IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~   作:ピーナ

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過去最大の文字数になる説明回になります。


第二十三話 人に説明するのって結構難しい

臨海学校の翌日、僕は授業をサボった。いや、織斑先生には事情を言ったから、サボりではないか。理由は事情の説明を纏めるため。

 

(説明どうしようかな? どっから話せば良いんだろ)

(難しいですね。少なくとも魔法の事と管理局の事は話さないといけませんね)

(魔法、信じてもらえるかなあ?)

(実際、皆さん見たのですから信じてもらえるのでは?)

 

突然、なんの脈絡もなく「魔法を使えます」と言うよりは信じてもらえるだろうけど…

 

(そういや、次元世界の事もか)

(そうですね。順番から行くと、次元世界の事からですかね)

(うーん……そうだね、それが一番スムーズそう)

 

順番は次元世界→魔法→管理局で行こうかな。

 

(ただね、やっぱりこの後かなり残っている学生生活が不安だよ)

(不安ですか?)

(うん。小中の時は魔法やらを教えたのは結果としてアリサとすずかだけで、あの二人は受け入れてくれたけど、普通、自分の知らない物を受け入れるのって難しいと思うんだよね。それを先生や生徒の中でも影響力のありそうな会長や専用機持ち達にばれたからね。最悪いじめになるかも)

 

まだまだ、子供だったから受け入れられたのか、それとも、アリサとすずかの二人だったから受け入れられたのか…。どっちなんだろ? 僕個人としては後者であって欲しい。

 

(もしもそうなったら、どうします?)

(学校辞めて、ミッドに行くよ。会社に直通の転送ポート設置してもらえれば、データだけなら取れるし、表舞台に出なければ『ブリュンヒルデの弟』である一夏の方が注目されて、僕なんて数年で忘れ去られるでしょ)

(なるほど、当初の予定に戻ると)

(だね。数か月だけこっちに居る事になったけど、元の道に戻るだけだよ)

 

長い人生、遠回りしたと思えば良いさ。

 

(それに、逆に考えれば、はやてと一緒に居る時間がちゃんと取れるようになるから、そっちの道の方が良いかもねー)

(……そうですか)

 

叢雲さん、その謎の間は何でしょうか。まあ、何でもいいけど。

 

(腹は括った。後はすべてを天に、いや、皆に託すだけだね)

(天と言ってもあの神様ですけどね)

(叢雲、一応君の生みの親だよね?)

 

 

放課後になって僕はあらかじめ織斑先生に指定された会議室に入った。

そこには既に福音の一件で僕の魔法を見たすべての人―一夏、箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、本音、楯無先輩、虚先輩、織斑先生、山田先生―と何故か篠ノ之博士がいた。

 

「皆さん早いですねー。…って、軽い雰囲気じゃないですね」

 

まあ、得体のしれない力を持った人間がいたらそうなるか。

 

「真面目な場だ。早く始めろ」

「了解です。っと、その前に叢雲、頼んでおいた事を」

「了解。………盗聴器の類の物の反応は無し。問題ありません」

「八雲君、さっきの声は?」

「その辺も順序立てて話しますよ。…さて、導入としてたとえ話を一つ。ISは宇宙での活動を前提として研究をされていますけど、時々文学作品とかで宇宙を『星の海』と表現をする事がありますよね? 僕は個人的にこの表現は凄く上手いと思っていて、さしずめ地球は日本みたいな島国なんだなと感じます」

 

まあ、それなら、とんだ地方分権の進んだ国だけどね。

 

「まさか、お前が宇宙人だとでもいうのかよ?」

「いや、僕は日本生まれ海鳴市育ちの海鳴っ子だよ。ただね、ちょっとした事で、もう一つの海に出会っただけ」

「もう一つの海?」

「そう、『次元の海』。 極めて近く、限りなく遠い世界を繋ぐ海をね。まあ、SF小説とかに出てくる並行世界だね。僕の両親はそこの出身らしいんだ」

「らしいというのは?」

「僕が小学生の頃に亡くなったので。両親の遺品を整理していた時に見つけた日記に書かれていて知ったんです」

 

そこで雰囲気がさらに悪くなる。

 

「続けますよ? んで、両親の世界、『ミッドチルダ』って言うんだけど、そこには地球とは違った技術が色々あってね、僕がこの前使ったのはその一つ、魔法」

「「「「「「「「「「「「「魔法!?」」」」」」」」」」」」」

 

全員ほぼ同じタイミングで驚きの声を上げる。そのせいで耳が痛い。

 

「まあ、ファンタジーとかに出てくるようなものじゃなくて、全部技術として成り立ってるものだから想像とはかなり違うと思う。制御に必要なのは理数系の能力だし。叢雲はその魔法をサポートする魔導師の杖と思ってもらえれば良いです。……さて、ここまで、僕の身の上話をしてきましたけど、ここからは昨日の事も関わってきます」

