グリードアイランド・クロス【本編完結】   作:寛喜堂秀介

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26 アマネ

 月明かり照らす死の街を駆ける。

 求める相手はブラボー。いや、逢魔ヶ災でもいい。

 奴らと戦っていれば、いずれブラボーと合流できる。

 

 

「どこだ……っ!?」

 

 

 口の中でつぶやいた、直後。

 突如、地を震わす轟音が、月明かり照らす死の街を揺るがした。

 

 

「なんだ!?」

 

 

 あわてて足を止め、高所に登って異変の発生源を探る。

 

 探すまでも無かった。

 見れば、河を挟んで向こう側にある工場地帯が燃えている。

 

 夜の闇を朱に染める炎は、天を焦がす。

 あそこに逢魔ヶ災がいる。直感的に判断し、屋根伝いに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「──オオッ!」

 

「──くそったれええ!!」

 

 

 目の前に展開されている光景に、思わず固まった。

 

 工場地帯のど真ん中。

 焼け焦げぽっかりと開いた大地は、朱に染まっている。

 

 戦うは2人の超人。キャプテン・ブラボーと、炎を使う赤髪の災。

 殺したはずの男が生きていた。その驚きより、超常なる戦闘に魅入られたことで、とっさに動けない。

 

 

「燃え上がれ! 【燃えさかる炎(バーニングブラッド)】おおおぉっ!!」

 

 

 男の全身から、炎が放射される。

 その熱は、離れた場所に居る俺の頬すら焼く。

 この凶悪な熱が、工場の引火物に着火して大爆発が起きたんだろう。

 

 

「喰らいやがれええっ!!」

 

 

 男が拳に纏わせた炎が、パンチとともに、ブラボー目掛けて一直線に襲いかかる。

 

 

「破ッ!!」

 

 

 その炎を、ブラボーは腕を突き出し、真っ向から受け止めた。

 

 

「ちいっ!」

 

 

 男は舌打ちして、ポケットからカプセルのようなものをジャラリと取り出した。

 狙いを定めたとも思えない。無造作に投げられた大量のカプセルは、あらゆる場所に着弾し、炎を撒き散らす。

 

 おそらく、男の血液で出来た爆弾だ。

 その物量に、2つ3つ、ブラボーにも当たったが、鉄壁の装甲を破るほどではなかった。

 

 

「──レイズ、諦めなさい」

 

 

 第三者の声が聞こえた。

 ひどく温度の低い、女性の声。

 

 

「あなたでは、彼には敵わないわ」

 

 

 その声に、聞き覚えはない。

 ただ、彼女がブラボーの味方だと察することはできる。

 

 

「──チイっくしょう!! くそくそクソクソクソ喰らいやがれええぇ!!」

 

 

 炎の災禍──レイズの身体から、炎が迸る。

 いや、すでに彼自身が炎と化したかのような、すさまじい炎。

 

 

「おおっ──直撃、ブラボー拳っ!!」

 

 

 ブラボーのパンチがレイズを捉える。

 拳は、拍子抜けするほどあっさり、男の腹を貫いた。

 

 

 ──違う! 貫いたんじゃない。()()()()()()()

 

 

 体から炎が発しているんじゃない。

 レイズ自身が、炎と化しているんだ。

 

 これが炎の災禍の、本当の力。

 以前の戦いで、頸動脈を切ったにもかかわらず生きていたのは、体を炎と化して無力化していたからか。

 

 と、我に返る。

 思わず魅入ってしまったが、ブラボーに加勢すべきだ。

 

 とはいえ、炎と化した奴に有効な攻撃手段がない。

 そもそも、炎があちこちに飛び火していて、ろくに動き回れない。

 

 どこかに貯水槽でもないか。

 周囲を見渡していて、思いつく。

 

 

 ──工場地帯なら、消火のための強力な機材があるに違いない。

 

 

 そう考えて、手近な施設の中を探しまわり、見つけた。

 粉末消化剤と書かれた、巨大なボンベ。

 

 四苦八苦しながら、なんとか装置からボンベを取り外し、再び戦場に駆けもどる。

 

 

「──はああああっ!!」

 

「──おおおおおっ!!」

 

 

 炎化による物理攻撃無効のレイズ。

 絶対的と言ってもいい防御力を持つブラボー。

 おたがい有効打を与えることができない膠着状態。

 

