人の未来は光の中に(アムロ ジュドー ロンド・ベルinコズミック・イラ ルナマリアを添えて~   作:アママサ二次創作

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第2話 すれ違う世界

「くっそぉ!! 何で当たんないんだよ!」

 

 ビームライフルを連射しながらシンはうめいた。丸腰に近い相手に戦いを互角に持ち込まれたからだ。

 ライフルを撃っても、敵は全弾避けていく。しかも距離をとって逃げているのではなく、一つ一つの攻撃を見切って小さな動作で躱しているのだ。

 

 いつまでも同じ攻撃をしていても埒が明かない、とシンはビームライフルをそれまで以上のテンポで三連射すると同時に、ビームブーメランを構えて投げる。その攻撃にνガンダムはわずかに動揺した様子を見せたが、ブーメランを肩の装甲にかすらせるに留めた。

 それでもC.E.世界のMSなら腕が使用不可能になるだろうが、ガンダリウム合金でできたνガンダムは装甲に傷を負っただけで問題なく機動し、銃器の不足も相まって攻撃を軽く交わすことに専念する。その動きが、まるで馬鹿にされているように見えてシンは苛立ちを募らせた。

 

 一方、レイの方はシンに比べ多少マシな状況であった。

 宇宙世紀のニュータイプほどではないが、レイにもその能力の片鱗が備わっていたからである。宇宙に出た人類の変革は、何も宇宙世紀だけの特権ではない。まだ、C.E.世界にはその土壌が生まれていないだけで。

 

 無意識のうちにニュータイプ能力を操るレイは、Zの攻撃を巧みに躱し、幾度もジュドーへと鋭い攻撃を届ける。

 

「このパイロット……多少は骨のあるやつだな!」

 

 歴代のガンダムパイロットの中でも高いニュータイプ能力を持ち、戦闘の中でそれを育んできたジュドーが呻くほど、レイは健闘しているのだ。だが、それでも届かない。

 

「ちっ!」

 

 レジェンドの放つドラグーンによるオールレンジ攻撃さえかすりもしない敵の反応速度は、おそらくフリーダムのパイロットである『キラ・ヤマト』すら凌駕しているだろう。それがニュータイプ能力と卓越した操縦技術による『反応』ではなく『先読み』だとレイはまだ知らない。

 だが、レジェンドはドラグーンの運用を可能としているとは言え、全ての面においてトップクラスの機体だ。射撃戦だけが華ではない。

 

「来ないならばこちらから仕掛ける!」

 

 ドラグーンによる牽制の間にビーム・サーベルを保持して、Zに斬りかかる。だが、そこで敵は予想外の行動を取った。核動力であるレジェンドのサーベルをサーベルで受け止めただけでなく、押し返したのだ。

 

「何!? レジェンドがパワーで負けているだと!? 馬鹿な!」

 

 レジェンドは、C.E.世界ではストライクフリーダムとインフィニットジャスティス、デスティニーとレジェンドの4機しかいない核動力を搭載した機体である。格闘戦にパワーを割り振ったジャスティスやアロンダイトを持ったディスティーに多少押し込まれることはあろうと、それ以外の機体にサーベルで押し負ける道理が無い。

 レイはすぐさま結論を導き出し、それはありえない。と首を振る。

 

 (敵は核エンジン以上のパワーを持っている……バッテリーではありえない……。まさか!?)

 

 『敵は核融合炉を積んだ機体である』。

 それはあってはならないことだ。ザフト軍がこれまで優位に立ってきたのは、技術に秀でたオーブにすら引けを取らない技術力あってのことだ。核融合炉の存在は、そのザフト軍の技術的アドバンテージが失われたことを意味する。

 核融合炉の生み出すエネルギーは従来のバッテリーどころかNJC(ニュートロンジャマーキャンセラー)を搭載した『核分裂式』のエンジンすら大きく上回る。そんな技術を実用化した勢力など存在しない、いや、存在してはならないのだ。

 

「ありえない……いや、あってはならないっ!!」

 

 目前の機体の危険性を認識したレジェンドは、再びドラグーンを放ち一気に攻め立てる。

 

「くっそぉ、うっとうしいんだよ! ビットは!」

 

