IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~   作:ピーナ

39 / 65
戦闘回です。


第二十四話 守りたいもの

(一夏の挑戦を受けたのは良いけどさ、どうしよ)

 

ピットで模擬戦の準備をしながら僕はある事を考えていた。それはIS戦における魔法の使い方。

はっきりと言い切れはしないけど、多分IS戦に魔法は役に立たない。

 

(どれも速さが足りませんね)

 

そう、叢雲の言う通りなんだよね。初級、中級術は弾速が、上級術は詠唱の時間がそれぞれ問題になってくる。どちらも一応カートリッジシステムで解決できるんだけど…

 

(模擬戦にそれを使うのはどうなんだろ?)

(そうですね)

 

一応、やる事が無くて魔力も自然回復もするので、シャマルにカートリッジの作り方は教えてもらってコツコツいろんな人から隠れながら作っていて、結構な数になったんだけど、それでも抵抗がある。

 

(いざという時足りませんじゃ話にならないからねー。使用数に制限付けるか)

(その辺が落とし所なのでは?)

(んじゃ、マガジン1本にしとこうかな)

 

その辺で十分だろう。と言うより訓練で使い過ぎると反動で本番とか日常生活で影響を及ぼす可能性もある。鍛えているからそんなにやわじゃないけど、慎重になる方が良い。

ただ、流石にマガジン1本=6発だけで仕留めるのは難しい。ってか、ほぼ無理だ。

 

(…ていうか、ここまで考えた後でなんだけどさ、普通に剣で戦えば良いんじゃねえの?)

(…たしかにそうですね)

 

根本的に何で気付かんだろ? めっちゃ簡単な事じゃん。僕の魔法は遠くからぶっ放すものだけじゃない。剣の技も僕の魔法の一部だ。

 

(しかし、これで僕が本気じゃ無かったって気付かれちゃうよね)

(それは、仕方なかった事です)

 

確かに、瑞雲が未完成だったから、IS戦で接近戦は出来なかったし魔法も使えない。近接ブレードが入っていて近接戦は出来たけど、テストパイロットの仕事として彩雲のデータ収集が優先だったという理由もあるけど、何より大事なのは僕の相棒は叢雲だけという事。浮気はダメ、絶対。誤魔化すための遠距離武器としての彩雲はともかくとして、近接武器は叢雲以外は使いたくない。凄い個人的な理由だけど、僕にとってはかなり大事な理由だ。

後、叢雲なしでも魔法は使えない事は無いけれど、制御も自分でやらないといけないから結構しんどい。それを任せられるのはやっぱり叢雲しか居ない。

僕がISを纏うように叢雲もIS戦に対応できるように瑞雲を纏う。ただ、瑞雲の完成が遅かったのだ。

 

「んじゃ、ちょっとばかし本気で行きますか!」

 

 

僕がアリーナに降りると既に一夏が白式を装備して待っていた。

 

「一夏、待った?」

「いや、俺もさっき来たところだ。…やっぱり剣が本気なのか」

「気付いてたの?」

「はっきりとじゃなくて、何度も模擬戦やってる間に八雲が妙に接近戦での防御とかが上手かったから、ちょっと違和感があったんだよ」

「なるほどねー、接近戦主体の一夏だから気付けたって事か」

 

それなら、何人か違和感を持ってた人は居るだろうな。筆頭候補は楯無さんと織斑先生だね。

 

「まあ、僕から言える事は…気を抜いたら一瞬で決着が着くよ」

「…分かった」

 

お互い得物を構え、開始の合図を待つ。

 

『試合開始!』

 

その合図が聞こえた瞬間、僕は一夏の真後ろに転移し、そのまま横薙ぎ一閃。

 

「ぐっ!」

 

少し距離を取り体勢を立て直そうとする一夏。そんな隙与えない。開始の合図と共に用意しておいた瞬時加速をこのタイミングで発動させ、一気に距離を詰め瑞雲を振り下ろす。

一夏は何とか雪片でそれを防ぐが、単純な腕力と突撃のスピード分僕の方が威力が高かったので、防御が崩れる。

 

「まだまだ!」

 

僕は振り下ろした勢いのまま一回転でかかと落としを浴びせ、さらにそのまま回り続けて追撃の斬撃と蹴撃を浴びせる。『裂空斬』のアレンジ技だ。

たまらず一夏は距離を取る。一呼吸置くつもりだろう。

 

「だが、それも甘い! 蒼破!」

 

