グリードアイランド・クロス【本編完結】   作:寛喜堂秀介

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23 支配者の祝福

 グリードアイランドの指定ポケットカードコンプリート。

 その最大の障害であるレイザーを降し、【一坪の海岸線】を手に入れた。

 

 これで残すカードは1枚。No.00【支配者の祝福】のみ。

 これは99枚の指定ポケットカードを集めた人間が出た時点で起こる特殊イベント──クイズ大会の報酬だ。

 

 協力してくれた人数合わせの人たちに、報酬として【離脱(リーブ)】を渡すと、みんなで郊外の草原に移動する。

 レイザーを倒した興奮からだろう。おたがい仲間の活躍を讃えながら、街を離れた。

 

 

「クイズ大会では、みなの知識を共有してトップを目指す! 全員、【交信(コンタクト)】で(バインダー)のリストを確認してくれ! 爆弾魔(ボマー)組3人と、ツェズゲラ組4人が居らず、その上でもっとも出会ったプレイヤーが少ない人間を勝利させる!」

 

 

 全員が呪文カードを使ってリストを確認する。

 もっとも人数が少なかったのは、ブラボーとヒョウ。

 原因は、当然ブラボーの、ちょっと声をかけたくない外見だろう。

 

 ともあれ、チームのリーダーでもあるブラボーが勝利役に選ばれた。

 ブラボーが、ひとつ、またひとつと、指定ポケットにカードを入れていく。

 

 99枚目のカードが本に収まった時、本から声が流れた。

 

 

『プレイヤーの皆様にお知らせです。たった今、あるプレイヤーが99種の指定ポケットカードをそろえました。それを記念しまして今から10分後にG.I.内にいるプレイヤー全員参加のクイズ大会を開催いたします──』

 

 

 クイズが始まった。

 問題が出るたび、担当のチームが答えを教える。

 そして、全100問のクイズの、回答が終わる。

 

 ややあって。

 

 

『最高点は、100点満点中98点!! プレイヤー名──キャプテン・ブラボー選手です!!』

 

「よっし!」

 

「当然!」

 

「やったー!」

 

 

 みんなで歓声をあげ、喜び合っていると、どこからかやってきた梟が、一枚の手紙をブラボーの下に落としていった。

 手紙は、ブラボーの手の中でカードに変わる。No110【支配者からの招待】。ゲームマスター、ドゥーンたちの居るグリードアイランド城への招待状だ。

 

 

「──うむ。どうやら城へは一人で行かねばならないようだな」

 

 

 ブラボーは【支配者からの招待】のテキストを読みあげた。

 招待状にバッジが同封されていて、それを付けた人間だけが中に入れるんだったか。

 

 

「うーん。1人なら、順当にブラボーかな?」

 

 

 欲を言えば俺たちからも1人──シュウに参加してほしいとこだけど、無理ならブラボーで異論ない。

 

 

「そうだな。今後のプレイヤーのためにも、ゲームマスター、ドゥーンには直接話しておきたい。みな、オレに任せてくれないか?」

 

 

 ブラボーの問いに異論はない。

 表情を見れば、消極的賛成なんかじゃなく、満場一致って感じだ。

 

 

「ただ、油断しないほうがいい。【支配者の祝福】──カード名から、ブラボーが向かう先は推測できる」

 

 

 シュウが警戒を促す。

 

 たしかにその通りだ。

 城下町リーメイロ。中でも城の前がもっとも警戒すべき場所。

 

 

「じゃあブラボーに、俺がつけてる【聖騎士の首飾り】を渡しとく」

 

「……うむ。ありがたく使わせて貰おう!」

 

 

【聖騎士の首飾り】を渡すと、ブラボーは首飾りをそのまま装着する。

 ビジュアル的に異物感がすごいけど、ブラボーが気にする様子はない。

 

 

「じゃあ、リーメイロまでいっしょに飛んでいきましょう。わたしたちはお城まで見送ってから、城下町で待ってるから」

 

 

 カミトの言葉に、全員がうなずいて。

同行(アカンパニー)】でリーメイロに飛んだ。

 

 小高い丘の上にそびえ立つ、グリードアイランド城。

 12人が、城門の前まで同行したためだろう。横入りしてくる敵はない。

 城門の前で【支配者からの招待】をゲインし、中に入っていたバッジをつけて、ブラボーは門の中に消えていく。

 

 門が閉じられて、一息つく。

 ここまで来れば、危険はない。

 あとは【挫折の弓】を手に入れれば、日本に帰れるのだ。

 

