“大天使の息吹”を手に入れてから、一週間。
キャプテン・ブラボーから【
内容は、オペレーション・ハーヴェストの達成。
作戦開始から43日目の出来事だった。
そして3日後。
俺たちは、再びマサドラ西にある森の中に集まった。
「ブラボーだ! 我らが同士たちよ! キミたちのブラボーな活躍のおかげで、恐るべき短期の内に98枚のカードが揃った! 残すはひとつ、【一坪の海岸線】のみ!」
ブラボーが力強く語る。
その言葉に、あらためて、ゲームクリアが近いことを実感する。
「──だが諸君、油断はするな。同志諸君がいかにブラボーな戦士といえども、相手はあのレイザーだ!」
緩みがちな気持ちを、ブラボーが引き締めた。
そう、気を緩めるわけにはいかない。
レイザーとの勝負は、間違いなく最高難度のミッションだ。
「では行くぞ! 【
シュウが連れてきた、人数合わせ2名を加えて、呪文で浜辺の街ソウフラビへ。
そこから手分けして街中を探索し、「レイザーと14人の悪魔」の情報を収集する。
情報収集を終えた後、全員集合して、海賊の巣食う酒場を訪ねる。
淀んだ空気の中に、ガラの悪い男たちがたむろしていた。
その中に、足を踏み入れて。
「──なんだ? テメェら。今日はオレ達の貸切だ。帰んな」
そう言って、こちらをにらみつけたのは、ひどく肥満した大男。
ボポボだったか。脱走を扇動しようとして、レイザーに殺された死刑囚だ。
ブラボーがみなを制し、一歩前に出て、告げる。
「この町を出ていきたまえ」
一拍置いて、酒場に爆笑が巻き起こった。
うん。ものすごく既視感のある光景だ。
ブラボーの後ろから、やり取りをながめていると、太った男が酒を撒き散らし、炎の土俵を作る。
「オレをこの“土俵”から外に出せたら、
「ブラボー! あたしがやるよ!」
と青髪の童女、ミオが手を挙げた。
エースに目を向ける。
止める様子がないってことは、大丈夫だろう。
頭につけた大きなリボンをぴょこぴょこ揺らしながら、ミオは炎の土俵に入っていく。
「なんだ? チンチクリンのガキか──泣いても知らねぇぞ?」
大笑いするボポボ。
だが、その笑いは10秒と続かなかった。
「──―ねえ、それで全力なの?」
「ぬおおおっ!!」
ボポボは顔を真赤にして押し出そうとするが、ミオは平気な顔して突っ立っている。
なんか力学とかいろんな物理法則とかを完全に無視した絵面だが、オーラはきっちり足に配分されている。これは純粋にミオの技量だろう。
「よいしょっと」
ミオは男を軽々と持ち上げ、ゆっくりと炎の外に放り出した。
「んな、バカな……」
呆然とするボポボ。
それを見て、海賊たちのリーダー格らしい男が、立ち上がった。
「ついて来な。ボスに会わせてやる」
みな無言のまま海賊について行く。
誰も口を開かないのは、緊張のためだろう。
酒場の裏手には灯台があり、その中に設けられた巨大なトレーニングジムが、目的の場所。
そこに、その男は居た。
髪を逆立てた、笑顔の巨漢だった。
でかい。プロレスラーと見紛うサイズ感。
体にフィットした服の下には、筋肉がはちきれんばかりに詰まっている。
14人の悪魔の主──ゲームマスター、レイザー。
1年半ぶりの再会だ。
以前の俺は、哀れな被捕食者に過ぎなかった。
いまなおレイザーとの間には、明確な実力の壁が横たわっている。
──だが、戦う。
視線を、まっすぐに返す。
この一年半、つねに見つめ続けてきた目標。
日本に帰る。そのためにグリードアイランドをクリアする。
レイザーは、その最大の障害。戦う覚悟は、一年半も前に定めている。
俺の視線を感じてか、レイザーはこちらに視線を向け──口の端を吊り上げた。
◆
レイザーの提案で始まった勝負は、スポーツ形式。
先に8勝したほうが勝ち。そんな条件のもと、試合は始まった。
一番手の海賊が決めた勝負形式は、ボクシング。
こちらから出るのは、当然元ボクシング世界チャンプのマッシュだ。
「マッシュ、油断するなよ」
「もちろんだ」
マッシュは余裕の笑みをたたえ、リングに上がった。
相手の男も小さくはないが、マッシュはさらに頭ひとつ大きい。