 

 ──消火剤(こいつ)で、それを打破してやる。

 

 

 Dの上着を置き、殺意の仮面(ペルソナ)を被る。

 

 

 ──【背後の悪魔(ハイドインハイド)】。

 

 

 レイズの直上に転移して、ボンベの栓を開ける。

 強烈な反動と共に、すさまじい勢いで薄桃色の粉末がぶちまけられた。

 

 

「──くっそ、なんだこりゃあ!!」

 

 

 消化剤にまみれ、レイズの体から炎が消える。

 

 おそらく、実際の効果は一瞬。

 だが、「消火剤により火が消された」という事実は、レイズの能力を深刻なレベルで阻害する。

 俺が、能力発動とは関係ない観客の視線まで感知してしまい、【背後の悪魔(ハイドインハイド)】の発動が困難になったように。

 

 消化剤の目隠しがあるうちに、素早く離れた地点に転移し、空になったボンベを置き捨てる。

 

 

「くそっ! またてめぇか!」

 

「粉砕! ブラボラッシュ!!」

 

 

 レイズの目がこちらに向いた一瞬の隙。

 それを見逃さず、ブラボーの連撃がレイズに直撃した。

 

 今度はまともに入った。

 レイズは人身事故のような勢いで吹っ飛んでいく。

 

 

「……ぐ、畜生」

 

 

 ふらふらと、レイズが立ち上がる。

 だが、消化剤にまみれた体では、炎が上手く出せない様子。

 

 

「残念ね、炎になれないのなら、こちらのもの」

 

 

 ──【悪夢の館(スプラッターハウス)】。

 

 

 女の声とともに、レイズは黒い()()()に飲み込まれた。

 

 後にはなにも残らない。

 思わず、それを成した人物を見る。

 

 美しい女性だった。

 白磁で作られたかのように、冷たく、整った顔立ち。

 腰まで伸びるほど黒く長い髪。服装は、黒のゴシックロリータ。

 

 

「ありがとう、助かったわ。あなたは、彼の仲間……で合ってるかしら?」

 

 

 女性が、こちらに顔を向ける。

 声にも、表情にも、ぞっとするほど温度がない。

 そのことに不安を感じながら、女性の問いにうなずく。

 

 

「そうだ。ユウ=ミルガン。ブラボーの仲間で間違いない……あなたは?」

 

「アマネよ。わたしも似たようなもの。あらためて御礼を言わせてくれる? ありがとう。彼を助けてくれて」

 

 

 美しい顔を崩すことなく、彼女はこちらに歩み来る。

 

 不安から、視線をブラボーに送る。

 だが、ブラボーに反応はない。ただこちらを向いているだけ。

 ふと、気になる。ブラボーの手には、手袋の上から指輪がはめられている。

 

 グリードアイランドの指輪じゃない。

 金色の、不吉な輝きを持つ指輪だ。

 

 アマネは俺に、握手を求めて手を差し伸べてくる。

 身長差から、見下される形。虚ろな瞳に、引き込まれるように手を伸ばそうとした、瞬間。

 

 

「──がっ!?」

 

 

 横合いから、何者かにタックルを受け、吹き飛ばされた。

 視界がズレ、受身を取る暇もなく、地面に押さえ込まれる。

 

 見れば、俺を抑えているのは、シュウだ。

 文句を言う前に、目の前を黒い()()()が横切った。

 あれは、アマネの念能力。先ほどレイズを飲み込んだものだ。

 

 

「な、なにを!?」

 

「あちゃ、失敗か」

 

 

 何事もなかったかのように、アマネはつぶやいた。

 その顔が、あまりにも平坦すぎて……逆に恐ろしい。

 

 

「油断するな、ユウ。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その言葉の意味を理解するより早く。

 アマネの背中で、白い()()()がはためいた。

 

 ぼとり、と、その中から落ちてきたのは、寸刻みにされた肉片。

 エースと同じ殺され方。その意味が、わからないはずがない。

 

 

「仕方ない。()()()()()()()()

 

 

 理解が遅れた。

 だからわずかに反応が間に合わない。

 気がついたときには、眼前にブラボーが迫っていた。

 

 ガードは間に合わない。

 とっさに肩にオーラを集め、受け止める。

 それでもなお、受けきれない。体が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 

「ぐっ」

 

 

