今までと違い砂糖マシマシでお送りしてます。
『ミッドチルダよ、私は帰ってきた!』
『……どうしたんですか、マスター』
『いや、なんとなく言わないといけない気がしてさ』
IS学園の終業式が終わって、僕はすぐさまミッドに戻ってきた。
ぎりぎりまでミッドに居る予定だ。だって、はやてが居るし、女尊男卑の進んだ地球よりこっちの方が過ごしやすいもん。
『でもなんか、調子が出ないな…』
『体温が平時より高めです。学園生活の疲れが出たのでは?』
『かもね。…平熱が低いから少し辛い』
僕の平熱は36度以下。低体温の方なので、熱が出ると結構な体のだるさに襲われる。
早く家で休みたい。
こっちの金はあるし、タクシー拾ってさっさと帰ろう。
僕は自分の体調を甘く見ていた。僕の体は結構疲れていたらしい。
タクシーに乗っている間に寒気と頭痛が来た。しかもかなり重めの。
家に着いたけど、部屋まで歩いて行く気力が無い。
リビングにソファーがあるし、そこで寝よう。
『叢雲、シャマルに連絡頼む…』
『分かりました。はやてには良いのですか?』
『いい。迷惑になるし心配かけたくない』
『…分かりました』
『頼んだよ、叢雲。僕は寝る…』
後の事を全て叢雲に任せて僕はソファに身を沈めた。
はやてサイド
「あー、疲れたー」
私はとある事件が解決したので、それの報告などの後始末に追われていた。
「お疲れ様です、主はやて。今日はこの辺で切り上げられては? ここ数日働き詰めですし、書類の提出の期限はまだ余裕がありますし、残っているのは私で処理できるものです」
お茶を持って来てそう言うのは私の副官で、ユニゾンデバイスでもあるリインフォース。数年前に八雲君の補助のために二代目である、リインフォース・ツヴァイが生まれてからは『アインス』の愛称で皆に呼ばれている。
「そうかもしれんけど、二人で済ませた方が早いやん。それに、私の仕事なんやから、押しつけは出来んよ。働き詰め言うても、定時には帰れてるし大丈夫。それより、今日中に終わらせよ? 八雲君帰って来るし」
折角、私の恋人でもう家族同然の八雲君が家に帰って来るんやし、皆でゆっくりしたい。
「…分かりました。少し休んでもう一頑張りしましょう。…おや、叢雲から音声通信です」
「叢雲から? 八雲君じゃなくて?」
「ええ、いつもの映像通信ではなく、音声通信なので叢雲からです」
普段、八雲君は私の顔を見て話をしたいからという理由で、映像通信を使う。音声通信なのは仕事中で忙しくて自分で通信が出来ず叢雲に伝言を任せる時位のものだ。そして、その場合叢雲は音声通信を使う。なので八雲君から来る音声通信は十中八九叢雲からなのだ。
「なんやろ? とりあえず、出るわ」
『お久しぶりです、はやて。率直に用件だけ述べさせていただきます。マスターが倒れられました』
「なんやて⁉」
『恐らく学園での疲れから来る風邪かと。今はリビングのソファーでお休みです。…本当はシャマルにのみ連絡しろと言われたのですが私の判断で連絡させていただきました』
インテリジェントデバイスは経験を積む事で戦闘中、独自の判断であらかじめデバイスに入力されている魔法を使う事が出来る。それに伴って、AIに個性みたいな物が出てくる。
使いこめばリイン達みたいな人と同じ感じになるらしい。
叢雲は見た目はデバイスだけど、考え方は非常に人間臭い。命令や効率だけでなく、感情も入れた行動をする。アインスが『インテリジェントデバイスの皮をかぶったユニゾンデバイス』とまで言ってしまうくらいだ。
「そうか…。まあ、どうせ八雲君の事やから、私に迷惑になるとか心配かけたくないとか言ったんやろ?」
『その通りです。流石ですね』
「八雲君はそういう弱い所見せたがらんからなあ」
それが男の子の意地らしいけど、そんなん知らん。隠される方が余計心配になる。
「ありがとうな、叢雲」
『いえいえ、ではこの辺で』
そう言って通信を終える。
私は残っていたお茶を飲み干して、
「アインス、仕事頼める?」
「もちろんです。早く戻って、八雲のそばに居てあげてください。私も心配です」
アインスも叢雲もホンマ良い子らや。よく八雲君が『叢雲は俺には過ぎたデバイスだよ』っていうけど、その通りやと思う。そう言うと、アインスや叢雲は『マスターがあってこその私ですから』と返してくれる。