離れた一夏に向けて斬撃を飛ばす。慌てて避ける一夏。

 

「追蓮!」

 

その避けた方向に追撃の斬撃を飛ばす。それを一夏は二次移行で生まれた物で防ぐ。まだ、集中力は切れてないか。

不意打ちだけで行けると思ったんだけどなー。

多分、この前の福音戦と言う実戦を経て実力が伸びたのかな。

 

 

 

試合を見守る管制室。そこにいる人間のほとんどはモニターに映る映像の奇想天外っぷりに唖然としていた。

唖然とはしていない人間の一人、更識楯無はもう一人の唖然としていない人間である織斑千冬に話しかける。

 

「織斑先生、あれ、出来ます?」

「魔法である転移と武器の問題になりそうな斬撃を除けば出来る。そもそも、霧島と私ではタイプが違うだろう」

「どちらも高機動の格闘型ではあるけど、手数型の八雲君と一撃必殺の織斑先生ですからねー。織斑先生から見て八雲君の技量はどうですか?」

「極めて高い。勝てない訳では無いがな」

「つまり負ける可能性もあると」

「見た感じではな。ただ、もし霧島が第三回のモンド・グロッソに出たら、『ブリュンヒルデ』の称号は霧島の手に行く。確実に」

 

淡々と自分の考えを話していく千冬。しかしその内容は傍から聞けばとんでもない事なのだが。

 

「ですね。私も国家代表と言う立場上、いろんな国の国家代表を見てきましたけど、その誰よりも八雲君は強いと思います。やっぱり実戦経験、それも命懸けのものの差なんですかね」

「私自身に無いから何とも言えんが、霧島の実力の一端を担っているのは間違いないだろう。さて、これを見て現生徒会会長で国家代表のお前はどう受け止める?」

「…チャンスですかね。常日頃から霧島君は『自分より強い人間に徹底的に叩きのめされる方が人は強くなれる』って言ってますし、私もそう思います。ただ、国家代表になったって事で中々そんな人には出会えないんですけど、身近にいますからね。チャンス以外の何物でもないと思います。…少し悔しくは有りますけど」

「ふむ…」

 

千冬は一拍置いた後、

 

「霧島に惚れたか、更識?」

 

と耳元でささやいた。

 

「にゃ!?」

「その反応が答えだぞ、更識。…さて、もうすぐ決着が着きそうだな」

 

 

 

何度かの攻防の末に、

 

「はあ…はあ…」

 

息切れを見せる一夏。シールドエネルギーも2割くらいしか残っていないし、ISもボロボロだ。

 

「ふう…」

 

対する僕は一息吐き、呼吸を整える。エネルギーも移動に消耗した分だけなので9割は残っている。

 

「……やっぱ、強いな」

「そりゃ、何年も戦ってるからね。流石に負けるわけにはいかないよ」

「俺もそれくらい強けりゃ、俺のやりたい事できるんだろうな…」

「やりたい事?」

「俺のすべてを使って誰かを守ってみたいんだよ」

 

守る、ねえ……。それ自体は否定する気は無いんだけど……

 

「警官とか軍人でも目指してるの?」

「いや、ただ大事な人たちを守りたいんだよ」

 

はあ…、やっぱり。

 

「余計なお世話だけど、それは止めておいた方が良いよ」

「それは、どういう…」

「叢雲、カートリッジロード」

 

こればかりは自分で気が付いて自分で消化しないといけない。だから、徹底的にやってから、考えてもらおう。

ガシャンという音と共に一時的に機体の出力を強化させる。出力強化は一発で一分。これで一時的に常時瞬時加速に近い速度が手に入る。

僕はその速さを持って真正面、やや下気味から一夏に接近し切り上げる。

一夏はそれを防ぐが。これは予想通り。

 

「隙だらけだ」

 

がら空きの腹部を蹴り上げる。

打ち上げた一夏を追い抜き次はかかと落としで叩き落とす。

追撃の手はまだ緩めない。

再び追い抜き、次は前へ蹴り飛ばす。

 

「これで決める! 斬空刃無塵衝!」

 

蹴り飛ばした一夏を追い、斬る。多分見ただけじゃ分かんないだろうけど、連続で、だ。

 

(あちゃー、やり過ぎた?)

(…やり過ぎですね。恐らく、5割くらいでも削りきれたかと)

 

オーバーキルしすぎた。ちょっと反省しよ。

 

 

一夏をピットに運んでから、僕は僕の方のピットに戻った。

 

(叢雲、カートリッジシステムの方不具合無い?)