 詰まる息を、無理やり吐き出し、呼吸を整える。

 いま戦闘体勢を崩せば致命傷だと、経験が告げていた。

 

 

「ユウになにしやがる──ブラボーっ!!」

 

 

 ブラボーと、シュウの拳がぶつかり合う。

 おたがい手加減などない。

 

 

「【正義の拳(ジャスティスフィスト)】おぉっ!!」

 

「流星……ブラボー脚!!」

 

 

 ブラボーのキックとシュウの必殺技が宙で衝突する。

 オーラが迸り、大気が震える。そんな光景に気を取られて。

 

 

「あなたは、わたしがお相手しましょう」

 

 

 気がつけば、俺の体は黒い()()()に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 視界を覆う闇が消えた時、目の前の光景は一変していた。

 

 古い洋館。

 そんな言葉がぴったりくる、石造りの屋敷。

 俺がいつのまにか立っていたのは、広間の中央。

 カチ、カチと、やけにゆっくりとした振り子時計の音が、異様に耳に障る。

 

 

「ここは……」

 

「ようこそ。わたしの【悪夢の館(スプラッターハウス)】へ」

 

 

 赤絨毯の引かれた階段。

 階下を見下ろすように、アマネは立っていた。

 

 

「お前は……何者だ! ブラボーになにをした! 目的はなんなんだ!」

 

 

 俺の叫びに、アマネは艶麗に口の端を綻ばせた。

 

 

「わたしが、あの人になにかしたと?」

 

「決まっている! そうじゃなきゃブラボーが、お前なんかの言うことを聞くはずがない!」

 

 

 当たり前だ。

 どんな理由があっても、あのブラボーが、エースを殺すような人間に従うはずがない。

 

 アマネは、俺の言葉に、冷たい微笑を返して。

 

 

「ふふ、あなたはなにも知らないのね……せっかくだから、教えてあげましょうか」

 

 

 そう言いながら、階段の手すりにしなだれかかる。

 

 

「あの人は、ブラボーは、もうわたしのもの。わたしを一番に想い、わたしの言うことならなんでも聞いてくれる。本当の恋人同士になったの」

 

 

 言って、アマネは愛おしげに指輪を撫でる。

 指輪。ブラボーの薬指にも、同じ指輪が嵌められていた。

 

 

「……念能力か」

 

「【愛の契約(エンゲージリング)】。対になる指輪をはめたふたりは、たがいを最優先にする。そんな素敵な能力(ちから)

 

「なぜ、それほどブラボーに執着する」

 

「決まってるじゃない。わたしがあの人を──兄さんを愛しているからよ」

 

 

 理解からほど遠い言葉に、なぜか動揺する。

 

 

「──兄妹だからと、結ばれることが許されない。そんな日本になんて興味ない……だけど、あの人は、責任感から、あなたたちプレイヤーを見捨てられない。だから殺すのよ。すべてのプレイヤーを」

 

「責任感?」

 

 

 この女の思考は理解出来ない。いや、理解したくない。

 だが、責任感という言葉が、心に引っかかる。

 

 

「あなたは、あの人がなぜ皆を助けようとしていると思ったのかしら。善人だから? キャプテン・ブラボーだから? ──違う。そうじゃない。あの人は後悔から、皆を助けようとしている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ね」

 

 

 そして女は決定的な言葉を吐いた。

 動揺する。心が乱れる。だが、無理矢理に押さえつける。

 

 

「開発者──ゲームマスター。【逢魔ヶ災】と同じ」

 

「そう。違いがあるとすれば、あの人は一般プレイヤーとして参加した、301人目のプレイヤーということだけ。あの人は、【逢魔ヶ災】のような宿業を持たなかった。だから彼らの虐殺を止めるために戦い……でも、かつての仲間を、殺すことが出来なかった。収監するに留めて、わたしが彼らを解放する余地を残した」

 

「なんのために、あんな奴らを」

 

「決まってるわ。使()()()()()()。わたしの想いに応えてくれないあの人に、指輪をはめてもらうために。あの人と人質を【悪夢の館(スプラッターハウス)】へ呼び込む、その機会を作るために」

 

 

 人質。エースのことだと気づく。

 おそらくこの女はエースを人質にとり、ブラボーに指輪をはめさせ……そして、裏切ったのだ。

 

