人の未来は光の中に(アムロ ジュドー ロンド・ベルinコズミック・イラ ルナマリアを添えて~   作:アママサ二次創作

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第4話 決別の叫び

「くっ、ジャミングが強すぎる!」

 

 自分の周辺の空域の索敵すら十分に出来ずにいるアスランは、焦りを感じていた。レーダーはまるで目隠しをされたような状態で砂嵐がかかっており、目視での索敵を行うしか無い。だがコズミック・イラのMSは宇宙世紀の全天周囲モニターに比べて視野が狭く、目視での索敵となると敵に遅れをとる可能性が高い。現に守備隊とおぼしき戦艦の対空砲火こそ突破できていたが、それにも先手を取られていた。

 

「なんとかエターナルやアークエンジェルに連絡を取らなければ……!」

 

 フリーダムとジャスティスが優れた性能を持つのは確かだ。しかし多数を相手取るためのマルチロックオンシステムが使えない状況で多数の敵との戦闘をするのはなるべくなら避けたい。

 更に考えたくはないが先程のダガーらしきMSの部隊から推測すると今自分が向かっているクレーターの守備隊には新型機が多数配備されている可能性が高く、また先程のような腕のパイロットがまだいないとも限らない。

 そんな中に単機で飛び込むのは、いくら自分でも無謀だ。例えミーティアを装備していても避けたい。だが、通信は一向に回復する気配すら見せないのだ。

 

「通信は駄目か……! くそっ……こんなところを襲われたらひとたまりもないぞ……」

 

 敵は、自分たちのレーダーや無線を何らかの手段を使って妨害している。この機に乗じて敵機動部隊が襲撃してくるのだろう。

 

 しかし、2機しかいない自分たちの連携を断ち多数で囲める有利な状況であるにも関わらず、敵の後続部隊は襲ってこない。先刻突破した艦艇の周辺にも機動戦力は見受けられなかった。先程の部隊を見る限りパイロットの問題であるとは思えないし、新型機の喪失を恐れているなら最初から投入してこないだろう。

 

 アスランは不可解に思える状況に首を傾げながらも、レーダーから目視や光学観測などに切り替えて索敵を続けた。

 

 

******

 

 

 ルナマリアは自分の知っているコックピットと異なる構造を持つ全天周囲モニターやリニアシートに感嘆しつつ、マニュアルを片手にMk-Ⅲの操縦法を再確認する。

 

「操縦法がそんな変わらなくて助かったわ。けどこのコックピット落ち着かないわね。生身で宙に浮いている見たい」

 

 全天周囲モニターに対するルナマリアの印象は、新人パイロットたちがみな一度は経験する思いだ。だが慣れてしまえば、それ以前の視野の制限されたコックピットにはとても戻れないのも確かである。

 

「武器は……なになに? ビームライフルにサーベル兼用のビームガンとサーベル兼用のビームキャノン、それに頭部バルカン砲? 割と普通だけど兼用の武装が多いわね。ビームライフルもいくつかのモードがある……でもザクみたいにエネルギーパック式だから無駄遣いは出来ないわね」

 

 それぞれの武装が独特のシステムをもちながらも、基本的にはインパルスなどとそんなに変わりがないことを確認して一安心する。手数もインパルスより多く、牽制の手段にも事欠かないだろう。

 

 無論ルナマリアは自分が射撃戦を最も苦手であることは自覚していたので、ライフルを保持しつつも左腕に装備したシールドからいつでもサーベルを発振させる事が出来るように用意する。いつでも格闘戦に入れるようにするためである。

 

「そういえば、なんとか粒子の影響でレーダーはあまりアテに出来ないんだったわね。けどアスランなら近くに来てるはず……」

 

 ジャスティスは4キロほど離れた空域で一度確認されていたが、ルナマリアはアスランがすでにすぐ近くに迫っていると確信していた。自分が先に補足し先手を取ればいけるかもしれない。

 彼女は、Mk-Ⅲのセンサーの性能がジャスティスのそれを上回っていることに賭けた。

 

 

******

 

 

「ん、あれは……? 1機だけなのか……?」

 

 遠方にわずかに見えた機影に、アスランは気を引き締める。MSの部隊が襲撃してくるかと思ったのだが、光学観測で発見できた敵は1機のようだ。

 

 (敵は1対1でジャスティスを葬れる自信でもあるのか……?)