「それは、八雲さんの言った『僕のお仕事』という言葉と何か関係が?」

「虚さん流石ですね、大体その通りです。まず、前提としてミッドチルダは就業年齢が結構低いんです。能力主義の部分が強いので飛び級もバンバンありますし、学校行きながら働くみたいなことをしている人も全然います。僕もその一人です。今は全寮制のここに入ったから休業中ですけど。それで、僕の働いている所は時空管理局。さっきの次元世界の中でそれを認識して行き来できる技術を持つ世界、僕達は『管理世界』と呼んでいて、そこの平和と秩序を護る、年中人手不足のブラック機関です。次元世界版のICPOと思っていてください」

 

時空管理局の仕事は管理世界ごとの政府と協力しての治安維持などをする地上本部(陸)と次元世界を股に掛けた次元犯罪者や管理外世界で起こったロストロギアなどの事件を担当する本局(海)に分けられる。

まあ、予算と人材の取り合いで仲は悪いんだけど。

 

「色々な仕事があって、その中でかなり大事な仕事がロストロギアの回収と封印です」

「ロストロギアというのは?」

「ロストロギアは色々な事情で遺失してしまった技術で作られた物品の総称です」

「でもさ、そう簡単に技術って無くなるものなのか?」

「今の時代は色々な方法で残す手段はあるけれど、それでも口伝で伝えられるものだって当然あるしね。そういうものは継ぐ人が居なくなった瞬間に失われる。後は何かの事情で別の物に取って代わられたりとかね。技術が無くなるのなんて簡単だよ。一番シンプルな物も残っているし」

「シンプルな物?」

「その技術を持つ人間をすべて消す事」

「なっ…!?」

「そんなに驚く事かい? まあ、日本人的には結構縁遠い事なんだけど、侵略の歴史を持っている、他の国の人なら分かるかもね。それによって文化や書物はどれだけ失われたか。技術も似たような物さ」

 

個人的に歴史小説とかも好きなので、その関係で日本史や世界史は結構好きだ。歴史は失われた情報を想像するという楽しさもあるから良いんだけど、出来るなら本当の事を知りたいという僕も居る。

 

「話が横道に逸れてた。本題に戻ります。そのロストロギアにはとんでもなく危険な物もあるんです」

「その危険と言うのは、どの程度の事を指すんですか?」

「惑星に根付いた文化が滅ぶくらいは危険ですよ」

 

僕のさらっと言った言葉で全員は言葉を失う。…まあ、僕の場合ロストロギアが切っ掛けで滅亡した世界『遺失世界』を見てきたから、感覚が狂ってるんだけど。

ちなみに、僕が遺失世界に出向く理由は二つ。ロストロギア捜索と、違法研究所調査だ。後者は誰も居なくて誰かが来たら一発で分かるという立地の良さのせいで割とよくある。

 

「…まさか、その話をしたって事は」

「クラス代表戦の時の無人機と、学年別トーナメントのラウラの機体と、昨日の福音にもありました。とはいっても、それ自体にはそこまで危険性は無いんですけど」

 

僕の言葉に皆ホッとした表情をする。特にラウラは自分の機体にそんな危ない物が搭載されていたのだから、当然だろう。

 

「あれらに搭載されていたのは『ゴーレム』と呼ばれる古代の無人兵器の動力炉をISに移植させた物です」

「それは何でわかったの?」

「『ゴーレム』って言うのはいろんな世界で使われていたポピュラーな物で、データがたくさんあるんですよ。その反応を叢雲がキャッチして分かったって感じですね」

 

叢雲はそこら辺にあるデバイスとは一線を画した性能を持っている。あらかじめ術式を組み込むことで色々魔法を使えたり、探査能力も抜群だったりで、感謝してもしきれない。頭の上がらない人第三位である。

ちなみに一位はレティ提督とリンディ提督の二人が並んでいる。

 

「ついでに言うと、それを停止、封印するのは正規の封印魔法を使うか膨大な魔力を当てて強制的に封印するかの二つしかないです。三回とも僕は後者の手段を取らせていただきました。僕としてはそっちの方が楽なんで」

 

正確に言うと僕は封印魔法が使えない。あんな繊細な物使えん。適性ってのは大事だね。

 

「…僕からの話はこんなもんです。何か質問とかあります?」

「はいはーい」

 

真っ先に食いついてきたのは篠ノ之博士。目が怖いです。この目はよーく知ってます。ISを知った管理局の技官だったり、魔法を知ったバニングス社の技術陣と同じ目。好奇心の塊の目。

 

