本編どうぞ!
「……何で、楯無さん達がここに居るんですか?」
はやての後ろに居た思わぬ来客―楯無さん、虚さん、簪、本音の四人―を見て思わず、僕は声を出してしまう。
四人はなのはたちに簡単に自己紹介をした後、僕の質問に答えた。
「異世界に興味あったんだよ~」
「そうそう。それで、私がアリサに頼んで連れて来てもらったの」
「はあ、そうですか」
「それで八雲君、部屋割りどうする?」
「アリサとすずかで一室、なのはとフェイトで一室、楯無さんと簪で一室、虚さんと本音で一室って感じになるかな」
「私はウチの子らの所に遊びに居こかな」
「僕はユーノと一室だな。んじゃ、とりあえず今やってるの片付けてくるよ」
そう言って、編みかけのマフラーを片付け始める。
「……手編みのマフラーって、八雲、女の子みたいな事してる」
「編み目が細かいですから、ここまでできるのは中々いないと思いますよ」
「少なくとも、私は出来ないわ」
「かいちょーは編み物苦手だもんね」
僕の特技を知らなかった四人が、それぞれ感想を言う。ちなみに、幼馴染組は普通にしている。何年か前のクリスマスの時に皆に手編みの手袋を送ったから、僕の腕前を知っているのだ。
「って、楯無さん、編み物苦手なんですか? なんか意外です」
完璧超人のイメージがあったし。
「なんかね、よくわかんないけど苦手なのよ」
「私も苦手ね。なんか、やってると、うがーってなる」
いや、アリサ、その感覚はさっぱり分からん。
「結構楽しいけどねえ。編み物を含めた手芸って」
「本当に八雲さん女性みたいな事言いますね」
「虚さんの言う通りやで八雲君。ボタンが取れやすいから、買った服のボタンを自分で付け直すなんて、普通の男の子はやらへんで」
「いや、それは女の子でもなかなかそこまでやらないと思うよ?」
だって、既製品って縫製甘い時あるんだもん。なら、手間かけて一回自分でやった方が安心できるし。
「はやてちゃん」
「何ですか、楯無さん?」
「八雲君をお嫁さんにください」
「あはは~、その気持ちはよく分かるけど、八雲君は私の物やよ」
「つーか、お嫁さんってなんだよ」
僕は男だよ!
「でも、中学の時、『嫁にしたい生徒』で八雲ランクインしてたよね」
「フェイト、それを言わないでくれ……」
アレは中学時代最大の黒歴史なんだから。なぜ、女子に紛れて、男子の僕の名前があったのか逐一問い詰めたい。
「あれはでも、文化祭のコスプレ喫茶のせいだよね」
「どういう事なの、すずかちゃん?」
「えーっと、物を見てもろた方が早いやろ。皆、八雲君を取り押さえておいて」
はやて、アレを持ってくる気だな。何とかしたいけど、全員に抑えられて身動きが出来ない。
戻って来たはやての手には一冊のアルバム。
「えーっと……あった、これや。さっき話題に出てたのに入った理由がこれじゃないかって話なんや」
はやてが指差しているのは、一枚の写真。はやてたちが一人のメイド服の人を囲んで撮っている写真だ。その人は、耳が隠れるくらいの長さの黒髪に明るめの緑色の縁の眼鏡を掛け、頭にはカチューシャを装備した、見た感じ、美形の人。
「……だれ、これ?」
「八雲君や」
「「「「……えっ⁉」」」」
「私達プロデュースの霧島八雲君改め『霧島真由子』ちゃんや」
「止めてくれ! 僕の恥ずかしい歴史第一位を嬉しそうに話さないでくれ!」
話すならいっそ一思いに僕を殺してからにしてくれ……。
「あれは中二の文化祭の時やった。私達のクラスはさっきも言ったけど、コスプレ喫茶をやる事になったんや」
「でも、衣装が女子に比べると、男子が面白くなくて、どうするか話し合った時に何人かが『なら、女装でもするか?』って言い出したのよ」
「その時皆のテンションがおかしかったのかな? 何人かの男子がそれのいけにえになったんだよ」
