クラス代表戦当日、普通皆は客席だったり、どこかのモニターで観たりしてるんだけど、僕はちょっと違う。
「…VIPルームって初めて来たよ」
そう、僕はアリサのエスコートの為にアリーナのVIPルームに来ていた。…多分、こういう機会が無かったら、一生こんな所入らないよねー。
「設備は良いんだけど、臨場感には欠けるのよね。生で観るなら、下の方が良いわよ」
「それは、分かる気がするよ」
これじゃ、快適な部屋でテレビを見てるのとそこまで変わらない。
「正直、VIPルームは一種のステイタスみたいな物よ。後はIS学園の場合、おっさん達の目の保養もあると思うわ」
「…ズバッと言っちゃったねー」
まあ、IS学園の女子のレベルは無駄に高い。入学基準の容姿って無かったと思うけど…。
そんな美少女達がきわどい恰好をしてるんだから、まあ、目の保養にはなるわな。
「アンタ、そういう目で…見てないわよね。これでもかと言うくらいはやて一筋だし」
「一応、男だからそういうのは分かるんだけど、あんまり興味ないかな。はやてに悪いし」
それにきわどい恰好って言うなら、フェイトのソニックフォームが有るしね。ある意味見慣れてるってのもある。
「そういや、鮫島さんは?」
「今日は休みよ。鮫島も仕事人間だからね、こっちから言わないと休まないのよ。セキュリティのしっかりしたIS学園でなおかつアンタというボディーガードが居るから、納得してくれたわ」
…そう言えば、思い返すといつも鮫島さん働いているな。いつ休んでるんだろ?
「バニングス社って福利厚生しっかりしてるよな?」
「してるわよ。かなりの優良企業よ」
「僕の記憶で鮫島さんが休んでた事無かったんだけど?」
「鮫島はウチの家の執事だからね。それとは別扱いよ。後、さっきも言ったけど、あの人こっちから言わないと休まない人なの。むしろ、こっちが言っても休まない人なのよ」
「そんだけ、執事の仕事に誇りを持ってるって事かな?」
「多分ね。…ホント、感謝してもしきれない人よ。鮫島への恩返しは、まだまだ先になるけど、その時しっかり胸を張れる様に今は頑張らないとね」
多分だけど、そんな事する必要ないと僕は思う。
鮫島さんにとっては娘みたいなものだろうから、何事も無く大人になる事が一番の恩返しなんじゃないかな?
あくまで、僕の考えだし、アリサがそれで良いのなら、彼女の努力の邪魔をする必要は無いしね。
「さて、初戦は…いきなりの好カードね」
「ああ、中国の代表候補生VS世界最初の男性IS操縦者だね」
「どっちが勝つと思う?」
「普通に考えたら鈴だと思うよ。いくら一夏が才能あっても、たったの一月の練習で覆せるほど代表候補生は甘くない。ただ…」
「ただ?」
「お互い戦闘の経験がそこまで多くないから、どう転ぶかは分からないね」
一夏は見てきたけど、鈴の方は完全に未知数だし。まあ、可もなく不可も無くって所だろ。
「やってみなければ、分からないって事?」
「まあ、そんな感じ。余程の実力差が無いと、絶対どっちかが勝つって言うのは無いよ」
「勝ち負けは時の運って事?」
「あんまり言いたくないんだけどねー。運の要素は大きいと思うよ」
特に実力に差が無い場合は。これは、僕の経験。そうじゃなかったら、僕となのはとフェイトとシグナムとヴィータの戦績があんなに横並びにはならないと思うし。
「とりあえず、予測が付かないから楽しめるって事ね」
「そういう事」
そのまま、VIP席で試合を観戦している。
「たしか、鈴のは第三世代機『甲龍』。特殊兵装『衝撃砲』を搭載だったっけ?」
「らしいわね。実物を見てどう?」
「完成度は高いんじゃない?」
「表現が微妙な所ね」
「多分何とか出来るし」
攻撃のタイミングが丸わかりだから、対処はいくらでも出来ると思う。
「自信があるのは分かったわ」
「まあ、僕と叢雲の力でだけどね」
実戦で常に共に戦ってきた相棒に置く信頼感は凄まじい物だ。もちろん、なのは達とは違うベクトルでだけど。表現するなら、ありきたりだけど最高の相棒。
「まあ、今は目の前の戦いを楽しもうよ」
「そうね」
さて、アリーナでは一夏が距離を取り、瞬時加速の構えに入る。勝負所と思ったのかな?