 ジュドーはまだファンネルの存在すら知らなかったため、それをビットと言った。正確にはそのどちらも間違いではあるが、やっていることは似たようなものだ。(ビットはジェネレーターを内蔵しており、ファンネルは内蔵していないものを指す)

 

「ここで奴らを逃せばプラントは……! 逃がすわけにはいかない!」

 

 レイはここで2機を叩けば核融合炉技術の拡散を防ぐことが出来るかもしれないと攻勢を強める。

 

「ビットなんて落としてやる!」

 

 ジュドーはドラグーンの軌道を見きった上で、サーベルとバルカンを駆使して全てのドラグーンを撃ち落とした。それはレイには神業に見えた。いや、C.E.であろうとU.C.であろうと間違い無く神業である。ジュドーの隣で戦っている男は遥かに性能の低いRX-78-2ガンダムでエルメスのビットをハエたたきしたこともあるが、あれはバグのようなものだ。

 

「―な、なにっ!? ドラグーンを斬るのか!」

 

 レイは思わず驚愕の声を発する。エンジンの性能がU.C.に劣る割には、一部機体の火器の量が尋常ではないのがC.E.世界だ。エース同士の戦闘においてドラグーンが大火力に巻き込まれて破壊されたという記録はある。レイ自身はまだ経験してないが、ストライクフリーダムなどと本気でやり合うことになればその可能性は十分にある。

 だが、Zは狙いすましたかのようにサーベルとバルカンのみでドラグーンをすべて落としたのだ。到底信じられる技量ではない。

 

 その驚きの隙を見逃さず、ジュドーはZのサーベルで切りかかった。レイもとっさに回避行動を取るが躱しきれず、サーベルを腕に受け切り落とされてしまう。

 

 それを目撃したシンは激昂しSEEDを覚醒させた。

 

「レイッ! くっそぉぉぉぉ! よくもレイをぉぉぉ!」

 

 怒りの感情に流されるままに、対艦刀を目の前のνガンダムに振り下ろす。νガンダムの回避は間に合わない。

 

 (これで終わりだ!)

 

 シンは勝利を確信し、意識をレイの方へと向けた。だが、機体に伝わってきた振動は、MSのを切り裂いたものとは全く違っていた。νガンダムが掲げた右腕にアロンダイトが受け止められていたのだ。どころか、装甲にめり込んだだけでνガンダムは問題無く受け止めた腕を動かし、アロンダイトを外側へと弾いた。

 そこに生まれた明確な隙に、アムロは逆の腕でデスティニーの脇腹に左フックを加え、右に持っていたビーム・サーベルを発振させてデスティニーに斬りかかる。

 

 フックを受けて揺れるコックピットの中でシンはなんとか反応し、それをかろうじてアロンダイトで受けた。更にパワーならば負けることはないとスラスターと対艦刀の出力を最大にしたところで愕然とする。

 

 全く押し切ることができないのだ。どころか、相手が本気を出した瞬間一瞬で押し返された。

 

「どういうことだよこれはっ!?」

 

 再びνが斬りかかろうとしているのに気づいたシンは、慌てて機体を後退させ体勢を立て直した。

 シンは、今の攻防の全てが信じられなかった。これまで、アロンダイトは全ての敵を切り裂いてきた。PS(フェイズシフト)装甲を持った機体はビームに耐性を持たないためアロンダイトの発振させるビームでも十分に斬ることができたし、PS装甲でなければ鋭いアロンダイトの実体刃を受けることはできない。νガンダムの装甲は、C.E.においては明らかに硬すぎる金属なのだ。

 更に、ディスティニーがパワー負けした。シンは格闘戦において、アロンダイトの取り回しが難しいものの十分に使いこなし、パワーと速さを持って全ての敵を倒してきたのだ。それが、通じなかった。

 

 一方のアムロは、今の攻防から敵の機体や武装の性能を具体的に把握していた。

 

 (ビームの出力が低い……それに実体剣でガンダリウムを斬るのは無理だ。ジェガンの装甲でも無理だろう。だがあの大きさは明らかに斬るつもりで来ている……。あのMS、どこの所属だ? ティターンズの残党がいるわけはないし……海賊か?)