「それで、誰かが『女性的な趣味の霧島なら似合うんじゃねえ?』って訳の分からない事を言い出して、八雲がやったら……写真の結果になったんだよ」
「ちなみに、他の男子は見るに堪えなかったんと、八雲君が似合いすぎてたから、無しになったんよ。それで、優真子ちゃんは文化祭の伝説になったんよ」
「八雲君監修のお菓子に、綺麗所を集めたコスプレ喫茶は大盛況。文化祭の模擬店とは思えないレベルの売り上げを叩きだしたんだよ」
「「「「はあ……」」」」
四人付いて行けてないじゃん。ユーノは苦笑だし。
ちなみに、下の名前の『真由子』は八雲のアナグラム(YAKUMO→MAYUKO)だったりする。
「あのなあ、僕の女装が決まった後、メイドの動きの勉強って事でアリサとすずかの屋敷で研修を受けたり、似合っていたからって理由であの後翠屋手伝う時の制服も女物になった僕の身にもなってくれよ! あの時の精神的な疲れは今までで一番だったんだからな!」
精神的な疲労という意味ではIS学園入学当初もそうだったんだけど、一つ大きな違いがある。IS学園の方は外部に僕の味方や癒しがあったけど、中学の頃は味方がいなかったから休める暇がなかった。
「またまた~、何だかんだ楽しんでたくせに~」
「それは違う! もう抵抗しても無駄だと思ったから、開き直っただけだって!」
あの時は半ばやけくそだったな……。
「……もうやだ、折角ご飯用意したけど、そんな事する人には食べさせないもん。楯無さん達四人とユーノだけで良いよね。余ったら、帰ってきた皆に上げるし」
ダメージの大きさでやさぐれる僕。
僕の言った事に動揺し、途端に手のひらを返す幼馴染組。
胃袋を握っている人間が強い。はっきり分かる出来事だね。
はやてサイド
地球から来た皆はお疲れやろうし、なのはちゃん達も昨日まで数日休みなしやった訳やから、今日一日は我が家でのんびりしてもらう事にした。
八雲君お手製の食事を食べて(食べた事なかったらしい、楯無さんと虚さん、簪ちゃんは八雲君の腕前にショックを受けてた。まあ、誰でも通る道やね)色んな事をお話しする事にした。女の子らしい事、ミッドの事、魔法の事、ISの事。共通の話題は八雲君の事。八雲君は自分の話をされるのは恥ずかしいらしいから、ユーノ君を連れて、逃げ出してしまった。
「ねえ、はやてちゃん」
「はい、なんですか? 楯無さん」
「八雲君の事で聞きたい事があったんだけど、良いかな?」
「私が答えられるか分からんけど、どうぞ」
「えーっとね……」
楯無さんから夏休み前にあった一軒について聞く。
「ていう事があってね、どうして、八雲君は織斑君に守るのを止めた方が良いなんて言ったのかなって思ってね。直接聞いても良かったんだろうけど、少し前にちょっとした事が有ってね……」
ああ、この感じやと、楯無さんは八雲君に惚れてしもたんやな。それで、夏休みにミッドに帰るから告白して振られたと。ミッドに興味もあったんやろうけど、八雲君に会いたかったんと、彼女、つまりは私がどんな人かを見たかったんもあるんちゃうかな? あくまで私の予想だけど。
しかし、楯無さんみたいな美人さんを引っかけて、それを振るなんて八雲君も罪作りやね~。今に始まった事じゃないけどな。
「うーん……これが答えってわけやないけど、私が思う八雲君の考えを言うとやね、多分、二つ理由が有ってのただのお節介やと思うよ」
「お、お節介?」
「うん。一つ目はこれは八雲君自身の考えなんやけどな、特定の人を守るっていうのは、不特定多数の人を守るのより難しいって言ってるんよ」
「大勢を守る方が難しそうですけど……」
「聞いた感じはそうかもしれん。でも、不特定多数って言うんは、例えば、学校の生徒って括りだったり、国民だったりと、それを守るのを仕事にしている人たちが居る訳やろ? 前者で言えば先生、後者やったら警察や軍隊やね。つまりは自分の力がそこまでなくても他の人との協力や、組織立って守るって事が出来る訳や。逆に特定の人、つまりは誰か個人、もしくは少数の人を守りたいって言うのは、かなり個人の力が重要になって来ると思う。大きな組織は柔軟性に欠けるし、常に守るために動けるとは限らへん。もっと言うと、その『守る』って事が一般から見たら正しくないかもしれへん」
