「──ああ、いい天気だな」
晴れた空を見上げながら、つぶやく。
休日、せっかくの陽気。
なのに、いったい俺はなにをやっているのか。
「おニイ、なんで逃避気味?」
隣を歩く妹のマークは完璧。逃げようがない。
知り合いにこんなとこ見られたらどうすんだ、とか。
わざわざ休日つぶして、妹の服選びにつき合わされてる俺の気持ちを察しろ、とか。
これから何時間も、お前の買い物につき合わされるんだ。逃避ぐらいさせろ、とか。
いろいろ言いたいことはあるけど……
「仕方ないでしょ。晴美たち、急に来れなくなったんだから……ね、かわりにお昼、ご馳走するからさ」
心の内を読まれてて、フォローも欠かさない。
猫に首根っこ押さえられたネズミの心境だ。
あきらめて、ため息をつく。
対照的に、友はやたらと上機嫌。
先日ばっさりと切った髪を揺らしながら、鼻歌など歌っている。
もともと友がベースだったからだろうか。
髪型まで似せると、本当に“ユウ”に見える。
どうも“元ユウ”としては、目の前に同じ姿の人間が居るというのは、複雑な心境だ。
「でも、本当にいい天気だな」
場所は、最寄りの繁華街。
ビルの隙間から見える空は、高く、遠く。
一炊の夢のようだった、向こうの世界を思い出させる。
『みんな、どうしてるかな』
なぜか、俺と友の言葉が重なった。
「いや、晴美たちだよ!?」
友はあわててつけ加える。
肝が冷えた。
心の内を言い当てられたのかと思った。
いくら兄妹で気心が知れてるとはいえ、読心術レベルだといろいろ支障が出る。
なんとなく気まずくなって、繁華街の景色を見回していると。
「──そりゃないっスよ!」
ふいに聞き慣れた口調が耳に入った。
思わず声の主を探し、あたりに目を配ると──居た。
道を進んだ少し先、家電量販店の前。
大学生くらいの青年と、中学校入りたてくらいの、長髪の少年が向き合っている。
「ダメだぜ、
「だからってゲーム
「約束は約束じゃん。安請け合いしたセンセイが悪いと思って、ここはひとつ……」
「せめてソフトに! ソフトにオマケして下さいっス!」
「……おニイ、どうしたの?」
友が、体を屈めて不審そうに見上げてくる。
しまった。ふたりの掛け合いに、思わず足を止めていた。
「あ、いや、なんでもない」
いくら口調が同じだからって、そんな偶然があるはずがない。
きっとただの思い過ごし。そう、自分に言い聞かせて、視線を戻す。
「──母さん、まって!」
と、歩道の向こうから、女の子が走ってきた。
年の頃は、小学校の高学年くらいか。かわいらしい美人さんだ。
きっと、なにかに目を取られてたんだろう。
先を行く親を追いかけ、女の子は俺の脇を通り過ぎていった。
なんとなくそれを目で追った、その先。
女の子の母親らしき女性を見て、思わず目を疑った。
その女性の外見が、“ミコ”をもう少し大人にしたような姿だったのだ。
「
「だって、ちょっと知ってるかも知れない人がいたから……」
「……おニイ?」
親子の様子を見ていると、隣から絶対零度の声。
「わたし、小学生をナチュラルに目で追う兄を持った覚えはないんだけど」
言葉と表情が怖すぎる。
俺はあわてて視線を戻し、歩き出す。
休日の繁華街。人通りは次第に多くなってきた。
「──で、どうだったのよ。グリードアイランド・オンライン」
交差点で信号待ちをしていると、そんな声が聞こえてくる。
思わず声の主を探す。
だが人混みの中、見つけ出すのは容易じゃない。
その間にも、会話する声だけは、はっきりと聞こえてくる。
「どうって、まだ始めてないよ」
「なんで? お前、帰ったら速攻プレイするって言ってたじゃん」
「それがさ、開始時間になって、始めた、はずなんだけど……気がついたら寝ててさ、いつの間にかキャラ、
信号が青になり、人々が歩き出す。
声は次第に離れていき、聞こえなくなった。
「──あ」