マッシュが軽くステップを踏むと、海賊の顔色が変わった。
「てめえ……相当やってやがんな」
「ボクシング齧っててオレを知らないなんて傷つくぜ……まあ、17の年にプロデビューして、そこから負けたのは練習試合の1戦だけ、って程度には、やってやがるぜ?」
マッシュは軽口を返す。
まあ、グリードアイランドは外界から隔絶している。
マッシュの存在を知らないのは、むしろ当然だろう。
それにしても、練習試合とはいえマッシュを負かしたボクサーが居るとは……世界は広いと言うべきか。
ひょっとして、マッシュが強さを求める理由が、その相手なのかもしれない。
「──ファイト!」
開始の合図とともに、マッシュが前に出る。
鋭いステップインとともに、砲弾めいた右ジャブ。
相手はガードしたはずだが、パンチの威力に体が10センチほどズレた。
俺も天空闘技場で戦った時に体感したけど、ジャブの威力じゃないだろう、あれ。
堅実に、重いジャブで敵をコーナーに追い詰めるマッシュ。
プロの頂点までキャリアを積んだだけあって、ボクシングがむちゃくちゃ上手い。
リングの使い方、プレッシャーのかけ方、あらゆる面で相手を凌駕している。その上身体能力やオーラの運用でも上回っている。
「くっ!」
敵がとっさにパンチを飛ばす。
マッシュの拳を喰らいながらの、相打ち覚悟。
だが、マッシュはこれを避けた。代償にパンチが中途半端になってしまったが、上出来だ。次は対応できる。
「パンチを飛ばす……放出系念能力だな。なるほど──面白い!」
マッシュは笑い、前に出る。
相手も、一度見せた以上隠す必要はないと判断したのだろう。
退がりながらショートアッパーを飛ばす。
だが、マッシュの前に出る速度はなお早い。
地を蹴る足にオーラを集めて瞬時に距離を潰す。
「オレも見せてやるぜ! 念能力ってやつを!」
──【
吠えながら、マッシュは、虚空を蹴った。
飛んだわけじゃない。むしろ逆。軸足はそのままに、蹴り足は、地面から、ほんの20cm上。
そこから放たれた、打ち下ろしの左ストレートは、未知の角度から敵の顔面に突き刺さった。
ひとたまりもない。相手は意識を手放し、地面に倒れ伏した。
「よっし!」
マッシュがガッツポーズを決める。
強い。強くなった。
本当に、頼もしい仲間になってくれた。
マッシュの成長を見せられて、不覚にも、胸に熱いものがこみ上げてきた。
続いての勝負はリフティング。
こちらから出たのは、ミコだった。
おたがいボールを持って、合図と共にリフティングを開始する。
だが、ミコのボールは【
早々に相手のボールを叩き落として、勝利をもぎ取った。
「やったわね、ミコ」
「……辛勝でしたわ」
カミトの祝福に、ミコはなぜかおしりを押さえて応える。
そういえば、念獣と感覚を共有してるって言ってたっけ。
それを蹴り続けていたら、そりゃあ辛いだろう。わりと自爆覚悟でむちゃするよねこの子。
そして、次の勝負はバレーボール。
こちらから出るのは、軟体人間のダルと、波紋の戦士D。
「ゴムゴムの──
ノリノリな二人は能力をフル活用して勝利を収めた。
1人1勝だから、2勝分の勝利だ。
続いての勝負、バスケットボールと卓球では、人数あわせを投入した。
彼らをドッジボールに参加させるわけにはいかないので、どこかで使っておく必要がある。
「危険を感じたら即座にギブアップしてくれ」
試合前にブラボーが言ったのが、よかったのか悪かったのか。
彼らは実にあっさりと負けてしまった。
これで4勝2敗。
だが、充分な実力だと見切ったのだろう。
レイザーが8対8のドッジボール勝負を挑んできた。
残っているのは9人。
俺、シュウ、レットさん、ビノールト、ブラボー、カミト、ヒョウ、ミオ、エース。1人余ってしまう。
「じゃあ、残念っスけど俺が引っ込んで……」
「ふっざけんなよレット! 1人外すならミオに決まってるだろ!」
「あー! エース! ズルい! あたしもドッジやりたいー!」
「うん。とりあえずレットさんは参加確定ね。つーか子供と競うな」
