IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~   作:ピーナ

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今年最後の更新になります。ってか、残り二時間ですし。

実は、昨日でラストにする予定だったのですが、キーボードの一部が反応しなくなったので、急遽新しいキーボードだけ買いに行きました。


第四十二話 強さの意味

学園祭が終わってすぐ、次の行事であるキャノンボールファストの準備が始まった。

と言っても、出雲は高機動パッケージが無い。なら、どうするのかと言うと、出雲にはキャノンボールファスト対応の調整が為されたモードが存在するからそれに切り替えるだけだ。ちなみに、これは僕が夏休みにミッドに行っている間に会社の技術部に預けている内に付けられた機能だ。

 

「やるからには勝ちたいよね~」

 

食事を食べながらそう呟くのはなのは。

 

「星雲は出雲の量産仕様って言っても足回りはほぼ同等だから、速度面では他の皆とも互角だろ? 問題ないんじゃないか?」

「性能面はね。となると駆け引きと技量か~」

「よし、今日の講義はそれにしようか。レースの鉄則に駆け引き」

「キャノンボールファストは私達の航空戦に近い所が多いからね。その辺の勉強もありかも」

 

IS戦は向かい合う事が多いが魔法での航空戦は後ろの取り合いになる事も多い。戦闘機でのドッグファイトに近い所があると思う。ミッド式は射撃魔法が主体な事が多いのでこれが特に顕著だ。

もっと具体的に言うと、魔法戦はISの戦いとドッグファイトの中間位。向き合っての戦闘も後ろの取り合いもどちらも起こりうる。

今日講義になったのは、学園祭での怪我が理由だったりする。僕的にはもう問題ないのだが楯無さんに後数日は安静にするようにと言われたからだ。色々お世話になっている楯無さんに心配かけるのはやっぱりどうかと思うから、言う通りにしておこう。

 

 

 

「はい、今日はキャノンボールファストの対策をしていきます」

「なんか、テスト前の勉強みたいね~」

 

楯無さんの感想は間違っていない。テスト前の対策勉強と同じで、傾向(レースのおおよその流れ)と対策(レースでの鉄則や駆け引きなど)を話す事になるし。

 

「まず前提としてキャノンボールファストは妨害ありのレースなので前方だけじゃなくて後方からも攻撃が来ます。これが普通のIS戦と一番違う所でしょう」

 

IS戦は大概向かい合ってのスタートで、それは変わらない。アリーナもそこまで広くないから追いかけあいになる事もまず無い。だから、ほとんど後ろからの攻撃がありえない。

 

「と言っても、皆八雲君のコーチでマルチタスクの強化で視野の全方位接続を使えるからそこまで問題にならないと思うよ」

「だから皆共通の有効な手段は訓練で上がった回避能力を活かしての先行逃げ切り。特に目立ったライバルの少ない楯無さんは有効な手段でしょうね」

「確かに一理あるわ。今だと大分回避に自信出てきたし」

 

先行しての逃げ切りは大いに有りな手段。上手くハマればそのまま勝つ事が出来る。

 

「でも、それだと、妨害が集中しちゃわない?」

「良い所に気付いたね、シャルロット。集中攻撃は確実にある。それすら躱せる自信があるなら、逃げ切りをお勧めするよ。そうでないなら僕が一番安全手だと思う、中盤でレースを伺って、終盤に差すっていうのが良いかな」

「……なんか、聞いていると競馬みたいだね」

「あながち間違ってないね。オーバルコースだし」

「その、終盤と言うのは具体的にはどのタイミングだ?」

「オーバルコース10周だから、早くて残り1周半、遅くてもラスト4分の3周って所かな。この辺はレース次第。先頭と中盤が離れていたら速い展開で仕掛けるし、そこまで差が無ければ慌てる必要がない。ただ、もしトップがラストスパートを掛けてきたら、こっちも行かないとヤバいと思うよ」

 

個人的にレースは先行した方が有利だ。展開の主導権を握る事が出来るから。キャノンボールファストは妨害アリだけど、この事は変わらないと思う。

 

「……なんか普通のIS戦と同じでペースを握った人が有利なんだね」

「と言うより、これは戦いの鉄則と言い換えても良いと思うよ」

「戦いの中でそれを握るのは練習だけじゃ補いきれないから、模擬戦で実践的な経験を積むしかないよ」

 

