グリードアイランドの指定ポケットカードコンプリート。
その最大の障害であるレイザーを降し、【一坪の海岸線】を手に入れた。
これで残すカードは1枚。No.00【支配者の祝福】のみ。
これは99枚の指定ポケットカードを集めた人間が出た時点で起こる特殊イベント──クイズ大会の報酬だ。
協力してくれた人数合わせの人たちに、報酬として【
レイザーを倒した興奮からだろう。おたがい仲間の活躍を讃えながら、街を離れた。
「クイズ大会では、みなの知識を共有してトップを目指す! 全員、【
全員が呪文カードを使ってリストを確認する。
もっとも人数が少なかったのは、ブラボーとヒョウ。
原因は、当然ブラボーの、ちょっと声をかけたくない外見だろう。
ともあれ、チームのリーダーでもあるブラボーが勝利役に選ばれた。
ブラボーが、ひとつ、またひとつと、指定ポケットにカードを入れていく。
99枚目のカードが本に収まった時、本から声が流れた。
『プレイヤーの皆様にお知らせです。たった今、あるプレイヤーが99種の指定ポケットカードをそろえました。それを記念しまして今から10分後にG.I.内にいるプレイヤー全員参加のクイズ大会を開催いたします──』
クイズが始まった。
問題が出るたび、担当のチームが答えを教える。
そして、全100問のクイズの、回答が終わる。
ややあって。
『最高点は、100点満点中98点!! プレイヤー名──キャプテン・ブラボー選手です!!』
「よっし!」
「当然!」
「やったー!」
みんなで歓声をあげ、喜び合っていると、どこからかやってきた梟が、一枚の手紙をブラボーの下に落としていった。
手紙は、ブラボーの手の中でカードに変わる。No110【支配者からの招待】。ゲームマスター、ドゥーンたちの居るグリードアイランド城への招待状だ。
「──うむ。どうやら城へは一人で行かねばならないようだな」
ブラボーは【支配者からの招待】のテキストを読みあげた。
招待状にバッジが同封されていて、それを付けた人間だけが中に入れるんだったか。
「うーん。1人なら、順当にブラボーかな?」
欲を言えば俺たちからも1人──シュウに参加してほしいとこだけど、無理ならブラボーで異論ない。
「そうだな。今後のプレイヤーのためにも、ゲームマスター、ドゥーンには直接話しておきたい。みな、オレに任せてくれないか?」
ブラボーの問いに異論はない。
表情を見れば、消極的賛成なんかじゃなく、満場一致って感じだ。
「ただ、油断しないほうがいい。【支配者の祝福】──カード名から、ブラボーが向かう先は推測できる」
シュウが警戒を促す。
たしかにその通りだ。
城下町リーメイロ。中でも城の前がもっとも警戒すべき場所。
「じゃあブラボーに、俺がつけてる【聖騎士の首飾り】を渡しとく」
「……うむ。ありがたく使わせて貰おう!」
【聖騎士の首飾り】を渡すと、ブラボーは首飾りをそのまま装着する。
ビジュアル的に異物感がすごいけど、ブラボーが気にする様子はない。
「じゃあ、リーメイロまでいっしょに飛んでいきましょう。わたしたちはお城まで見送ってから、城下町で待ってるから」
カミトの言葉に、全員がうなずいて。
【
小高い丘の上にそびえ立つ、グリードアイランド城。
12人が、城門の前まで同行したためだろう。横入りしてくる敵はない。
城門の前で【支配者からの招待】をゲインし、中に入っていたバッジをつけて、ブラボーは門の中に消えていく。
門が閉じられて、一息つく。
ここまで来れば、危険はない。
あとは【挫折の弓】を手に入れれば、日本に帰れるのだ。
身一つで飛ばされてから、期間にして一年半あまり。
シュウと助け合って、ブラボーたちに出会って、プレイヤーやこの世界で助けてくれる仲間が出来て、力を合わせて、やっとここまで来れた。
みんなに、助けられた。
それが、泣きたいほどにうれしい。
◆
夜の空に、花火が上がる。
街には煌々と明かりが灯り、住民たちはお祭り騒ぎだ。
ブラボーとともに、盛大なパレードに参加して、城下町を練り歩く。
パレードの最中、他のプレイヤーの気配はおろか、視線も感じなかった。
そのことに不審を感じながらも、みんなでお祭り騒ぎを楽しんで──それから、みんな城内に招待されて、宴会となった。
「──ほら、ゴムゴム! イッキだ!」
「任せろ! 一番ダル、樽イッキやります!」
「うおおおっ! すごいっス!」
「二番、D!