 身一つで飛ばされてから、期間にして一年半あまり。

 シュウと助け合って、ブラボーたちに出会って、プレイヤーやこの世界で助けてくれる仲間が出来て、力を合わせて、やっとここまで来れた。

 

 みんなに、助けられた。

 それが、泣きたいほどにうれしい。

 

 

 

 

 

 

 夜の空に、花火が上がる。

 街には煌々と明かりが灯り、住民たちはお祭り騒ぎだ。

 ブラボーとともに、盛大なパレードに参加して、城下町を練り歩く。

 パレードの最中、他のプレイヤーの気配はおろか、視線も感じなかった。

 そのことに不審を感じながらも、みんなでお祭り騒ぎを楽しんで──それから、みんな城内に招待されて、宴会となった。

 

 

「──ほら、ゴムゴム! イッキだ!」

 

「任せろ! 一番ダル、樽イッキやります!」

 

「うおおおっ! すごいっス!」

 

「二番、D! ()()からイッキ飲みをしよう!」

 

「うおっ!? ワインが空中でゼリーみたいに!?」

 

 

 で、いま、こんな状態になってる。

 俺やミコ、ミオの未成年組は、食い気メイン。

 積み上げられた皿の数以外は大人しいものだけど……男連中がヤベえ。

 中央の円台に乗りあがって、歌い踊りながら飲み比べ。ワンピースか。ワンピースなのか。

 

 シュウは未成年なのに連れ去られてしまうし、ヒョウは早々に酔い潰されてしまった。

 ゲームマスターのドゥーンやリストもいっしょになって騒いでて、ブラボーまで加わってるんだから止める人間が居ない。

 

 俺たちが食べられるだけ食べて、満腹になっても、宴会はなお続く。

 そのうち、青髪童女のミオが、眠気のためか、うつらうつらと船を漕ぎ始めた。

 

 

「ああ、ミオちゃん。もうおネムですのね。お部屋で寝ましょうか?」

 

「んー。まだ……えーすは?」

 

 

 重そうなまぶたと格闘しながら、ミオは尋ねる。

 当の野球青年、エースはというと……ダルとDの呑み比べに楽しそうに茶々入れてる。べろんべろんの酔っぱらいだ。

 

 

「エースさんは、もうちょっと時間が掛かりそうですわね……まったく、仕方ない方ですわね。ミオちゃんのことを放っておいて」

 

「んーん。えーすは、しかたなくないよ。あたしより、おにいちゃんなのに……ちゃんとあたしのこと、みてくれて……すき……」

 

「あの野球帽……」

 

 

 ミコさん顔が怖いです。

 たぶんミオが言いたいのは、子供の自分相手にも、対等の目線で見てくれる、とか、そんな感じだと思います。

 

 

「ミコミコもすき……」

 

「……ええ。ええ。わたくしも、ミオのことが大好きですよ」

 

 

 つぶやいてから、寝息を立て始めたミオに。

 ミコは慈しむような視線とともに、やさしい言葉を送った。

 

 

「お先にミオちゃんと失礼いたしますわね」

 

 

 ミコが童女を抱えて、与えられた客室に戻ったので、俺は飲酒してない組で1人残ってしまった。

 俺も部屋に戻ってもいいけど……もうすこし、この雰囲気に浸っていたい。

 

 

「──よう。隣いいか?」

 

 

 手持ち無沙汰になったところで、ビノールトが声をかけてきた。

 

 

「うん、もちろん。ビノールト、楽しんでるか?」

 

「ああ……オレにはもったいないほどにな」

 

 

 しみじみと、ビノールトは言い漏らす。

 楽しんでいるならなによりだけど……その言葉に、ひっかかりを覚えた。

 

 

「もったいないなんてことはない。ビノールトは、このメンバーの一員だ。大手を振ってそう言えるだけ、みんなのために頑張ってくれた」

 

「ああ、わかってる。それは……泣きたくなるほどに」

 

 

 言って、ビノールトはグラスの酒を口にする。かなり強そうな酒だ。

 

 

「ユウさんたちは、この仲間たちは最高だ。でもな、ユウさんたちは……故郷に帰るんだろ?」

 

「ビノールト……」

 

「当然だ。そのためにグリードアイランドを攻略したんだからな……だけどよ、最高の仲間たちが、オレを鬼から人にしてくれたユウさんが、もうじき居なくなるんだ。みんなとは違って、手放しには喜べねえんだ」

 

 

 ああ、そうなのだ。

 ビノールトとも、もうじき別れることになるのだ。

 彼に関して、俺が居なくなっても大丈夫なよう始末はつけている。

 A級首を挙げた功績もあって、新たな犯罪を犯さないかぎり、ハンターに狙われることはない。

 

