とまあ、適当な事は置いておいて。
二巻の内容を進めて行きます。
色々有った休日が明けた朝、教室はなんだか盛り上がっていた。
「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」
「え? そう? ハヅキのってデザインだけって感じしない?」
「そのデザインがいいの!」
「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」
「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」
話題は今日から購入の受付が始まるISスーツについて。
女性が使う物だけあって各社それぞれの特色が出ている。
「そう言えば、織斑君と霧島君のはどこのやつなの? 見た事の無い型だけど」
「あー、俺のはどこかのラボが作った特注品だって。えーっと、たしか元はイングリット社のストレートアームモデルだったって聞いてる」
「僕のはウチの会社のハイエンドモデルのカスタム品」
「それって、凄い高い奴じゃん!」
そう、僕の使っているハイエンドモデルは結構な種類あるISスーツの中でも5本指に入るくらい高い物だ。その分性能も折り紙付だけど。これもテストパイロットの恩恵だね。
「だね。貰った時、値段聞いてびっくりしたよ」
「「「「「貰った!?」」」」」
「そうだよ。僕の運用データで還元される物で元は取れるだろうから先行投資なんだって。んで、バニングス社所属の僕としては、ウチのノーマルモデルがお勧めだよ。今年の頭に再設計しなおして性能向上したし、カラーバリエーションも増やしたって言ってたし」
ちなみにこれ、昨日の試験運用中に営業部の人がやって来て、「宣伝しておいて!」と言われたものだ。肩書が学生兼魔導師(休業中)兼テストパイロット兼営業マンになった瞬間だ。
「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知する事によって操縦者の動きをダイレクトに各部位に伝達、ISはそこで必要な動きを行います。性能やデザインも各社個性がありますから自分の気に入った物を探してくださいね」
いつの間にかやって来てISスーツの説明を行う我らが一組の副担任山田先生。
ISスーツなしでもISを動かす事は出来るには出来るんだけど山田先生が言った理由で微妙に反応速度が遅れるらしい。
まあ、僕の場合、叢雲がISスーツの能力をバリアジャケットに組み込んだことでそんなのは無いも同然なんだけど。
緊急事態用に用意しておいたんだけど、この前はそれが役に立った。
「山ちゃん、詳しい!」
「先生ですから! …って、や、山ちゃん?」
「山ぴー、見直した!」
「今日が皆さんのスーツの申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習して来たんです。…って、や、山ぴー?」
…良い先生なんだけど、見た目から、先生と言うよりクラスメイトのような扱いを受けている山田先生。多分、この二か月ほどの間に、8個くらいの愛称が付けられていると思う。いや、慕われている事には間違いないと思うんだけど。
結局このやり取りは織斑先生が登場するまで続いた。
織斑先生がやって来た事で朝のSHRが始まる。
「連絡としては、今日からは本格的な実戦訓練を始める。訓練機ではあるがISを使用する授業なので気を引き締める様に。各自、それぞれのISスーツが届くまでは学校指定のISスーツを忘れないようにな。忘れた者は学校指定の水着で受けてもらう。それも忘れたら…下着で構わんだろ」
いや、構うでしょ! 例年ならともかく、今年は僕と一夏が居るんだし。…いや、例年でも屋外で下着はアウトか。事情があるにせよそれじゃただの露出狂だ。
「では、山田先生ホームルームを」
「は、はいっ」
メガネを拭いていて少し気を抜いていた山田先生は慌てて返事をした。
「えーっとですね、今日はなんと転校生を紹介します! なんと二名です!」
へえー転校生……転校生!? ちょっと前に鈴が来たばっかなのに? いや、それぞれの事情があるんだろうけどさ。中途半端な時期だよな。
「え……」
これは…またアレだね。僕は耳を塞ぐ。
「「「「「ええええっ!?」」」」」
クラスメイト達の驚きの声が響き渡る。高性能な耳栓が欲しいな。
…っていうか何で一つのクラスに二人同時に来るんだ? こういうのってバラバラのクラスに入るんじゃないのか?
そんな事を考えていたら教室のドアが開いた。
そこで教室内のざわざわが止む。だって、転校生の一人が僕と一夏と同じ制服、つまり男子用のを着ていたのだから。
「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
自己紹介をする金髪(色的にはフェイトやアリシアよりアリサより)少年、もといデュノア君。驚きのあまり反応がフリーズするクラスメイト達。
「お、男…?」
やっと現実に戻った誰かがそう聞く。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて転入を―」
言い終わる前に、
「「「「「きゃああああ!!!」」」」」
クラスが黄色い声に包まれる。
(耳が痛いよ…)
(結構な音量でした。しかし…)
(どうしたの、叢雲?)
