IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~   作:ピーナ

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IFルート 第四話 僕の罪、僕への罰、僕への想い

まあ、なんかいろいろあって、今は行事の一つ学年別トーナメント初日となった。

学年別トーナメントはほとんどの一年生にとって初の公式戦の場となる。今回は何故かタッグマッチになったのだが、人数の都合上と僕の実力の問題で一人で参加する事になった。

初日は一回戦全部を消化し二日目で残りの試合を消化する。これが二、三年になるとはっきりと科が分かれて、出場する人が減るから一日で全日程を行えるけど、一年は全員参加なので二日に分けられる。ちなみに二、三年は来週になる。

僕は唯一の単独出場なので、今日は部屋でゆっくり読書をしようと考えている。ちなみに同室の会長さんはお仕事でアリーナへ。

そんな時、ISのプライベートチャンネルに通信が入った。

 

『はい、霧島です』

『今どこに居る』

『僕は今日予定が無いので部屋で明日の為に休んでますけど……何かあったんですか? 先生』

『ああ。ボーデヴィッヒのISが暴走して、それを止めたはずだが、再び暴走を始めてな、上級生や教師部隊が抑えているが、正直戦況も良くないし、残りのエネルギーも心もとない。そこで、お前に時間稼ぎを頼みたい。……やってくれるか?』

『ええ、構いませんよ。移動の時間が惜しいので、アリーナの外でISを展開しますけど、よろしいですか?』

『了解した。アリーナ上空のシールドが解除されているから、そこから入れ。……頼んだぞ』

『了解』

 

通信を終え、僕は窓から飛び立つ。

 

 

 

「最悪の状況ね……」

 

思わず私はそう呟いた。

学年別トーナメントAブロック一回戦第一試合、つまりはトーナメントのオープニングゲーム。カードは織斑一夏&シャルル・デュノアペアVSラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒ペア。その試合の最終盤に事件は起こった。織斑・デュノアペアの勝利で終わるかと思われた時ボーデヴィッヒちゃんのISが暴走したのだ。それ自体はすぐ織斑君が倒して一段落と思ったのだが、何故かISは再暴走し、もはやISと呼べない位禍々しい物に変化した。

エネルギーの少ない織斑君達を一悶着あったけど下がらせて、私は教師陣とその暴走体(仮)に当たった。

正直、アレを形容する言葉は『化け物』がぴったりだと感じた。十機以上のISが同時に挑んでもびくともせず、それで、触手らしきものでの攻撃は一撃でかなりのエネルギーを削る。一機また一機と戦闘継続困難に追い込まれ、今では残っているのは私だけ。それも回避ばかりで攻撃に中々移れない。

そして、疲労からだろう。一瞬集中力が切れてしまった。それが命取りになった。暴走体の攻撃が直撃コース。防御も回避も間に合わない。思わず私は目をつむってしまう。

しかし、衝撃はいつまでたってもやってこない。恐る恐る目を開けると私を庇い、背中で攻撃を受けている霧島君の姿があった。

 

 

 

僕がアリーナに着くと、そこには異形の物体とそれに対する会長さんの姿があった。どうやら、彼女が殿を務めているらしい。

 

(しかし、叢雲。アレも魔法関連、ロストロギア関連の物品かな?)

(恐らくは。ISが限界を迎えると共に暴走するように設定してあったのではと推察します)

(……たちの悪い時限爆弾だな。まあ、行きますか)

 

戦線に参加しようとした瞬間、会長さんに向けて攻撃が行われる。会長さん自身は実力者のはず(以前『生徒会長はすなわち学園最強の証』と言っていた)なのだが、疲労からだろう、反応が一瞬遅れた。そして、それは戦いの場では致命傷になる。……そんな事、やらせるかよ。

僕はPICを全て切り、重力に任せながら落ちていく、その間もとうぜん、全開でスラスターを噴かせている。そして、攻撃と会長さんの間に入って、身を挺して庇う。よけきれず右のわき腹を背中側から抉られる。ISの絶対防御にバリアジャケットとISスーツを抜いてくるんだから、脅威だ。そこそこ血も出ているが、それは問題じゃない。

 

「き、霧島君……?」

「会長さんは下がってください。ここは僕が引き受けます」

「でも、血が……」

「気にしないでください。見た目ほど深くはありませんから」

「……分かった、ここは任せるわ。それと、絶対に無事に帰ってきて」

「……分かりました」

 

そう言って、会長さんは戻っていった。

……どうして、僕は会長さんに分かりましたなんて言ってしまったんだろう? 自分でもよく分からない。

 

(叢雲、怪我はどんな感じ?)

(大き目の血管が傷付いているので少しまずいですね、早いうちの応急手当をお勧めします)

(……治癒魔法を僕は使えないよ?)