「ありがとうな。それじゃ、私は帰るわ」
「分かりました。食材は昨日リインとシャマルが休みだったので色々あるはずです。薬も先週シャマルが常備薬を確認していたので大丈夫です」
「そういや、そうやったな。余計な物買うところやったわ」
そこまで気が回らんって事はやっぱり八雲君の事を聞いて動揺してたんやね。
一回息を大きく吸って気を落ち着かせてから、私は執務室を後にした。
私が家に着いてリビングに入ると、連絡に有った通り八雲君はソファーで寝ていた。ただ、
「うう……」
寝苦しそうだ。うなされていると言っても良いと思う。
病気で体が弱っていると、思考がネガティブになって、悪い夢を見るって事は割とある事だと思う。
実際私も車いすの頃に入院した時は悪い夢ばっかりだったし。
「は…やて…行か…ないで…。僕を…一人に…しないで…」
うなされながらうわごとの様にそう呟き、右手を伸ばし何かを掴もうとするように動かす八雲君。
私はその手を握り、
「大丈夫、私は八雲君を一人ぼっちにはさせへんよ。これからもずっと一緒にいるから」
そう寝ている八雲君に言った。
私だって幼い頃に両親を失って、八雲君や守護騎士の皆に会うまでは一人ぼっちだった。だから、一人の寂しさは分かる。
そんな私だから、私達だから、皆でいれる事の大切さが分かる。相手を一人にさせたくないと思う。他の人から見たら依存って言われるかもしれないけど、これが私たちの支えあって歩いて行くやり方だ。誰にも否定されない。
私の声が届いたのか、さっきまで苦しそうだった八雲君の表情が穏やかなものになった。
「ありがとう…」
寝言で、特に意味は無いだろうけど、私の気持ちが通じたみたいで嬉しい。
八雲君が寝ている内にお粥を作ってしまおう。私は握っていた八雲君の手を放してキッチンに向かった。
「ううん…」
僕は意識を覚醒させる。体調は…まだだるいけど、寝る前よりは大分ましになっている。
「あっ、八雲君、体調どう? もうすぐお粥出来るで待っとってなー」
「ああ、うん、分かった」
僕はキッチンに居るであろうはやての声に返事を返す。……ん?
「何ではやてが居んだ⁉」
「まだ、体調悪いんやから、おとなしくしときなよ」
「ご、ゴメン」
「んで、私がここに居る理由やけど、叢雲が気を利かせて連絡してくれたからやよ」
「叢雲が?」
「そうや。…それにや、迷惑とか心配とか、体の調子が悪い時くらいそんなん気にせんと私を頼ってよ。頼られんの寂しいんやで?」
「…ゴメン」
逆の立場だったら僕も同じ感じだろうなー。
「折角帰ってきたんやし、暗い話はこの辺でおしまいや。お粥も出来たし」
お粥を入れた器をお盆に乗せて、はやてはリビングの方に歩いてきた。
「はやて」
「ん、何?」
「久しぶりに見たけど、エプロン姿も似合ってる」
「…やっといつもの調子が出て来たみたいやな」
「おう。…それと、取り繕った風だけど、顔は赤いぞ」
「…食べさせてあげよって思ってたけど、そんないじわる言う元気があるなら自分で食べれるよな?」
「僕が悪かった。だから食べさせてください、お願いします」
間髪入れず僕は謝った。
「はい、あーん」
「あーん。うん、美味い」
久しぶりのはやての手料理は抜群に美味かった。『料理は愛情』、はっきり分かるね。
よっぽど僕は手料理に飢えていたのか、はやてが作ったお粥をおかわりの分を含めて全部食べた。
「食欲あるから、薬飲んで寝たらすぐ治るんちゃう?」
「だと良いけどね。一応シャマルが帰ってきて診てもらうまではおとなしく寝てるよ」
僕の言葉を聞くとはやてはソファーの端っこに座り自分の太ももをトントンと叩いた。
「それなら、どうぞ」
「どうぞって…まさか、膝枕?」
「それ聞く? まあ、その通りなんやけど。その…寂しかったし、甘えて欲しいなーって」
恥ずかしそうに俯くはやて。僕はその顔も見たいので、お言葉に甘えて太ももに頭を乗せた。あー、すげー落ち着く。はやての顔も見れるし最高だね。
「あっ、そうだ一つ言い忘れてた」
「何?」
「ただいま、はやて」
「おかえり、八雲君」
ちなみにこのまま二人とも寝てしまい、この次に帰ってきたシャマルにからかわれるのを僕達はまだ知らない。
ここから何話かはISキャラが出てきません。ミッドに居るんで。