横断歩道を渡ったところで、急に友が、隣で声を上げた。
後ろを振り返る友に、釣られて振り返る。
道を挟んだ向こう側。
信号はすでに青になっている。
だというのに、横断歩道の前で一人、立っている女性が目に止まった。
20台半ばくらいに見える。
長身にスーツ姿の似合う女性で、しゃんとした姿に、自然と目がいった。
気のせいかもしれない。
だけど、ほほえましげな視線は、たしかにこちらに向けられていた。
思わず、魅入ってしまって。
いきなり横合いから伸びてきた手が、俺の頬をねじりあげる。
「──っ!!」
痛みに、声も出ない。
「なんで今日に限って女にばかり目が行くかな、おニイは」
「誤解もいいとこだ……というか、見てたのはおまえが先だろ」
抗弁しながら、痛む頬を押さえる。
俺たちのやりとりに、女性は笑みをこぼし──その微笑が、カミトのそれと重なった気がした。
思わず二度見するが、瞬きをする間に、彼女の姿はかき消えていた。
まるで最初から、居なかったかのように。
「さ、行こ。今日は思い切りつき合ってもらうんだから」
なぜか頬を膨らませ、友は強引にこちらの手を引く。
どうも妙な日だ。
次々と仲間を連想させる人物に行き会う。
となると、そろそろシュウが出て来てもよさそうなものだが、残念ながらあいつの姿は見当たらなかった。
まあ、あいかわらずツイッターでは、頻繁にやりとりはしてるんだけど。
「おニイ、行こ」
ずるずると引きずられていく俺。
──そういえば、この強引さは、なんだかシュウを連想させるよなあ。
そんな事を考えながら、空をながめる。
おなじ空の下に、仲間がいる。
たとえ会うことがなくても、それだけはたしかで……そんな当たり前のことを、尊いと感じた。
◇GIO掲示板
【総合】プレイヤーの近況を語る61【雑談】
39:ソックスハンター◆hntysns11
プレイヤーに歌姫がいる件
【他サイトへのリンクです】
↑43:カズボウ◆hknetlcdt
だれだ
マスターAAさんとか非常に怪しいぞ
↑46:マスターAA◆thy72ksrg
ちゃうわい
どうせ幼狐さんかパンダ子さんあたりでしょ
↑49:パンダ子◆onNrnm1l2
うちちゃうよー
↑53:幼狐◆kmMm35lol
負の信頼はやめておくれ
↑57:マスターAA◆thy72ksrg
じゃあ誰よ
こんな悪ノリするのスレの者くらいじゃない?
↑59:ソックスハンター◆hntysns11
わっかんない
「電波を渡る歌姫」とか呼ばれてるけど……
ハッキング系の念能力者かな?
↑62:カズボウ◆hknetlcdt
懐かしいよね
録音して好きな時に聞きたいわ
↑65:ロック◆bllag0466
うわさだけど今度この歌姫さんの歌が(勝手に)リリースされるとかされないとか
↑67:カズボウ◆hknetlcdt
まじか
狐さん出世頭やん
↑69:幼狐◆kmMm35lol
だから違うと言うとるのに……
【総合】プレイヤーの近況を語る63【雑談】
291:バグジー◆bnjml4gl4
そういえばキャプテン・ブラボー居た
↑296:カズボウ◆hknetlcdt
隠す気なしシリーズに新たな逸材が!
↑301:ツキシマ◆wrst87ume
ちなみに隠す気なしシリーズ
伝説の掃除夫ニキ
ハンター試験に参加してたエルフ
ハンター試験に参加してた学生服
ヨークシンで目撃されたシスターでメイドさんなコスプレ美少女
カキン帝国で目撃された某お嬢様学校の制服姿の金髪ツインテール
主不明のブルーアイズホワイトドラゴン
ゲーミングカラーロリ
キャプテン・ブラボー ←NEW
↑304:カズボウ◆hknetlcdt
まとめ乙
さす月
↑309:バグジー◆bnjml4gl4
カズさんツキシマさん待って欲しい
俺殺されかけてたとこ助けられたんで
ネタ枠に入れるのは申し訳ねえ
↑311:カズボウ◆hknetlcdt
命を助けられた?
