「えーっと、今日は皆の意見でキャノンボールファストの反省会をすればいいんだね?」
「途中離脱した八雲と客観的に見てたお姉ちゃんにお願いしたい」
半ば僕達の勉強場所になっている生徒会室で集まってこの前の反省会を開くことになった。
「結果から言うと、ラウラの作戦勝ちだね」
「流れを上手く手繰り寄せたのと、状況に応じた行動での勝利だと思うわ」
「細かく見ていくと……なのはと簪が終盤ちょい手前で仕掛けて、後ろに居た皆が一気に上がったわけだ」
「これは八雲君が言ってた安全策通りだったわけよね?」
楯無さんの言葉に頷く4人。
「それまでは付かず離れず、先行しているメンバーの妨害しながら前ある程度の距離を保って居たわけだね。それで、なのはと簪がまず大技で仕掛けたわけだ」
「私はなのはが仕掛けたからその流れに乗っただけ」
「僕も前に出るチャンスだと思って流れに乗ったよ」
「私はちょっと早めに仕掛けてある程度順位を上げた後、最後にもう一回仕掛けて勝とうと思ってたんだ」
「でも、それが出来なかったのよね。簪ちゃん、ラウラちゃん、シャルロットちゃんの妨害が集中して」
そう、一回目の攻撃が終わった後の四人の並びは前からラウラ、シャルロット、簪、なのはとなった。なのはが出遅れたのは前の三人の妨害がなのはに集中したから。
「ここで、上手かったのはラウラだね。他の2人もなのはの妨害をしていると確認したら、妨害よりもペースを上げての逃げに入ったし」
「一波目で上手く前に出れて、その後の妨害もなのはに集中していたからな。それに、もう一波ある気がしたので、リードを作っておこうと思ったのだ」
「もう一波あると思った、その根拠は?」
「一波目の弾数がなのはの全力より少なかったのと、少し仕掛けるのが早いと感じたからだ」
「その辺、なのはちゃんはどうなの?」
「あはは……、概ねその通りです。第二射の事を考えて一回目は少し数減らしてました」
この辺は落ち着いて後で映像で見た僕や客観的に観戦していた楯無さんはなのはの意図に気付けた。ラウラの凄い所はこれをレース中の疲れてきている終盤で冷静に判断を下せたところだ。
「確かに、今見返すと前に見たなのはの全力より少し少ないね」
「……どうして気付けなかったんだろ?」
「それはやっぱり疲労じゃないかしら?」
「僕もそうだと思う。超高速飛行だから、普段より疲れるし、妨害もあるから、高いレベルの集中力も必要でそれを維持しないといけない。そういう疲れが終盤での観察力、判断力の低下に繋がったんだよ」
この疲労という物は非常に厄介だ。
大体の人は本番の高揚感で体の疲れが感じにくくなっている。だから、非常に自覚が出にくい。出にくいからこそ普段以上にペース配分が難しく、気付けない事でのミスが起こってしまう。
もし気付けていたら、より細心の注意を払って気付けたり打開する手段があったかもしれない。
「ラウラちゃんは軍人さんで鍛えたのがあの織斑先生だからね~。基礎体力は皆より上よ。だからこそ、皆より冷静な判断が下せたのかもしれないわね」
もちろん、簪とシャルロットは代表候補生だから、基礎体力だって一般生徒よりはある。しかしラウラよりは数段落ちるだろう。今回の結果にそれも関係していると僕は思う。
「体力か~。一番地道にやらないと駄目な奴だね」
「苦手だけど……頑張ってみる」
「そんなに難しく考えなくても、八雲君となのはちゃんのメニュー厳しめだから、慣れたら自然に体力が付いてるわよ」
「確かにそうだな。八雲やなのはは体力には自信あるのか?」
「私は戦い方を教えるのが仕事だからね~。体力には自信があるよ」
「忙しい前線職だから、体力ないとやってけないからね。僕もそこそこ自信があるよ」
「八雲君、嘘はいけないよ~?」
「「「嘘?」」」
いや、僕は嘘なんて言った気は無いんだけど……。
「ハーフマラソンを一時間十分台で走りきる人間が体力にそこそこ自信があるっていうのは嘘だと思うよ」
「あー、あったねそんな事」
これは去年の聖祥大付属中冬の地獄イベント『マラソン大会』で何故か三年男子はハーフマラソンを受験前にも関わらず走らされたのだった。ちなみになのは達三年女子は五キロ。教師がバカなのか、女尊男卑なのか……。多分前者だと思う。ちなみにこの後に僕は運動部の顧問の先生方から「どうしてウチの部に入ってくれなかったんだ!」と言われたしまった。いや、それは僕の自由でしょうよ。