 

さっきの新型ダガー以上の機体と言ったら、フリーダムやジャスティスのようなガンダムタイプしか考えられない。だが、通常のバッテリー動力機では核エンジン搭載機には、エンジン出力に由来する機体のパワーや武装性能の差もあって、パイロットの実力に相当の差がなければ太刀打ちできないことは明らかである。

 にも関わらず、敵のMSは1機だけだ。この状況になってもこちらの情報が伝わっていないとは考えられない。

 

 そこで、アスランはある考えに達した。

 

 (まさか地球軍がハイパーデュートリオン機関を実用化したというのか? いや、しかし……)

 

 だが、その考えはありえないとすぐに否定する。その技術を現在実用化出来ているのは最初に開発、実用化したザフト軍と、その開発データを入手した自分達だけのはずだからだ。地球連合ではそもそも核エンジンと別の動力の融合どころか、核エンジンすら実用化出来ているという情報はない。

 

 またそれと同時に、もう一つの疑問がある。果たして核エンジンやハイパーデュートリオン機関を実用化したところで、先刻のダガーが放ったような強力なビームを放てるとは思えないのだ。

 

「核融合エンジンを小型化したというのか……馬鹿な! ありえるはずがない」

 

 連合内部でも特に高い技術を持つオーブや大西洋連邦を持ってしても、発電用の大型の核融合炉すら完全に実用化することは出来ておらず、実現の目処も立っていない。

 それを他の国が完成させたどころかMSに搭載可能な程の小型化に成功しているとすれば、それは勢力間の均衡を崩す由々しき事態だ。

 野放しにしておけば、新たな戦乱の火種となるだろう。

 それだけは、なんとしても阻止しなければならない。アスランはジャスティスを更に加速させた。

 

 

******

 

 

「っ! センサーに反応っ!……上から!?」

 

 周囲に目を配っていたルナマリア機の上空から、ビームの光芒が降り注いだ。ルナマリアはシールドを使いつつ回避を行う。センサーの性能ではジャスティスをまされると踏んでいたが、アスランに先手を取られたようだ。アスラン相手に勝利するには先手を取らなければならないとセンサーに気を配っていただけに、先手を取られた衝撃は大きい。

 だが、ルナマリアは衝撃を受けている場合ではないと頭上から迫ってくるジャスティスに応戦しつつ、無線のスイッチを入れた。

 

「……アスラン、聞こえるなら応答して!」

 

 無線の応答は一呼吸おいてから帰ってきた。まるで信じたくないとでも言うかのように。

 

「その声は……ルナ!? ルナマリアなのか?」

 

 無線から聞こえてくるアスランの声は、動揺を隠しきれないものだった。

 

「ええ」

「ルナマリア、何故君が連合に!?……いや、いつザフトをぬけたんだ!?」

 

 アスランがルナマリアがいる部隊を連合のものだと勘違いしていることがわかったが、あえてそれを指摘することはしない。

 

「そんなことは問題じゃないわ。それより、あなたこそどうして脱走したの? 地位も出世も思うままだったじゃない。何が不満だったの?」

 

 そして、何故メイリンを連れて行ったの。ルナマリアは、それだけは口に出さなかった。出してしまえば、覚悟が揺らいでしまいそうで。

 

「議長がやろうとしていることは世界を滅ぼしかねない! だから俺は!」

「だからラクス・クラインに味方したというの」

「俺はただ世界を間違った方向に進めたくなかっただけだ! ルナマリア、君も議長のやり方に疑念を持ったからザフトをぬけたのだろう? だったら……!」

 

 アスランはルナマリアに答えながらもジャスティスにビーム・サーベルをもたせ、Mk-Ⅲに斬りかかる。

 

「私はあなたのようにラクスの私兵になるつもりは毛頭無い!」

 

 ルナマリアも応戦してビームキャノンを放ち、シールドから発振させたサーベルでジャスティスのサーベルを受け止める。

 

「何だと……!」

「他にも取るべき方法はいくらでも合ったはず! あなたは逃げたんだわ! あなたの立場なら内部から行動を起こすことも出来たのに!」

 

 この一言にアスランは言い返すことが出来なかった。ルナマリアの言っていることは、アスランにもわかるほど正論だったのだ。

 

「う……そ、それは……」

 

 それでも心中の動揺が機体の挙動に影響しないのはさすがといったところで、巧みに機体を操り性能でまさるMk-Ⅲ相手に後角以上に渡り合う。

 しかし、ライフルをしまってビームキャノン兼用のサーベルを引き抜いたMk-Ⅲに、パワーの差と手数の差が相まって徐々に押され始めた。

 

「サーベルがパワー負けしている!? だったらこれで!」

 