『マスター! 直上に魔力反応!』
「はあっ!?」
僕の驚きの声と共にアリーナ全体に大きな衝撃が起こる。魔力反応の元か?
「い、一体何よ!?」
「叢雲が魔力反応を感知したらしい。ひょっとしたら、こっちの領域かも。叢雲、どうだ?」
「恐らく、自立式のロストロギアかと。管理局のデータベースに類似の物がありました。名前は『ゴーレム』見た目が違うので、コアの部分のみ持ち込み、外はこちら側で作ったと思われます」
表示されたデータだと、確かにかなり外見が違う。
「マスター、さらに悪い報告が」
「何?」
「アリーナの電子ロックがすべてあちらに握られました」
…面倒な事になったな。アリサを避難させられないか。
「私の命、アンタに預けるわ」
「…そこまで言われたら、全力で状況の打破をしますよ。叢雲、プランは?」
「下で、織斑一夏、凰鈴音が戦っていますが、相手の動力源は魔力を元とした永久機関です。なので効果はあまりありません。考えられるプランとして、高魔力の一撃での強制封印を推奨します」
「それしか無いか。叢雲、セット…」
僕がセットアップをしようと思った瞬間、ゴーレムがこっちを向く。魔力を感知されたか? そして、そのままこちらに砲撃の体勢を構える。
「ちっ! 叢雲、二重装着! その後、プロテクションシステム作動!」
「了解」
「間に合えよ! フォースフィールド!」
僕はアリサを護る為に呪文を唱える。
次の瞬間、砲撃が叩き込まれた。
「叢雲! プロテクションは後どれくらい持つ!」
「全エネルギーを回して、10秒です」
「それだけあれば、十分だ! カートリッジフルロード! 古の炎よその一撃で魔を滅せよ! エンシェントノヴァ!」
ピンポイントの古の業火がゴーレムを焼き尽くす。
「強制封印成功を確認」
「ふう、何とかなったか。アリサ、ケガは?」
「私は大丈夫よ。それよりアンタは?」
「僕も大丈夫。久しぶりに魔法を使ってちょっとスッキリしたくらい。しかし、また面倒事に巻き込まれそうな予感だよ…」
「やっぱり、お祓いに行く?」
「もしかしたら、お願いするかも」
さて、当然あんなことが有ったから、クラス代表戦は中止になった。
僕はまず、事情を聞かれたけど、何も知らないの一点張りで乗り切った。まあ、言っても信じて貰えないと思うし。
報告はアリサの方からやってくれるそうだ。時間が無さそうなのでお願いした。…多分呼び出しが有りそうだけどなー。
しかし、まさかこっちでロストロギアが使われてるとはねー。何か起こる星の元に生まれたのかな?
(可能性としては大いにあり得ます。今後も警戒が必要かと)
(改造を受けていたから、偶発的な事というのはあり得ない。今後も襲撃は有るだろうね)
撃退は出来ると思う。被害を考えなければ。学園と協力するか、管理局から誰かを送ってきてもらうか…。それは僕が判断する事じゃないけど、一人じゃ辛い事は間違いない。
(とりあえず、警戒をしつつ過ごすしかないか)
(そうですね。とりあえず今日はお休みになられては?)
(だね)
そう言って、僕は眠りに着いた。
そういや、このお話で初めて魔法を使ったなー。