(あの方、女性ですよ?)
(………えっ?)
相棒の爆弾発言に少し反応が遅れる。いや、まあISの事を考えたら、『中性的な男子』より『男装した女子』の方が理解できる気がするけど…。
(目的はなんだろう? 男子で転入する利点……目立つよね)
(それは利点なのですか?)
(目立ちたがり屋なら利点なんじゃない? そうじゃないとなると世界で二人しかいない男性操縦者に近付きやすい。かな)
(その確率が一番あるでしょうね。簡単に言うとスパイですね)
(…とりあえず、この件は会社に報告かな。同い年だし、もしかしたらアリサが何か知ってるかも。セシリアの時みたいに面識あったりさ。という事で、今は保留かな)
(ですね)
叢雲と話していたら、もう一人の転校生、銀髪少女もとい、ラウラ・ボーデヴィッヒさんが一夏の方に近付いて行ってビンタ一発。うわ、痛そう。
(スナップがしっかり効いていたのであれは痛いですよ)
(うわ、聞きたくなかった。しかし、何が理由なんかね?)
(『お前を教官の弟だとは認めない。認める物か』と彼女は言っていましたが?)
口が動いていたから何か言ってたとは思ったけど、流石デバイス、そこまで集音しているとは。
(教官って言うのは織斑先生だろ? 先生関係で何かあるのかね?)
(そうでしょうね。材料が不十分なので推測すら出来ませんが)
(一応、報告しておくべきかな)
面倒事は御免だ。この前のクラス代表戦みたいな突発的な事なら割り切るけど、避けれる物は避けたい。
その為には…情報が必要かな。さしあたっては、シャルル・デュノアの目的とラウラ・ボーデヴィッヒの言葉の意味だね。
そんな事を考えながら朝のホームルームは過ぎていく。
「あー、織斑、霧島。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろ」
織斑先生はそれだけ言って教室を後にした。
さて、急いで移動しないとね。
「織斑君と霧島君だね? 初めまして、僕は―」
「ああ、自己紹介は後で聞くから。とにかく移動をするぞ、女子が着替え始めるからな。八雲行くぞ」
「はいよ」
とりあえず、教室を後にして、更衣室に向かう。
道中でデュノア君に簡単に色々説明している一夏。
(マスター、後方より女子の大群)
大群って、もう少しまともな表現…
「転校生発見!」
「しかも織斑君と霧島君も!」
悪かった。あれは大群って感じだわ。とりあえず逃げないと遅刻する。織斑先生の特別カリキュラムは御免だ。
でも、前からも来て囲まれると面倒だしなー。とりあえず、周りを見る。暑くなってきて開かれた廊下の窓。…飛び降りるか? そう考えていると丁度良い物を見付ける。
「一夏、デュノア君。先に行かせてもらうよ」
それだけ言って、僕は窓の縁に飛び乗り、そこから外へ。雨水とかを流す排水管に捕まり、そのまま下へ滑り落ちる。やってて良かった陸戦訓練。何でもやっておくべきだね。
まあ、それはそれとして僕は更衣室に入り、着替えを済ませる。
ISスーツって体にフィットするように作られているから、結構きついんだよね。引っかかるし。何にって…そりゃもちろんナニに。その辺は技術者の人も気付いていたので改善はしてもらったんだけど、やっぱり引っかかる。なので着替えるのにも時間が掛かる。だから、朝のうちに着ておく。着にくさをを除けばかなり良いインナーではあるし。とんでもなく高価格だけど。
服を脱いで片付けてから、更衣室を後にしようと、ドアを開けたら丁度二人が来た。
「おっ、案外早かったね。もう少しかかるかと思ってた」
「いや、八雲の飛び降りを見た皆が驚きすぎて、動きが止まっている間に抜けてきた」
まあ確かに派手だったからね。
「つーか、ケガとか考えなかったのか? あの高さから落ちたら危ないだろ」
「大丈夫でしょ。ちゃんと着地できれば。実際なんともないし」
いざとなったら、ばれない様に魔法使うし。
「なら良いけど。そういやシャルルとあいさつまだだろ?」
「そうだね。僕は霧島八雲。よろしくねデュノア君」
「よろしくね。僕の事はシャルルで良いよ」
「了解。僕は八雲って呼んでくれ。んじゃ、先にグラウンドに行ってるから二人とも遅れるなよ」
さて、今日は初の本格的な実習だし、頑張りますか。
排水管を使って降りるシーンは、strikersのエレベーターシャフトを使っての降下を想像していただければいいと思います。
次回は実習編!