 

 思考を巡らせながらも、アムロは警戒を怠らない。デスティニーは動揺しているようだが、いつ再び攻撃してくるかわからないのだ。

 

 

 ちなみに両機のスペックを比較すると、純粋なパワーにおいてはνが秀でているものの、格闘戦における敏捷性にはそれほど大きな差はない。コズミック・イラのMSはもともとフレームと装甲が別れた、所謂『ムーバブル・フレーム』と似た構造を持っており、宇宙世紀のものほど洗練されていないものの『デラーズ紛争』時のMSと遜色ない運動性能を持っているのだ。

 ただ、コズミック・イラのMSは宇宙世紀と比べて装甲材の開発が進んでいないため重量が重く、特にPS装甲は更に重量が増してしまう。それに対してνガンダムはガンダリウムγという超軽量かつ非常に頑丈な素材を用いているため、コズミック・イラ世界ではありえない耐久性を持ちながらも、デスティニーの本体重量80tに対して27tと、3分の1程度の重量しか無い。

 その重量の差が、ディスティニーとνガンダムの明確な運動性の差となっていた。

 

「そんな間合いの詰め方では!」

 

 再びアロンダイト構えて接近してきたデスティニーの攻撃をサーベルで受け止め、νガンダムは相手に向かって回し蹴りを放ち引き離す。そして返す刀でディスティニーの左腕をビームシールドごと引き裂いた。

 

「シールドごと腕を!? そんな!?」

「シン、落ち着け! まだ右が残っているだろう!」

「っ! ああ! まだ終わっちゃいない!」

 

 ディスティニーの残った右腕で武装を腰から引き出し、狙いをつける。ロックオンと同時にシンはトリガーを押し込んだ。

 

 砲身から走る眩いばかりの光芒を、アムロは避けた。デスティニーのビームライフルは宇宙世紀のものと比べるといくらか威力が落ちるが、ビーム砲をくらってはνガンダムでもただではすまない。

 

「ジュドー、なんとかして振り切るんだ! このままではいずれ落とされるぞ!」

「わかってますよ!」

 

 バルカンしか残っていないνガンダムとZでは、相手に射撃に徹されるとどうしようもない。2機はレジェンドの弾幕を避けながらスラスターを吹かす。それを逃すまいと、レイは残った武装で懸命に弾幕をはった。

 

「っ、ミネルバ! インパルスはまだか!? 2機では抑えきれんぞ!」

「あ、あと2、3分でそちらに到着します!」

 

 シンとレイが抑えきれない、という報告に対してミネルバからは動揺した返事が返ってくる。

 レイはそれを意識から切り離すように通信を切り、増援が来るまで足止めすべく弾幕を一層激しくした。インパルスが来たところで状況が好転しないのではないかという考えが頭をちらついたが、それを振り払う。

 

「ん……この感じ……。ジュドー、3機目が来るぞ! 注意しろ!」

「了解!」

 

 ジュドーも同じ気配を感じ、アムロに短く答えて敵から距離をとった。

 

 

 ミネルバは何故この段階になって、インパルスまでも投入したのか。

 そのことは後の記録だと、デスティニーとレジェンドをもってしても一向に好転しない状況に艦長の「タリア・グラディス」がインパルスを投入することで打開を図ったのだと記録されている。

 だが実際は未知のMSであったZとνガンダムを捕獲したがった議長の指示だとも言われているが、この当時の資料や記録、報告書などのすべての資料はザフト軍が隠蔽してしまったので、真偽は不明とされている。

 

 

 フォースインパルスが戦場に到着し、Zに向けてライフルを乱射する。

 ジュドーは3機目にある感覚を覚えた。それは『迷い』だ。それはアムロが感じることのできなかったものである。もっとも、アムロも動きを見ればわかっただろうが。

 

「なんだこのパイロット……迷いを持っているのか……?」

 

 この時期、インパルスのパイロット、ルナマリアはザフト軍で戦うこと、自分が戦うための大義名分に疑問を抱き始めていた。

 議長の言っていることは正しいことのように思える。だが、戦争は一方的な正義や悪という考えで片付くほど単純なものではないことを彼女はよく知っていた。

 

 ――議長は本当に正しいのだろうか?