 だけど、俺たちが居なくなる、その寂しさだけは、埋められない。

 

 

「くくく、ユウさん、そんな顔をするな。こう見えて、お前たちが帰った後の身の振り方は、もう考えてるんだ……というより、いま、思いついた」

 

「うん……聞かせてくれないか?」

 

「……こんな感じで馬鹿やれるような仲間を作る。今度こそ、間違わないようにな」

 

 

 そう言って、ビノールトはどんちゃん騒ぎを、まぶしそうにながめる。

 

 

「ビノールト」

 

「なんだ、ユウさん」

 

「離れていても、俺たちは仲間だ。俺は、そう思ってる」

 

「……当たり前だ」

 

 

 

 

 

 

 俺と話したあと、ビノールトは成人組に混じって騒ぎ始めた。

 おかげでまた手持ち無沙汰になってしまったが。

 

 

「ユウちゃん、こっち来る?」

 

 

 と、お誘いの声がかけられた。カミトだ。

 みなが楽しく騒ぐ中、亜麻色の髪の少年は、窓辺に陣取っていた。

 

 グラスには琥珀色の酒。

 手元にはすこしのツマミ。

 そんな姿が嘘のようにハマっていて……大人だな、と思う。

 

 

「うん」

 

 

 せっかくだから、相席させてもらう。

 カミトの隣に座りながら、窓の外に目をやる。

 城下に見える街はきらきらと輝いて、夜空には光で描かれた大輪の花。

 

 なるほど、いい席だ。

 けど、こんなお祭り騒ぎのなか、ひとりでいるのは、少しもったいない気がする。

 

 

「カミトは、あっちに混じらないのか?」

 

「わたしはああいう雰囲気、パスだわ。どうも性に合わないみたい。ユウちゃんは? 混じらないの?」

 

「まあ、混じっちゃったら、シュウみたいに、無理やりお酒飲まされそうだし」

 

「あー、そうよね。あっち、完全に学生の飲み会のノリになっちゃってるし」

 

 

 カミトがグラスを傾ける。

 あわせて俺も、りんごジュースに口をつける。

 

 

「ねえ、ユウちゃん。わたしたち、やったのよね」

 

 

 街の明かりを見やりながら、カミトは、静かに口を開く。

 

 

「ああ。間違いなく、俺たちは成し遂げた」

 

「……でもね、すこし不安になるのよ。上手く行き過ぎてて怖いというか、肝心なものを見落としてるっていうか」

 

 

 カミトが吐き出す。

 漠然とした不安は、俺にもある。

 あまりにも、なんの妨害もなく終わったグリードアイランド攻略。

 それが、なにか不吉なことが起こる予兆のような気がして……すこし怖い。

 

 

「こら、ユウ! 飲んでるかー!」

 

「こっち来て一緒に飲みましょうっス!」

 

 

 と、赤ら顔でやってきたマッシュとレットさんが、いきなり両脇から掴んできた。

 

 

「こら、2人とも、セクハラ!」

 

「ノーノー。今日は無礼講、無礼講だから合法なはず!」

 

「合法って言ってる時点で下心見え見えだわ! グレートキャプチュアー!」

 

 

 掛け声とともに、カミトの鎖がマッシュに巻き付き、拘束する。

 オーラの通った鎖は強力無比。酔っているとはいえマッシュが全力でもがいても、びくともしない。

 

 目の据わったカミトは、芋虫になったマッシュから、レットさんに視線を移す。

 

 

「……さて」

 

「お、オレは違うっス! ちょっと触っちゃったっスけど、言われるまでセクハラだって気づいてなかったし、そもそもユウさんもともと──」

 

「もとがどうでも今が女の子ならセクハラだっての! キミも有罪だーっ!」

 

 

 言い訳もそこそこに、レットさんもマッシュもろとも雁字搦めになった。

 

 

「ちょ、キツイ! マッシュと密着姿勢はキツイっス! ヘルプ! ヘルプミー!」

 

「オイオイ言ってくれえるじゃないかブラザー。オレとお前は血よりも濃い絆で結ばれた仲だろ?」

 

「言い方ぁ!? たしかにいっしょに修行して苦楽を共にした仲間っスけど、あんたこっちを有罪に巻き込みたいだけっスよね!?」

 

 

 こいつら仲いいなあ。

 まあ、この4ヶ月、グリードアイランド内でずっといっしょに行動してたんだから、親しくもなるか。

 

 

「はいはーい。自分には情状酌量の余地があるかのような口ぶりだけど──レットも余裕で有罪だからね? 大人しく反省してなさい」

 

