…と言ってみましたけど、今回はそこまで甘くないと思います。
ミッドに帰ってきて一週間、最初の方は体調を崩し、それの回復に専念していたけど、三日前にシャマルから仕事してもいいとの許可をいただき、必要な報告や書類作りを一気に進めた。レティ提督がかなり楽にしておいてくれたので当初より少なかったので、それもすべて終わらせ、本格的な僕の夏休みが始まった。
「八雲君、そろそろ行こか~」
「そうだね~」
今日は食料品の買い出し。明日から、皆遊びに来るし、僕が帰ってくる前に買い込んだ食材も大体使い切ったしで出かけることになった。
玄関に着くと今日一緒に行くメンバーがそろっていた。
「遅えぞ、八雲」
「ゴメンゴメン、お昼一品多く頼んでいいから」
「ホントか!」
目を輝かせるヴィータ。
「ヴィータちゃんだけずるいです~!」
「分かってる、リインもな」
「やったです~♪」
僕の周りを飛び回るリイン。
「いや、まあそれくらい平気やけど、二人はそれで良いん?」
「良いんじゃない? 本人たち喜んでるし」
それと僕とはやての四人で出掛ける。
我が家のお買い物は大体こうやって大勢で出掛ける。なぜ、そんなに大勢で行くのか? 答えは簡単。ミッドにも『本日のセール品、お一人様○○点まで』があるから。節約は主夫としての嗜みです。
最低でも3人、多いとザフィーラ以外皆で。以前ザフィーラに買い物行くか聞いたけど、「そういう事は皆に任せる」といって基本留守番役になっている。
今日の他のメンバーの予定は、
シグナム&シャマル 普通に仕事(二人とも何もなければ定時上がり)
アインス 休暇(しかし、僕の看病のためにはやてが休んだ分の仕事をしていたのでお疲れ気味。はやての命令で今日一日は完全休養)
となっている。
「悪いなはやて。僕が免許持ってなくて」
「いや、それは仕方ないやん」
ミッドの運転免許は二輪は15、四輪は16から取れる。仕事上で必要になる事も多いので大半管理局員は二輪、四輪のどちらかを持っている。というより両方持っている人も多い。というか、それを推奨している部分もあって、若い局員は免許取得のための休暇が認められているレベルである。
ちなみに効率化かどうかは分からないが、二輪免許持ちは四輪免許が取りやすいように色々融通が利くような制度になっている。
僕等は身分証明代わりに15の夏休みに二輪の免許を取った。
「はやても一週間くらいで取ったし、休みの内に取っておけば良いんじゃねえの?」
「そうだね。明日から皆来るし、皆帰ったら、さっさと取って来るか」
僕としてはやっぱり、彼女や家族と出掛ける時にはやてに運転を任せるってのはなんか違う気がする。
良いよね、家族そろってのドライブ。
ちなみに現在車の席順は運転席にはやて、助手席に僕。はやての後ろにリイン(大きくなったver)、僕の後ろにヴィータとなっている。
「さてもうすぐ着くし、ちゃっちゃと買い物済ませるで~」
「だね、買う物も決まってるし。合言葉は」
「「安くて良い物!」」
「二人とも専業主婦みたいです」
「まあ、知り合い皆『二人とも、キャラ的におかん。母親じゃなくておかん』って言ってるしな。らしいっちゃらしいんだよなあ」
さて、買い物を終えて近くのファミレスで僕達はお昼ご飯を食べる事にした。したんだけど……
「「……………」」
僕とはやての間には何とも言えない空気が流れている。
理由は、買い物の会計の時にレジの店員さんに言われた言葉。
その前後の会話はこんな感じ。
「ご家族でお買い物?」
僕達の行ったレジの担当は気の良さそうなおばちゃんの店員さん。海鳴に居た頃もこういう店員さんとはよく話して仲良くなったものだ。世界が変わってもそれは変わらないみたいだ。
はやても「スーパーで店員のおばちゃんや、買いに来たおばちゃんたちと話すんって結構楽しいし、主婦歴長いから勉強になるんよね~」と言ってたし。
「大体そんな感じです」
書類上僕を除いた三人は家族で形の上では僕は八神家に居候している。まあ、実質家族と同じ扱いを受けてるんだけど。だから素直に肯定じゃなくて、若干含ませた感じで答えた。
「若いのに大変だね~」
「いや、慣れてますし」
仕事の疲れが無ければ大体皆手伝ってくれるし、僕達のやりたい事だから、大変だとは思った事は無い。
そんなとりとめのない会話をしながら、おばちゃんはどんどんレジを打っていく。このおばちゃん結構なベテランさんだな~。
そんな事を話しながら、会計を終えた時に店員さんに爆弾が落とされた。
「仲の良い夫婦ね~。お幸せにね」
その言葉を聞いた時は言葉の意味がよく分からなかった。
幼馴染や同僚にからかわれた事は割とよくある事なんだけど、それはあくまで『カップルとして』だった。冷やかしの言葉で夫婦と言う単語は出て来たけど、それはあくまで「夫婦みたい」というもので、直接言われた事は無かった。
それを理解したら、凄い顔が熱くなった。横目でみたはやての顔が真っ赤だったから、多分僕も同じだったんだろう。
正直、そこからの記憶があやふやである。
「ヴィータちゃん、二人はどうしちゃったですか~?」
「まあ、あの店員のおばちゃんの言葉が二人にクリティカルヒットしたんだよ。私らが居たのも理由だろうけど」
「私達ですか?」
「おう。リインはともかく、私は色々あったけど、見た目は子供だろ? 普通に仲が良い、男女が子供二人を連れて歩いていて、しかも、八雲が家族って言ったからな。勘違いもされんだろ」
「なるほど~。でも、あながち間違いじゃないと思うのです」
「まあ、そうだよな。家のやり取りとか見てると、なのはの所の親に近い感じするし」
「分かりますね~」
ヴィータとリインが何か言ってるけど、今の僕にはそれを消化する事が出来ない。
「えっと…八雲君?」
先にはやてから僕に言葉を掛けてきた。
「お、おう」
「その…驚いたよな?」
「まあ……ねえ」
ミッドでは結婚は男女ともに18から。つまり僕達にはまだ二年程早い事になる。仕事の方もそこそこ忙しいし、何年も後になるであろう結婚の事については深く考えたは今までなかった。どうやら僕は猪突猛進の所があるらしい。
ただ、何も知らない他の人から見たら僕達はどうやら、夫婦に見えるらしい。……見た目で実年齢より下に見られることが多かったから、夫婦に見られるのは初めてだなあ。
「でも、私は嬉しかったで? 好きな人のお嫁さんって憧れるもん」
「……嬉しいのは僕も同じだよ」
それと同じくらい恥ずかしかったけど。
でも、何も知らない人から見ると(ヴィータやリインと一緒にいると)夫婦に見えるくらいには僕達も大人になって来たんだなと思う。
学園生活にも慣れて来たし、事件が一段落ついたら、もう少し先にも目を向けてみよう。そのためにも、事件の早期解決にむけて頑張ろうと改めて思った。
「いつか、必ず僕の気持ちを言葉にするよ」
「ん? 何か言った?」
「いや、なんでもない」
実はこのファミレスの一部始終がヴィータとリインによって撮られていた。それを知ったのは帰ってからの事で、明日から遊ぶから、前日の内に家に来たなのはとフェイトにネタにされてからかわれる事になった。ただ、僕の呟いた言葉が入ってなかったのはホントに良かったと思う。
次回から、皆が遊びに来る回になります。
……IS要素がどんどん無くなっていく。