僕がISに乗れることが分かって一月と少し、入学式を迎えた。
しかし、この一か月はマジで疲れた。
管理局の引き継ぎのための書類作り、ISの知識の為の勉強、ISの実際の操縦、様々なテスト。大きく分けるとこれをひたすら起きている間やり続けた。そのおかげで、IS関連の授業は問題無いだろう。…なんか、思い出したら泣きたくなってきた。
この中で一番楽だったのはISの操縦。伊達に六年間現場に立ち続けていない。飛ぶという感覚は同じだった。速さが違うように思ってたけど、ハイパーセンサーの能力も加味すると、そんなに変わらない。なので、何も問題無かった。実際会社でやった模擬戦は負け無しだったし。技術の粗さを経験で補った形だけど。もっと細かい練習だな。まあ、僕にはマルチタスクという裏ワザが有るから、授業中とかもその訓練に回せるし、何とかなるだろ。
(いや、しかしそんな事をやるとは、空戦を覚えたての頃を思い出すね)
(懐かしいですね。中学の時もたまにやっていましたが)
そう答えるのは、僕のデバイス『叢雲』。専用機の起動キーでもあり、サポートAIも務める僕の相棒だ。バニングス社の技術部と時空管理局の技官の協力でISの操縦訓練用のプログラムも入れられている。
(まあ、一度やった事よりも、これからの事を優先しただけだよ)
(自分の身を守るという意味では重要ですからね)
(…にしても、これは地獄だね。針のむしろって言うのは実在するらしい)
(その辺は私には分かりませんが…。アウェイな感じは分かりますね)
入学初日だけど、ミッドに帰りたい…。つーか、はやてに会いたい。
そんな事を考えてる間に、僕が居る教室には先生がやって来て、クラスメイトの自己紹介が始まった。
しかし、なんで入学式とかの偉い人の話って長いのかね? ひょっとして、偉い人の必須技能? 実際どこもかしこもそうだったし。
ちなみにこれは次元世界の共通認識であるらしく、同僚などに聞いても同じ感じの答えが返ってきた。
僕が偉い人の長話についての考察をしている間に、もう一人の男性IS操縦者、織斑一夏君の自己紹介が始まった。
「えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
そこで、織斑君は言葉を切り、教室には静寂が流れる。…引っ張るね。エンターティナーなのかな?
「以上です!」
その締めに何人かの女子がずっこける。関西の人なのかな? まあ、クラス全員「いや、あれだけもったいぶっといて終わりかよ!」って思ってるんだろうけど。ほら、副担任の山田真耶先生なんか涙目だし。
すると、織斑君は出席簿で叩かれていた。すげー良い音したし、痛そうだな。
途中でやって来た僕達の担任の先生は山田先生と少し話してから、自己紹介を始める。
「諸君、私がこのクラスの担任、織斑千冬だ。私の仕事は君達一年を二年になるまで煮使い物になる操縦者に育てる事だ。私の言う事は良く聞き、理解しろ。逆らっても良いが、私の話はまずは聞け」
厳しい気もするけど、今や防衛の中核を担うISを扱う人間を育てる場所だから、これくらい厳しくする必要があるんじゃないのかな? まあ、クラスメイトは、
「「「「「キャー!!!」」」」」
凄く盛り上がってるけど。黄色い声は頭に響く。
まあ、織斑先生は有名人だから仕方ないか。なんてったって、『世界最強』なんだし。ISにはそこまで詳しくない僕でも名前を知ってるし。あ、この反応に織斑先生うんざりしてる。有名人は辛いんだね~。
管理局内のなのは達も同じ感じだし。
「このままだと、自己紹介が途中になりそうだな…。仕方ない。とりあえず、霧島、お前だけでも済ませろ。他の奴も気になっているだろうし」
まあ、そうですよねー。なんとなく分かってたので、僕は素直に立ち上がる。
「えー、二人目の男性IS操縦者となりました、霧島八雲です。趣味は料理と読書です。一応、バニングス社にテストパイロットとして所属していますが、知識とかは素人に毛が生えた程度なので色々迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」
僕の自己紹介には、何人かが拍手をする。どうやら、これで十分だったらしい。
そのタイミングで、丁度区切りを告げるチャイムが鳴る。いや、妙に古い感じのチャイムだな。音で表すならまさに「キーンコーンカーンコーン」って感じだし。逆に今時珍しいんじゃね?