「あっ、ユウさん、違うっス! ミオさんのこと失念してただけで、わかってたらさすがにそんなかっこ悪い真似しなかったっス!」
はいはい。まあ土壇場の勇気に関しては疑ってないから。
……普段は隙あらばヘタれるけど。ビノールト同様“燃”は欠かしてないはずなんだけどなあ。
「ミオ! 大人しく言うこと聞きなさい! 兄ちゃんミオをそんなふうに育てた覚えはありませんよ!」
「エースに育てられた覚えなんてないもん! やだー! あたしもドッジー!」
「あぶないんだからメッ!」
一方こっちは決着がつきそうにない。
正直彼女レベルの強化能力者と比べれば、エースのほうがまだ危険なんだけど……まあ、万一がある以上避けたいのは保護者としての人情か。
「それでは同士・ミオ、こうしようじゃないか! オレとジャンケンで勝負だ! 負けたほうがボウリングに回る!」
結局、ブラボーがそう提案して、ミオを納得させた。
もちろん、心眼・ブラボーアイを持つブラボーにジャンケンで勝てるはずがない。
ミオは大人しく、急遽行われることになったボーリング勝負に出ることに納得した。
結果は、ミオのパーフェクト勝ち。でもボーリング玉をライナーで投げるのはどうかと思います。
そしてあらためて、8対8のドッジボール対決が始まる。
「──レイザー、ちょっと確認したいんだけれど、いいかしら」
「ん?」
開始の前に、カミトがレイザーに声をかける。
「わたしの鎖、念で実体化したものじゃないんだけど、持ち込んでもいいかしら?」
「かまわないさ、そのほうが楽しめそうだしな。ただし、
「いや、充分よ」
カミトは腕を組んで不敵に笑った。
正直無理めかと思ったけど、通ったのならありがたい。
【
「ブラボー、外野は俺が行く。【
「わかった。同士・ヒョウ、任せる」
外野にヒョウが入ることになり、残りは内野へ。
「スローインと共に試合開始です! レディ─―ゴー!!」
審判役の念獣、0番がボールを高く投げ上げる。
スローインのボールは最初から譲るつもりだったのか、レイザーと念獣はジャンプすらせずに、退がっていく。
「球技となれば俺の出番だ。任せろ!」
ボールをキャッチしたエースが、大きく振りかぶる。
「──おりゃあっ!!」
ボールに込められた強力な念は、さすが操作系。
強烈な剛球が、4番をコートの外へ吹っ飛ばす。
「ほう、なかなかの能力者だな」
レイザーは余裕の表情。
外野のヒョウから返されたボールを、再びエースが受け取り、5番を吹っ飛ばす。
「─―準備OKだな」
レイザーの言葉の意味は、わかる。
外野に3人揃えることこそレイザーの目論見。
「だが、あんたの出番は永遠に来ないぜ!」
エースの投げた球は、7番を吹っ飛ばす。
だが、7番は吹っ飛びざまにボールをコート内に投げ返し、レイザーがそれを捕球した。
これは、セーフだ。
「さて、厄介な奴が居るようだな」
言って、レイザーは念を凝らし、投球。
狙いは──―エース。
「当たるかよ!」
エースは球筋を見切ってギリギリで躱す。
だが、その影にいたカミトに、ボールが襲いかかる。
直撃する。
そう見えたセツナ、金属が擦れる音。
直後、ボールはカミトの鎖に絡め取られている。
──【
カミトを自動的に守る、鉄壁の防御鎖陣だ。
「──―ほう? やるな」
レイザーは、眼を細めたまま口の端を吊り上げる。
「お返しだ!」
カミトからボールを受け取り、再びエースが全力投球。
外野に向かうと思われた球は、直角どころかブーメランのように戻ってきて、2番を吹っ飛ばした。
「どうだ! 変化球の変化を増幅させる【
ガッツポーズを取るエース。
コートの外からミオが声援を送り、エースもそれに応える。
「ふむ。どうやら実力も申し分ない様だし……本気でやるか」
宣言とともに発せられたオーラに、場の空気が凍りついた。
レイザーのオーラは、俺たちの中で最大のオーラ量を誇るシュウと比べても数段上。
「上手く当たってくれよ──当たり所が悪ければ死ぬからな」
そう言って投げられたボールは、恐ろしい速度でエースに襲いかかる。
──ヤバイ! 顔面直撃コース!