「なんでしょうか、篠ノ之博士」

「束さんでおーけーだよ、やっくん。私が聞きたいのは、魔法って言うのは皆使える物なのかな?」

「正直に言うと無理ですね。魔法を使うためには大気にある魔力素って言うのを吸収して魔力を体内に取り込む『リンカーコア』っていう器官が必要でこれは生まれつきの物なんです。地球生まれの人がこれを持っている可能性は凄く低確率なんです。普通知らなければ、無意識的に魔力を微量放出しているんですけど、その辺も反応ありませんし」

「そっかー少し残念…」

「しかし、それだと魔法が使える物がひいきされる社会になるのではないのか?」

「いや、そんな事無いですよ。管理世界の中でも魔法が使えない人はたくさんいますけど、そんな事で差別される事なんてないですよ。それは人の個性です。足が速い速くないとかと同じような物です」

 

だからこそ、僕は地球のISを発端とする女尊男卑の意味がさっぱり分からない。平和を司るという意味ではISと魔法は変わらない。しかし、ミッドを始めとする管理世界で魔力保有者を優遇する政策を取っている所は無い。

管理局内だと、高ランクの魔導師は若くして出世する事などの優遇策があるけれど、それはどっちかと言うと、後方勤務より手柄を立てれるのと魔導師の数が少ないからであって、所詮は実力主義の一環と言った所だ。

だから、しっかりとその立場で結果を出さないと信頼を得れない。肩書だけの階級、役職になってしまう。だから、そんなに楽な事でも無いのだ。むしろ面倒なくらいだね。

 

「八雲君が強いのは魔法が関係しているの?」

「完全に関係していないって訳では無いですね。飛ぶ感覚と戦いの感覚は間違いなく僕の実力の一部になっていると思います」

「ちなみに時間は?」

「どんだけだっけ、叢雲?」

「3000時間は超えていますね。そこから先はカウントしていません」

 

そんなになるのか。まあ、僕が魔導師になって大体7年経つし、そんな物か。前線で戦うために鍛えないとだし、身内に戦闘狂が居るし、少し前に自分が起こした事件のせいで面倒な派閥に目を付られて、危険度の高い仕事ばっかりやらされれたし、それが終わったと思ったら、今度はクロノに厳しい仕事の手伝いさせられるし、…この7年飛んで戦う事はほとんど日常の様な物だ。

 

「3000時間……桁外れね」

「そうなんですかね? 飛び始めて7年経ちますし、毎日1時間ちょっとで超えますし、そんなでもないと思うんですけど」

「多いですよ。一般的な代表候補生は一年生で300時間と言った所です。専用機持ちならその倍くらいと言った所でしょうか」

「国家代表になった私でも1000時間いくかどうかと言った所よ」

「恐らく世界で一番ISを動かしている私でも2000時間に満たない」

「すみません、理解できました」

 

決してイコールで結べはしないけど、経験値と言う意味では他の人から見て桁外れだったらしい。……感覚狂ってるなー。主に周りが理由で。

 

「魔法はこの前使ったのが全力?」

「千差万別なんで一概には言えないですけど、威力は高い方ですね」

 

エンシェントノヴァの特徴として『上級術の割に範囲が狭い』と言うのがある。一点突破や、狭い空間ではかなり役に立つけど、ジュエルシードの最後の暴走体やら、夜天の書の闇だったナハトヴァールには範囲の問題でちょっと物足りない感じがある。上級術は威力高いで良いとは思うけど。

 

「それなら、全力だとどれくらい?」

「どれくらいだろ? そもそも、最大出力を使うと疲れるから、ほとんど使わないですし」

 

というより、秘奥義を使わないといけない事態になかなかならないし。最後に使ったの何年も前だしなー。

 

「叢雲分かる?」

「後先考えなければ、この島を更地には出来るでしょう」

「……マジでか。そんなに威力あんの?」

「いや、自分で言ってんなよ!」

「流石に何年も使ってない物は把握できないよ。使うと何時間も寝ないといけない物そうぽんぽん使っていられないって」

 

普段から良く使うのならともかく、滅多に使わないのは流石に覚えてられない。

いやー、神様に頼んで貰ったオクタゴンエレメントなんだけど、一回しか使ってないのって結構ある。いざ戦闘となると慣れと使いやすさで選んでしまう。こればかりは仕方ないね。

 

「他何かあります? 無いなら僕帰りますけど?」

 

久しぶりに実戦で魔法を使ったからちょっと疲れが残ってる。日常生活に問題無いし、今から実戦に投げ込まれても大丈夫だけど、疲れは抜ける時に抜いておきたい。常に100%の状態は難しいけど、それを維持する事を怠る訳にはいかないね。

 

「じゃあ、一ついいか?」

「なんだい、一夏?」

「俺と戦ってくれ。魔法有りで」

 

……何ですと?




そして、次回のフラグを立てました。
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