こちらは学園祭中編。
さて、はやてが特大の爆弾を落としていった後、厳しい追及の前に楯無さんが僕を呼びに来て、クラスから脱出する事が出来た。
ただ、
「衣服の問題でメイド役なのは良いけど、いや、ホントはそこも問題だけど、この観客参加型劇『シンデレラ』ってなんなのさ」
生徒会の出し物の意味が分からなかった。
ちなみに僕はこの件に関してはノータッチ。全て楯無さんの主導で行われているので詳しくは知らない。台本ですらついさっき渡された。
「確かに、よく分かりませんね。ただ、こんな所で考える事ではないと思いますよ?」
僕は今、その劇の準備の為に体育館の舞台の上(入学式だったりと書かれた板を吊るす所)にいる。
まあ、確かに考えるところは変だな。でも、やる事無いんだもん。仕方ないじゃん。
そんな事を考えていると舞台の幕が上がった。
「むかしむかし、あるところにシンデレラと言う少女がいました」
出だしはいたって普通なシンデレラ。内容は確かこの後、継母や義理の姉たちにいじめられているって続くんだっけか?
「否、それはもはや名前ではない。幾多の舞踏会を潜り抜け、群がる兵士を薙ぎ倒し、灰燼を纏う事すら厭わない。最強の兵士たち。彼女たちに付けられた称号…それが『灰被り姫』! 今宵のターゲットは王子の王冠に隠された軍事機密。さあ、血沸き肉躍る物語の始まり始まり…」
……シンデレラってこんなバイオレンスアクション臭のする話だっけ? 僕が知っているのはどっちかと言うとファンタジー+ラブロマンスだったと思うけど。
「はあっ⁉」
下で驚きの声を上げている一夏。まあ、なんていうか……ドンマイ。
「もらったあ!」
その声と共に中国版の手裏剣ともいうべき飛刀を投げる鈴。……あれ、殺しにかかってるよね。まあ、ここからが僕の出番だね。
僕は跳び降りて、二人の間に入り、飛刀をキャッチする。
「そこに現れたのは、王子に仕える一人のメイド。かつて、『最強の灰被り姫』の名を欲しいままにし、その存在を世界中、果ては仲間からも恐れられ、世界に消された存在。それが彼女! そんな彼女を救ってくれた王の息子を守るために、彼女は再び慣れ親しんだ鉄と硝煙のむせる臭いがたちこめる戦場に舞い戻る!」
僕のキャラ設定ってそうなってたのね。その辺書いておいてくれれば良かったのに。まあ、良いか。それよりセリフセリフ。
「王子、ここは私に任せてお逃げください」
そう言っている間に鈴は再び飛刀を投擲してくる。それを僕が近くにあったトレーで受け止め、一瞬で近付き、意識を刈り取る。一夏の方に視線をやると銃に装備されているレーザーポインターらしき光が見える。狙撃って事はセシリアか。手に持っていた飛刀をポインターの出ている方向に投げる。距離もそこそこあるし、投げた事に気付いて避けるだろう。まあ、攻撃させなければ僕の勝ちだし。
「一夏、そこに直れ!」
「王冠は私がいただく!」
王冠に何かあるの? そういう設定なのかな? まあ、それは僕には関係無い事だけど。
箒は日本刀、ラウラはナイフの二刀流。それで一夏に左右から切りかかる。やっぱり皆やる気満々っていうか殺る気満々だよねえ。
「させませんよ」
僕はトレーに刺さってた飛刀を二本抜いてその攻撃を防ぐ。飛刀も二刀流も専門外だけど、二刀流なら見た事あるし、上達の一環として真似もしてきた。やってやれない事は無い。
「まずはその危ない物を破壊させていただきます」
そう言って僕は最高速で二人の間を通り抜けつつ、一閃。飛刀自体に切れ味が無くても、魔力強化でへし折る事位はできる。
「「なっ⁉」」
「まあ、武芸百般に長ずるのもメイドの嗜みですから」
……台本通りのセリフだけど、メイドに武芸は必要ないだろ、多分。
さて、僕は専用機持ち達と大立ち回りをした後、舞台から降りて更衣室に向かった。
(叢雲、更衣室に楯無さんと一夏がいるんだね?)
(ええ。それと未確認のISを持った人間が。十中八九襲撃者でしょう)
(魔力反応は?)
