グリードアイランド・クロス【本編完結】   作:寛喜堂秀介

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12 グリードアイランド

「うわー、俺、こんな立派な上等な部屋、始めてっスよー」

 

 

 グリードアイランドを手に入れ、帰りの飛行船の中。

 旅の道連れとなったレットさんは、オドオドと船室を見回す。

 その姿は小市民的、というか、小動物的だった。新しい住処(すみか)に不安がるハムスター、的な。

 

 

「ま、助けてもらったお礼ってことで。こっちは自由に使ってくれていいから」

 

「え、ユウさんは別の船室なんスか? もったいない。俺なんていっしょでいいのに」

 

「いっしょの部屋のほうが不都合あるだろ、いろいろと」

 

 

 俺の言葉に、レットさんはひとしきり首をひねり。

 思い当たったのか、突然慌てだした。

 

 

「……あっ、ユウさん女の人だったんスね! すすすすみませんっス! 声変わりしてない男の子かと!」

 

 

 あの、それはそれでむちゃくちゃ失礼なんだけど。

 まあ体のライン見えない外套姿だし、俺の口調ならわからんでもないが。

 

 

「うん、まあ、いいんだけど……一応、肉体的には女。こっちに来てからの話だけど」

 

「あ、精神的には男の人だったんスね。なんかちょっと安心しました。とんでもない無礼をしちゃったかと」

 

 

 えーと、無礼は無礼なんじゃないかな。

 別に気にはしないけど。

 

 

「まあ、そうはいっても肉体的には女なわけで、別室にしたほうが俺の精神衛生上いいんだ。いろいろ気を使うし。だから気にせず一人部屋を満喫してくれ」

 

「はいっス! 冷蔵庫の備え付けのジュースとか飲んでも大丈夫っスか?」

 

「うん、ここそういうランクの部屋じゃないから。それサービスだから」

 

 

 俺の言葉に、衝撃を受けるレットさん。

 

 

「ゆ、ユウさんはお金持ちなんスね……なんでそんなに金持ってるんスか?」

 

「天空闘技場で稼いだのが大きいかな。あとプロハンターだから」

 

 

 あ、レットさんの顔が宇宙猫みたいに。

 

 

「格差が……格差がひどすぎる……ドウシテ……」

 

「うん。レットさんの身の上聞いたとき俺がドウシテって思ったからね? せめてプレイヤーの基礎体力活かした仕事に就こうよ」

 

「ほんとそうっスよね……ハハ……」

 

 

 あ、レットさんがなんだか哀愁漂う感じに。

 

 

「ま、まあ、これから行く先は天空闘技場だ。レットさんの身体能力なら、すぐに勝ち登って金に困らなくなるだろ」

 

「天空闘技場に!? はい! 俺頑張るっス!!」

 

 

 天空闘技場、と聞いて、がぜん燃え上がるレットさん。

 わかるよ。ワクワクするよね。

 

 

「うん。頑張って……俺も責任持って頑張らせるから」

 

「……え?」

 

 

 言葉に不穏なものを感じたのか、吹き上がってたレットさんがこっちを見る。

 

 

「正直、いまのレットさんの実力じゃ戦力として厳しい。ハマれば強いけど、ハマる状況が限定的すぎるし、なにより修行が圧倒的に足りない」

 

 

 勇気は、ある。

 吸血鬼との戦い。あの状況で助けてくれたのだ。ないはずがない。

 だけど格闘技術は稚拙。オーラ運用は拙劣。根本的に戦闘経験が足りてない。

 

 

「──だから、相棒に仲間と認めてもらえるよう、俺が責任持って鍛える。天空闘技場はその一環……だけど、現地に着くまで、3日も時間があるよな?」

 

 

 にこりと笑う。

 レットさんがちょっと怯えているが、俺も必死だ。

 なにせこの人をシュウに紹介しなきゃいけないんだから。

 

 

「まずは“点”。自分の目標を見定めることから始めようか」

 

「は、はいっス! 頑張るっス!」

 

 

 ノータイムでそう言えるあたり、見込みはある……と、思う。

 

 

 

 

 

 

 三日後の朝。

 天空闘技場に戻ってきた俺たちは、あわてて病院へ向かった。

 シュウが、フロアマスター挑戦者との戦いで大怪我を負ったのだ。

 試合の勝敗は、シュウの勝利だったらしいのだが……かなりの重傷らしい。

 