 アスランはサーベルがパワー負けしているとわかりなり正面から切り結ぶのをやめ、Mk-Ⅲのサーベルをサーベルで抑え込むと同時に胴体に蹴りを加えた。

 蹴りを受けたMk-Ⅲは引き飛び、月面へと落下していく。

 

「きゃああああっ! くっ、こんなことでぇ!」

 

 吹き飛ばされつつもスラスターを全開にして機体の落下速度を緩やかにする。ついで機体の足を使って受け身をとり、月面に着地した。着地するとすぐにスラスターを吹かして飛び上がるとともにサーベルを納刀し、再びビームライフルを構えて射撃を行う。

 アスランは無茶な体勢から受け身をとった上にすぐさま反撃に転じたMk-Ⅲの運動性に驚嘆の表情を浮かべた。

 

「なんて運動性なんだ!? あの体勢から受け身を取れるなんて……!」

 

 通常なら地面に激突する前にスラスターで無理やり体勢を立て直すところを、人間のように受け身をとって着地し、そのまま飛び上がってきたのだ。どうあやらルナの乗っている機体は従来のMSを超える運動性を保持しているようである。

 感心しつつも回避は怠らないアスランは、Mk-Ⅲのビームを避けながらも正面からビーム・ライフルとビーム砲を一斉に放つ。射撃に集中していたルナマリアは、この反撃への反応が遅れてしまった。真正面から放たれたビームがMk-Ⅲに迫ってくる。

 

「反応が遅れた!? っ間に合って!」

 

 回避するべくペダルを踏みつつ操縦桿を操作する。Mk-Ⅲはこの動作に敏感に反応し、その機動性で攻撃の回避を成功させた。

 

「避けられた! さすがガンダムね、インパルスやザクとは性能が段違いだわ!」

 

 反応が遅れたのに攻撃を避けられたのは何故か。

 その理由としては、Mk-Ⅲが近代化改修を施された際に、アナハイムの技術陣がバイオセンサーやサイコフレームなどのサイコミュ系の技術を使用したことが大きいだろう。

 通常の機体にはサイコフレームであれすでに古くなりつつあるバイオセンサーであれ搭載されるようなものではないのだが、エゥーゴの地球連邦への吸収によってすでにその役目を終えているMk-Ⅲには実験的意味合いもあってそれらのシステムが搭載されたのだ。そこには、この非常事態において少しでも備えておこうとしたアナハイムの整備士の心遣いもあった。

 

 更に、宇宙世紀のMSはコズミック・イラのそれと比べて、OSが非常に洗練されている。そのため機体の機動に無駄が無く、サイコミュの指示を受け取った機体が最適な方法で回避を行ったのである。

 

「お返し!」

 

 ルナマリアは避けきると、頭部バルカン砲と肩部のビームキャノンですぐさま弾幕をはった。ビームはともかくも、PS装甲にバルカン砲では有効なダメージは与えられないが、ビームと織り交ぜることで相手の動きを鈍らせる。

 2秒間連射し、機体をジャスティスの射線から逸らせる。そして操縦を続けながらも、再び無線に呼びかけた。

 

「世界の全てをラクスやオーブの主張に従わせようと言うの!? 力で抑えつけて!」

「この戦争を終わらせるためにはオーブやラクスの力がどうしても必要だった。だからオーブに戻った!」

「力が必要だった? 違うわ、ただあなたは『お友達』となかよしごっこがしたかっただけでしょうに……!」

「今のザフトはデュランダル議長の思うままに操られている。何かをやろうとしても潰されるのがオチだ! なら外から力で変えるしか方法が無いじゃないか!」

「落ちたわね、アスラン・ザラ! 軍人としての誇りさえも捨てたということか!」

 

 右手のサーベルとシールドから発振させたサーベルを駆使してジャスティスの脚部に装備されている小型ビーム・サーベルなどの攻撃を防ぎながらルナマリアは叫んだ。

 

 アスランほどの地位なら内部から行動を起こすことも出来たはずだ。実際前大戦においてラクス一派は内部で勢力を高めた上で離反している。それをそのまま内部の一大勢力として戦争の行く末に関わることも出来ただろうし、今回もそれをすることも出来たはずだ。

 他にも様々な選択肢があったにも関わらず、アスランが選んだのは『何の意思表示もせず軍から脱走し、敵軍に寝返る』という、ルナマリアにとって最悪の選択だった。それがどうしても許せず、彼の言葉の全てを否定してしまうのだ。

 

 自分たちは切り捨てられた。相談されるほど信じられてもいなかった。あれだけ一緒にいたのに、仲間なんかじゃ、なかった。

 

 (私達は……私はあなたを信じていたのに!)