つまり実戦経験の差と言うのは戦いのペースを掴み、支配する能力の差だと僕は思う。

 

「と、それは一旦横に置いておいて、キャノンボールファストに戻ろう。次はレースで押さえておきたい点をいくつか。まずはポジション、位置取りだね。これは高い位置の方が有利」

「どうして?」

「いや、単純に上を取った方が妨害しやすくてされにくいから」

 

ISの高速飛行の時は前傾姿勢になる。だから、単純に下に相手を置いた方が妨害しやすい。また、背中側への攻撃は難しいから妨害されにくい。なので、単純に高度を取った方が有利なのだ。

実際、戦闘機同士の戦闘は高い位置の方が有利らしいから理にかなっていると思う。

 

「シンプルな理由だけど真理ね」

「ですね。後はコースの内側を走る位かな」

「一周の距離が若干短くなるから?」

「それもあるけど、妨害の威力が減って、相手への妨害は増すからが大きいかな」

 

インからアウトへの妨害は減速だけでなくコースを大きく外れると思う。しかし、アウトからインへの妨害はその危険性が少ない。だから、インコースを走る方が良い。

 

「ただ、それだと、カーブが難しいわね」

「その辺はさじ加減ですね。あくまで気を付けた方の良い事ですから」

「……八雲はいつも色々考えているね」

「努力も怠らないしな」

「そうだね、どうしてそこまで熱心なの?」

「仕事柄かな」

「「「「仕事柄?」」」」

 

僕の言葉になのは以外が疑問の声を上げた。

 

「そう、仕事柄。僕の仕事はこっちで言う軍人や警察官の仕事に近い。まあ、相手は人間半分、ロストロギア半分って所だけど。それで、そこで起こった戦いに負けると当然、被害が大きくなる。だから、僕達は負けられない。勝負は時の運とかそんな事は言ってられないんだよ。だから負けないために努力する。それは技術だけじゃなくて、心の持ちようとか、戦いの考え方とか色々ね」

 

僕がまだ嘱託魔導師だった頃、模擬戦を見たクロノが僕の戦い方を「強いよりも上手いという印象が強い」って評した。魔法の威力や技術よりも、戦いでの立ち回りの方が目にいったらしい。これも、色々考えた結果だ。

犯罪者を取り逃がして被害が増える。ロストロギアの封印に失敗して甚大な被害が発生する。それは起こりうることだ。僕達の仕事はそれを防ぐ事。そのための努力は怠ってはいけない。

それでも、いくら頑張っても助けられなかった命はいくつもある。僕はその人達の想いも背負って進まなければならない。

 

「っていうのが建前で、本当は怪我してはやてちゃんを泣かせたくないからだよね」

「な、なななな、何をおっしゃるのですか、なのはさん⁉」

 

僕はなのはの言葉に分かりやすく動揺する。その辺、空気読んで黙っておいてくれてもいいのに。

正確に言うと、さっきの言葉は管理局員としての僕の本音。でも、ただの霧島八雲の本音は「はやての笑顔を護る為に僕は負けない」だ。これは僕がはやてと出会ってから生まれて、これからも変わる事の無い気持ちだ。

 

「えーっと、なのは、そのはやてちゃんと言うのは、学園祭に来て八雲の頬にキスした女の子?」

「そうだよ~。私の幼馴染で八雲君のお嫁さん、もとい、八雲君の最愛の人。八雲君が強くなるために努力をし続けるのは、はやてちゃんにいつも笑っていて欲しいからっていう凄くシンプルな理由なんだよ」

 

どんどん、僕の心の中に秘めてた事が……。

 

「ってか、何でなのはがそんな事知ってんのさ! はやてにしか言ってなかったはずだよ⁉」

「お兄ちゃんが言ってたの。『八雲は俺や父さんと同じで、大事な人が笑顔でいれるように強くなろうとしているんだろう』って。それに、私達の付き合いも長い物だからね。その辺は分かるよ」

 

心の内まで理解してくれる幼馴染がいる事は嬉しいのだけど、それを知ったのが人に聞かれると恥ずかしい事だったからどういう気持ちになれば良いのか分からない。

 

