二学期最初のIS実習を終えると、全校集会があった。
まあ、集会なので結構暇だ。一般生徒ならともかく、生徒会の役員でもある僕は事前に内容を聞いていたし。
一番盛り上がったのは今度行なわれる学園祭の部活の出し物の人気投票の結果で行われる『織斑一夏争奪戦』だ。これが起こったのは、一夏が部活に入っていないのが理由である。
原則IS学園の生徒は全員部活に入らなければいけない。(兼部はOK)そう規則で決まってる。大半の生徒は5月ごろには所属する部活を決めている物だ。
ただ、学園の特性上ISの訓練の方が重要視されるので幽霊部員も結構いる。国家代表候補や整備課の生徒は特にそうらしい。
ちなみに生徒会も正式名称は『生徒会執行部』というれっきとした部活動にカウントされているので、僕は部活に入っている事になる。
生徒会に入ってから、一夏を部活に入れろという文章が非常に多い。見てうんざりするくらい。仕事の2割は占めていると思う。しかも、どこかに入っても他の所から、文句が出るだろう。それを抑えるために、勝負の景品にしたのだ。これは、ある程度は仕方ない処置だ。早いうちに一夏がどこかの部活に籍だけでも置いておいてくれれば、個人の意思と言うのを盾もして苦情を全て処理できたのだけど。
ちなみにこの企画の立案は全て楯無さんで僕達他の役員はノータッチである。
んで、集会が終わった後、教室に戻ってクラスの出し物を決める事になったんだけど……
「ホストクラブ、ツイスターゲーム、ポッキーゲーム、王様ゲーム……こんなもん、却下だ却下!」
そう教壇上で吠える一夏。僕としてはめんどくさそうなのが来た瞬間、楯無さんに頼んで一日警備にしてもらえば良いと思っている。
「私は嬉しいわね。断言する!」
「そうだそうだ! 女子を喜ばせる義務を全うせよ!」
「織斑一夏は共有財産である!」
「他のクラスとか部の先輩に言われてるんだよ」
「皆を助けると思って!」
「メシア気取りで!」
……皆ノリノリだねー。まあ、学園に二人しかいない僕達を前面に押し出すものを考えるのは自然な流れって言えるか。
でも、クラスの出し物なんだから、もっと皆で協力できるものにしようよ。
「それなら、メイド喫茶はどうだ?」
メイド喫茶、まあ、つまりは学園祭の出し物の王道、模擬店な訳なんだけど、その意見を出したのはまさかのラウラ。……編入当初じゃ、絶対に考えられなかったなあ。良くも悪くもここに染まって来たって事かな?
「メイド喫茶なら客受けも良いだろう。飲食店なら経費の回収も行える。外部からの客も来るから休憩所としての需要もあるだろう」
言っている事も納得のいく事だし、問題も無いだろう。しかし、メイド喫茶って僕と一夏はどうするんだろ?
「え、えーと……皆はどう思う?」
「良いんじゃない? 一夏と八雲には執事か厨房に回ってもらえば良いしね」
ラウラの援護射撃をするようにシャルロットがそう言う。厨房の方が良いかな。材料一杯使って作れるし。
「織斑君と霧島君の執事、良い!」
「いや、霧島君のお菓子は美味しいって本音が言ってたし、霧島君は厨房よ!」
「いやいや~、こういう手段もあるよ~」
そう言って立ち上がった本音。
「どういう手段?」
「よくぞ聞いてくれました。まっちー、例の物を~」
「突然、用意してって言われたからびっくりしたけど、こういう事だったのね」
そう言って、なのはは一枚の紙を取り出して本音に渡した。本音は前に行ってそれを見せた。それは……例の僕の黒歴史、中学の時の女装メイドの写真だった。
「こうやって、二人に女装って方法もあるよ~。これは中学の時の学園祭できーりんが実際にやった物らしいよ~」
「「「「「SO・RE・DA!」」」」」
「「そんなの誰がやるか!」」
思いっきり拒否の言葉を叫ぶ僕達男子。
「二人とも~、着る阿呆と着ない阿呆、同じ阿呆なら着なきゃ損だよ~。お祭りなんだし、やったもん勝ちだよ~」
「阿呆で良いぜ。着る恥ずかしさの方が大きいし。そんなんなら、俺は執事服を着る」
あーあ……、言っちゃった。まあいいや、一夏には生贄になってもらおう。
「じゃー、おりむーは執事服で決定ね~」
