白熱した全学年専用機タッグトーナメントから数日、僕はアリーナに居た。横にはなのはが前には楯無さんと簪が、トーナメントで優勝したペアが居る。
こうなったのは決勝戦終了直後に遡る。
決勝カードは楯無さんと簪のペア対ダリル・ケイシー先輩とフォルテ・サファイア先輩のペアという組み合わせになった。
会場はその二試合前の準決勝の先輩ペアとシャルロットとラウラのペアの白熱した激戦の余韻でかなりの盛り上がりを見せていた。
そんな中行われた決勝戦は今までで最長の約50分もの熱戦の末に僅差で楯無さんと簪のペアが勝利をもぎ取った。
いやー、最後楯無さんがワンオフアビリティの沈む床(セックヴァベック)で二人を拘束して簪が山嵐の斉射で決まるかと思えば、直撃直前に今まで6対4位の割合で簪より攻撃が集中していた楯無さんのエネルギーが切れて、残りのSEが紙一重とはいえ数的有利になったけど、簪がマルチタスクによる視野接続を上手く活かしての二対一を演じて見事勝利を収めた。試合後に「いやー、ウチらの誤算は妹ちゃんの腕を見誤った事っすね~。もう、妹ちゃんって呼ぶのも失礼っすね」「だな、これからは競い合うライバルだぜ、簪」と二人はオープンチャンネルで簪を称えていた。
実際、最後の最後まで集中力を切らさなかった簪は称賛に値する戦いをしていた。教えていた僕も鼻が高い。
そんな中、お疲れの二人は僕となのはがいた管制室にやってきてこう言った。「「五日後、二人と戦いたい」」と。
実際は五日ではなく、機体の修理もあったので一週間後に行う事になった。
観客は管制室に居る織斑先生と山田先生、二人の従者の虚さんと本音、噂を聞きつけたダリル先輩とフォルテ先輩とシャルロットとラウラ、いつの間にか現れていた束さんだけだ。
「っていうか、あの時聞けませんでしたけど、何で僕達と戦いたいんですか?」
「八雲君に勝たないと優勝した気になれないのよね~」
「私も。それに先生に挑むのは鉄板」
「まあ、せっかくのタッグマッチだったし出たかったから、こういう形でも嬉しいよね、八雲君」
「だね」
多分事件が無かったら、全力全開で勝ちに行ってたね。まあ、事件があったから、時雨と出会えて、出雲が二次移行したし。
そうそう、束さんは本当に会社にISコア(しかも二つ)を渡して、その代わりに魔法関係の技術のデータのコピーを全て貰った。これが二日前の出来事なので、目の隈がひどい。多分下手したら一週間寝てないんじゃないかな?
『四人とも、準備は良いな? それでは、試合開始!』
基本的に僕となのはのタッグだと僕が前衛になる。だから、僕は開始の合図と共に突っ込む。無策ではないし、パートナーのなのはの能力も信頼しているから、僕は二人の目を僕に向けるために派手な動きをしたいのだ。だけど、その動きは止められる。
「いくら八雲君でも超広範囲指定型空間拘束結界、沈む床からは逃れられないわよ」
「流石、ワンオフアビリティ、チートですね。まあ、でもワンオフアビリティが使えるのを自分だけだと思わないでくださいよ、楯無さん。発動、八極覚醒。無数の流星よ彼の地より来たれ! メテオスウォーム!」
僕は容赦なく、二人に流星を降らせる。八極覚醒の能力は『僕の魔法の再現』。この上なく、僕向きのワンオフアビリティの名前に恥じない能力になっている。
「ちょっ⁉」
中心にいる楯無さんはかなり慌てている。沈む床も解除されてるけど、突っ込むと僕も被害受けるかもだしなあ。
「お姉ちゃん!」
楯無さんのピンチを救ったのは簪。彼女は冷静に流星の軌道を見極めて楯無さんに当たる物だけを破壊した。
動揺でワンチャンス、楯無さんに大ダメージと思ってたんだけど、そう簡単にはいかないか。ファーストコンタクトは両者ノーダメージ。
