人の未来は光の中に(アムロ ジュドー ロンド・ベルinコズミック・イラ ルナマリアを添えて~ 作:アママサ二次創作
ジュドーとルナマリアに事情を伝えられたアムロは、集合時間の前には制服に着替えて乗艦口の前に来ていた。
「ブライト司令、っ失礼しました」
角を曲がったところでブライトを見つけたアムロはすぐに声をかけるが、そこに参謀と見慣れない佐官がいることに気づき敬礼をする。
「ロンド・ベル隊MS隊隊長、アムロ・レイ大尉であります」
「第一教導大隊隊長ユウ・カジマ大佐だ」
アムロ・レイ。連邦軍の人間ならば誰もが知っているだろうその名前にユウはわずかに眉を動かすが、それ以上のことは言わなかった。個人的に興味はあり、また聞きたいこともあったが、軍務とは直接的には関係ない自分のことより、彼がブライトに呼びかけた内容を優先すべきだと考えたからだ。
「大尉、何か用か」
「自分も艦を離れてよろしいのですか?」
フォン・ブラウンに入港してからここまで、一切の連絡が外と出来ないため事態を異常だと判断した月軌道艦隊は、月全周のパトロールを一時的に取りやめ、フォン・ブラウン市の基地側を自分たち、反対側を経験豊富なロンド・ベル隊に任せるように要請してきていたのだ。
実際月軌道艦隊やフォン・ブラウン駐留艦隊は実戦経験が無い。そのため有事の際の対応力はロンド・ベルの方が圧倒的に上とも言えた。
「フォン・ブラウン市が直接攻撃を受けたため、月軌道艦隊が一時的に艦艇、MSを増やしてフォン・ブラウン周辺をパトロールしてくれることになった。今後のことは会談で決めることになるだろう」
「了解しました」
他部隊の佐官がいる場合には、パイロットと艦長として。それが友人である上司と部下の関係にある2人のけじめの付け方だった。
そうこうしているうちに、制服に着替えたルナマリアとジュドーがやってくる。ジュドーはアムロに言われたとおり、Zガンダムの記録と、解析が進んでいるところまでのインフィニットジャスティスのデータを端末に入れて持ってきていた。一方のルナマリアは、普段履き慣れたミニスカートではないため慣れない様子だ。
「……准尉、階級が上の者に会うときには自分から名乗れ」
いつまでも名乗ろうとしないジュドーにブライトがそう指摘すると、彼は慌てて敬礼をした。
「し、失礼しました。ジュドー・アーシタ准尉です。よろしくお願いします」
「ザフト軍ミネルバ所属のパイロット、ルナマリア・ホークです」
ジュドーの軍属には似つかわしくない雰囲気と、ルナマリアの所属にユウは違和感を覚えるが、ブライトが呼んだということは彼らこそが状況を説明する鍵になるのだろうと辺りをつけ、とりあえず自分も敬礼を返す。
「第一教導大隊隊長ユウ・カジマ大佐だ」
「ロンド・ベル隊主任参謀トマス・アーケン中佐である」
2人の階級にルナマリアは目を丸くするが、階級に興味のないジュドーの方は特に気にした様子がない。
「2名は本来ロンド・ベルの所属ではないのですが、所属が曖昧ですので一時的にロンド・ベル預かりとしています。部下のご無礼は変わってお詫びします」
「了解した」
参謀の説明に軽くうなずいたユウは、ブライトの方へと視線を向ける。それを見たブライトは、乗車して会談場所へと向かうことを伝えた。
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「……ありえない、と言いたいところだが、そうも言ってられないようだ」
「大佐の隊に関してはロンド・ベルで収容したパイロットが医務室で治療を受けている以外は確認されていない。恐らく、向こうに残っているものと思われる」
「……了解した。俺と部下の所属も考える必要があるな」
車に乗ってすぐ、ブライトはユウに対して推測される現在の状況を説明し、ジュドーとルナマリアが自分たちの知っている状況を補足する。まだ詳しい事を聞いていなかったトマスは驚きの声をあげかけたが、それは自分の仕事ではないとばかりに様々なことを考え始める。
すべてを彼が考えるというわけではないが、物資の確保にフォン・ブラウン市の防衛、隊の運営及びパイロットの補充、この世界に存在する組織との関係など、考える必要があることは多い。そうしたことに考えを巡らすとともに、他の参謀に役割を割り振るのが彼の役目であった。
「ブライト司令、MS隊に関して報告があります」
話が一段落ついたところで、車を運転しながらアムロが切り出す。移動用の車両に乗れる人数は限られており、また護衛に話を聞かれて不確定な情報を広まるのを避けたかったため、アムロ達の車にはアムロ、ブライト、ユウ、ルナマリア、ジュドー、トマスの6名しか乗っておらず、護衛は前後の車両に別れている。
「話せ」
「はっ。自分のνガンダムについてアナハイム側が実働データを加味した改修案が存在するので改修を行いたいと言ってきたため改修を許可しました。代わりに自分の乗機をデルタプラス、ジュドーをZガンダム3号機に搭乗させます」
「νガンダムの改修案、か? どういうことだ?」
νが急ぎで組み立てられたことはブライトも知ってはいたが、すでに改修案が作られているなどということは考えていなかった。何より、データが入ったのはつい先日のことであり、練られた改修案が作られるには早すぎる。
そう考えた結果、ブライトはアムロにまだ何か話すことがあることに気づいた。