 

「あなたはそれで満足かもしれない! でもそれは私達にとって『裏切り』以外の何物でもないわ!」

「確かに俺のやったことは裏切りでしか無い。だが、このままディスティニープランが実行されれば新たな戦いの火種を産む! それを黙って見ている訳には行かなかった! だから……俺は!」

「論点をそらしてばかりね。お話にならないわ!」

 

 アスランが鍔迫り合いを嫌っていることに気づいたルナマリアは、鍔迫り合いに持ち込むと見せかけて強引に弾き、サーベルで突きを加える。

 だがそんな見え透いた狙いがアスランに通用するはずもなく、アスランはわずかな動きでMk-Ⅲのサーベルの突きを避け、ジャスティスの全火器で至近距離から一斉射撃を加える。

 アスランとルナマリアの間には、機体の性能では埋められない『純粋なパイロットとしての技量の差』が存在していた。

 

「こんな至近距離から!? 正気なの!?」

 

 ほぼゼロ距離からの砲撃だ。これではルナマリアの搭乗するMk-Ⅲどころか、ジャスティスもただでは済まない可能性がある。

 だがルナマリアにそんなことを考えている暇はなかった。いくらMk-Ⅲの装甲が『ガンダリウムγ』というコズミック・イラにおいては圧倒的な堅牢さを誇る装甲であるとは言え、これだけ近くからの砲撃に耐えきれる保証は無い。

 

「っ!」

 

 ルナマリアは反射的にシールドを構えた。そしてその次の瞬間、攻撃が命中してMk-Ⅲのシールドが破壊された。シールドが破壊されると同時に、シールドの裏側にマウントされていた予備のEパックが誘爆を起こす。

 

 その爆煙にMk-Ⅲがすっぽりと覆われた。が、アスランは目を疑った。

 

「何っ……!? 馬鹿な、直撃のはずだ!」

 

 予想に反して爆煙の中に敵の双眸が浮かび上がり、続いて機体が飛び出して来たのだ。

 

「っ、右腕の装甲がやられたけど動作に支障はなし……。やっぱり私じゃアスランに勝てないの……?」

 

 ルナマリアは改めて自分とアスランの技量の差を思い知らされた。本体の損傷は右腕の装甲が黒焦げになっただけとは言え、シールドとそれに付属したサーベルを失い、もうあまり無茶な真似はできなくなった。ガンダムMk-Ⅲの性能を引き出せずにいる自分の未熟さが歯痒い。

 

(私とアスランじゃ技量に差がある……! けど……!)

 

 技量が自分を上回る相手に戦いを挑むことは無謀かもしれないが、信じてくれたブライトのためにも、ようやく目を覚ますことの出来た自分のためにも負けるわけにはいかない。

 しかし、このまま戦い続ければ自分には勝機が無いのも事実だ。

 

 目的の一つである『鹵獲』をしようにも、アスランにそんな隙があるとはとても考えられない。

 

(どうすれば……どうすればジャスティスを鹵獲出来る……?)

 

 彼女は必死に鹵獲に有効な手段を模索する。

 その時、マニュアルに書いてあったいくつかの情報を思い出した。マニュピュレーター内部に特殊な弾頭を装填された多目的ランチャーが内蔵されていること。そして、Mk-Ⅲのビーム・ライフルの特殊な機構。

 

 念のためにOSを確認し、いずれも使用可能であることを確認する。

 

「よし、これなら!」

 

 やるべきことは決まった。後は、アスランがうまく動いてくれるか。私がきちんとやれるか。それだけだ。

 

(きちんとやれるか? じゃないわね)

 

「やってみせる!」

 

 彼女は吼えた。サーベルの柄を構え、もう片方の腕にビーム・ライフルを構える。

 アスランはその動きを見逃さず、仕掛けられる前に仕掛けるとばかりにジャスティスにサーベルを引き抜かせ、Mk-Ⅲに向かって急降下させた。

 

 アスランはMk-Ⅲを串刺しにするつもりだ。コックピットから見ると、紅く丸い点が高速で迫ってくるように見える。しかし、こちらとて黙って落とされる訳にはいかない。

 

「……今っ!」

 

 タイミングを見計らったルナマリアは、ビーム・ライフルのモードを切り替えてジャスティスのシールドを構えている側へと放ち、ライフルを投げ捨てる。アスランはここまでMk-Ⅲのビーム・ライフルの攻撃をシールドで幾度か受けており、ここで回避に転じることはない。そう踏んでの攻撃だ。