 

正確にはあの後、治癒魔法が使えなくなった。理由は不明。レアスキルと精神状態の問題というのが管理局の医務官の意見だ。

仕方ないか。僕は叢雲をIS戦に対応させた専用刀『瑞雲』を呼び出した。

 

「魔王炎撃波」

 

僕は刀に火を纏わせるとISの絶対防御を叢雲に部分的に解除してもらって、その刀を患部に押し付ける。

 

「ぐああああああっっっ!!!」

 

激痛で声を上げてしまう。意識も持ってかれそうになるのを必死に耐える。体力も持ってかれたけど、これをしないと戦闘中に意識を失う可能性もなる。

 

「はあ……はあ……準備完了。余裕も無いし、とっとと決める」

 

僕は一気にトップスピードに乗り、相手に肉薄する。相手もそれを避けるために迎撃するが、僕はそれを掻い潜っていく。

 

(叢雲、封印すべきコアはどこに?)

(スキャン完了。相手の中心部ですね。しかし、ISを取り込んでいるので強固な装甲で守られています。まずはその破壊を)

 

装甲の破壊と封印までか……威力の高い奴を撃ちこみますか。

まずは近付いて、相手に二撃、十字に切り裂く。そして上空に飛ぶ。その間に武器を『彩雲』に変更。魔力封印に対応したバレット、『Hバレット』に切り替えている。

 

「ターゲットロック。撃ち抜かせてもらう」

 

そこから発射された大きな魔力弾が十字に切り裂いた所に吸い込まれていくように命中する。僕の技の一つ、「クライシスレイン」だ。

 

(マスター、封印が不十分です)

(でも、動きが弱っているし、直接雷神剣ぶち込んで封印するか)

 

再び一気に近付き、露出していたIS部分に刀を突き刺す。

 

(マスター、相手に高エネルギー反応! 自爆を狙っています!)

(くっ、叢雲、周りにバリアを展開。周囲への被害を防げ。僕はこのまま封印をする)

(了解)

 

自爆と封印、どっちが早い?

 

 

 

事件が全て終わってから私はずっと保健室の一つのベットの横で座っている。そのベットに眠っているのは霧島君。

あの事件は霧島君の働きでほとんど被害無く終わった。被害を一身に受けたのは霧島君とその専用機出雲。

最後、暴走体は霧島君を巻き込んで自爆した。自爆のエネルギーはアリーナに被害を及ぼす位のはずだったんだけど、それは出雲の機能の一つ、『プロテクションシステム』によって軽減された。しかし、その代償に出雲は一週間は使用不可能というレベルのダメージを負い。霧島君は全身に傷を負った。

そして、その治療の為に彼のISスーツを脱がせたとき、そこに居た保健室の先生と私、それに織斑先生は息を飲んだ。

理由は彼の体中に残っている数々の傷痕。IS学園の保健の先生である吉岡綾子(よしおかあやこ)先生は、医師免許を取った後、学校に入り直し、養護教諭の免許も取り直したという変わった経歴を持っているけど、そんな先生すら眼をそらすようなボロボロの体だった。

これが彼の生きていた人生の厳しさを物語っている。こんなの……辛すぎるよ。

織斑先生と吉岡先生は他の仕事があったので、保健室を後にし、部屋には私と眠っている霧島君だけ。

私は考える。守りたい人、私だったら妹や家族になる。その人を守ろうと頑張ってその末に守れなかったらどう思うのか? ……正直、分からない。凄い泣いて自分を責めそうだなとは思うけど、それ以上は想像できない。

多分本音ちゃんの言っていた、「世界の全てに絶望する」って言うのが一番近いだろう。楽しかったものを楽しめない。それはさながらカラフルな世界がモノクロの世界になってしまったように。

いつの間にか私は泣いてしまっていた。同情も若干はあるだろう。でも、大きいのはそれを理解しながら何も出来ない自分自身のふがいなさに。

 

 

 

「ここは……?」

 

目を覚ました僕は、なにも無い真っ白な空間に居た。なんかデジャヴュを感じる。まるで、一回僕が死んだ時に来た部屋みたいな所だ。

 

「久しぶりやね、八雲君」

 

僕はすぐにその声に反応する。六年半ぶりでも間違えるはずの無い声だ。僕はその声の方を向いた。

 

「はやて……」

 

そこには成長したはやての姿があった。

 

「何泣きそうな顔しとんの?」

「……当たり前だろ、六年半ぶりに会ったんだから」

 

正直、今は涙を堪えるのでいっぱいいっぱいだ。

 

「それで、ここはどこなんだ?」

「そうやねえ……表すなら、生と死の狭間の世界かな。今の八雲君は臨死体験中ってわけや」

 

そうか、まだ僕は死んでいないのか……。いっそ、死んだ方が楽になったのに。

 

「私がここに来たのは八雲君にいくつか言いたい事があったからや」

 

やはり恨み言だろう。

 

「まずは……私の為に頑張ってくれてありがとう」

「……えっ?」

 