だが、間一髪。エースの体が真横に吹っ飛ぶ。
ビノールトの蹴りだ。ボールはエースの野球帽を撥ね飛ばし、コートの外に出た。
エースは、起き上がらない。
頭をかすめただけだというのに、脳震盪を起こしている。
エースをかろうじて助けたビノールトも、ボールのあまりの威力に、荒い息を吐いている。
「エース!」
「ミオ! 看護を頼む!」
気絶したエースを青髪童女に預け、ゲームは再開。
外野からレイザーに戻されたボールは、ふたたび外野に……ただしレイザーの全力投球で。
外野から外野へ。そこから内野を経由してまた外野へ。
高速のパス回しは、目では追うのが精一杯。視界と、オーラ感知を併用して、動きを捉える。
直後、3番が飛んだ。
6番に投げられた3番は、敵コート上空でボールを受け、こちらに投げつけて来る。
横の動きに眼を慣らされて、縦。まともじゃ捉えられない動き。ボールはブラボーに襲いかかり。
「直撃! ブラボー拳!!」
ブラボーの拳が、ボールを3番に弾き返す。
空中で身動きがとれないところに、強烈な一撃。
直撃を受けた3番は為すすべもなくふっ飛ばされる。
さすがブラボー。初見でその超反射はわりと意味不明だ。
「さすがブラボーさんですわ!」
コート外で応援してるミコが声援を送る。
うん。さっきのは本当に喝采を送りたいファインプレイ。
ボールは依然こちら。
残す敵は3人。6番、7番、そしてレイザー。
こちらは6人。俺とシュウ、レットさん、ビノールト、ブラボー、カミト。
「行くぞっ! 激投! ブラボーシュート!」
ブラボーが投げたボールは6番へ。
だが6番はボールをキャッチせず、味方に向けて弾き、レイザーがボールを受け止めた。
「やるな。燃えてくる──ぜっ!」
レイザーの全力投球。
向かう先は。
「レットさん、避けろ!」
視線から狙いを読み取って、叫ぶ。
言葉に反して、ボールはブラボーに向かい──急カーブでレットさんへ。
レットさんは反応しきれない。
「おおっ! 届けっ! ブラボー脚!」
とっさに、ブラボーが足を突き出してボールを弾く。
が、回転のかかったボールは、運悪くレットさんに。
「ってこっちに──―」
直撃。
レットさんはもんどりうって倒れた。
なんと言うか、つくづく幸薄い人だ。
まあ、ブラボーが身を挺して庇ってなかったら、間違いなく重傷だったけど。
「回転を読みきれないとは、不覚!」
ブラボーは拳を強く握り、悔しがる。
足に直撃を受けたはずなのに、平気そうなのは、
顔面直撃とはいえ、クッションボールを受けたレットさんですら気絶しているのだから、大した防御力だ。
だが、これで残ったのはシュウと俺、ビノールト、カミトの4人となった。
仕方ない。この場では使いたくなかったが。
俺はボールを要求し、貰ったボールにオーラを込める。
四面を敵に囲まれているこの状態では、【
だが。
「おおっ!」
全力投球。狙うは6番。
ボールは狙い違わず6番を直撃。
はね飛んだボールを7番がキャッチしようとするが──遅い。マーキングはすでに終わっている。
──【
6番の背後に瞬間移動してボールをキャッチ。
オーラを込めて、7番の足に投げる。死角を縫って飛んだボールは、7番の足に当たって──地面につく直前、レイザーが滑り込みで拾い上げた。
「ふむ。瞬間移動の念能力とは珍しいな」
ボールを手に、立ち上がったレイザーは、どこか楽しそうにこちらに近づいてきて。
──そういえば、こいつ外野にも攻撃していた!