「うおっ!? ワインが空中でゼリーみたいに!?」
で、いま、こんな状態になってる。
俺やミコ、ミオの未成年組は、食い気メイン。
積み上げられた皿の数以外は大人しいものだけど……男連中がヤベえ。
中央の円台に乗りあがって、歌い踊りながら飲み比べ。ワンピースか。ワンピースなのか。
シュウは未成年なのに連れ去られてしまうし、ヒョウは早々に酔い潰されてしまった。
ゲームマスターのドゥーンやリストもいっしょになって騒いでて、ブラボーまで加わってるんだから止める人間が居ない。
俺たちが食べられるだけ食べて、満腹になっても、宴会はなお続く。
そのうち、青髪童女のミオが、眠気のためか、うつらうつらと船を漕ぎ始めた。
「ああ、ミオちゃん。もうおネムですのね。お部屋で寝ましょうか?」
「んー。まだ……えーすは?」
重そうなまぶたと格闘しながら、ミオは尋ねる。
当の野球青年、エースはというと……ダルとDの呑み比べに楽しそうに茶々入れてる。べろんべろんの酔っぱらいだ。
「エースさんは、もうちょっと時間が掛かりそうですわね……まったく、仕方ない方ですわね。ミオちゃんのことを放っておいて」
「んーん。えーすは、しかたなくないよ。あたしより、おにいちゃんなのに……ちゃんとあたしのこと、みてくれて……すき……」
「あの野球帽……」
ミコさん顔が怖いです。
たぶんミオが言いたいのは、子供の自分相手にも、対等の目線で見てくれる、とか、そんな感じだと思います。
「ミコミコもすき……」
「……ええ。ええ。わたくしも、ミオのことが大好きですよ」
つぶやいてから、寝息を立て始めたミオに。
ミコは慈しむような視線とともに、やさしい言葉を送った。
「お先にミオちゃんと失礼いたしますわね」
ミコが童女を抱えて、与えられた客室に戻ったので、俺は飲酒してない組で1人残ってしまった。
俺も部屋に戻ってもいいけど……もうすこし、この雰囲気に浸っていたい。
「──よう。隣いいか?」
手持ち無沙汰になったところで、ビノールトが声をかけてきた。
「うん、もちろん。ビノールト、楽しんでるか?」
「ああ……オレにはもったいないほどにな」
しみじみと、ビノールトは言い漏らす。
楽しんでいるならなによりだけど……その言葉に、ひっかかりを覚えた。
「もったいないなんてことはない。ビノールトは、このメンバーの一員だ。大手を振ってそう言えるだけ、みんなのために頑張ってくれた」
「ああ、わかってる。それは……泣きたくなるほどに」
言って、ビノールトはグラスの酒を口にする。かなり強そうな酒だ。
「ユウさんたちは、この仲間たちは最高だ。でもな、ユウさんたちは……故郷に帰るんだろ?」
「ビノールト……」
「当然だ。そのためにグリードアイランドを攻略したんだからな……だけどよ、最高の仲間たちが、オレを鬼から人にしてくれたユウさんが、もうじき居なくなるんだ。みんなとは違って、手放しには喜べねえんだ」
ああ、そうなのだ。
ビノールトとも、もうじき別れることになるのだ。
彼に関して、俺が居なくなっても大丈夫なよう始末はつけている。
A級首を挙げた功績もあって、新たな犯罪を犯さないかぎり、ハンターに狙われることはない。
だけど、俺たちが居なくなる、その寂しさだけは、埋められない。
「くくく、ユウさん、そんな顔をするな。こう見えて、お前たちが帰った後の身の振り方は、もう考えてるんだ……というより、いま、思いついた」
「うん……聞かせてくれないか?」
「……こんな感じで馬鹿やれるような仲間を作る。今度こそ、間違わないようにな」
そう言って、ビノールトはどんちゃん騒ぎを、まぶしそうにながめる。
