はやてサイド
「そんじゃ、アリサちゃんたちのお迎え行ってくるわ~」
「ん、行ってらっしゃい。お昼の用意はしておくから」
八雲君がミッドに帰ってきて一週間が過ぎた。あっという間やった気がするわ~。
今日から一週間くらいは、我が家に皆集まってのお泊り会。建てた当初と事態は少し変わったけど、無事に迎えれたからまあええやろ。
ミッドに居るなのはちゃんとフェイトちゃん、それにユーノ君は昨日の夜の内に家に来ている。まあ、ここ数日お仕事で忙しかったみたいでまだ皆寝てるんやけど。
それに、実はまだ私しか免許持ってへんし。
なのはちゃん達は誕生日がまだやからで、八雲君は誕生日は過ぎたけど、色々あってとれてへん。ウチの子達でも良かったんやけど、生憎皆今日はお仕事。まあ、私らの事で皆に迎えを頼むのは違う気がするから、最初から考えてへんだけど。
そんな事を考えながら私は我が家で一番大きな車(家族皆で出掛ける用のワンボックスタイプ)に乗り込む。
家には他にも何台か車があるけど、アリサちゃんが「私とすずかだけじゃないから、大人数で乗れるので来て」と言ったからこれをチョイスした。
しかし、アリサちゃんとすずかちゃん以外って誰やろ? アリシアちゃんやとフェイトちゃんが教えてくれるやろうし……忍さんとかかな? でも、それやと恭也さん経由でなのはちゃんが教えてくれそうやし……。
そんな事を考えながら、私は管理局直轄の次元港に向かった。
次元港は大まかに分けて二種類ある。一つは民間の次元港、もう一つは管理局直轄の次元港。民間の方は各管理世界を定期航行している次元船の発着港として使用されている。一方、管理局直轄の次元港の方はそれ以外の管理外世界との次元転移装置が置かれている。基本的に私達みたいな管理外世界で魔法と出会い、こっちに移って来た人やその友人、家族などが使用する。こっちは入国(入世界?)審査が若干厳しいけど、まあ、こっちの世界に無い細菌とかを考えると仕方ないのかなと思う。
次元港でアリサちゃん達と合流したんやけど、
「えーっと、どちら様?」
アリサちゃんとすずかちゃんの他に見た事のない人が4人居た。見た雰囲気、二組の姉妹って感じやな。
「アイツの同級生とお世話になってる先輩。ミッドを見てみたいって言うから連れて来たんだけど、駄目だった?」
「大丈夫やよ。部屋割りは少し考えやなアカンけど」
「まあ、最悪男どもはリビングのソファーにでも寝かせりゃ良いでしょ」
「そやねえ」
というより、八雲君とユーノ君なら部屋数が足りない時点で進んで自分から言い出すやろうなあ。二人とも「女の子をそんなところに寝かせられないよ」とか言って。今回に限ってはその言葉に甘えようと思う。
「っと、自己紹介がまだやった。八神はやてです。よろしくお願いします。まあ、立ち話もなんですし、車の中でもゆっくりと話しましょう?」
「でも、はやてちゃん免許あるの?」
「言ってなかったっけ? こっちでは16で4輪の免許取れるから、持ってるよ。通勤で使ってるから運転も慣れた物やで。さて、お客様ご案内や」
「おはよ~八雲君」
お昼の準備が終わって、手持無沙汰になった僕は去年の冬マフラーを失くした事(いや、あれは無くしたって言わないな。まあ、ちょっとした理由で手放した)を思い出して、そういや、毛糸だけ買っていたので、ちまちまマフラーでも作っていたら、なのは達が起きてきた。
「おはよう。……なのは、フェイト寝癖付いてる。もうすぐ、アリサ達来るぞ」
「ホントに⁉」
「なのは、急がないと!」
慌てて洗面所に向かう二人。
「賑やかだね~。八雲、コーヒーある?」
「僕が作り置きした奴で良いのならあるよ。勝手に飲んでくれ」
「分かった」
ユーノはコーヒーを淹れて僕のいるリビングにやって来た。
「何作ってるの?」
「いやー、前の冬の終わりにマフラー失くしちゃってね。時間もあったし作ろうかなと」