 理解できない。生物として違いすぎる。

 思いの強さは伝わるが、この女は常人が心に引いた一線を、正義を、倫理観を、()()()()()()()()()()

 

 

「……そんなことのために、【逢魔ヶ災】を解放して、俺たちの仲間を殺したのか」

 

「ええ。【逢魔ヶ災(あれら)】の──少なくともレイズとアモンの目的は、プレイヤーを殺すこと。なら、手を結べる、と、思ったのだけれどね……収監された恨みからか、頑なにあの人を殺そうとするものだから、死んでもらったわ」

 

 

 仲間割れしていたのは、それでか。

 ブラボーが襲ってきた理由は、それか。

 ブラボーがキャプテン・ブラボーたろうとしていたのは、それでか。

 

 

「なら、問題ないな」

 

 

 つぶやくように言葉を落とす。

 

 

「俺が、お前を狩り(ハント)して──ブラボーを呪縛から解放してやる!」

 

「出来るかしら? あなたが、あなたごときが」

 

()()()()()!」

 

 

 見下すようなアマネの問いに、俺は見定めた目標を言葉にする。

 

 

「なら、まずはここから出てみなさいな。万が一生き残れたら……相手してあげるわ。まあ、無理でしょうけれど」

 

 

 ──【悪夢の館(スプラッターハウス)】。

 

 

 女はつぶやくように言った。

 その言葉に応えるように、突如館が蠢きだした。

 

 

「──っ!?」

 

 

 頭上の空気が揺れるのを察知し、跳び退る。

 轟音とともに、鼻先をかすめてシャンデリアが地面に落ち、四散した。

 

 

「さあて、あなたはどこで死んじゃうのかな?」

 

 

 無邪気な口調でそう言って。

 アマネは奥へと退がっていく。

 

 追いかけようとして──悪寒。無理やり足を止める。

 直後、地面から、無数の槍が飛び出してきた。

 

 

「まてっ!」

 

 

 とっさに足元のオーラを爆発させ、アマネに迫る。

 

 だが、それを阻むように。

 俺とアマネの間を、振り子仕掛けの刃が横切った。

 もはやこちらに視線もくれず、アマネは奥に引いていく。

 

 

「心配しなくても、もうひとりの男の子も、ここに送ってあげるわ。いっしょに死ねば、寂しくないでしょ?」

 

「ま、まて! シュウをどうする気──」

 

 

 俺の鼻先で、扉が閉じられた。

 押しても引いても、扉は開かない。

 

 ふと、気づく。

 振り子時計が時を刻む音。

 それに混じって、なにかが風を切る音が、後ろから聞こえてくる。

 振り返って見れば、機械仕掛けの人形が、刃を手に、回転しながら近づいて来ていた。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと。だが、確実に迫ってくる。

 あの、異常に遅い振り子時計の音に合わせるように、ゆっくりと、道幅いっぱいに刃を振り回す人形。

 

 逃げ場は、ない。

 

 

 ──俺以外には。

 

 

 外套に身を隠し、殺意の仮面(ペルソナ)を被る。

 

 

 ──【背後の悪魔(ハイドインハイド)】。

 

 

 人形の背後に瞬間移動し、続けざまに転移。一気に階段の傍まで跳ぶ。

 そのまま階段を飛び降り、広間に戻った。人形は、まだ顔をこちらに向けたばかり。

 

 玄関の扉は──開かない。

 それどころか、上からギロチンの刃が落ちてきた。

 かろうじて躱し、広間から通じる扉を片端から開けていく。

 

 客間では、重厚な高級調度品が、群れをなしてこちらを挟み殺そうと迫ってきた。

 キッチンでは、無数の包丁が群れをなし、俺を食材にしようと容赦なく襲ってくる。

 

 この館の部屋一つ一つが死のトラップ。

 なんとか逃げおおせ、扉を閉じた俺は、やっとその事実に気づいた。

 

 

 ──考えろ。

 

 

 思考を巡らせる。

 アマネの入っていった部屋、あれが出入り口だろう。

 たぶん、あの扉を開くには、なにか条件が必要なはずだ。

 

 死ぬまで出られない。

 そんな致命的な念能力の発動条件が、あの黒い物体に触れるだけ、なんて軽いものですむはずがない。

 

 どうすればいい。

 ホラー物の小説なんて、読んだことない。

 この手の展開の、定番の謎解きってなんだ。

 考えているうちにも、殺人人形が、時を刻むように、じりじりと迫ってくる。

 

 

 ──あれか?