 

彼女の心にはそんな迷いが生じていた。それをジュドーは敏感に察知したのだ。

 

「動きが遅い……機体だけじゃない、パイロットが迷ってるんだ……そんな状態でZに勝てると思うな!」

 

 インパルスの動きはデスティニーなどと比べれば旧式かと思いたくなるような挙動だった。実際、ライフルのビームもそれほど高い威力ではなく、Zの耐ビームコーティングで相殺出来る程度のものでしかなかった。

 

 ジュドーはZガンダムをインパルスに肉薄させる。そして右腕に保持しているビーム・サーベルでインパルスを横に薙いだ。

 インパルスはそれをシールドで受けようとするが、その行動はC.E.の常識であってもZには通用しない。シールドごと腕を切り落とされ、更にインパルスの上半身と下半身が分断される。

 インパルスのコックピット内では計器がブラックアウトしモニターも消えた。そこにジュドーの通信が響く。

 

「脱出しろ! その機体はもう死に体だ!」

 通信の声に言われるままにルナマリアは機能停止直前のインパルスのコンソールを操作する。コアスプレンダーは機能しなかった。さっきの攻撃でフレームそのものが歪んだらしい。

 

「コアスプレンダーはだめ!? くっ、ハッチを強制開放……!」

 

 ハッチが開け放たれ、そこから勢いよく飛び出す。その瞬間、インパルスは爆発した。その衝撃で吹き飛ばされたルナマリアの体をZが衝撃を殺しながら受け止める。

 

「アムロさん、敵のガンダムのパイロットを一人救出した。Zじゃ乗せられないからアムロさんのガンダムに乗せていい?」

「敵のパイロット? わかった。今行く」

 

 アムロはνガンダムの指に装備されているダミーバルーンを発射しそれにうまく紛れると、敵の注意がそれている隙に気絶したルナマリアをνガンダムのコックピットの後部座席に乗せる。

 そしてνガンダムを再起動させると、レーダーに反応があることに気づいた。

 

「この反応はジェガンか! ジュドー、味方だぞ!」

「本当か!」

 

 戦場に現れたのは、地球連邦量産型MSであるRGM-89[ジェガン]だった。U.C.0093当時の連邦の機体の中でも屈指の高性能を誇るMSである。

 その外観はストライクダガーやダガーLなどの地球連合軍製MSに類似している。そのためシン達は『地球連合の新型』と誤認してしまった。

 

「あれはダガー……? 新型のようだが、これでは……!」

 

 ジェガンの2機編隊がビームライフルの弾幕を張り、νガンダムとZを援護する。

 

「大尉、ここは自分たちが引き付けます! 大尉はラー・カイラムに帰還を!」

 

 ジェガン小隊の隊長機から通信が入る。

 

「了解した! ジュドー、離脱するぞ!」

「了解!!」

 

 ジェガンの援護を受けつつ、ジュドーとアムロは機体を戦場から離脱させた。続いてジェガンも離脱する。

 

 

******

 

 

「負けた……のか……」

 離脱していく敵を見送ることしかできず、シンは敗北感に打ちのめされていた。ザフト最強であり、一度はフリーダムを落とした自分がどこの馬の骨とも知れぬMSに負けた。それがシンの自尊心を激しく傷つけた。

 

 その上、自分はルナを守れなかった。できなかったのだ。何も。

 

 シンは呆然としていたが、やがてコックピットのコンソールに拳を打ち付けて絶叫した。

 

「くそ……くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 

 

 その叫びは、2年前に家族を失ったときと同じ、慟哭の叫びだった。

 

 

******

 

 

3日後

 

 

月面 フォンブラウン市内 アナハイム・エレクトロニクス管轄ドック

 

 

「ブライト、やはり連邦政府やコロニーとは連絡はできないのか?」

 

 アムロは、自分の隣にいる長年の戦友、ブライト・ノアに聞いた。

 

「駄目だ。どこもまるで反応なしだ。なんとか連絡がついたのはフォン・ブラウンだけだ。フォン・ブラウンの方からもどことも連絡がつかないという報告が来ている。それとアナハイムからお前のνガンダムの修理とZガンダムの近代化改修の完了まで、あと2日もあれば終わると通達が来ている。MSの補給だが、エゥーゴ時代に開発されたまま秘匿されていたガンダムタイプを何機か送ってきた。ジェガンやジムⅢもあるらしいが、非常事態とは言え状況のわからんままでは送れんらしい。ガンダムタイプは在庫処分だろうな。それでも連邦政府にばれたら大事だが」