(機体の方に問題無いですね。お体の方は?)

(一発しか使ってないから、問題無し。大丈夫、そんなやわな鍛え方はしてないよ)

 

一戦単位で何十発使っても特に問題無いだろう。翌日以降に問題が出るけど。

 

「霧島良いか?」

「織斑先生ですか。大丈夫ですよ」

 

何か、模擬戦と共に織斑先生が来るのがセットになってる気がする。

 

「まずはやり過ぎだと言っておこうか」

「やっぱりですか。一夏の様子はどうですか?」

「意識を失ってるだけだ」

 

骨折とかしてなくて良かった。まあ、そうしたら、魔法使うだけなんだけど。

 

「理解しているのなら、これ以上は言わない。最後のは最近提出したカタログスペックに追加されていた物か?」

「はい。魔法の技術を応用して作って貰った物です。毛色の違うものだったので、つい最近完成したんですよ。詳しくは提出した通りです」

「そうか。…一つ個人的に良いか?」

「何ですか? 先生」

「先程の一夏とのやり取りだ。何故、守るのを止める方が良いなどと言った」

 

その事か。かなり個人的な意見なんだけどな。

 

「えーっと、一夏はすべてを使って大事な人達を守りたいって言ってましたよね? でも、例えばその守る事によって一夏が傷付いたり、最悪の結果で終わったら、その一夏の言う大切な人達は喜びますか? たとえ命を守れてもその人達の心は守れていませんよ。ずっと罪の意識を持ち続けると思います。生半可な実力と覚悟じゃ近い未来に起こります。たとえISがあっても」

 

大切な人を失う。それが遺された人に与える悲しみはかなり大きなものだと思う。

僕自身、前世で家族を事故で失い、天涯孤独になったから分かる。周りの人の支えがあって立ち直れたけど、その悲しみは今でも残っている。だからこそ、僕はその悲しみを僕の大切な人に与えたくない。

だから、僕はすべてを使って守りたいという言葉を否定した。

 

「それに、力を持って何かを守るという事は、何かを傷付ける事です。たとえ、法律的に正当防衛を認められても倫理的には人を傷付けるというのはやってはいけない事です。当然、傷付けた人間を大事に思う人も居るわけで、そこから逆恨みが発生するかもしれません。言うならば『罪にならない罪』です。そして、その矛盾はいつか一夏を殺します」

 

……闇の書事件の後、僕は事件の際襲った管理局員の家族に責められた。僕はそれをただ受けとめるしか出来なかった。何かを言い返せるわけでもない。僕には僕の言い分があり、相手は僕にぶつけたい想いがあるのだから。

すべてを闇の書の闇であったナハトヴァールになすりつけるのは簡単だ。でも、僕には曲げたくない意志があって、なすりつけはそれを曲げる事になるから、それを今でも背負っている。

僕個人の考えとして「守る」というのは、とんでもなくエゴな想いだと思う。

「誰かを守る」というのは所詮自分の自己満足でしかなく、そのために他の誰かを傷付ける事を厭わない。「守って死ぬ」なんて自己陶酔の極みだ。

でも、僕はそれを悪いと思わない。自分の人生、自分で指針を決めても何が悪い?

僕ははやての笑顔を守る。そう決めた。その為にはやてを、彼女の周りの人を、そして何より自分自身を守る。

ただ、守るというのは茨の道だと僕自身が知っているから、お節介として一度否定した。

それでもまだ曲げないのなら…もう、好きにすればいいんじゃないかな。

 

「ふむ、お節介という訳か。お人好しだな」

「よく言われます。でも、一度ぐらいじっくり考えるってのも悪くないと思うんですけどね。まだ学生なんだし」

「同じ学生であるお前はそうでも無いみたいだが?」

「僕の場合色々有りましたから」

 

そのせいで僕達魔導師組は大人びて見えるらしい。ソースはアリサ&すずか。まあ、僕の場合前世込だからなんだろうけどね。

 

「そうか。今日はこれで解散だ。ゆっくり休め」

「分かりました。とりあえず部屋に戻って期末テストの勉強でもしてます」

 

そう言って、僕は自室に戻った。

テストさえ終われば、夏休みに入る。そうすればミッドに長く入れる。後少し頑張るだけだ!




なんかフラグが立ってます。まあ、クラス代表戦の時に起こった所謂吊り橋効果って奴ですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。