「ありがと、簪ちゃん」
「助け合わないと、二人には勝てないからね。力を合わせよ、お姉ちゃん」
二人のチームワークは抜群だね。トーナメントの時も楯無さんを囮にして簪が攻撃に専念したり、簪に接近戦を仕掛けようとする相手を楯無さんが纏めて二人相手したりとお互いがお互いを上手くフォローしている。
「さて、行きますか」
「サポートは任せてね」
再び突撃を仕掛ける。
「簪ちゃん、後ろは任せたよ」
「うん」
楯無さんが前に出て、簪は……
「山嵐、8門!」
楯無さんの周りを飛び越えて僕狙いのミサイルを発射する。僕はそんなのをお構いなしに突っ込む。何故なら、
「アクセルシューター、バニシングシフト! シュート!」
なのはが迎撃していると信じているから。僕は爆炎の中を突き進む。
「はあっ!」
爆炎の抜けきった先には楯無さんの蒼流旋での突きが待ち受けた。だけど、それくらい予想は出来てるから、瑞雲で受け流す。僕も横薙ぎを繰り出すが、楯無さんもすぐに態勢を整え直し、それを防ぐ。やっぱり近接戦の腕前は超一流だ。他の専用機持ちよりも何枚も上だ。だけど、僕の目的は楯無さんではない。
「そこっ!」
僕は楯無さんが繰り出した突きを避けるだけでなく、それと同時に蒼流旋の上に乗って、それを踏み台に上に跳びあがる。狙いは最初から後衛の簪。
簪はなのはとの射撃の位置取りの妨害合戦をしていたから、隙がある。僕はそこに雷を落とし、斬り下ろした。魔法と剣技の組み合わせ技「魔法剣技」の一つ、「襲爪雷斬」だ。しかし、初段の雷撃で、僕の攻撃に気付いた簪は寸前で回避した。いや、雷撃も直撃じゃなかったぽい。だけど、ここは僕の距離だ。左手をかざし、巨大な火の玉を準備する。
「魔人爆炎斬!」
その火の玉に横薙ぎを叩き込み爆発させる。少し距離があったから、ダメージはいまいちだろうけど、それでも入った事には変わりない。
すぐにそこから動くと次の瞬間楯無さんの突きが繰り出される。もうちょい発動が掛かる技だったら、食らってたな。しかし、僕達の作戦通りだ。二人はほぼ同じ位置に居る。
「なのは!」
「準備できてるよ!」
僕達の上空にはなのは。彼女の周りには誘導弾、そして構えた彩雲は砲撃のチャージが完了している。なのはの誘導弾&砲撃の連携技、その名は、
「ストライク……スターズ!」
……やっぱり、なのはの砲撃はえげつないなあ。
「なのは、やったと思う?」
「ううん、シューターの方は楯無さんに迎撃されてたし、本命のバスターの方も多分直撃じゃなかった」
上から見ていたなのはは二人の動きが良く見えていた。そのなのはの意見は信用が置ける。だから……土煙が晴れて二人が立っていても別段不思議には思わない。
「なんていうか……桁外れッスね~。あの二人」
「だな。優勝ペアを完全に手玉に取ってやがる。こりゃ、私ら本当なら一回戦負けだったな」
試合を見ている準優勝ペアの二人にここまで言わせる八雲・なのは組。
「しかも、考え方が面白いな」
「そうッスね~」
「あの、どういう事でしょう?」
先輩達に尋ねるシャルロット。
「んじゃ、シャルロットに聞くけど、お前らがタッグトーナメントの時まずはどんな事を考えてた?」
「まずは数を減らすためにどっちかに攻撃を集中させようと考えると共に、こっちが数的不利にならない様にしようと考えていました」
「それが、普通の考え方ッス。私らもあそこで戦ってる姉妹ペアもそれは同じッス。んで、数的有利を作り出すために連携が求められる訳ッス」
「だが、霧島と高町は根本的に違う。互いの次の動きを理解し、そのために自分がどう動くべきかを把握している。それこそあの二人は大きな1という訳だ。そして、相手もそうだと考えてる。だから、より効果の大きい、同時攻撃を狙ってる」