「ガンダムタイプか。確かに上層部に知れたら大変だが、わけのわからん勢力も出ている。戦力が多いに越したことはないな。ジュドーのことはどうする?」

 

 ブライトとアムロが現在を異常事態と認識しているのは、自分たちが防いだはずのアクシズが見当たらないこともあったが、ジュドーの存在が大きい。彼がこの場所にいるはずが無いのだ。しかも彼は現在をU.C.0088だと認識していた。

 

「ジュドーには便宜上、ロンド・ベルに入ってもらうことになった。身分はこれで保証できる。しかし、タイムスリップ、なんてことがありえるのか?」

「わからんが……第一次ネオ・ジオン戦争当時のジュドーがここにいることは確かだ。事実だと思うしかない」

 

 ジュドーのことは、まだフォン・ブラウンの方には詳しく報告はしていない。とはいえ地球からの定期便も連絡も途絶えており、フォン・ブラウンからも再三ロンド・ベルに連絡が入っている。フォン・ブラウン側にも大きな異変が起きていることは理解できていた。その状況下にあってか、アナハイムも工場周辺の警備を増やすとともに、MSの生産を加速させている。

 

 そこへ兵士がやってきて報告した。

 

「大尉!」

「何か?」

「ハッ、3日前にアムロ大尉が収容した所属不明機のパイロットですが、先程目を覚ましました」

「わかった。彼女の話を聞いてみる。俺が直接行ってくるよ」

「頼む」

 

ブライトと別れ、アムロはラー・カイラムの医務室に向かった。

 

 

******

ラー・カイラム医務室

 

 

「う……こ……!?」

 

 ルナマリアは自分がどこかの医務室のベッドに寝かされていたことに驚き、飛び起きた。

 

「お目覚めかね?」

「こ、ここは?」

「戦艦ラー・カイラムの医務室だ。君は3日間も寝ていたんだよ。無理に動かないほうがいい」

「3日間も!?」

 

 ルナマリアは驚きの声を出していた。コーディネーターである彼女はナチュラルよりも頑丈であり、また回復も速い。にも関わらず3日間も寝込んだということは、そうとう疲労が溜まっていたのだろう。

 

 (ラー・カイラム? そんな名前の船、プラントにあったかしら……)

 

 そこでルナマリアはある結論を下した。覚えている限りの記憶を辿ってみるとインパルスが爆発した後、あの所属不明機のほうに流されていた。

考えられることは1つしかない。

 自分は捕虜になったのだ。それもどこの所属かもわからない船の。しかし、捕虜の拘束もしないのだろうか?

 

「なんで私を拘束しないんですか? 捕虜なのに……」

「君の体の治療のほうが先だよ。もちろん暴れるなら拘束することもあるが、捕虜だからと言うだけで拘束することはない」

 

 (連合軍にしては変だわ。制服は似てるけど、でも何か違う)

 

 地球連邦軍の制服は連合軍のそれに似ているが、本来の軍服の色をしている。

 

「君にはこの状況の説明をしてもらいたくてね。そろそろ人が来るだろう。なにせ連邦政府やコロニーへの通信が一切通じんのだ」

 

 (“連邦”、政府? 何を言っているの? “連合”じゃないの? それにコロニーとの通信ができないって、プラントとの連絡? どういうことなの?)

 

 タイミングよくそこにドアを叩く音が響いた。ルナマリアは身構えるが、返事をしないわけにはいかない。

 

「……はい」

 

 ドアから現れたのはずいぶん人当たりのよい、優しそうな男性だった。怖そうな人じゃなさそうで良かった、と胸を密かに撫で下ろす。

 

「やあ、元気になってなによりだ。俺はアムロ・レイ。地球連邦軍の大尉だ。よろしく」

 

 その人の良さそうな「アムロ大尉」は、ニコッと笑って握手を求めてきた。一瞬戸惑ったが、自分もその手を握り返す。暖かくて大きくて、なんだか安心感が広がっていくのを感じた。この人は信じられる。そんな気がした。

 

「ザフト軍、ミネルバ所属、ルナマリア・ホークです。あの、アムロ大尉……でよろしいんですよね? さっきから連邦連邦って……地球連合の間違いじゃないんですか?」

 