とっさに念弾を外野のヒョウにぶち当て──【
次の瞬間、轟音が地面を揺らした。
レイザーが、ボールを地面に叩きつけたのだ。
俺がつい先ほどまで居た、その場所に。
ボールは天井でバウンドし、再び地上に落ちてくる。
それを、一本の鎖がもぎ取った。【
こちらのボールになったところで、安心して内野に戻る。
が、内野では、ブチ切れ気味のシュウが待っていた。
「……ユウ、ちょっと頼めるか」
カミトからボールを受け取って、シュウが、こちらを向く。
その眼は、強烈な怒りをたたえている。
「……ひょっとして、ジャンケングー?」
「ビノールトから聞いた。出来るんだろ? オーラの高速移動」
やっぱり、すでに聞いてたのか。
レイザーとのドッジボール対決で、どう戦うか、ずっと考えてきた。
シュウの【
だったら、攻防力の高速移動ができれば。そう思い、いままで練習を続けてきた。シュウと実際試す機会がなかったから、ぶっつけ本番になってしまったけど。
「出来る。やろう……ふたりでレイザーをぶっ倒してやろう」
レイザーを倒す。
恐るべき敵を、14人の悪魔の主を、俺とシュウで。
思いを、言葉に乗せて──視線を、レイザーに向けた。
「来い」
笑顔のまま、レイザーが口の端を吊り上げる。
シュウから受け取ったボールを、両の手でしっかり支える。
角度良し。シュウが、拳を腰溜めに構える。膨大なオーラが、シュウを覆う。
これ、ほんとに防御できるんだろうか。
脳裏をよぎった弱気な思考を振り払う。
──レイザーを倒す。それを為せるなら、両手が砕かれても本望だ。
「まってくれ! それをするなら、僕にバックを使わせてくれないか!」
と、中性的な容姿の青年──ヒョウが声を上げた。
そうか、ヒョウの能力なら、無傷で砲台役になれる。
でも、俺だって役目を譲るつもりはない。たとえ手が砕けても、レイザーを倒す役目は、俺とシュウが担いたい。
その想いは、たぶんシュウも同じ。
「いや。悪いけど、ボールの持ち手は、ユウ以外に頼むつもりは──」
「だからだよ! その威力じゃたとえ攻防力を集めて守っても、負傷は避けられない! 僕の能力なら、ユウの身を守れる!」
なるほど。
ヒョウは説明した。【
なら、俺を守ることも出来る。
否やはない。ヒョウを内野に戻し、ふたたび両手でボールを支える。
肩には、ヒョウの手。そこからオーラが染み込んでくる。干渉されている、というよりは、守られている感覚。
「いくぞ。ユウ」
「ああ、来い」
心を落ち着かせ、構える。
シュウは、腰だめに拳を構え……動かない。
静かに、ただ静かに、拳を引いて──突き出した。
「【
インパクトの瞬間、高速でオーラを拳に集める。
それでも、腕ごと引っこ抜かれそうな、とんでもない衝撃。
だが、【
ボールは、影すら追えない。
気がつけば、レイザーがコートの外に吹き飛ばされていた。
「バックしろよ。まだオレの気は済んでないぜ」
レイザーに向かい、シュウは言葉を叩きつける。
怒りを含んだ言葉は、恐ろしいまでの圧力を伴っている。
対するレイザーは、楽しげに口の端を吊り上げて。
「──―いや、参った」
「え?」
レイザーの言葉に、耳を疑う。
まだ、レイザーの本気を見ていない。
バックだって残ってる。まだまだやれることはあるはずだ。
なのに、なぜ。
「いまのボールは、ちょっと受けられそうにない。お前を怒らせたのは、完全に失策だったな。オレの負けだ。約束通りオレたちは町を出て行く」
両手を挙げて、降参のポーズ。
──あ。
そこで、ようやく気づく。
ゴンとの戦いで、レイザーがあれほど本気を出したのは、ゴンがジン=フリークスの息子だったから。
いまのレイザーに、強いて本気を出すだけの理由はない。だから、ゲーム内での
拍子抜けではある。
本気の彼と戦えなくて、悔しくもある。
だが、俺たちの勝利条件は──目標は、あくまでグリードアイランドのクリア。
だったら、勝利を喜ぶのに、なんの
グリードアイランドクリア最大の障害を、俺たちは乗り越えたのだ。
「シュウ」
「ユウ」
たがいに笑顔でハイタッチ。
乾いた音が、ジムに響いた。
◆エース=レジェンス
・H×Hで好きなキャラクター三人
ナックル、シュート、ジャイロ
・H×Hで好きな念能力三つ
カイトの【
・グリードアイランドで好きな指定ポケットカード三つ
No.021スケルトンメガネ、No.037超一流スポーツ選手の卵、No.070マッド博士の筋肉増強剤
・ユウからの第一印象
草野球に混ざってる若いにーちゃん。