「まだ何かあるな。続けろ」
「どうやらアナハイムの技術者の中で、われわれとジュドーとの関係と同じことが起きているようです。νの改修案の存在を認知しているものと認知していないものがいることや、行われていた試験機のテストに関する記憶に食い違いがあったためアナハイム内で会議を行った結果判明したと言っています。恐らく会談の際にアナハイムの代表者から説明があるかと」
「……そうか。フォン・ブラウン市内でも同様の状況が起きている可能性があるな」
「……」
アムロの言ったことの重大さにユウとトマスは深く考え込み、ルナマリアは絶句した。一方当事者であり少数派であったジュドーは、少し安心したようである。
「他に報告はあるか」
「νガンダムの改修について後日アナハイムに顔を出すように伝えられました。報告は以上です」
アムロからの報告が終わったことで車内の会話が止まり、先の全く見えない事態に重苦しい空気が漂う。すると沈黙に耐えかねたのか、最後列にジュドーと並んで座っていたルナマリアがジュドーをつついて話し始める。
「ねえねえ、この街すごくない?」
そう言いながら彼女は、窓の外を通り過ぎていく町並みを指差す。
「すごいって?」
「大きいってこと。どれぐらいの規模なの?」
「どれぐらいの規模って言われてもなあ。俺も詳しくないし……」
興味津々の様子で聞いてくるルナマリアに、ジュドーは首を傾げながら答える。ジュドーもフォン・ブラウンに来たのは一度きりであり、詳しいことは知らないので大きいということしか知らないのだ。そこでふとジュドーは、手元に持っていた端末の事を思い出す。フォン・ブラウン市内のここなら、ネットが繋がり検索できるはずだ。
「ちょっと待ってくれよ……」
ジュドーがそう言って端末を操作し始め、ルナマリアがそれを覗き込んだところで、前に座っているブライトから声がかかった。
「アーシタ准尉、ルナマリア君には端末を見せないようにしてくれ」
「え? なんでだよブライトさ、ブライト艦長」
「ルナマリア君は客人とはいえこちらの世界の人間だ。そうである以上、今情報を必要以上に伝えることは避けたい。今後どうなるかはわからないけどな。聞きたいことがあれば俺が答える。ルナマリア君も理解してくれるな?」
「けど――」
ジュドーはルナマリアを疑うというブライトの言葉に対し反論しようとする。彼女は敵に合流できたにも関わらず彼らに攻撃を加えていた。ジュドーはルナマリアとアスランの連絡を聞いていなかったため、最初にアムロとともに戦ったときの相手と今回の相手が同じだと思っていたのだ。何より、ルナマリアからは悪いものを感じなかった。
だが、そのジュドーの言葉を遮ったのは、彼に庇われていたはずのルナマリアだった。
「わかりました」
「い、良いのかよルナマリア! だって」
「聞いてジュドー。ブライト司令も聞いてください」
「何だ」
車内にいた全員が自分の方に耳を傾けているのを見て、ルナマリアは話し始める。
「ジュドー、最初あなたと戦った時、あなたのサーベルでインパルスのシールドを切断したでしょう?」
「そりゃそうだけど……」
「あれは、私達にとってはありえないことなの。インパルスのシールドは、核動力機であるフリーダムのビーム・サーベルでも十分に防げるだけの耐久力がある。でも、あなたの機体のサーベルは簡単に切断した。それに、Mk-Ⅲを操縦したときにすごく驚いたわ。モニターとか操縦系の完成度もそうだけど、エネルギーがインパルスの30倍以上の出力だった。フリーダムやジャスティスですらインパルスの10倍も無いわ」
「それがどうしたのさ」
何かを察した表情をする他のメンバーとは違って、ジュドーはルナマリアの説明から彼女が言おうとしていることをまだ理解できずにいた。
「だから、あなた達の世界の技術は私達の世界の技術よりも遥かに進んでるの。それを私に教えるっていうのがどういうことかわかる? それを知った私が逃げてザフトに戻ったりさっき攻めてきたエターナルに行ったりしたら大変でしょ?」
「……確かに大変だけどさ」
ルナマリアの説明で、ジュドーは彼女の言わんとしているところを理解した。自分たちはこの世界の人間である彼女とは知識や知っている、利用している技術が違い、それが漏洩することは少なくともこの世界に来た自分たちにとって良いことではないということなのだろう。
それでもジュドーは彼女から悪いものを感じていない自分の勘を信じていた。
そんなジュドーの様子を見かねたブライトが声をかける。
「准尉、彼女の扱いは捕虜ではなくあくまで客人だ。それにわれわれは彼女に情報提供を依頼する立場にある。そうである以上彼女は丁重にもてなさなければならない。今俺に約束できるのはそれだけだ。それ以上のことは今後の事を話し合った上で決める必要がある。准尉をアーガマに乗せたときとは状況が違うんだ」
「……痛いこととかしないでくれよな」
「それは約束する」
ブライトの言葉で、ジュドーは納得した。納得したことにしておいた。それにルナマリア自身が認めているのだ。自分がこだわるのもかっこ悪い。一緒に戦ってくれた仲間をそんな風に扱うのはジュドーは嫌いだったが、自分達とともに戦ったときより更に頼もしく感じるブライトの言葉は、それが軍としての在り様なのだと教えていた。
タイトルのつけようがない話を書きすぎな気がしてきました。