 

 案の定、ジャスティスはそのビームをシールドで受け、そしてシールドごと左腕を吹き飛ばされた。Mk-Ⅲ用ビーム・ライフルの機能の一つである、残っているエネルギーを一射で放つ攻撃を行ったのだ。

 腕を吹き飛ばされたジャスティスは、速度を落とすこと無くビーム・サーベルを突き出してくるが、左手を失ったことでその動きが僅かにずれる。

 

「ここだあぁっ!!」

 

 急降下してくるジャスティスに対して、ルナマリアは無我夢中で操縦桿を押し倒す。Mk-Ⅲのビーム・サーベルが発振され、2機のビーム・サーベルが一瞬交錯する。

 

 その直前、ルナマリアは思わず目を閉じて神に祈った。

 果たして、左腕の損傷によってぶれたジャスティスのビーム・サーベルはMk-Ⅲの首元をかすめて地面に突き刺さっていたが、Mk-Ⅲのサーベルはジャスティスの頭部を貫いていた。

 

「なっ……!?」

 

 アスランは一瞬自分の身に何が起きたのかわからなかった。

 しかしモニターは問答無用でブラックアウトし、直後にジャスティスの頭部が爆発する。

 

「……や、やった……?」

 

 ルナマリアは思わず安堵の表情を浮かべる。が、すぐに表情を引き締め、間髪入れずにランチャーを発射しジャスティスの左足に命中させた。

 直撃した鳥もちはジャスティスの足と地面を完全に接着させる。

 

「動かない!? しかしジャスティスを失うわけには……!」

 

 ここでジャスティスが鹵獲されたら、敵にオーブ軍の機体に関する詳細なデータや旧クライン派の拠点に関する情報の全てが渡ってしまうだろう。

 しかし頭部は破壊され、脚部を固定されて動きを封じられた以上、鹵獲は避けられない。

 

 サブカメラで映った荒い映像の中では、ルナマリアがサーベルの柄をこちらに向け、更にビームキャノンもこちらのコックピットに狙いを定めている。隙がない。そして、迷いがない。下手に動けば、撃たれる。

 自爆も考えたが、今ここで死ぬわけにもいかなかった。

 

「く……投降するしか……ないのか」

 

 アスランは愛機のコックピットのハッチを開放し外に出た。ついで投降の意思を示すために両腕を上げる。

 ルナはその様子を確認すると、ラー・カイラムにジャスティスの鹵獲に成功したことを伝えた。

 

「……こちらガンダムMk-Ⅲルナマリア、敵の鹵獲に成功しました」

「ご苦労。とりあえず直掩部隊を向かわせる。ああ、それから……会話はすべてこちらで傍受させてもらった。すまない」

「いえ、裏切ってきたんですもの。当然です。出撃時に信用してくださったことに感謝します」

「……そう言ってくれると気が楽になる。ではスタークジェガンが到着し次第、君はアムロ大尉達の援護に向かってくれ」

「了解」

 

 ルナは通信を切ると、とりあえずうまくやれたことに安堵の表情を浮かべた。運で勝てたようなものだが、勝ったことに変わりはないのだ。

 ノーマルスーツのヘルメットを脱いで一息つく。アスランは暴れても仕方ないと判断したのか、手を上げたまま動く様子はない。

 

「ふう、ひとまず勝てたわね。Mk-Ⅲの性能に助けられたって感じだけど……」

 

(ジャスティスよりはるかに性能がいいMk-Ⅲをもってしても、私の技量じゃここまでに持ち込むのが精一杯なのね。悔しいけど)

 

「アムロ大尉達はフリーダムと戦っているって言うけど、大丈夫かしら?」

 

 出撃時の通信によれば、アムロたちはたった2機で最強と名高いフリーダムを食い止めていると聞く。そんな相手に量産型のMSで立ち向かうのは危険だ。

 

 ルナはアムロたちのことをあんじつつ、直掩のスタークジェガンが早く来ないかと待った。

 

 彼女は、アムロとジュドーが、ライフルもシールドも無い機体で彼女のかつての2人の仲間を押していたのを失念していたのだ。




Mk-Ⅲの武装詳細についてですが、シールド内臓のビーム・サーベルはビームガン兼用かつシールドに収めたまま発振させることが可能、ビームキャノンは大出力のサーベルと兼用となっています。またビーム・ライフルの設定を調べた所、残りエネルギーを一度に放出する機構があると記述があったのでそれもあります。持ち替えなしに使用可能な武装が多く、格闘戦の方が得意なルナには乗りやすい機体ですね。


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