なにがあったんです?
↑318:バグジー◆bnjml4gl4
一服盛られて殺されかけてたとこを助けられたわ
↑321:ツキシマ◆wrst87ume
どうやったらそんな状況になるのよさ
↑328:バグジー◆bnjml4gl4
まあマフィアだし、武闘派として目立ってたし
ファミリー内の政治闘争に巻き込まれて、的な
もう駄目だと思った時に、助けてくれて、病院まで運んでくれたわ
↑331:ヨリゼロ◆km2noy1ba
なにそれヒーロー?
声かけなかったん?
↑334:バグジー◆bnjml4gl4
毒盛られてたんだぞ。朦朧として意思疎通できんかったわ
↑338:カズボウ◆hknetlcdt
おお……大変やったなあ
生きててよかったな
↑341:マスターAA◆thy72ksrg
ブラボー見たよ!
ヤバすぎて遠巻きに見てただけだったけど、なんか人助けしてた!
↑345:カズボウ◆hknetlcdt
すげえなブラボー
マジでヒーローやん
↑348:ヨリゼロ◆km2noy1ba
ブラボー! ブラボー!
↑249:バグジー◆bnjml4gl4
ブラボー! ブラボー!
↑252:カズボウ◆hknetlcdt
ブラボー! ブラボー!
↑254:パンダ子◆onNrnm1l2
もっと愛を込めて!!
↑257:カズボウ◆hknetlcdt
それはパピヨンなんだわ
◇□□□
……さて。
その後の話をしよう。
はるか遠い地。遠い国の、遠い街の話。
プレイヤーなら誰もが知るその街を、ひとり歩く男が居る。
白銀のオーバーコートを身に纏うその男の名は、キャプテン・ブラボー。
いつだって、自分のためじゃない。他の誰かのために戦ってきた男。
自らが傷つくことを厭わずに、なんの対価も求めず、戦い続けてきた……そしてこれからも戦い続ける戦士。
その道行く先。
往来の真ん中に、待ち構える者が居ることに、彼はいつ気づくだろうか。
結論から言うと、同時だった。
彼方を見据える彼の目が、こちらを捉えるのと。
たまりかねたわたしが、彼に声をかけてしまったのが。
「──やっと、会えたわね」
その声に、姿に。
よほど驚いたのだろう、ブラボーはしばし無言で立ち尽くした。
「……カミト。どうしてここに」
やがて、ブラボーは言葉を絞り出す。
その問いに、わたしはとびきりの笑顔で答える。
「決まってるでしょ。わたしが、あなたの……相棒だからよ」
そう。
歩む道がどれほど険しくとも。
ともに歩む仲間がいれば、耐えられる。
なによりもわたし自身、それを知っている。
だからわたしは決めたのだ。
恩返しでも、別の理由でもない。
相棒として、そうするのが当たり前だから──この道を、共に歩むと。
空を仰ぐ。
ユウちゃんたちが見る空とは別の、だけど同じ色の空。
きっと空を見上げる度に、あの子たちのことを思い出す。
ひょっとして、あの子たちも、空を仰ぐ時、わたしたちのことを思い出すかもしれない。
──だから、きっと想いは
グリードアイランド・クロス 了
グリードアイランド・クロスに、最後までおつき合いいただき、ありがとうございました!
次回以降、本編を補完する形で外伝となりますが、ひとまず完結ということで、皆様に感謝を。
以降の投稿は不定期となります。これからもおつき合いいただければ幸いです。
本編の重要なネタバレになる、外伝01 「SISTERS」だけは早めに投稿出来たらと思っております!