 受付で場所を尋ね、急ぎ病室を訪ねると。

 全身包帯巻きのシュウが、ベッドで寝かされていた。

 

 

「シュウ、大丈夫か?」

 

「──全治6ヶ月」

 

 

 声をかけると、シュウは不機嫌そうに答える。

 

 

「左手尺骨単純骨折。右手中手骨数箇所複雑骨折、右腕上腕骨単純骨折。肋骨第6、7、8番骨折。右足大腿骨単純骨折、右足中足骨粉砕骨折……骨だけでこれ。くっそ、あいつ、腹立つ──うぐっ!」

 

 

 ベッドを叩いた衝撃が傷に響いたのだろう。シュウはうめき声をあげる。

 

 こんな感情むき出しなシュウを見るの、珍しいな。

 いつもは本音を話すときも、感情の一番深いとこを隠してるようなとこあるのに。

 

 ちょっと対戦相手の人に興味が湧いたり。

 その対戦相手の人、いま集中治療室らしいけど。

 シュウの入院を報せてくれた週間天空闘技場の記者、マジガンさん曰く、「医者にトラックと正面衝突したと勘違いされた」らしいし。

 

 

「あんまり無茶はしないでくれよ。こんなことで死んだら泣くぞ。マジで……まあ、思ったより元気そうでよかったよ」

 

「すまん。せっかくユウがゲーム手に入れてくれたのに、こんなザマで……ところで」

 

 

 と、シュウの声音が変わる。

 

 

「──ユウも怪我した? ひょっとして後ろにいるヤツと関係ある?」

 

 

 さすがに誤魔化せないか。

 負傷したのはあの男──吸血鬼アモンに打たれた左肩。

 さいわい打撲傷で済んだものの、まだ痛みが残っている。

 

 

「関係はある。けど、この──レットさんは助けてくれたほう」

 

 

 怯えるレットさんのために、そう前置きして、シュウに事情を語る。

 

 旅先で俺を襲ってきた敵のことを。

 逢魔ヶ災と名乗るプレイヤー狩りの集団。

 その一人、血の災禍アモン──吸血鬼の念能力者のことを。

 そしてレットさんに助けられて、仲間にする約束をしたことを。

 

 

「逢魔ヶ災──プレイヤー狩りについては、手が出せない。オレがこんな状態だしな。ブラボーたちに話すのも勧めない。遮二無二(しゃにむに)突っ込みかねないからな」

 

 

 あ、うん。

 ブラボーに教えた瞬間、他のすべてを放り投げて突っ込んでいく姿が目に浮かぶ。

 

 

「……逆に、ヤツらが攻めて来る可能性は?」

 

「低い」

 

 

 と、シュウは断言する。

 

 

「──前提として、奴らは強い。だがその強さは、おそらくは制約と誓約に起因する。スタートラインが同じプレイヤーだしな。それでも鍛えてないプレイヤーを殺すには充分だが……本当の意味で戦闘経験を積んでない。戦ってて、いろいろアラが見えたろ?」

 

「……たしかに」

 

 

 炎の災禍──赤髪ウェイターも、血の災禍アモンも、オーラの強さではこちらを圧倒しつつも、戦闘では甘いところがあった。

 

 

「自分たちの脆さを自覚してるから、撤退の判断が早い。その上、ヤツらの仲間が何人居るかは知らないが、ユウもオレも災いを倒してる。たとえ奴らがオレたちの素性を割ったとして、オレたちの天空闘技場(ホーム)に、なかなか攻めてこれるものじゃない。ましてやあの吸血鬼は弱点がはっきりしてるしな」

 

 

 そうか。

 こちらに相応の実力がある上にここはホーム。

 こっちが反撃の備えを万全整えている状況を、当然想定しているだろう。

 

 

「なら、当面攻めて来られる心配はないと?」

 

「いや、襲撃に対する備えは必要だ。それもオレのフロアなら難しくない」

 

 

 なるほど。

 フロアまるごと自分のフィールドなら、警備も罠も自由だ。

 地上200階の要塞。守りとしては充分だ。

 

 

「オレも医者を雇って自分のフロアで療養することにする。ユウは──そいつを戦えるレベルまで鍛えてくれ」

 

「わかった。もちろん責任を持って鍛える」

 

「お、お手柔らかにお願いしますっス!」

 

 