(ほんの僅かですが感じます。恐らく強化されたISコアを使用しているのでしょう)
クラス対抗戦、学年別トーナメント、臨海学校、これら三つの事件で使われたISはロストロギア・ゴーレムのコアを植え付ける事で強化されていた。三度も同じ相手をしたので、叢雲は普通のISコアとの差を感知出来るようになった。ホント、頼れる相棒だよ。
「ここか! ……くそっ、鍵が掛かってる。叢雲!」
『OK. stand by ready』
叢雲をセットアップして文字通り道を切り拓く。壊した扉は……襲撃者のせいにしよう。そうしよう。
入ると楯無さんと一夏は若干押され気味。間に合ったみたいだね。
「ああん、誰だテメェ」
「うーん、強いて言うなら、アンタを倒す存在かな?」
「ハッ、そんな大口叩けんのも今の内だ。お前から潰してやる!」
よし、挑発に乗ってくれた。
『楯無さん、コイツは僕に任せてください。楯無さんは一夏の護衛をお願いします』
僕はプライベートチャンネルを使ってそう呼びかける。
『分かったわ。気を付けてね。腕はそこそこだけど、ISの性能がかなり高いわ。第二世代機のはずなんだけど』
『今までの事件と同じ改造が施されていますから、性能が上がってるみたいです。まあ、なんとかしますよ』
僕は少しずつ歩いて距離を詰めていく。
「これでもくらっとけ!」
八本ある触手っぽい装甲脚を伸ばして僕に攻撃してくる。まあ、一つ言えるのは、
「それは悪手だよ。最悪手。裂空刃!」
この一言に尽きる。剣戟による真空波ですべての装甲脚を切り刻む。
「なあっ⁉」
「驚いている暇は無いよ?」
想定外の事態に驚いている相手に一気に近付き、その首を掴む。
「ぐっ…がっ…」
「さて、アンタには聞きたい事があるんだけどさ、答えてくれる?」
「へっ、誰が答えるかよ。私は逃げさせてもらう」
プシュッと圧縮空気が抜ける音と共にISが相手から離れ、相手はそれを僕の方に蹴る。次の瞬間、僕は爆発に包まれた。その衝撃で手を離してしまう。
これで逃げるって事は爆発にはある程度指向性を持たせてあるんだろう。それに威力よりも目つぶしとかそっちの方を重視している辺り芸が細かいよな。
「八雲君!」
「じゃあ「この程度で逃げれると思ってるの? 甘いよねえ。フリーズランサー!」
詠唱と共に氷柱を飛ばし相手を壁に磔にする。
「ぐっ…」
「逃がさないよ。こっちも仕事なんでね。さて、話して貰おうか」
「ケッ、誰がお前の言う事なんか聞くかよ」
コイツは勘違いをしてるな。僕は叢雲をわき腹に突き刺す。
「がああああ!!」
「アンタに選択肢なんて無いんだよ。あるとしたら喋るか、いたぶられるかの二択」
「この……悪魔が!」
「悪魔で結構。それならば悪魔らしく、口を割るまで徹底的に行こうか」
殺気をこめ、笑顔を作りながらそう言う。
もちろん、この辺は演技だ。はやてから「八雲君はSやね」って言われるけど、ここまで傷つけて快感を得るような変態ではない。脅しも技術の一つだ。特にこういう管理局で取り調べや本格的な調査のしにくい管理外世界での情報収集ではそれなりに使える手段だ。
「さて聞くけど、アンタのIS、コアが改造されているけど、そのコアを改造するための材料の入手先、持って来た人間、改造した人物、その辺で分かる事全部吐いてもらおうか」
「……それだけで良いのか?」
「僕はアンタたちの組織には興味無い。仕事として、危険なISの排除とその背後関係の調査。それと学園の安全の確保が最優先。組織を潰すのは管轄外」
そんなもんは国連とかIS委員会にやらせておけばいい事だ。
「……取引だ。お前の知りたい事を私の知る限りで話す。そうしたら見逃せ」
「OK、分かった」
この辺が手の打ちどころだろう。
「それらの事は全て一人の男がやった事だ。名前は私も知らない。ただ、そいつの周りはドクターと呼んでいた。白衣を着た、紫の髪に金色の瞳のいけすかねえ野郎だよ」
白衣、紫の髪、金の瞳…………一人、ヒットする人間が居るな。超大物の次元犯罪者が。
「だが、そいつとはここ数か月ぱったり連絡がねえ。どっか高飛びしたんじゃねえの? これが私の知る全てだ」
「そうかい。協力どうも」
僕は首から手を離し、剣を引き抜いた。
「ハッ、甘いねえ!」
自信満々に拳銃を引き抜いたあたり、対IS用の特殊弾頭でも使ってるんだろう。まあ、僕はISを纏っていないのだが。だけど、
「甘いのはどっちだろうね?」
拳銃を構えるより前にその銃を切り刻む。チャンスは一度きりだ。ここから先は容赦しない。
「眠れ」
意識を刈り取るために叢雲を構える。
しかし、そこで僕の背中に激痛が走る。一体何が?
(叢……雲)
(背後より織斑一夏の攻撃です)
(そう……。とりあえず、残ってる魔力を…細胞活性による自然治癒力の強化に回して)
(了解)
叢雲に指示を出して僕は意識を失った。
後半題名と関係無いな~。