 その言葉に、アムロは険しい表情を見せる。

 

「……どういう、ことだい? 地球連合という組織は存在しない。地球“連邦”ならあるが。それに、ザフトというのはなんだ?」

「え?」

 

 この一言をきっかけに、アムロとルナマリアは情報を交換し合った。そうしていく内にアムロは理解した。自分たちが別の世界にいるということを。

 ルナマリアはザフトの本国、プラントとミネルバが通信できていると言っていた。ならば、彼女たちが来たのではなく、自分たちがこちら側の世界に来てしまったのだろう。

 

「別の世界に来てしまったというのか……? 何故……?」

 

 アムロの推測が正しければ、自分たちは兵器を携えて、更に一大生産拠点であるフォン・ブラウンまで伴って別の世界に来てしまっていた。

 

 神の意思などアムロは信じていないが、これではまるでその戦力を使ってこの世界の状況を打開しろと言われているように感じてしまう。

 

(馬鹿な。国家の軍そのものに立ち向かえと言うのか? 出来るはずがない)

 

 現在アムロたちが持っている兵力は、ロンド・ベルのクラップ級が3隻にラー・カイラム。それにフォン・ブラウンに駐留していた部隊のみだ。全ての艦艇を合わせても戦闘艦艇は40もない。更に他部隊は実戦経験が薄く、経験豊富なロンド・ベルはシャアとの戦いもあって多くのパイロットが負傷している。

 

 どうすれば良いのかわからない状況にアムロは深い深い溜め息をついた。

 

 

******

 

 

月面近くの空域  エターナル 艦橋

 

「前方のクレーターに都市のような反応が?」

「はい。このクレーターですが、この辺りにはザフトや連合の基地は存在しないはずです。なのに、この反応……、都市か基地があるとしか思えません」

「うむ。調べる必要があるな。キラ達に調べさせろ」

「了解!」

 

 格納庫から、ストライク・フリーダムとインフィニット・ジャスティスが発進してゆく。

 

 この戦闘で、アークエンジェルとエターナルは思い知ることになる。

「量産型」MSと、鍛えられた部隊の恐怖を。

 

 

 

ラー・カイラム 艦橋

 

「何、また未確認のガンダムタイプだと?」

「ハッ、2機だけですが、変なバックパックらしきものを装備しています。映像出ます」

 

 スクリーンに映し出されたのはフリーダムとジャスティスだった。その姿は、デラーズ紛争時のGP03デンドロビウムを想起させるが、こちらはMSはがほぼむき出しになっている。ガンダムが大型の強化パーツを装備しているとも取れる形状だ。

 

「強化パーツか。ずいぶん大型だな」

「ハッ、見たところ火力とスピードを強化するパーツだと推測できます」

「迎撃に使えるMSは何機だ?」

「ジェガンが2機と旧式のGMⅢがあります。ジェガンはアムロ大尉とジュドーに合わせて整備済みです。あとは整備がまもなく終わるガンダムMk-Ⅲだけです。他は駄目です」

「頼みの綱はMk-Ⅲか……。アムロとジュドーはジェガンで出るように言え! Mk-Ⅲはギリギリまで出すなよ!」

「了解!」

「総員、第一種戦闘配備! ミノフスキー粒子を戦闘濃度に散布! フォン・ブラウンの部隊にはこちらのMSが先行すると伝えろ! 市の防衛は彼らに任せるとな! 戦闘経験の無いパイロットはなるべく出させるな!」

 

 ブライトの号令でロンド・ベルの全艦が戦闘配備に入る。フォン・ブラウンの部隊は戦闘経験の無いものもいるようだったので自分たちが前に出て防衛を任せることにした。すぐに了解の連絡が入り、MS隊も発進していく。まず出撃したのは4機のGMⅢだ。ジェガンと比べると旧型だが今のラー・カイラムにとってはなけなしの機体である。

 

 

 今、C.E.でのロンド・ベルの長い戦いの幕が開かれようとしていた。




元の作品の一話が長い……。
参考にしている部分がなくなったら1話の字数を減らします。


SEED世界は設定だとビーム・サーベル同士では斬り結べないようですが、斬り結べるということにしています。てかそもそも撃ったビーム同士はかち合うのになんでサーベルは駄目なんだ……。
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