 俺が約束すると、レットさんが引きつり笑いを浮かべた。

 まあ、さっきから物騒な話してたしなあ。

 

 あ、ブラボーたちにも、新しい仲間とグリードアイランド入手の件は連絡しとかないと。

 

 

 

 

 

 それから二週間。

 レットさんは、天空闘技場に放り込んで実戦訓練。

 俺はレットさんの勝ちに賭け続けて懐肥やしに勤しんだ。

 

 彼自身、プレイヤーだし基礎スペックは低くないのだが、勝負度胸のなさと、弱腰とヘタレオーラのせいで、オッズは常に高い。

 

 結果、オレの預金残高がものすごいことになってたりする。

 グリードアイランド、原価でなら買えるんじゃないかってくらい。

 レットさんの戦い方が危なっかしいせいで、毎回寿命は縮んだけど。

 

 しかも、レットさんは律儀に、毎回ファイトマネーの半分を渡してくる。

 

 

「ユウさんにはお世話になってるので、ささやかな御礼っス!」

 

 

 貢がれてる気分というか、みかじめ料を貰ってる気分というか……レットさんが将来悪い人に騙されないか心配だ。

 

 もちろん俺も金儲けだけしていたわけじゃない。

 とはいえ、吸血鬼にやられた肩の打撲傷は全治一ヶ月。

 本来なら試合や訓練で鍛えたかったんだけど、大事をとって、四大行の基礎修行や、オーラの攻防力移動の訓練に専念した。

 

 そして一ヶ月後。

 俺の怪我は完全に回復し、調整のため組んだ試合でも、危なげなく勝利。

 

 一方、レットさんの戦い方も様になってきた。

 200階クラスでの試合も、危なっかしいながらも順調に勝利している。

 ……まあ、一度ヒソカと対戦という大失敗を犯し、仮病を使って出場拒否したものの、相手も現れず、両方バックレ無効試合というミラクルを起こしたが。

 

 ともあれ。

 天空闘技場で戦い続ける段階は過ぎた。

 そう判断した俺は、シュウと相談し、修業の場をグリードアイランド内に移すことにした。

 

 

「留守は任せろ。護衛を雇うから、心配はしなくていい」

 

 

 まだ動けないのに自信満々。

 そんなシュウに見守られながら、ジョイステⅡをセッティングする。

 

 

「ふたりとも、指輪──こっちに来たときに嵌めていたグリードアイランドの指輪は、絶対に外しとけよ。上書きされたら二度と日本に帰れないぞ」

 

「わかってる。脅さないでくれよ……指輪はシュウに預けておいていいか?」

 

「そうだな。あっちで別の指輪を貰うまでは、ゲーム内に持ち込むのも怖い。オレが保管しておこう」

 

 

 そうして、2人分の指輪をシュウに預けてから。

 最初に俺が、ジョイステⅡの前に座って、オーラを集める。

 

 直後、目に映る光景が一変した。

 真っ暗な空間に、幾何学模様が浮かぶゲート。

 いつのまにか一人、そこに立っていた。

 

 

 ──ついに、ここに来た。

 

 

 感動に、身震いする。

 間違いない、グリードアイランドの入り口。

 ゲームでは、キャラクリエイト、ログイン場面だったため、肉眼では初めて見る光景。

 

 

「グリードアイランドへようこそ……」

 

 

 そして、受付の女性──イータさんから説明を受ける。

 

 指輪について。【ブック】と【ゲイン】について。

 (バインダー)と指定ポケットカード、フリーポケットカードについて。

 

 それから、ゲームのクリア条件。

 100枚の指定ポケットカードをコンプリートすること。

 

 見つめ続けてきた目標。

 その最大の障害が、目の前に提示された。

 身震いし──奇妙な高揚を覚えながら、説明を聞き終え、階段を下りる。

 

 その先に広がった光景。

 空恐ろしくなるほど高い青空。

 見渡す限り広がる草原……プレイヤー(おれたち)の、始まりの光景。

 

 あの時は、一種異様な雰囲気に呑まれて、ただただ恐ろしかったけど。

 

 

 ──いまは、なんだかワクワクする。

 

 

 こちらの世界のプレイヤーのものだろう。

 明確な監視の視線を感じて、口の端をわずかに吊り上げる。

 動向を探られてるのは面白くないが、レットさん待ちなので、動くわけにもいかない。

 

 とりあえず、時間つぶしもかねて、地面の草を引き抜いてみる。

 