「だが、それだと嫁の言葉を何故否定したのだ?」

「その辺の事情は夏休みに楯無さん達に聞いたけど、私は覚悟の差だと思うよ」

「覚悟の差?」

「うん。八雲君ははやてちゃんを護るためなら比喩表現抜きで世界を敵に回して戦うよ。友達と敵対してもその道を選ぶよ。これは絶対」

 

……もしも、それしか手段が無ければ僕は喜んで世界中を敵に回す。なのは達と戦うのは心苦しいけど、それも押し殺す。これは僕の譲れない物だから。と言うより、闇の書事件はそんな感じだったし。

 

「それにね、本当に大切な人を護りたいのなら全てを使ってなんて言葉を使っちゃ駄目。護られた人が罪の意識を背負うから。命は護れても心が護れてないよ。大切な人を護りたいのなら、自分の命も護らないと。それには生半可な努力じゃダメ。凄く強くならないと出来ない事だよ」

 

なのは自身、任務中の怪我で家族や友人を泣かせたから、この言葉には実感が籠っている。

 

「厳しい道と分かっているから八雲は否定したという訳だな」

「なんだかんだ言って、八雲君はお節介だからね」

「……あのさ、僕の前で恥ずかしい話は止めてくれないかな。マジで」

 

出来る事なら穴掘って埋まっていたい。

 

「もうここまでなのはが言っちゃったから言うけど、僕自身、護るって事を一夏が決めたら何も言わないよ。でも、一夏はそれが憧れで今は止まってる。具体的な覚悟が無いし、力も無いし、努力も人並み。護る手段は色々あるから力や努力は置いておくにしても、覚悟が無ければ人を護れないよ」

「覚悟……」

「そう。僕は護るって気持ちは自分勝手な気持ちだと思ってる。だからこそ、それで起こる事は自分自身で責任は取らないと駄目なんだよ。これからは逃げ出せない。生半可な覚悟じゃその責任に潰されちゃう。そんなのは茨の道だよ。高校生なんだしじっくり考えて決めればいいんだよ」

「でも、八雲君は決めてるんだよね」

「まあね。でもさ、僕にとっては僕自身がそれを望んで選んだ道だからね。後悔も何もないよ」

 

確かに僕ははやての命を救うために罪を犯した。それを責められる事もある。この重さに潰されそうになった事だってある。でも、僕の横にはやてが居てくれるから、僕の横で笑っていてくれるから、僕を支えてくれるから、僕はそれを受け入れて背負っていける。だからこの事に後悔は無い。

 

「……やっぱり、八雲は強い」

「そうかな? 戦闘に関しては結構自信があるけど、それ以外は普通の男子高校生だと思うよ。それでも強くみえるのなら、それはきっと……」

「「「「「きっと?」」」」」

「僕の隣には僕と一緒に歩いてくれるこの世で一番大切な人がいるからかな」

 

なのはを除く全員が机に突っ伏す。突っ伏さなかったなのはは、

 

「……予想通り最後の最後にのろけなの」

 

と呆れている。

仕方ないじゃん。僕はそう思ってるんだし。ここまで話す展開になったのはなのはが原因だし。なのはがあそこで僕の本音を言わなきゃこんな終わりにならなかったよ。

 

「話は変わるけど、八雲さ、僕達の恋愛相談に乗ってよ」

「それは止めておいた方が良いよ」

「何故だ?」

「八雲君は織斑君程ではないし、はやてちゃんの事に関しては敏感だけど、世間一般的には鈍感の方に分類されるの。多分、織斑君の事を好きな五人の事も気付いていないよ」

「……えっ、そうなの?」

 

ってか、五人って誰?

 

「ほらね。だから、八雲君が出来るのは男性目線の意見位なの」

 

辛辣ななのはの言葉だけど、事実だから言い返せない。

……もう少し、そういうのに敏感になった方が良いのかね?




これを書いている時はTOZのアニメ、導師の夜明けを見てました。今から来年の発売が楽しみです。
同日発売のタッグフォースの新作も楽しみです。
これで考えたのが、TOZの限定デザインのPSポイントカードを買って、それでタッグフォースを買えば良いんじゃねえの? ってものでした。
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