予想の斜め上を行く言葉で、僕は変な反応をしてしまう。

 

「何でそんな反応なん? 色々やってくれたんやから、お礼を言うんは普通とちゃう?」

「でも、僕は肝心な時に倒れて、結局守れてないし……」

「それが私の運命やったんよ。八雲君は私の事を想って頑張ってくれた。だから、私はお礼を言いたい。それだけやよ」

「僕はてっきり恨み言を言われるのかと……」

「そんな気さらさらないで。んで、次は、だから、八雲君は八雲君の道を歩いてください。そんで自分の幸せの為に生きてください」

「僕の道……でも、今のが」

「嘘はアカンで。今のは八雲君が自分の為に生きてへんもん。人の為と書いて偽と読む。私への贖罪を言い訳にして、八雲君は生きる事から逃げとる」

「そんな事! それに人の為って言うのなら、あの時のも否定するのかよ!」

 

今までの事を否定されるみたいで、大声を上げる。

 

「あの時と今は違うやろ。あの時は『私を守りたい』っていう八雲君自身の意志の為に動いてたはずや。でも、今はそうやない。だからこそ、頻繁に私のお墓に来て、自分を見直さなアカンのや」

 

……何も言い返せないのは自分自身薄々気付いていた事だからだろう。

 

「でも、それじゃ僕が僕を許せない」

「許せないなんて事はあらへんよ。それは、八雲君が自分を許したくないだけ。それに許せないんやったら、私が許す。八雲君は何も背負わんで良い。……って言いたいけど、それじゃ、納得せえへんやろ。だから、折衷案を考えた」

「折衷案?」

「うん。たとえどんな人生を歩んで、幸せになっても私の誕生日と命日だけは私を思い出してくれればええよ。それが私から八雲君への罰。呪いって言ってもええかもな。八雲君が自分で罰考えるより道理やろ」

「……はあ、分かったよ。その罰を受けてくよ」

「やっと、笑ってくれたな。苦笑やったけど」

 

笑った? 僕が? 笑うなんてここ何年もしてなかったのに……。

 

「さて、最後や。最後は……私は、八雲君の事が好きです」

「……僕もはやての事が好きだよ。君と別れて六年半経つけど、それは変わらない」

「その答えが聞けただけで満足や。……でも、約束通りあっちで新しい恋見つけてな。やっぱ幸せには必要やろうし」

「まあ、頑張ってみるよ。でも、はやてと同じくらい強く思える人がいなかったら、しないよ。これは僕の意地だ」

「そっか。……もう、お別れの時間や」

「もうか。……なあ、はやて。抱きしめていいか?」

「ええよ」

 

僕は彼女を抱きしめる。

二度と触れる事など無いと思っていた。僕は抑えていた涙をもう我慢できなかった。

 

「泣き虫さんやなあ」

 

笑顔を見せるはやて。やっぱり、素敵な笑顔だ。

 

「最後に八雲君にこれから頑張れるようにプレゼントや」

 

そう言って、はやては僕の唇にキスをした。深く長く、自分の存在を刻み付けるように。

 

「いつも見守ってるから、ちゃんと幸せに暮らしてな」

 

そういうはやてはずっと笑顔だった。

薄れていく意識の中、僕はもう一度、生きる意味を考えようと思った。……まずは幼馴染の皆に謝る事から始めよう。

 

 

 

 

「……ホントの泣き虫は私やけどな」

 

消えていく八雲君を見送った私は今まで我慢していた分の感情を爆発させ、大声で泣いた。

 

「お別れしたくないに決まってるやんか! そんなん、ずっと一緒に居たいに決まってるやんか! 八雲君のそばで一緒に生きたかったに決まってるやんか!」

 

これが私の本心。何処までもわがままな私の気持ち。

でも、そんなんを押し殺してでもああいったのは、あんなに苦しんでいる八雲君を見たくなかったから。いつもいつまでも死人の私に八雲君を縛り付ける訳にはいかん。

大好きな人だからこそ、私を想ってくれる事への嬉しさよりもいつまでも縛り付け続ける罪悪感の方が大きかった。

だから、私は八雲君の幸せを願う。愛した人だからこそ。

ただ、私も女だから、人だから忘れられるのは寂しいから、誕生日と命日だけは思い出してほしいって言ってしまった。結局、緩くはなったかもだけど、縛っているのは変わらへん。

全部忘れてって言えんだんは私の女々しい部分からや。

 

「八雲君、最後の私の笑顔の意味分かってへんやろうなあ……」

 

私はそう呟いた。

私の最後の時の笑顔の意味は、好きな人に見せる最後の顔だから、笑顔で記憶に残りたいという私の気持ちからだった。

それは、泣きたいって気持ちを押し殺せるほど凄い女の意地や。

八雲君、私はここであなたの幸せを祈っています。だから、精一杯生きてください。

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