 

「うわ」

 

 

 香りを嗅ごうとしたのだが、草がいきなりカードになった。

 

 そうそう。こんな感じだった。ちょっとおもしろい。

 しばらく花や石ころをカード化して遊んでいると、レットさんが周りを見回しながら階段を降りてきた。その動きは、やっぱり小動物的だ。

 

 

「うわー、グリードアイランドなんスよねー」

 

「よそ見してないで行くぞ。あんまりここでじっとしてると、他のプレイヤーが来るかもしれないしな」

 

「ハッ、ハイ! 急いで行きましょうっス! さあ、さっさと行きましょう!」

 

 

 俺の言葉に、急に怯えだすレットさん。

 監視の目は感じるが、絶対来るってわけじゃないし、そう怯えなくてもいいと思うけど。

 

 

「……じゃあ、とりあえず魔法都市マサドラを目指そうか」

 

「え? 最寄りの──懸賞都市アントキバじゃないんスか?」

 

 

 目を見開き、尋ねてくるレットさん。

 

 

「言ったろ? ここには修行で来たんだ。とりあえずゴンとキルアがやった修行をトレースする」

 

 

 たぶん、それが強くなる近道だろう。

 べつに場所は別でもいいんだけど、モンスターたちの特性をわかってるほうが、修行の手始めとしてはいいだろう。ゴンたちと違って師匠(ビスケ)居ないし。

 

 

「えー、あれ、かなりキツイんじゃ……すみません! 精一杯がんばらせてもらうっス!」

 

 

 俺が半眼になると、レットさんは即座にひれ伏した。

 

 そんなバカな事をやっていたのが悪かったのだろうか。

 ふいに、上空から響く高い音。何者かが迫ってくる感覚を覚えた。

 

 既視感とともに、湧き起こるイヤな予感。

 だがそれは、地に降り立った者の姿を見て払拭された。

 

 

「ああ、フィンクス達に殺されてた……」

 

「ラターザっス、ユウさん」

 

 

 ああ、なんかそんな名前だった気がする。

 というかこの人、よく端キャラの名前まで覚えているな。

 当のラターザは(バインダー)に、なにかカードをはめ込み、調べている様子。

 

 

「ふーん? ユウちゃんとレットくん、ね」

 

「へえ、こんな風に調べられるんだ」

 

「うおっ!?」

 

 

 俺が背後から本を覗き込んでいるのに気づいたのか、ラターザは驚いてのけぞった。

背後の悪魔(ハイドインハイド)】を使っただけなんだけどね。彼、こんな距離で敵から視線を切るし。

 

 

「くっ、【再来(リターン)使用(オン) !! マサドラへ!!」

 

 

 ラターザは即座に逃亡した。

 よほど慌てたのか、こちらに呪文(スペル)カードすら使っていない。

 

 

「ん。マサドラ、あっちだな。行こう」

 

 

 運がいい。目的の方角がわかった。

 レットさんに声をかけて、走り出す。

 

 

「距離、どれくらいだったっけ?」

 

「ここから北へ行けばアントキバ、さらに北へ80km、だったと思うっス。さすがに細かくは覚えてないっスけど」

 

「うん、充分だよ。助かる」

 

 

 というか、わかると思って聞いたわけじゃなかったんだけど。

 無茶苦茶読み込んでるなレットさん。

 

 

「じゃあアントキバをスルーして、とりあえずマサドラに行ってみるか」

 

「そうっスね。爆弾魔(ボマー)、怖いっスよ」

 

 

 そっちはそこまで心配してないんだけどね。

 まだ早くても仕込み段階で、表立って動くような時期じゃないし。

 

 一番警戒しなきゃならないのは、ハサミを持った殺人鬼、ビノールト。

 それだって、いまの俺の実力なら、勝てない相手ではないはずだ。いざという時はレットさんの変身があるし。

 

 それから3時間ほどかけ、アントキバ北の森林地帯にたどり着いた。

 深い森の中、あたりに注意を払いながら走っていたのだが、なにも出てこない。

 山賊が出るかと思ったのだが、どうやらフラグが立っていないと出ないらしく、何事もないまま岩石地帯に出てしまった。

 

 そういえば、原作ではここでビノールトと戦ったんだったか。

 まあ、向こうもここを本拠地にしてるわけじゃないだろうし、そうそう会うこともないと思うが。

 