……闇の書事件の時の八雲君達みたいに。
八雲君はその時の行動を「『義』って字は人の行動とかを指して、『正しい義』と書いて『正義』と読む訳だ。じゃあ、ここで言う『正しい』って言うのはなんなのさ? 僕はあの時、たとえ人生を棒に振ってでもあの選択は正しかったと思っているし、僕達には僕達なりの『正義』あったと思っているよ」と言っている。
「そういう時に結局は自分でなんとかせなアカン訳なんよ。でもそれには生半可な力と覚悟じゃ足りん。中途半端なもんやったら悲しみを生むだけや」
「……悲しみ?」
「一例をあげるけど、楯無さん、貴女の大切な人が貴女を守るために身を挺した結果、大怪我を負いました。……嬉しいですか?」
「……嬉しくない。むしろ辛いよ」
「私だってそうです。それが普通なんやと思います。これじゃ、身は守れても心は守れてないんです。全てを守るなら、守りたい人だけを守るんじゃ駄目なんです。なによりも自分の身を守れないと」
これってとても当たり前の事なんやけど、これをすっぽり抜けて『命を懸けて守る』なんて、軽々しく言う人がおる。この言葉は非常に重い物だと思う。一人に一つしかない物を使う。守る側は自己満足できるやろうけど、守られた側は背負う物が重すぎる。だから、本当に守る対象を大切に想うなら自分の命を粗末にしてはいけない。
「もう一つは、力を持って何かから守るという事は誰かを傷付ける行為です。そして、守るために傷付けたのも人間なんです。当然、その人を大切に想う人だっている訳です。完全に一人っていう人は中々おらんと思うし。その人から見れば『私の大切な人を傷つけた人』になるんですよ。どんな理由があっても。ここから派生するのは……復讐です」
人は感情で動くから、こういう事が当たり前にある。
「でも、守った側にはそれが分からないんです。自分は正しい事をしたから。恨まれる事をしていないと思っているから。この矛盾を知らないと大きな悲しみに繋がると思います」
八雲君の言葉を借りるなら「『正義』の反対は『悪』じゃない。『別の正義』だ。正義なんてものは主観的なものだから、別の目線から行くと決して正義じゃない。一般的に正義と言われる行動は大多数の主観がそれを正義だと思っているからで、客観的な正義って存在しないと思ってるよ」だ。
「八雲君はそれを……」
「分かっていると思いますし、自分自身の中でこれというものを持ってます」
……それは私の口からは言えない。「僕が守りたいのははやての笑顔」なんて言える訳あらへん。恥ずかしいもん。
「だから、八雲君は一人目の子の考えを否定したんやと思いますよ。自分の経験でそれが茨の道と分かってるし、いつか悲劇につながると思ったから」
「でも、きーりんとおりむー達、あの後少し、距離があるよ?」
「あー……八雲君口下手で行動で示すタイプやから、本意が伝わってない時があるんよ。まあ、今回の場合は自分で気付かなアカン事やから、口出しせえへんだけかもやけど。さ、こんな重い話はこの辺にして、別の事をわだいにしよ」
「良いわね~。じゃあ、はやて、アンタと八雲の恋バナでもしなさい。四人は聞いた事ないし、女の子は恋バナが大好物だし」
そう言うアリサちゃん。……悪い笑顔やなあ。
この後私は四人に私と八雲君の6年を根掘り葉掘り聞かれる事になる。
途中から、ブラックコーヒーばっかり飲んでたけど、胃の方大丈夫かなあ?
真由子ちゃんモードは艦これの霧島改二をイメージしていただければ。
実は第三話の伊達眼鏡の下りが伏線だったんですね~。その時は苗字が一緒だし、ネタにはなるかなと思ったので。