「……やっぱり、器用だよね」
「それは自覚あるけど、時間を掛けて丁寧にやれば出来なくはないと思うよ」
「たとえ、時間が合っても僕はやらないかな。それよりも発掘に行きたくなるよ」
おー、流石は考古学者。でも、それはワーカホリック丸出しだよね。
「まあ、時間の使い方は人それぞれって事だね。それにユーノの場合、なのはがくれれば何でも良いんだろ?」
「な、何をいきなり!」
「うんうん、分かるよ。僕だってはやてがプレゼントしてくれたら嬉しいもん」
「話を聞こうよ!」
「はっはっは、だが、断る!」
「タチ悪いな!」
やっぱ、ユーノをからかうのは面白いな。付き合いが長いし、同い年の同姓って事でかなり気軽に話せるし。
付き合いって意味だとクロノも結構長いけど、僕とユーノはクロノをからかわない。だって、その場では笑って流すのに、後でとんでもない量の仕事を押し付けてくるし。
結婚直後にその事を辛かったら三日完徹で終わらない仕事をこっちに押し付けてきやがった。四日目に偶然会ったユーノもぼろぼろだったので、それで大体を察した。それ以来よっぽど衝動に駆られた時にしかからかわない様にしている。はやて曰く「泥のように眠るってああいう事を言うんやな~っての思うくらいに体現してたで」と言うぐらいに寝続けたし。
「まあ、これ位は大目に見てよ。慣れない環境が辛いのはユーノも分かるだろ? 気晴らし位させてくれよ」
「……そうだね。僕の場合だと慣れない環境というより厳しい環境って感じだけどね」
「遺跡調査のほとんどが未開の地だからな~。ああいう環境は良い修行になるんだけど」
「僕としても、八雲くらいの実力者が居たら、何か非常事態が起こっても安心できるから来てほしいけどね。今回はゆっくり休みなよ」
「いやいや、はやてのお蔭で元気MAXだぜ? と言っても、皆と遊んで、免許を取りに行ってで予定がぎっちりだけどね」
「ははは、管理局の切り札は忙しいね」
「…思うんだけど、その名前誰が付けたんだよ。僕はつい最近聞いたんだけど」
流石に恥ずかしいから、元を叩きたい。
「僕はクロノから聞いたんだったかな? でも、付けたのは三提督らしいよ」
……想像以上に上だった。これじゃ、流石に叩けねえ。あの爺さん婆さん、僕を含め前途有望な若者をからかうの好きだからな。
「……にしても大仰すぎるだろ」
「前例のない『一人部隊』を任される存在なんだから妥当だと思うけど?」
「あれはレティ提督が僕を100%生かすために作っただけだろ?」
普通、管理局の部隊には魔導師ランクの保有制限がある。『戦力の一極集中化を防ぐため』らしいけど、抜け道もいくつかある。例えば高ランクの魔導師にリミッターを掛ければ、何人かを同じ部隊に置くこともできる、とか。
「基本的によっぽど、ランクが高い人が集まらないと制限なんてひっかからないんだよ? でも、八雲を何処かの前線部隊へ『出向』扱いで行かせると、簡単に制限にひっかかる。レティ提督はそれを一人部隊にして『部隊の派遣』扱いで処理しているから、制限にひっかからないんでしょ」
「あー……たしかに」
簡単に言うと出向にすると、一時的に出向先の部隊の所属になり、そこの魔導師ランクの制限にひっかかる可能性があるけど、一人部隊にして、必要な所へ部隊の派遣にすると僕の魔導師ランクはその一人部隊の中で解決されるから、問題ないって事になる。まあ、裏ワザだね。
「エンジンの音が聞こえるって事ははやて帰って来たかな」
「そうみたいだね。二人は、身支度終わったのかな?」
「さあ?」
とりあえず、皆が来るまでは編み物続けてよ。予定一杯の夏休みの後は何があるか分からない二学期だし。
僕はこの後、予想外の来客が来る事をその時はまだ知らなかった。
夏休みのネタをひねり出すのが難しい。困ったものです。