さて、時間は一週間経ちクラス代表決定戦当日、僕は一人ピットに居た。
今回は僕、一夏、セシリアの三人で争う総当たり戦。順番は
一回戦 一夏とセシリア
二回戦 僕とセシリア
三回戦 僕と一夏
となっている。
後、クラス内では誰が勝ち抜くか食券を賭けた賭けになっている。
本命一夏、対抗セシリア、大穴僕。
…まあ、そうだろうな。地味めな僕よりイケメンの一夏を応援したくなるだろうし、彼は世界最強の織斑先生の弟だ。期待もしたくなるってもんだ。
セシリアはイギリスの代表候補性だし、普通に考えたら勝つのは彼女に決まっている。
(予想ではそうかもしれませんが、現実ではマスターの勝利一択でしょう)
(それを言ってくれるのは、叢雲だけだよ)
(ルームメイトの本音も言っていましたが?)
(彼女は同室のよしみって所でしょ)
もしくは顔に似合わずのギャンブラーか。そのどっちかだろう。実際、僕に賭けたのは彼女だけらしい。
(空戦とそこまで変わらないというのが、非常に助かりましたね)
(そうだねー)
だから、僕のISの搭乗時間はこの一月とちょっとの分、約150時間。
しかし、それに類する経験になる空戦はどっかの烈火の剣士や、白い悪魔のお蔭で、数千時間にも上る。訓練だけでなく実戦もあるし。
(まあ、最初っから負けるって考えて戦うのは僕らしくないし、せいぜいあがかせてもらおうかな)
(無茶でも立ち向かうのがマスターですからね。客観的に見たら、ジュエルシードの時の最終戦も闇の書事件も無茶ばかりですから)
(そうかい?)
(そうです。類は友を呼ぶとは上手く言ったものです。皆さん無茶し過ぎですよ)
多分、ここの『友』の部分ははやて、なのは、フェイトの三人が入るのだと思う。
まあ違うのは、三人はコンスタントに無茶をしている感じだけど、僕は自分のしないといけないタイミングでだけ、とんでもない無茶をするって感じ。…まあ、無茶しいって事だけは変わらないか。
(それより、一夏とセシリアの試合でも見てるか)
(もう、終わりかけですけどね。このままだと、セシリア・オルコットが勝ちます)
(大番狂わせは起きないかー)
見てる側にとっては大番狂わせを起こして欲しい所だけど、実際大番狂わせなんてそう簡単には起こらないだろうよ。
と、その時、
(ん? あれってまさか…)
(一次移行ですね。このタイミングでとは中々に面白い展開ですね)
(一夏の主人公力の高さを感じるねー)
事実は小説より奇なり。まるで、物語のような展開になるねー。
(さて、流れは変わったかな?)
(微妙な所だと思います。一次移行して見た目は回復してもシールドエネルギーは回復していません。流れは織斑一夏にあるかもしれませんが、戦況は依然セシリア・オルコット有利です)
(となるとやっぱ、地力有利のセシリア有利かなー)
しかし、その予想は外れ、一夏はどんどん攻め込んでいく。
そして、一撃決まるかと言った所で突然ブザーが鳴った。
『試合終了。勝者、セシリア・オルコット』
「はあっ!?」
想定外の結末に思わず僕は声が出た。
(…叢雲、どう思う?)
(恐らく、あの剣の能力かと。あれでシールドエネルギーを消耗したと思われます)
(エネルギーをドカ食いするタイプか…。逆を言えば一撃食らったら危ないって事だね)
(攻撃範囲に入れさせなければ良いだけです)
(簡単に言ってくれるねー)
まあでも、それが正論なんで言い返せないんだけど。威力の高い攻撃は当たらなければどうという事は無い。
…一夏戦は逃げ一択で。
『霧島、時間だ。出撃の用意を』
「分かりました」
織斑先生の放送が有ったので僕は準備を始める。ストレッチで軽く体をほぐしてから、
(行くよ、叢雲)
(了解。魔力認識、確認。IS名『出雲』、専属操縦者、霧島八雲…確認できました。出撃準備完了)
僕のIS、『出雲』はバニングス社とマリーさんを始めとした時空管理局の技官の総力を結集した、機体である。何かの拍子で悪用されない様に、起動するには叢雲と僕の魔力での認識が要る。
実質、この世界でこの機体を動かせるのは、僕だけという事だ。
さて、行きますか!