「そんなー」

 

 

 こうしてセクハラ犯2人は縛についた。

 りんごジュースを口にして、一件落着、とうなずいていると。

 

 誰かがもたれかかってきた。

 振り返るまでもない。この気配はシュウのもの……だけど。

 

 

「酒臭い……シュウ、お前大丈夫か?」

 

「あー……ちょっと、おかしくなってるかも? これが酔うって感じか」

 

 

 俺に体重を預けたまま、シュウはいつもより1オクターブ高い声でつぶやく。

 

 

「ほら、いつまでもたれかかってんだ。座れよ。ヤバそうなら水貰って来ようか?」

 

「……まあ、大丈夫、だと思う。ちょっと自己抑制が利かなくなってるだけ」

 

「うん、それダメなやつだからね──ごめんカミト、ちょっと水飲ませて外の風当ててくる」

 

「いえいえ、ごゆっくり」

 

 

 なぜだかカミトは慈しむような笑顔で手を振る。

 

 

「ちょ、カミトさん。オレらと対応違うくないっスか!?」

 

「そうだー! 差別だー!」

 

「うるさいわね、あんたたち! あの子相手だとユウちゃん嫌がってないからいいの!」

 

 

 抗議の声を上げるバカ二人を、カミトが叱り飛ばす。

 

 

「うん、カミト。その言い方、ものすごい勢いで語弊が出るんだけど……つき合い長いから不快じゃないだけだからね?」

 

 

 物申してから、水を貰ってきて、ふらふらのシュウを伴ってテラスに出る。

 

 城下の祭りは、終わる気配を見せない。

 光の花が咲き乱れる夜空には、半分の月。

 北からの風が涼気を運んできて、心地いい。

 

 

「あー」

 

 

 と、シュウは夜風にあたり、心地よさそうにうなる。

 そんなシュウの様子を見ながら、夜景を楽しんでいると、ふいにシュウが問いかけてきた。

 

 

「……ユウ。前に、言ったよね? 妹が居るから日本に帰るって」

 

「シュウ。お前、口調……まあいいか。ああ、たしかに俺はそう言った」

 

 

 記憶を辿るまでもない。

 それこそ俺が、毎日のように見つめ直す、目標なのだから。

 

 しかし完全に地が出たシュウ、やっぱり女っぽい感じがするな。

 でも本当に女だったら、俺に女のアバター作らせたこと、許さんからな。

 

 

「もし……イフの話。妹がこっちに来てて、帰りたくないって言ったら……どうする?」

 

 

 シュウは、そんなことを聞いてきた。

 変なことを聞いてくるな。考えたこともなかったけど……

 

 

「うん。やっぱ会ってみないとわかんないな」

 

「へえ、意外。反対すると思ってた」

 

「そりゃ、話によっては反対するけどな。俺は日本に帰ると決めた。だけど、この世界にも大切なものがあるんだ。だから妹が、絶対に手放したくないものが、この世界にあるってのなら、戻れなくても仕方ないって思えるものがあるなら……仕方ない。つき合ってやってもいいかな」

 

 

 天空闘技場は離れがたい故郷(ホーム)だった。

 70億近い現金も、まあ大切なものではあるだろう。

 だけど、マジガンさんやマッシュ、ビノールト、出会ってきた人々こそが、本当に大切なものだと、そう思う。

 

 

「ユウ……」

 

「まあ、そういうのもなく、ただ帰りたくないって駄々こねてるだけなら、ぶん殴って連れて帰るけどな」

 

 

 そう言って、笑う。

 シュウは、俺の話を、噛みしめるように聞いて。

 

 

「うん。おにいらしい──違う。ユウらしい。ほんと、甘いけど甘くないんだから」

 

 

 そう言って、泣き笑いの表情を浮かべた。

 

 お祭り騒ぎは、深夜まで続いた。

 その日ばかりは未成年なことが悔やまれる。

 そんな、泣きたくなるほど楽しそうな、宴だった。

 

 

 

 




◆D

・H×Hで好きなキャラクター三人

 クラピカ、ナックル、イカルゴ

・H×Hで好きな念能力三つ

 フランクリンの【俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)】、マチの【念糸】、クラピカの【束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)

・グリードアイランドで好きな指定ポケットカード三つ

 No.002一坪の海岸線、No.075奇運アレキサンドライト、No.084聖騎士の首飾り

・ユウからの第一印象

 ジョジョファッションだー!



※次回あたりから本気で仲間が死んでいくので、あらためて、苦手な方はご注意を。
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