翌日、クラスに行くと何か凄く盛り上がっていた。
「ねえ、本音、なんでこんなに盛り上がってんの?」
「二組に転校生が来るんだってー」
「転校生? なんでまたこんな時期に」
まだ四月なんだから、転入じゃなくて普通に入学すれば良かったのでは? と思うんだけど。
「中国の代表候補生らしいから、お国の事情って物があるんじゃない?」
「こういう時期って、入りにくいとおもうんだけどなー。交友関係が固まってくる頃だし」
「そうだねー。…噂をすれば影ってホントだねー」
本音がそう言ったので見ている方に目をやると、転校生が声高らかに一夏に宣戦布告していた。
…これはまた、一波乱ありそうだねー。
時間は過ぎ昼休み。待ちに待った食事の時間。今日のメニューは豚の生姜焼き定食(ご飯大盛り)。これでも生姜焼きが美味いせいで米が足らない可能性がある。
…というより、最近楽しみが食事くらいしかない。後気付いたのは僕が重度のワーカホリックだという事。これは逆説的な物だと思うけど。
つまり、はやてに会えないのでその寂しさを紛らわせるために仕事に打ち込もうという事だ。
けっして、ここで出来た友達と話す事が楽しくない訳じゃない。でも、やっぱりはやてに会えない事を埋める事は出来ないってだけだ。
まあ、何を考えても最後にはこれに帰結する。…はあ、はやてに会いたい。
「八雲、ここ良いか?」
「一夏か。いいよ、空いてるし」
今日は僕一人で食べていた。本音は簪と食べに行っている。それで、僕一人だと、まだ話しかけずらいらしく、誰も来なかった。これは一夏も同じで、大体一人もしくは僕と一夏の二人で食べている時はあんまり話しかけられない。まだ、遠慮とかあるのかな?
「一夏、そいつ誰?」
「誰って、制服見れば分かるだろ。俺と同じ男性操縦者の霧島八雲」
いや、まあそうなんだけど、ひょっとしたら男装してる人かもしれないじゃん。そんな人この学園で見た事無いけど。
「ども、転校生さん。二人目の男性操縦者こと霧島八雲です。よろしくね」
「凰鈴音よ。中国の国家代表候補生で、二組のクラス代表よ。よろしくね、八雲。私の事は鈴で良いわ。…にしても、イメージとは全然違うわね」
「イメージ?」
僕は一体どんなイメージを持たれているんだろうか?
「だって、クラス代表を決める戦いで、一夏や代表候補生に勝ったんでしょ? どんな強そうな奴かって思ってたら、結構地味なやつだったし」
その言葉に心を抉られる。
「鈴、見た目で決めつけるのは良くないぜ。確かに八雲は地味だけどな、実力は俺より遥かに上だ」
「そうですわ! 八雲さんは地味ですが、その実力は確かな物です。このセシリア・オルコットが太鼓判を押しますわ」
…庇ってくれてるんは良いんだけどさ、もうちょっとオブラートに包むって事してくれないかな。
容姿が地味なのは自覚してるけど、表現の方法があるでしょうよ。
「…ごちそうさま。もう、教室帰る。後、今日の訓練厳しくいくから」
とりあえず、この心の傷を癒すために、今日は徹底的にやろうと思います。
サイド一夏
「…なあ、何で八雲あんなに落ち込んでいたんだ?」
俺はそばにいた箒、セシリア、鈴にそう聞く。
「「さあ?」」
二人の代表候補生は声を合わせて言う。
「…普通、容姿が地味は褒め言葉ではないのだから、連続で言ったら傷つくだろう」
話を聞きながら、黙々と食べていた箒がそう言う。
そうか、言い方の問題か。
「にしても、厳しくいくか…。放課後になって欲しくないな…」
「そうだな…」
「ですわね…」
八雲の残した言葉を思い出して、途端に暗くなる俺達1組の三人。
「ど、どうしたの!? いきなり暗くなって!」
俺達の豹変に驚いた鈴。
「いや、八雲に俺達訓練を見てもらってるんだけど、それが厳しいんだよ」
八雲の訓練に対するスタンスは完全に体育会系だ。「1に練習、2に練習、3、4に練習、5に練習」って、笑顔で厳しいメニューを課してくる奴だ。それでもって、同じかそれ以上のメニューを顔色一つ変えずにこなす奴だ。つーか、八雲の体力は化物だ。
ただ、翌日にまで影響が出るほどじゃない、ギリギリの部分を見極めているから、学園生活には支障が出ていない。
でも…今日はいつも以上に厳しいんだろ? 自分でまいた種とはいえ、俺はどうなるんだろうか?