「しかも、タチが悪いのが、どっちも相手を一か所に固める牽制攻撃と、同時攻撃を狙える範囲攻撃を使える点ッスね。片方に狙いを集中させようとしたら、それを囮に一網打尽ッスよ」
タッグの戦術に精通した二人の解説を真剣に聞くシャルロットとラウラ。
「しっかし、『楯無が一年生から教わっている』ってのはホントらしいな。んで、腕も上げてると」
「私らも仲間に入れてもらうッスか? 先輩」
「だな。アイツらの動きを見てりゃ、もちろん才能もあるだろうがそれ以上に桁外れの努力と経験がバックボーンにあるってのが分かる。そっから何か得れれば、私らも一歩上に行けるだろうさ。私にとっちゃ、学園生活の最後に来たチャンスだ。逃す訳には行かねえ」
「ッスね。一時の恥でここから先に進めるなら喜んでその恥を受け入れるッス」
彼女たちの言う一歩上やここから先、つまりは国家代表への道しるべを見つけたのだ。
「青春だね~ちーちゃん」
「わき目を振らず突っ走れるのは学生の特権だからな」
「ですね。……最近、霧島君と高町さんの方が教えるの上手いんじゃと思って自信が無くなってますけど」
「まー、教師の教える事って基本ばっかりだからね~。代表候補の皆には物足りない部分があるんだよ。やっくんとなのちゃんはその物足りない所を埋めてるだけだから、気に留める必要ないよ~。教えてる事が違うんだもん」
「ある程度までは私達教師の仕事だが、それ以上は個人の努力次第だ。あの二人はそれ以上の道を導ける技術を持っている。教育と教導の差だな。さて、試合もそろそろ終盤戦だな」
試合の流れは僕達有利といえる。
一つ一つの連携は上手く行ってるし、撃破まで行かなくても確実にダメージを与えられている。だけど、この流れならとっくに決着が着いていてもおかしくない。それでも着いていないのは二人が上手くフォローして凌いでいるからだ。要所要所で反撃もするので、しっかり流れを握ったという感じはしない。
と言っても、ダメージレース的には僕が半分、なのはが四割ちょっと、二人が四割を割り込んでいるから僕らに分が有る。だけど……
『ここで、終わる二人じゃないよね? 八雲君』
『だろうね。ただ、狙いが分かんないだよなあ』
『でも、一発逆転を狙うなら鍵を握ってるのは楯無さんだよね』
確かに。武器の問題で楯無さんは僕達を一か所に寄せるのが難しい。でも、山嵐を使いこなしている今の簪なら僕達を一か所に寄せるのは難しい事ではない。なら、自然と楯無さんが逆転の切り札になると考えられる。
『とりあえず、お互いの距離を……』
取ろうと言おうとしたら、
「山嵐、16門!」
出鼻を挫くように簪が山嵐を発射した。しかも、
『このままじゃ、固まっちゃうね』
『だな』
上手く僕達を一か所に誘導するように。とりあえず、楯無さんの方に注意を……
「山嵐、全門斉射!」
マジかよ! 簪の方が僕達を纏めて狙ってくるとはね。だけど、
「なのは、ここは僕がやる! Fバレット、フルドライブ! ファランクスシフト、オールファイア!」
ファランクスシフトの弾幕でミサイルを全弾撃ち落とす。しかし、爆炎で視界が防がれる。しかも、さっきより煙が多い?
「……これはハメられたね」
「だな。この段階じゃ、僕らの負けだね」
二人の狙いは大技の準備のための目隠し。だから、大技の発動は確定。だけど、この試合の勝ちは譲らない。
煙が晴れると、蒼流旋にアクアナノマシンを纏わせている楯無さんがいた。
「これがミステリアスレイディの最大の攻撃、『ミストルティンの槍』よ! その身で味わいなさい!」
だけど、この距離だ。何もなければ普通に回避できる。……そういや、簪は?