「えっ、ちょっ……」
「僕は厨房担当で。精一杯、お菓子を作らせていただきます。……材料を多く買ってきたら、皆の分も作るよ?」
「「「「「ぜひ、お願いします!」」」」」
よし、これで女装や執事の格好をする未来が避けれた。買収分は……いつも、本音に作ってる分の延長って事で。
時間が進み、放課後。僕はなのはに学園の案内をしていた。
「……と、一通り案内は出来たかな」
「ありがとうね、八雲君」
「んじゃ、お礼代わりに制服姿を一枚、パシャリと」
そう、持っていた携帯でなのはを撮る。
「それ、どうするの?」
「うん? 決まってるよ、ユーノに送る」
と言うか、そう言いながらもう送ったし。
「にゃ⁉」
顔を赤くして変な声を上げるなのは。
あっはっは、やっぱ、なのはとユーノをこれ関係でおちょくるの楽しいわ。
「良いじゃん。これで、ユーノも惚れるかもよ?」
いや、もうベタ惚れだけどね。
「そ、そうかな?」
「絶対とは言わないけど、似合ってるし、可能性は大いにあるよ」
「そっか。それで、今日はこの後、どうする?」
「どうしようかなあ? 僕としては模擬戦の反省会をしたいんだけど」
授業後すぐに今回の実習の映像は貰って来た。行動が早すぎて、先生方に驚かれてたけど。
模擬戦っていうのはいわば練習試合。戦う事、勝つ事が目的ではなく、自分を知る事が目的だと僕は思っている。
まずは自分の長所と短所を知る事。そして、戦いの内容でも、良かった所、悪かった所を知る。
自分の長所と短所が分かれば、自分の戦い方が見えてきて、弱点の対処も考える事が出来る。内容の方は良い所を取り入れ、悪い所は他の方法を考えていく。それにたとえ勝った時でも絶対に何らかの負ける要素があるから、それを見つけて直さないといけない。僕達の仕事は簡単に負けるわけにはいかないのだから。
戦いに正解は無いから、常にそれらを考えて反省して次に生かすのが大事だと思う。だから僕の中では模擬戦は戦った所と反省がセットになっている。
「映像持って来てたもんね。しかも一年全員分」
「じっくり見たら、この動きアリだなって思うのがあるかもしれないしね。取り入れれるものは取り入れないと」
「その辺はオールラウンダーの八雲君らしい考え方だよね。私だと、この戦い方を確立させたから、どっちかと言うと判断の見直しの方が多いよ」
「まあ、それはスタンスの違いだから一概には言えないよね。でも、反省は大事だよ」
「だね。同じ過ちを繰り返さないのが戦いが上手くなる条件だよね」
何度も同じ間違いをするのは、ちゃんと身についていない証拠。勉強と同じで復習をしないといけない。この場合は問題点の反省になる。
「とりあえず、生徒会室で映像のチェックしようかな。今日は仕事無いし」
「じゃあ、私もお邪魔するよ。楯無さんや虚さんに挨拶したいし」
話しながら歩いていると、生徒会室に着いた。
「失礼しま「じゃあ、勝負しましょう。俺が負けたら従います」……えーっと、どういう展開ですか、これ?」
なんか生徒会室に入ったら一夏が楯無さんに勝負を挑んでいた。
そこに居た虚さんと本音に事情を聞くと、楯無さんが一夏のコーチを買って出たのだが一夏がそれをコーチは多いからと言う理由で拒否。それで楯無さんが一夏のコーチを買って出た理由を「弱いから」と言って、それを証明するために対決になった。
「楯無さん、本人がそうやって言ってるんだし、別にコーチしなくても良いんじゃないですか? 一夏には代表候補生のコーチが何人も居ますし」
「でも、織斑君、弱いわよ?」
「もうちょっとオブラートに包みましょうよ……。確かに、一夏は相対的に見て強くないです。僕も四月のクラス代表決定戦の後に織斑先生に他の者の面倒を見て欲しいって言われて、そこから色々見てましたから」
「俺だって、ちゃんとやっている!」
ちゃんと、ねえ……。
「……はあ。叢雲、纏めてあったデータを出してくれ」
僕は空間に一枚の表を表示する。
「……これは、何ですか? 八雲さん」
