「あー、疲れた…」
思わず、僕、霧島八雲はそう呟いた。
季節は少しづつ暖かくはなってきているものの、まだ肌寒い。しかし、今の僕はそれに似つかわしくない、薄着だ。理由は、引っ越し作業で暑いから。
何で、引っ越し作業をしているのか? それには僕の今までの半生、少なくとも小学三年から今までの6年は話さないといけない。
突然だけど、僕は一度、死んでいる。死因は階段からの転落死。
しかし、本来なら僕はそこで死ぬわけでは無く、神様のミスで死んでしまったらしい。
神様(見た目金髪美女、中身ガチオタの残念系女神)の計らいによって、僕は二度目の生を受けて今を生きている。
そんで、二度目の生を受けた世界が前世のアニメ作品『魔法少女リリカルなのは』なる作品を元にした世界らしい。
僕もその作品内の『魔法』の能力を持って生まれたので、関連する事件に巻き込まれた。いや、自分から飛び込んでいった方が正しいか。
大きいのは、ジュエルシードの時と闇の書の時か。
二つの大きな事件を経て、僕は地球以外の世界、『次元世界』、そしてその世界を守っている『時空管理局』の存在を知る事になった。
僕の魔導師としての能力は極めて優れていたので、事件で知り合った管理局員、クロノ・ハラオウンにスカウトを受けた。
そして、小学生の時から、つい最近まで学生と魔導師の二足の草鞋を履いていた。
しかし、僕は中学卒業と共に、次元世界の大元ともいうべきミッドチルダに移る事にしていた。今はその引っ越しの準備中なのだ。
この選択に後悔は無い。僕は、二つの出来事を経て、大切な幼馴染の友人と、最愛の人に出会えたのだし。
まあ、皆忙しくて、今は僕一人で引っ越しの準備中なんだけど。
「さて、テレビでも見るか」
休憩がてら、テレビを付けて、お昼用に用意しておいたおにぎりを食べる。
お昼のニュースを流しながら、食べていく。すると、
『そ、速報です!』
アナウンサーがなんか凄く慌てていた。何か大きな事件が有ったんかな? それでも、ここまで慌てないと思うけど…。
『日本で、男性のIS操縦者が発見されました!』
…………へっ?
ISというのは正式名称『インフィニット・ストラトス』、宇宙開発用のマルチフォーム・スーツ。
しかし、今ではそれよりも世界最強の武器という印象が強い。
その印象を決定付けたのが数年前に起きた『白騎士事件』。関わったISの名前から取られたこの事件は大量のミサイルと戦闘機を傷無く、そして死者も無く解決した事でISの圧倒的な性能を世界に見せつける事となった。
しかし、ISは決定的な欠点がある。それは『女性しか扱えない』という事。
これによって、世界は大なり小なり女尊男卑の世界になった。日本はその中でも、まだましな方だと思う。理不尽なのはあんまりないし。
しかし、今回の一件で男性にもISが動かせる可能性が出てきた。
「なんか、とんでもない事になったなあ…」
僕がそう呟いていると、僕の携帯が鳴った。着信は…幼馴染で親友の一人、アリサ・バニングス。
「もしもし、アリサどったの?」
『アンタ、ニュース見てた?』
「ISの男性操縦者って奴?」
『そうそれ。それを受けて、日本は一斉に男性のIS適性を調べるみたい。この辺のはウチの会社が仕切るから、暇なら八雲も来なさいよ。ISに興味あったじゃない』
たしかに、結構興味あった。つーか、ああいうのって男の子は憧れるもんでしょうよ。
しかし、何でアリサがそんな事を…。って前に『最近、会社の仕事を少し手伝うようになった』とか言ってたな。
個人商店とかじゃなくて、世界でも有数の大企業でだから、社長の一人娘だとしても十二分に凄い。んでもって、認められれているんだからなおのこと凄い。どうやら、アリサのお父さん曰く「経験は何事にも代えられない物だ。若いうちから積み上げる事が出来れば、将来の為になる。そして、若い女性の意見は参考になるのでな」との事だ。
「んじゃ、お邪魔しようかな。…しかし、アリサは何でIS学園行かなかったんだ? 結構適性あったんだろ?」
僕達の通っている聖祥大付属中学校では、中1の時に女子全員がISの適性検査を受ける。その時、アリサを含めた僕の幼馴染達は軒並み高い適性を示した。でも、誰一人としてIS学園に進学していない。