「「二重瞬時加速!」」
簪は楯無さんの後ろに居て楯無さんの突撃のブースターの役割をしていた。これはヤバい。今からじゃ回避が間に合わない。
「ここは私が! スターライトブレイカー!」
なのははすかさず、最高の攻撃で迎撃する。しかし、二対一だから、押され気味。なら……
「瑞雲、フルドライブ! カートリッジフルロード! 全てを切り裂け! 天翔光翼剣!」
全力には全力でぶつかる! 実際の戦いじゃそんな事しないけど、搦め手で対処するのはこの場では無しだろう。
光の翼と桃色の閃光と一陣の蒼い影がぶつかり合い、大爆発を起こす。
『更識楯無、更識簪、高町なのはシールドエネルギーエンプティ。勝者、霧島八雲・高町なのは組』
アナウンスでやっと僕達が勝った事を理解する。僕の残りのSEの量を確認すると……6だった。危なっ! ギリギリじゃん。これは単純に最終激突前のSEの残量が一番多かったから勝てたんだろうね。
「いやー、負けちゃったわね」
「まだまだ二人は遠い」
「いやでも結構ひやひやだったよ?」
「だね。僕達連携にはかなり自信があったんだけど、最終的にはそれと関係無い所で決着着いたっぽいし。SEの残りもちょっとだったから紙一重だったしね」
機体性能と多対多の経験の差かな。色々な組み合わせで多対多の模擬戦や実戦をやって来たから、一対一ばりに経験が豊富だし。
「だけど、私達がまだまだだと思っているから、かなり分厚い紙一重よね」
「そうだね、お姉ちゃん。まあ、これからもよろしくね、先生」
「だから、そういうのは止めてって言ってるじゃん! 僕は先生ってがらじゃないよ!」
「そうかな~? 八雲君、将来自分の子供に色々教えてて、その派生で近所の子供にも教えだしそうだけど」
なにその妙に具体的な予想。その前に管理局員の僕がそんな暇あるのか?
「それは想像できるな~」
「……というより、夏にやってきた咲耶ちゃんが八雲が近所の子供に格闘技教えてるって言ってたから、その通りだと思う」
……そうだった。ちょっと事件が進展しすぎて忘れてた。一月ちょっと前の事だったんだけどなあ。なんか三か月くらいたった気がする。
「……なんかむず痒いので先生って呼ぶのは止めてください、お願いします」
「「え~どうしよっかな~」」
……うわっ、面倒な所だけそっくりだなこの二人。まあ、仲が良いのは良い事なんだけどさ。
「で、怪我無いですか?」
「大きなのは無いかな。体が痛いけど、それも後に残るようなものは無いと思うよ」
「私も。流石に今日はきついけど、寝れば大分と楽になると思う」
「問題ないけど、明日があるし、治癒魔法かけた方が良いんじゃない?」
「だね。んじゃ、万物に宿りし生命の息吹を此処に、レイズデット」
僕が扱える中で最高の治癒魔法を使用する。これも我らがシャマル先生による古代ベルカの治癒魔法を参考に能力向上をしている。
「……凄い。大分楽になった」
「これは便利ね~」
「と言ってもここまで強力なのを使える人はかなり少ないですけどね。私が知る限り、八雲君とシャマルさん位かな?」
「一応、アインスとリイン、はやても使えるよ。三人の場合、夜天の書有ってだけど」
三人が使える理由は僕のコアを収集したから。
それで、仲間内での模擬戦でこの誰かが居ると全力で出来るから楽しいんだよね。そうじゃないと後のこと考えて余力残さないといけないし。
「んじゃ、帰ってゆっくり休みますか~」
そう言って僕はピットに戻った。
部屋に戻る前にダリル先輩とフォルテ先輩に捕まって、押し切られて二人にも教える事になった。……ホント、今の僕は教えるのなんてがらじゃないんだけどなあ。
事件も終わったので、のんびり更新になっていくと思います。とりあえず、運動会ですかね。当分IFルートがメインになると思います。
ここまで空いたのは艦これと城プロをやってたからです。
両方同タイミングでのイベント。とりあえず、城をクリアしてからと思ってるんですけど……E-4ボス出ねえ。かれこれ100回近くは言ってると思うんですけどねえ。
艦これは資材溜めながら、デイリーをこなしています。明日辺りから始めようかな?
次回は運動会へのフリの回になるのかな?