「織斑先生に頼んで貰った、夏休みの間のアリーナの入退場の時間を纏めたものです。バニングス社へのスカウトも仕事ですから。んで、一夏のがここ。一年では多い方だけど、それでも一年の一般の生徒で多い人もいますし、上級生は軒並みそれ以上です。専用機持ちや国家代表候補生なんかは、本国に戻っての時間もあるから一概には言えないですけど、一夏はその気になったら、毎日アリーナで訓練も出来るんですよ。でも、数字はこれです。一夏を超える時間を出した普通の生徒の方がちゃんとしてますよ。それと」
「まだあるの?」
「ええ。今日の実習です。実力自体は上がってましたけど、それ以外が駄目です」
「どういう意味だよ!」
「そのまんまだよ。一夏、白式燃費悪いままでしょ? なんで、それをそのままにしたの?」
「それは……」
言葉に詰まる一夏。山田先生の言葉を借りるなら、ISはパートナー。それでISは操縦者を理解してそれに合わせてくれる。なら、乗り手側もISを理解する努力が必要だ。欠点を知り、手を加える。それをしないのは怠慢としか言えない。一方通行の関係でパートナーなんておかしな話だ。
「一夏はISの整備の知識なんてないでしょ? なら、なんで白式の問題を他の人に相談しないのさ。手段なら有ったでしょ。先生に相談するとか、開発元の連絡先を聞いて、連絡するとか。整備課に話すだけで燃費は変わって来るよ。パッと思いつくだけでも三つあるんだから、じっくり考えればまだ出てくるかもね。……一夏さ、自分だけ二次移行して、強くなった気がしてない?」
「そんな事!」
「無いって言える? 今、学園で唯一二次移行していて、しかも『世界最強』の武器の名前を継いで、能力も同じ。それで強くなった気がしているんじゃない?」
正直、前々から思っていた事だ。織斑先生と同じ血を引き、織斑先生と同じ能力を使い、織斑先生の武器の後継品を使う。それで、曲がりなりにもここまで事件を解決してきた。さらに、二次移行もあって、この部分が一夏の慢心を生む気がする。
いくら性能が上がっても、使いこなすのは一夏で常に努力をしないといけない。慢心が隙を生み、隙が怪我に繋がる。なら僕のやる事は釘を突き刺す事だ。
「……正直に言うよ。お前、舐めてんのかよ。7人で挑んで、無策に突っ込んで、負けたくせに」
何も言い返さない一夏。この際だ、言えることは言ってしまおう。
「はっきり言うと、君らは負けるべくして負けた。偶然拾える勝ちはあるけど、偶然負ける事は無い。連携も何もなく、ただ突っ込むだけで勝てると思ってんの? それとも、織斑先生の言葉で頭に血が上った? ……あの程度の発破でキレてるなよ。そんなんでIS乗ってたら何時か、どうしようもない事を起こすぞ。武術やってたなら分かるだろ、心・技・体どれが欠けても駄目って事。心の部分が無ければそれはただの暴力だ」
まあ、その辺はキレやすい他の専用機持ちにも言える事だろうけどさ。
「そんな事ですべてを使って守るとか言ってんなよ。その程度じゃ、一人も守れないよ。……なんか、気分悪いや。今日はもう、帰ります」
僕はそうして、生徒会室を後にした。
部屋を出てから、自己嫌悪に陥る。なんで、言っちゃったかな~。別に事情を聞いて送り出すだけで良かったのにさ。やっぱ……僕には守るって考えに特別な思いがあるから、それを口に出しながら甘いのが許せないのかな? だから、今の一夏に腹が立つんだろう。
でもこれで、修復は無理だな。はあ……、後で織斑先生に謝っておこう。四月に言われた事少し守れそうにないですって。
重ねて、一夏ファンの皆さん、すみませんでした。
こうなったのは、二人の守るという思いに差があるからです。
八雲
守る事は自分の一番やりたい事。そのために最大限努力をする事は当たり前の事。このためならそれ以外の事を全て棄てる事もいとわない。
一夏
守る事は目標であり、夢、憧れ。だが、まだそこで止まっている。具体的な物がまだない。
ここで一夏のフォローをしておくと、一夏は年齢的に考えると、十分な位なんです。
八雲の生い立ちと今までの人生の濃さで考えと精神が成熟しきってるから、こういう対応になったんです。
……考えていた事を口に出してしまうあたり、まだまだ未熟な所もあるのだと思いますけど。