、部屋着の正装って……」
「寒いのが悪い。寒くなければこんな格好しないよ」
「寒い寒いって言ってるけど、八雲君暑いのも得意じゃないよね?」
「得意じゃないね」
傷痕を隠すために一年中長袖だから、暑くなる夏は苦手だ。
「じゃあ八雲君が好きな時期って何時なの?」
「そうですね……春は軽いけど花粉症があるから好きじゃない。夏は暑いから好きじゃない。秋は朝夕の寒暖差が激しいから好きじゃない。冬は寒いから好きじゃない」
「好きな季節無いじゃない!」
「無いね。でも、こうやって三人と一緒に過ごせるのならいつでもその時間が好きだよ」
「だーかーらー、そう言うのこっちの心の準備が出来てないから止めてって言ってるでしょ!」
「またまた、アリサ~」
「そう言って嬉しいくせに~」
刀奈とすずかはそういってアリサをからかう。それも相成ってアリサの顔がどんどん真っ赤になっていく。ちなみにからかってる二人の顔も赤かったりする。
「うう~……」
少し唸った後、アリサは炬燵に潜って、僕の元に飛び込んできた。
「アリサ⁉」
「二人にいじめられたから、慰めて」
普段は凄いしっかり者だから、そうは思わないけど、実は僕に甘える時に一番甘えるのはアリサだったりする。その次が刀奈ですずかは普段とあんまり変わらない感じ。
その代わり、アリサは一番甘えてくる回数が少ない。回数的には刀奈が一番多いかな? 人目を気にしないし。すずかはホント友達の延長線で付き合ったって感じで今までよりも色々近い距離感で接するようになったかな。しかも慣れてきたと思ったらさらに少しずつ近付けてくる辺り、器用だなと思う。
こういう事一つとっても人それぞれあるんだと思った。
「はいはい。何してほしい?」
「……ギュッて抱きしめて」
ホント、普段とのギャップでスゲー可愛い。このままお持ち帰り……ってここで一緒に住んでるんだった。
それに、三人と付き合いだして分かった。人っていうのは好きになった人のちょっとした事でもそれが可愛く思える。笑顔はもちろん、怒ってる時も落ち込んでる時もだ。まあ、落ち込んでるのはあんまり見たくないけどさ。
「……やっぱり、八雲に抱きしめられてると落ち着くわ」
「そりゃよかった」
そのままの状態で少し居ると、アリサから寝息が聞こえてきた。
「アリサ、炬燵で寝たら風邪ひくよ?」
僕はそう話しかけるけど返事は無い。……はしゃぎ疲れたのか?
「アリサちゃん寝ちゃったの?」
「そうみたい」
「二学期も終わって気が抜けたのもあるかもね。ふぁあ~……」
喋りながらもあくびをする刀奈。すずかも眠たそうだ。
「二人とも眠いのなら寝ちゃえば? 片付けは僕がしておくからさ」
「そうするわ」
「ゴメンね、八雲君」
「用意してもらって、楽しんだんだから片付け位はするよ。さて、まずは……」
僕はアリサをお姫様抱っこでベットまで運んで布団を掛けた。その後二人も寝るために着替えるので僕は片付けを始めた。
片付けを終えて、消灯時間も過ぎた事を確認した僕は寮の屋上にやって来た。
「叢雲、例の場所に頼む」
「了解」
僕は転移してとある場所に向かった。
向かった場所、そこは僕の地元の海鳴市に面している海上に僕はやって来た。
「はやて、約束は守るよ。メリークリスマス」
ここは闇の書事件の最終決戦があった所で、はやての最期の場所。
「君のお蔭で僕はまた歩き出せた。君のお蔭で新しい生きる意味も、今の幸せな時間も手に入れる事が出来た。……僕は君との約束を守れてるかな?」
僕とはやてだけの秘密の約束。それがあったから、今の僕が居る。……やっぱり、僕は弱いなあ。はやての約束に、アリサに、すずかに、刀奈に支えてもらわないと、進んで行けない。