「ビノールト」
「なんだ、ユウさん」
「離れていても、俺たちは仲間だ。俺は、そう思ってる」
「……当たり前だ」
◆
俺と話したあと、ビノールトは成人組に混じって騒ぎ始めた。
おかげでまた手持ち無沙汰になってしまったが。
「ユウちゃん、こっち来る?」
と、お誘いの声がかけられた。カミトだ。
みなが楽しく騒ぐ中、亜麻色の髪の少年は、窓辺に陣取っていた。
グラスには琥珀色の酒。
手元にはすこしのツマミ。
そんな姿が嘘のようにハマっていて……大人だな、と思う。
「うん」
せっかくだから、相席させてもらう。
カミトの隣に座りながら、窓の外に目をやる。
城下に見える街はきらきらと輝いて、夜空には光で描かれた大輪の花。
なるほど、いい席だ。
けど、こんなお祭り騒ぎのなか、ひとりでいるのは、少しもったいない気がする。
「カミトは、あっちに混じらないのか?」
「わたしはああいう雰囲気、パスだわ。どうも性に合わないみたい。ユウちゃんは? 混じらないの?」
「まあ、混じっちゃったら、シュウみたいに、無理やりお酒飲まされそうだし」
「あー、そうよね。あっち、完全に学生の飲み会のノリになっちゃってるし」
カミトがグラスを傾ける。
あわせて俺も、りんごジュースに口をつける。
「ねえ、ユウちゃん。わたしたち、やったのよね」
街の明かりを見やりながら、カミトは、静かに口を開く。
「ああ。間違いなく、俺たちは成し遂げた」
「……でもね、すこし不安になるのよ。上手く行き過ぎてて怖いというか、肝心なものを見落としてるっていうか」
カミトが吐き出す。
漠然とした不安は、俺にもある。
あまりにも、なんの妨害もなく終わったグリードアイランド攻略。
それが、なにか不吉なことが起こる予兆のような気がして……すこし怖い。
「こら、ユウ! 飲んでるかー!」
「こっち来て一緒に飲みましょうっス!」
と、赤ら顔でやってきたマッシュとレットさんが、いきなり両脇から掴んできた。
「こら、2人とも、セクハラ!」
「ノーノー。今日は無礼講、無礼講だから合法なはず!」
「合法って言ってる時点で下心見え見えだわ! グレートキャプチュアー!」
掛け声とともに、カミトの鎖がマッシュに巻き付き、拘束する。
オーラの通った鎖は強力無比。酔っているとはいえマッシュが全力でもがいても、びくともしない。
目の据わったカミトは、芋虫になったマッシュから、レットさんに視線を移す。
「……さて」
「お、オレは違うっス! ちょっと触っちゃったっスけど、言われるまでセクハラだって気づいてなかったし、そもそもユウさんもともと──」
「もとがどうでも今が女の子ならセクハラだっての! キミも有罪だーっ!」
言い訳もそこそこに、レットさんもマッシュもろとも雁字搦めになった。
「ちょ、キツイ! マッシュと密着姿勢はキツイっス! ヘルプ! ヘルプミー!」
「オイオイ言ってくれえるじゃないかブラザー。オレとお前は血よりも濃い絆で結ばれた仲だろ?」
「言い方ぁ!? たしかにいっしょに修行して苦楽を共にした仲間っスけど、あんたこっちを有罪に巻き込みたいだけっスよね!?」
こいつら仲いいなあ。
まあ、この4ヶ月、グリードアイランド内でずっといっしょに行動してたんだから、親しくもなるか。
「はいはーい。自分には情状酌量の余地があるかのような口ぶりだけど──レットも余裕で有罪だからね? 大人しく反省してなさい」
「そんなー」
こうしてセクハラ犯2人は縛についた。
りんごジュースを口にして、一件落着、とうなずいていると。
誰かがもたれかかってきた。