『私の将来にIS乗りっていうのは最初っから無かったのよ。いくら適性が有ってもね。すずかも同じよ。まあ、すずかの場合だと、ISの技術者っていうのは有ったみたいだけど』
まあ、そうか。資質なんてものは、あれば選択肢を増やせるってだけだ。最終的にそこから何を選ぶかはその人次第だ。
「変な事聞いたな」
『良いわよ。学校でも何人かに聞かれたし。まあ、憧れる人が多い物だしね。そういう人から見たら、変わってるんでしょうね。それより、さっきの件、日時は明日の朝10時から海鳴中央ホールでよ』
「分かった。態々、サンキューな」
『あっちに行く餞別替わりよ。じゃあ、明日ね』
「おう」
電話が切れる。まあ、近くでISを見れる機会だし、行ってみるか。
「良い機会だと思ったんだけどなあ…まさか、動くとは」
翌日、会場で僕がISに触れると、勝手にISは展開した。
さて、そこからが大変。適性チェックをしていた係りの人が騒ぎ、まああっという間に大事に。
そんな僕は手伝いに来ていたアリサに連れられて、バニングス社の本社に来ていた。
「ホントよ。八雲、アンタ何か、悪い物に憑かれてるんじゃない」
「若干、そんな気がするよ。…しかし、はやて達にどう説明するかなあ…」
はやて―僕の恋人、八神はやて。
僕と一緒で魔法に出会い、今は管理局に所属している。
「折角、家も買ったのに…」
「説明は私がしておいたわよ。その内、通信が来るんじゃない? ここに来たのもその為だし」
『八雲君!』
アリサの言葉にタイミング良く、はやてからの映像通信が入る。みると、横に僕の直属の上司のレティ提督も居る。
僕は、まず状況説明を手早くする。
「…という訳なんです」
『…面倒な事になったわね』
いや、まったくもっておっしゃる通りです。
しかし、このままだと僕、モルモットなんじゃね?
魔導技術関係の違法実験施設の摘発とかもやったけど、まさか僕がその被験者になるとはねえ。
『…なんとかならへんの、アリサちゃん?』
「任せなさい、はやて。何とかするために、ウチに連れてきたのよ。、八雲をウチのテストパイロットになってもらうわ。これは、ウチが政府に協力を依頼された時の条件だから、大丈夫よ。これで、変な物はシャットダウン出来るはず。それで、八雲にはIS学園に入って貰わないといけないんだけど…」
『その辺は、大丈夫よ。私が何とかするわ』
「IS学園の卒業以降は、ウチに籍を置いてもらうだけで良いわ。パパが、社長がそう言ってる。そもそも誰でも、そうするつもりだったらしいけど、八雲だから特にって。案外、アンタ気に入られているのよ。どう?」
「…正直、実験動物にしかならないと思ってたから、それに比べたら、何億倍もマシなプランだし、反対は無い。ただ…」
「ただ?」
「はやてと会えんのは辛い!」
僕の言葉にずっこける、アリサとレティ提督。
『それは私も同じやで。でも、未来の為に頑張ろよ』
「…だな」
「また始まったわ、このバカップル…」
頭を抱えるアリサ。そこまでかね?
『でも、ありがとうな、アリサちゃん』
「私が話したから、こうなったんだしね。初めてよ。ここまでパパに頼み込んだのは」
「後で、お礼を言いに行かないとな」
「それは良いわよ。それより、三年の働きで、それを返せばいいのよ」
「まあ、確かに」
『…しかし、そのISというのは面白そうね。ウチの技官を派遣しても良いかしら?』
「政府から、ウチの所有するISのコアを使って、専用機を作れと言われているんで、八雲の魔導師の能力を活かした何かというのは面白そうですね。聞いてみます」
専用機というのは文字通りなんだろうけど、なんかピーキーになりそうな予感が…。
「…アリサ、そのIS開発している人ってどんな人達?」
「変わってる人が多いわね。良い意味で」
『あら、ウチの子達と話が合いそうね』
どんどん嫌な予感が…。
「あはは…、なんか苦労しそうやね」
「そうだな。…まあ、休みが取れたら行ってくれ。僕も出来るだけ会いに行くから」
「うん!」
面倒事に巻き込まれたけど、さっきはやてが言ってたように、僕達の未来の為に頑張りますか。
つーか、これはクロスオーバーで良いのか?
完全に見切り発車ですが、よろしくお願いします。