「それが、八雲さんのISですか?」
僕が先にアリーナに降りて、少ししてからセシリアがやって来た。
「そうだよ。名前は『出雲』っていうんだ」
「なんというか、シンプルですね」
「世界最初のISの名前は白騎士だからねー。だから、騎士っぽい感じにしてみたんだって」
というのは嘘で、僕のバリアジャケットを元にしただけだ。なので、他のISに比べると結構違ったデザインだ。
「それで、一夏はどうだった?」
「想像以上でしたわ。まさか、あそこまで追い詰められるとは…」
「だねー。見てて思ったよ」
「もちろん、八雲さんにも期待していますわ」
「はは、そのご期待に添えるように頑張るよ」
僕の言葉が終わるのを待っていたかのように試合開始のカウントダウンが始まる。
「先手、いただきますわ!」
セシリアはレーザーライフル『スターライトMK3』を呼び出し、一発放った。
「んじゃ、僕も行くよ!」
同じく僕もライフルを呼び出して、それを迎撃する。
「なっ!?」
「驚いている暇は無いよ!」
セシリアの攻撃を文字通り撃ち落として、驚いている隙に、追撃を掛ける。セシリアはそれを咄嗟に避けるが、その瞬間、弾が爆発した。
「~っ! 厄介ですわね…」
「マルチバレットエネルギーライフル『彩雲』と高速弾『Fバレット』の味はどうだい?」
ところ変わって管制室。そこで観戦しているのは一年一組の担任、副担任である織斑、山田両先生と、この対抗戦の残り一人である織斑一夏、彼のセコンドのような感じの篠ノ之箒である。
「織斑君にも驚かされましたが、霧島君も凄いですね…」
「ライフルだけで圧倒とか…強すぎるだろ、八雲…」
「無茶苦茶だ…」
上から、山田先生、一夏、箒の順で呟いた。
「たしかに色々規格外ではあるな。霧島は私にも真似できない事をやっている」
「「「えっ!?」」」
織斑先生の言葉に驚く三人。それも、そうだろう。彼女はIS戦では無敗のまま引退した『ブリュンヒルデ』なのだから。
「織斑、最初の方、オルコットのブルーティアーズに苦戦していたが何故だ?」
「それは…俺がISの全方位視界接続に着いていけなくて、です」
「織斑君の言う通り、いくら全部『見えている』と言っても真下や真後ろ、真上といった普段では見えない所なんかはどうしてもラグが出てしまう物ですよ」
「山田先生の言う通りだ。私でもラグは出てしまう。しかし、どういう理屈か霧島にはそのラグが無い。アイツには文字通り死角が無い」
織斑先生の言葉はまだ続く。
「さらにだ。今霧島は『自分は確実に避けれて、相手は避けれない距離』を保っている」
「どういう事ですか?」
「つまり、霧島は両者の反射神経、弾速の早さ、機体の性能などを加味して、ベストと思われる距離を維持し続けている。…傍から冷静に見てようやく気付く事だ。戦闘中のオルコットは、焦っている事だろう。これほど、勉強になる物もない。しっかり見ておけ」
と、三人に言った。映像に集中する三人。
(しかし、本当に霧島は150時間しか乗っていないのか? と疑いたくなるな。戦闘慣れしすぎている。判断力は段違いだ。…少し調べる必要があるか?)
一人そう考える織斑先生。そんな中、試合は終盤戦に突入していく。
(マルチタスクと全方位視覚接続の相性は抜群だね)
(タイムラグ無しで全方位見れますからね)
なんてことは無い、マルチタスクで全方位見えるのと、必要なのを選ぶのを同時にしているだけだ。
それに…
(全方位攻撃という意味では、なのはの誘導弾の方がえげつないし)
(そうですね)
あんな、何十発の誘導弾に比べたら、高々4発どうという事は無い。
「想像以上の強さですわ…」
「ご期待には応えられたみたいだね。それじゃ、トラップ発動! ロックバレット!」
序盤の方に仕込んでおいたロックバレットを発動させる。効果は…
「なっ、動かない!?」
「ウチの特別製さ。そして、これで決める! Fバレット、ファランクスシフト!」
彩雲から、高速のエネルギー弾が連射される。セシリアはエネルギー弾の雨に飲み込まれる。
『試合終了。勝者、霧島八雲』
さて、次は一夏との対戦だね。
ISの設定はその内上げます。今はとりあえず、主武装の紹介を。
マルチバレットエネルギーライフル『彩雲』
元は多弾頭使用可能のエネルギーライフルだった筈なのだが、マリエル・アテンザ技官を始めとする時空管理局の技官の悪乗り…もとい、本気によって、魔(マ)改造されてしまった一品。
最大の特徴は、発射されるエネルギー弾を八雲の幼馴染である魔導師たちの魔法を模したものになる事。これにより、変幻自在の戦い方が出来る。
高速弾『Fバレット』
フェイトの得意魔法『フォトンランサー』を模したエネルギー弾を放つ。
弾速と連射性に優れ、扱いやすい。
特徴として着弾、もしくは八雲の意思で、爆発させることが出来る。
また、超高速の一斉射『ファランクスシフト』という、切り札も持つ。
次回は一夏戦。