でも、その弱さも悪い物じゃないと思う。強くて支えが要らないような人間ならこんな幸せな時間は手に入らなかっただろうから。
「……ここにはまた来年来るよ。これはレクイエム替わりだ。歌は上手くないけどさ。聖なる歌よ、響け、ホーリーソング」
普段、滅多に使わない魔法。誰も聞いていない、聖なる歌が聖夜の空に響いた。
「寒っ、さっさと寝ますか」
寮に戻って、ばれない様に早く、自分の部屋に戻った。
「どこ行ってたの?」
部屋のドアを開けたら、アリサが仁王立ちしていた。
「いや、ちょっと海鳴に」
「……ああ、今日はアンタにとって大切な日だものね」
一言で僕の事を理解してくれて嬉しいよ。
「アリサは目が覚めたの?」
「着替えずに寝ちゃったから寝苦しくてね。それで起きたらアンタが居ないんだから、何かあったのか心配だったのよ」
「……ゴメン」
心配をかけたのなら素直に謝ろう。それだけ僕を大切に想ってくれている証だから。
「でも、アンタらしい理由で良かった。管理局の仕事ならともかく、浮気だった暁には……」
「暁には?」
「アンタが破産させるまで三人で散財するわ」
「怖っ! まあ、そんな気はさらさらないよ。僕は器用じゃないと思ってるから」
「三股掛けてるのに?」
「……それを言われると弱いなあ」
「まあ、でも八雲はそんな事しないわね。私やすずか、刀奈の悲しむ顔を見たくないって真顔で言う奴だし」
「分かってくれて、何よりです。んじゃ、寝ますか」
「そうね。……ねえ、八雲」
「ん? まだ何かあんの?」
「その……お休みのキ、キスをして欲しいの……」
……ヤバい、普段三人の中で一番こういう事を恥ずかしがるアリサからこんな積極的な言葉が聞けるとは。これがクリスマスの魔力なのか? 二人っきりなら確実に押し倒しているなあ。今だけはこの三股状態に感謝だ。……少し残念な感じもあるけど。
「意外。そう言うのって言い出すの大体刀奈だったし」
「い、良いじゃない、クリスマス位甘えても。それとも何⁉ 文句で……」
最後まで言わせず、僕はアリサの唇を塞ぐ。
少しの間口づけを交わした後、離れて、
「文句なんて無い。むしろ、加減さえしてくれればドンドン甘えてくれてもいいよ。それでアリサが、皆が喜んでくれるのが僕にとっても嬉しいからさ」
「……うん」
「そんじゃ、寝ようか。もう遅いし、ここで立ち話してたら風邪ひくかもだし」
「そうね。……外、雪降ってた?」
「ううん。降りそうな位寒いけど、天気が良いから降ってない」
「でも、やっぱり寒いわよね。だから、今晩は私の抱き枕になりなさい!」
「りょーかい。僕もそれの方が暖かいしね」
寒い季節には人の温もりが恋しくなる物。去年までそんな事思わなかったけど、今は心からそう思う。
色々変わった事はあるけれど、『誰かが傍に居て欲しい』と思うようになった事が一番の変化だと思う。こう思えるようになったからこそ、『僕の傍に居てくれる大切な人達を護りたい』という新たな道を見つける事が出来た。
この暖かさを僕は二度と手放さない。手放したくない。だから強くなりたい。やりたい事も進む道もはっきり見えているから僕は進み続ける。一緒に歩いてくれる人たちと共に。
翌朝、お互い抱き合っているアリサと僕を見て冷やかしと嫉妬の混ざった二重奏を聞くことになったのは……まあ、それも楽しい人生のスパイスって事で。それに、君ら、普通に僕に抱きついて寝る時あるじゃんよ。
クリスマス話はどれかで書こうと思っていたのですが、一番最初に思いついたのがIFルートでした。
楽しんでいただければ幸いです。
多分、今年ラストになると思います。(もしかしたらもう一回くらい更新があるかも?)