 

 

 だが、殺人人形を倒すことぐらい、誰もが考えついたはずだ。

 

 しかし炎の災禍は死んだ。

 あれ程の実力者がだ。単純な暴力では、おそらく脱出できない。

 

 館中を観察する。

 よく見れば、かすかにだが、館の壁や床に焦げ付いたような跡が残っている。

 

 レイズが足掻いた痕跡。

 その爪痕が、ひとつの扉に向かって続いていた。

 

 アマネが出ていった扉とは逆。階段を登った左に見える扉だ。

 あそこに向かっていたのか、逆にあそこから逃げてきたのか。

 どちらにせよ、他の扉を選ぶより、状況を打破できる可能性は高い。

 

 また追い詰められても厄介なので、人形をギリギリまで引きつけ、二階に駆け上がる。

 部屋の前にたどりつき、慎重に、ドアノブに手をかける。鍵はかかっていないようで、あっさりと扉が開いた。

 

 そこは寝室だった。

 天蓋つきの豪奢なベッドに、高価な調度品の数々。

 その中で目を引いたのは、テーブルの上に広げられた、豪華な装丁の本。

 

 なにかヒントになればと、目を通してみる。

 どうやら日記のようで、悪趣味なことに、この屋敷が化け物屋敷へと変貌を遂げて行く過程と、屋敷の主人の苦悩が書き綴られていた。

 

 読み進んでいくと、日記に一枚の紙片が挟んであった。

 

 

“この先を読むな! かぎとけいのなか──A”

 

 

 走り書きでそう書いてあった。

 

 罠、ではない。

 A……エース。彼が残したヒントだ。

 

 おそらく、この本を読み進めると、致命的な罠が発動する。それを伝えたかったのだろう。

 

 エース。

 彼は、こんな場所に取り残されて。

 自分の死が間近に迫った絶望の中で。

 それでも仲間のために、このメモを残してくれたのか。

 

 

「エース……ありがとう」

 

 

 こみ上げる感情を抑えて。

 紙片をポケットに入れ、部屋を出る。

 

 鍵は時計の中。

 この部屋にある時計ではないだろう。

 鍵を隠すには小さすぎる。たぶん、広間の大時計だ。

 

 部屋を出ると、殺人人形は二階に上がってきていた。

 扉の影から、【背後の悪魔(ハイドインハイド)】で人形の背後へ。そのまま階段を降りて、大時計にたどり着く。

 

 大時計を開き、振り子を止める。

 振り子の裏側を探ると、金色の鍵が嵌っていた。

 

 それをもぎ取った、瞬間。

 館全体が震えたように感じた。

 カチ、カチと、大時計が正常に時を刻み始める。

 

 異様な気配とともに、鈍い光が目に入った。

 見れば、殺人人形が、危険なオーラを纏い、階段の上からこちらを睨んでいる。

 

 おそらく、鍵を取ったことで、なんらかの仕掛けが発動したのだ。

 トン、と、階段から飛び下りて来る殺人人形。その動きは、今までとは比べ物にならないほど速い。

 

 ここは逃げの一手だ。

 人形の脇をすり抜け、階段に向かい、駆ける。

 人のように滑らかな動きで追ってくる人形を、階段を登ったところで蹴落とし、そのまま右手奥の部屋に鍵を差し込む。

 

 真っ暗な部屋の中に、白い()()()が浮いている。

 あの黒い()()()と対になるそれは、間違いなく出口。

 

 後ろから、殺人人形がすさまじい勢いで迫って来る。

 俺は覚悟を決め、思いきって白い()()()に身を投げた。

 

 

 

 




◆レイズ=ブレイム

・H×Hで好きなキャラクター三人

 ゴン、ヒソカ、ウヴォーギン

・H×Hで好きな念能力三つ

 ヒソカの【伸縮自在の愛(バンジーガム)】、フィンクスの【廻天(リッパー・サイクロトロン)】、ゲンスルーの【一握りの火薬(リトルフラワー)

・グリードアイランドで好きな指定ポケットカード三つ

 No.005神隠しの洞、No.070マッド博士の筋肉増強剤、No.075奇運アレキサンドライ

・ユウからの第一印象

 気のいい兄ちゃんっぽいけど……目がやばい。


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