「いやいや、それは凄い事だよ⁉」
「流しそうになったけど、長距離ランナーとしてがっつり鍛えたら十分世界狙えると思う」
「八雲君の身体能力は凄いと思ってたけど……ビックリだわ」
「……そうなんですかね?」
「実感が無いというのは怖いな」
「認識の違いも怖いわね。……さて、話を元に戻すわよ。今回は本当に接戦だった。最終的に判断を誤らずに冷静に飛び続けたラウラちゃんが勝ったけど、少し流れが違えばここに居る皆に勝てる可能性があったわ」
楯無さんの言う通りだと思う。なのはの二度目の仕掛けるタイミングが早ければ、簪とシャルロットの妨害がラウラに集中していたら、第一波目で先頭に立ったのがラウラじゃなかったら。ちょっとした事で今回の勝者は変わっていたと思う。
「でも、八雲が居たら、多分八雲が勝ってた」
「そうね~。あれは皆驚いてたもの。後ろ向きながらの高速飛行なんて」
「あれは、一番妨害しやすい飛び方って事で考えた結果ですよ。セオリーが無ければ作れば良いんです」
ISが出てきてまだ10年。セオリーは確立されつつあるかもしれないけど、それを鵜呑みにするだけじゃなくて、新しい事に挑戦していくべきだ。そうした経験が自分の為になるはずだから。
「八雲君の場合、戦い方の基礎は色々な人に学びましたけど、そこから先は自分で試行錯誤の末に作り上げたものですし、何でも出来るからこそ、色々やってみる事が身についてるんですよ」
一つ一つ思いついた動き、誰かがやっていた動きをやってみて自分に合うようなら取り入れる。そうやって、僕は自分の戦い方を作り上げてきた。今回も同じだ。
「実際にやってみる……か。言うのは簡単だけど難しいよね。どうしても、慣れた事や得意な事に集中しちゃうもの」
「それはそれでいいと思いますよ? ただ、これが僕に合ってるってだけですし。……さて、話は変わるけど、次は全学年専用機持ちタッグトーナメントの話でもしますか。準備期間が一月ありますし、多分その間は合同で練習はしないでしょう。手の内知ってちゃ、面白くないですし」
「そうね~」
「という訳でなのは、組んでくれない?」
「良いよ~」
タッグ結成。この間数秒。
「簪ちゃん、お願いできる?」
「もちろんだよ、お姉ちゃん」
姉妹タッグ結成。これまた数秒。
「ラウラはどうするの?」
「嫁とのタッグも捨てがたいが……今は自分がどこまでやれるかを確かめたい。シャルロット、頼めるか?」
「僕も同じだよ。よろしくねラウラ」
同室タッグ結成。ここまででおおよそ一分。
「じゃあ、今日はこの辺で解散にして、それぞれの連携とかを考えましょうか」
楯無さんの言葉で今日の所はお開きになった。
「と言ってもさ、私達って連携考える必要ある?」
「今さらな気もするよな~」
解散した後僕となのはは寮の僕達の部屋(なのはが転入してきて、寮が同じ部屋になった。多分織斑先生か楯無さんの配慮だと思う)で相談していた。
僕となのはの連携などそれこそ数えきれない程にやって来た事だ。再確認位で十分だと思う。
「……八雲君」
「何?」
「無茶する事を今さら止めようとは思わないけど、死なないでね」
なのはには最終決戦の事を話してある。もちろん、クロノ達バックアップの人にも。
「死んでたまるか。はやての為に、何より僕自身の為にもね」
「だね。八雲君の意志を貫く強さはよく知ってるから。心配するだけ無駄かな」
「そうそう、無駄無駄。気にする余裕があるなら、お前とユーノの関係を気にしなよ」
「い、今は関係ないよね⁉」
分かりやすく動揺するなのは。相変わらずこう言う所は弱い。
「確かに関係無いけど、二人が上手くいくのを見ないと、未練になって死にきれないよ」
「……じゃあ、この事件の間は大丈夫だね」
「だね」
そう、僕にはまだ見たい物、やりたい事がある。クロノとエイミィさんの子供にも会いたいし、幼馴染二人の恋愛も気になる。
それにはやてと一緒にやりたい事、行きたい所、見たい物が沢山ある。こんな未練たらたらの状態じゃ死ねないよ。
IFルートについてのご意見ありがとうございます。これを上げる頃にもう一つ聞きたい事があるので良ければまた見ていってください。