「次からは早速授業に入っていく。…と言いたい所だが、残っている自己紹介を手早く済ませてからだ」
そう言って、織斑先生と山田先生は教室から出て行った。
さて、休み時間に入ったわけだけど、IS学園とはISの特性上、女子校だ。もしも、そこに男子生徒が入るとどうなるか? 答えは…注目の的として見られる。しかもクラスメイトだけでなく、他のクラスや上級生にまで。さながら、動物園の動物の気分だ。日常生活を見られているという意味で。
「なんか、もう帰りたい…」
「それは俺も同じだよ…。俺は織斑一夏。よろしくな」
「僕は霧島八雲。よろしくね、織斑君」
「一夏で良いぜ」
「そう? それじゃ、よろしく一夏。僕も八雲で良いよ」
お互い、簡単に挨拶を済ませる。
「しかし、八雲は何でISに乗れるって分かったんだ?」
「いやね。一夏が乗れるの分かってから、世界中で他の男性も乗れるかを探したんだよ。んで、僕はその事をウチの会社の社長の一人娘から教えてもらって、興味本位で言ったらこうなったんだよ。ホントはちょっと遠くに引っ越す予定で教えてもらったのもそれの餞別だったんだけど、それも全部キャンセル」
嘘は言ってない。行ったのは興味本位だし、引っ越すのも本当だし、遠くに行くのも本当だ。
「俺は社長の一人娘に知り合ったタイミングの方が気になる」
「大したことないよ。小学校からのクラスメイトだし。所謂幼馴染ってやつ。まあ、その縁で社長とも顔見知りだったから、色々助かったんだけど」
人の縁は大切だとこの件で実感した。管理局内だと、ウチの上司が結構しっかりとした後ろ盾になってくれるから、心配ないけど、こっちでは僕はただの15歳の子供だ。
「つーか、一夏こそ何で乗れるか分かったのさ?」
「いや、高校の受験に行ったらその会場が凄い複雑でさ。迷ってて、適当にドアを開けたら、そこに居た先生に案内されて、ISが有ったから触ったら、動いた」
「なんじゃ、そら。つーか、先生も気付けよ。一夏別に女顔じゃないから一発で気付くだろ」
「だよなあ。しかも、俺その日制服だったんだぜ?」
「なおさら、気付けよ」
僕は知らない先生にツッコみまくる。
こんな感じで、一夏と話していると、
「…ちょっと良いか?」
一人の女の子が話しかけてきた。
身長は女子の平均位だと思うけど、背筋がピンっと伸びているから、高く感じる、黒髪ポニテの女の子。
「一夏、知り合い?」
「ああ。幼馴染だ。久しぶりだな、箒」
「久しぶりなら、話してこれば? 積もる話もあるだろ?」
「…良いのか? 俺としてはここに一人は凄いきついと思うけど」
「まあ、休み時間の間だけだし、我慢だね」
「悪いな」
「良いよ別に、それより早くしないと、次が始まるよ。織斑先生厳しそうだし」
「そうだな」
そう言って、一夏は外へ歩いて行った。しかし、知り合いが居るって言うのは若干羨ましいね。…ああ、はやてに会いたい。
「ちょっと、よろしくて?」
「はい、よろしいですよ」
なんか話しかけられたので、返事をする。声の方向を見ると、金髪(フェイトより明るめ)ロールのお嬢様風の女の子が。後、声がリインに少し似ている気がする。
「っと、その前に僕、君の名前を知らないから、教えてくれない?」
「わたくしの自己紹介はまだでしたわね。セシリア・オルコットと申します。イギリスの代表候補生ですわ。それにアリサさんの友人で霧島さんの事をよろしくと頼まれましたわ」
「へえー、アリサの友達なんだ。僕は霧島八雲。八雲で良いよ、オルコットさん」
「そうですか。八雲さん、私もセシリアで構いませんわ」
「よろしくね、セシリア」
しかし、セシリアはアリサの友達って事だし、喋り方的にもマジのお嬢様っぽいな。いや、僕の幼馴染にもお嬢様二人いるけど。
「アリサと知り合ったのって、パーティとかそんなの?」
「いえ、私の両親とアリサさんの両親が友人同士だったらしいです。初めて会ったのは4年くらい前が初めてですが。…アリサさんは恩人なんです」
「恩人って、なんか大げさな表現だね」
同い年なんだし、大げさ過ぎる。
「いえ、アリサさんのお蔭で偏見に満ちた価値観を壊されて自分が成長できたと思いますし」
「あー、アリサはそういう、自分が変だと思う事はズバッっというタイプだからなー」
最もそれはなのはの影響らしいけどね。まあでも、良い影響だったからって本人も笑ってたけど。
そんな事を考えていたら、チャイムが鳴った。
「八雲さん、それではまた」
セシリアは自分の席に戻っていく。
一夏は何とかギリギリ滑り込んできた。さて、授業頑張りますか。
なんか、アリサの性能が高くて怖い…。