 

「いよいよっスね、魔物がうようよいる岩石地帯」

 

「行くぞ。ここで泣きごと言ってたら、到底レイザーとは戦えない」

 

「わ、わかってるっスよ。それにこの辺の怪物の弱点は把握済みっす。やるっスよ!」

 

 

 気合を入れるレットさん。

 まあ、ほんの数分後に怪物に囲まれ、悲鳴を上げることになるのだが。

 

 

 

 

 

 

 攻略方法がわかれば、怪物を倒すことは、さほど難事ではない。

 

 とはいえ、基礎能力の未熟はいかんともしがたい。

“絶”と“纏”を瞬時に切り替える必要がある【バブルホース】の捕獲だけは無理だった。

 レットさんに至っては、本格的な訓練を始めたのがつい最近ということもあって、数種の怪物に、かなり苦戦していた。

 

 怪物退治に半日を費やし、俺もレットさんも、フリーポケットの空きが厳しくなってきたので、一旦マサドラに。

 途中、キャンプ場のような小さな村で一泊し、目的地にたどり着いたのは、翌日の昼ごろ。走り続けだったが、そこまで疲労がないのは、重りを装備して常日頃鍛え続けた結果か。レットさんは死にそうなほど息を切らしてるし。

 

 マサドラではフリーポケット内のカードを全部売り払い、デパートでロープやスコップなど、必要なものを買いつけて、再び山岳地帯へ。

 レットさんが呪文カードを欲しがったので、いっしょに一袋ずつ買ったのだけど……【磁力(マグネティックフォース)】、【再来(リターン)】、【漂流(ドリフト)】。けっこういいのでは? 移動系ばっかだけど。

 

 ちなみにレットさんはカードを見せてくれなかった。

 ちらっと見たけど【名簿(リスト)】が被ってるのは確認できた。モタリケ並のクズ運か。

 

 ともあれ、無事山岳地帯に戻ってこれたので、修行を再開する。

 

 

「天空闘技場だと、系統別修行も派手に出来なかったからな。特に石割りとか。ここならゴミを気にせず修行できる」

 

 

 レットさんは具現化系。俺は放出系。

 ゴンたちがやっていない操作系の系統別修行が必要だが、さいわい系統別修行の基礎は、鎖使いのカミトから教わっている。

 

 ある程度慣れるまで系統別修行に専念し、それから山掘りを開始する。

 将来ゴンたちが使うかもしれないので遠慮して、掘る場所は西に2kmほどずらした。

 

 俺の戦闘スタイルは【暗殺者/武装】。

“周”に高い適性を持つが、持続力はそれほどでもない。

 ずっと鍛えてきた“練”の維持時間も、一時間には達していない。

 

 パートナーのレットさんの、オーラ運用が怪しいこともあって、掘り抜きも最初は一日一山が限度。

 次第に距離を伸ばしていったものの、再びマサドラに着いたのは12日後のことだった。

 未熟な分、伸びしろが大きかったのか、後半のレットさんはかなり頼りになった。

 

 それなりに鍛えられた自信が出来たので、また山岳地帯へ。

 今度こそ捕まえてやると、粘り続けること8日。ついにバブルホースの捕獲に成功した。

 

 その後、レットさんが全怪物を捕まえられるまで、俺は四大行の派生技のトレーニングと系統別修行。

 特に、必要になるであろう“流”と“隠”に力を入れたが……難しい。“流”は速さを意識すると、60程度の攻防力移動が限界で、“隠”はレットさんの“凝”でも見破れるレベル。まだまだ鍛え方が足りない。

 

 レットさんがすべての怪物を捕獲できたのは、一ヶ月後のことだった。

 その頃には、さらに先の修行が必要だと感じるようになった。具体的には、念を鍛えている間、筋力もいっしょに鍛えたい。

 

 なので、一度ゲームから出ることにした。

 さすがに超重量の重り装備は、グリードアイランド内では手に入らないのだ。

 

 

「そんなわけで、レットさんは近所の村で休んでて」

 

「休んでていいんスか?」

 

「さすがに疲労も蓄積してるだろうからね。不用意に動いてプレイヤー狩りに目をつけられてもだし、ゆっくり休んでて」

 

 

 そう言って、レットさんに余分な荷物を預けて、【再会(リターン)】でマサドラへ。

 そこから西にある、外への脱出路、港に向かった。

 

 

 

 




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