結論から言いましょう。一夏とセシリアは疲労困憊でノックアウトです。いつもより、早く訓練はおわっちゃいました。
どんな感じだったかって? それじゃ、音声でお楽しみください。
『それじゃ、一夏。いつも通り、弾幕避けるところからね』
『おう』
『今日はスペシャルにいつもより増量の15発で行くからねー』
『おう。…って、ちょっと待て! 7発でもきついのに、倍なんか出来るか!』
『出来る出来ないじゃない。やれ』
『ちょっ、まっ…』
『次はセシリアの番だよー。セシリアはさらにFバレットも混ぜるからねー』
『それは無茶ですわ!』
『弱音を吐く位なら、とっとと避ける』
『お待ちになっ…』
とまあ、こんな感じです。二人とも悲鳴を上げる間もなくノックアウトですよ。もちろん、箒には通常のメニューをしてもらってました。彼女はなにも言ってませんし。
いつもより早く終わったので、着替え終わったロッカールームで何をしようか考えていると、
「いやー、凄い事やってたわねー」
と話しかけられた。その声の主の方に目をやると、
「楯無先輩ですか。見てたんですか?」
我らが生徒会長、更識楯無さんが居た。
「ちょっとだけね。にしても、一夏君とセシリアちゃんのは厳しすぎない?」
「あれはちょっとした鬱憤晴らしですよ。普段はもうちょっと少ないですし。それより、何か用が有って来たんじゃないんですか?」
別に普通に見て帰っても良かった訳だし。
「ちょっとね。…霧島八雲君、貴方に挑戦状を叩きつけるわ!」
「…………はい?」
「だ・か・ら! 私と戦って欲しいのよ。もちろん、アリサに許可は得たわよ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね」
慌てて僕はアリサに連絡を取る。
『定時報告の日じゃないわよ?』
「分かってるけど、どうして先輩との戦いを僕に黙って決めたのさ!」
『ああ、その事。嫌なら断って良いわよ?』
「いや、そうじゃなくて、先輩の挑戦を受けた理由だよ!」
『経験の為ね。アンタの経験値は十分かもしれないけど、出雲の経験値はそこまでじゃない。相手から、戦いたいと言ってるんだから良い機会じゃない』
出雲の経験値か…。ISは経験を積む事で『二次移行』する事がある。あくまで『する事がある』なのでしない事もある。むしろ、しない事の方が多い。しかし、使わなければそれをする事は無い。データだけでなく、二次移行をしたら、十二分にバニングス社に恩返しも出来るはずだ。
「…分かった。怒鳴り込んで悪かった」
『良いわよ。言わなかったこっちも悪いし』
「まあ、とりあえず経験の一つとして受け取っておくよ。ありがとうなアリサ、また連絡する」
僕は電話を切って、楯無さんの方に体を向ける。
「…という訳で、そのお話お受けいたします。というより、本当なら僕の方から挑むのが正しいんじゃないですかね?」
挑戦状を叩きつけるって表現は格下が格上に挑戦するときに使う表現だと思うんだけど…。
「まあ、良いじゃない。私は君と戦ってみたかったんだし。そんな事は些細な事よ」
そう笑いながら言う楯無先輩。ただ、その笑顔には好戦的な感じを感じた。僕やフェイトとの模擬戦を楽しみにしているシグナムみたい。
「で、いつやるんですか?」
「明日よ」
「…急ですね」
「もうすぐクラス代表戦が有るからね。前で空いてるのは明日位だったのよ」
定期の簡易メンテは昨日やったばかりだし、大丈夫だろ。
「了解です。…勝つ気でいかせてもらいます」
「それは私も同じよ」
それだけ言って去っていく楯無先輩。
とりあえず…今日はご飯を食べて早く寝よう。明日の戦いの為に。
次回VS楯無戦。
新技出せたら良いなー ※予告なので出せるかどうかは未定です。