振り返るまでもない。この気配はシュウのもの……だけど。
「酒臭い……シュウ、お前大丈夫か?」
「あー……ちょっと、おかしくなってるかも? これが酔うって感じか」
俺に体重を預けたまま、シュウはいつもより1オクターブ高い声でつぶやく。
「ほら、いつまでもたれかかってんだ。座れよ。ヤバそうなら水貰って来ようか?」
「……まあ、大丈夫、だと思う。ちょっと自己抑制が利かなくなってるだけ」
「うん、それダメなやつだからね──ごめんカミト、ちょっと水飲ませて外の風当ててくる」
「いえいえ、ごゆっくり」
なぜだかカミトは慈しむような笑顔で手を振る。
「ちょ、カミトさん。オレらと対応違うくないっスか!?」
「そうだー! 差別だー!」
「うるさいわね、あんたたち! あの子相手だとユウちゃん嫌がってないからいいの!」
抗議の声を上げるバカ二人を、カミトが叱り飛ばす。
「うん、カミト。その言い方、ものすごい勢いで語弊が出るんだけど……つき合い長いから不快じゃないだけだからね?」
物申してから、水を貰ってきて、ふらふらのシュウを伴ってテラスに出る。
城下の祭りは、終わる気配を見せない。
光の花が咲き乱れる夜空には、半分の月。
北からの風が涼気を運んできて、心地いい。
「あー」
と、シュウは夜風にあたり、心地よさそうにうなる。
そんなシュウの様子を見ながら、夜景を楽しんでいると、ふいにシュウが問いかけてきた。
「……ユウ。前に、言ったよね? 妹が居るから日本に帰るって」
「シュウ。お前、口調……まあいいか。ああ、たしかに俺はそう言った」
記憶を辿るまでもない。
それこそ俺が、毎日のように見つめ直す、目標なのだから。
しかし完全に地が出たシュウ、やっぱり女っぽい感じがするな。
でも本当に女だったら、俺に女のアバター作らせたこと、許さんからな。
「もし……イフの話。妹がこっちに来てて、帰りたくないって言ったら……どうする?」
シュウは、そんなことを聞いてきた。
変なことを聞いてくるな。考えたこともなかったけど……
「うん。やっぱ会ってみないとわかんないな」
「へえ、意外。反対すると思ってた」
「そりゃ、話によっては反対するけどな。俺は日本に帰ると決めた。だけど、この世界にも大切なものがあるんだ。だから妹が、絶対に手放したくないものが、この世界にあるってのなら、戻れなくても仕方ないって思えるものがあるなら……仕方ない。つき合ってやってもいいかな」
天空闘技場は離れがたい
70億近い現金も、まあ大切なものではあるだろう。
だけど、マジガンさんやマッシュ、ビノールト、出会ってきた人々こそが、本当に大切なものだと、そう思う。
「ユウ……」
「まあ、そういうのもなく、ただ帰りたくないって駄々こねてるだけなら、ぶん殴って連れて帰るけどな」
そう言って、笑う。
シュウは、俺の話を、噛みしめるように聞いて。
「うん。おにいらしい──違う。ユウらしい。ほんと、甘いけど甘くないんだから」
そう言って、泣き笑いの表情を浮かべた。
お祭り騒ぎは、深夜まで続いた。
その日ばかりは未成年なことが悔やまれる。
そんな、泣きたくなるほど楽しそうな、宴だった。
◆D
・H×Hで好きなキャラクター三人
クラピカ、ナックル、イカルゴ
・H×Hで好きな念能力三つ
フランクリンの【
・グリードアイランドで好きな指定ポケットカード三つ
No.002一坪の海岸線、No.075奇運アレキサンドライト、No.084聖騎士の首飾り
・ユウからの第一印象
ジョジョファッションだー!
※次回あたりから本気で仲間が死んでいくので、あらためて、苦手な方はご注意を。