人の未来は光の中に(アムロ ジュドー ロンド・ベルinコズミック・イラ ルナマリアを添えて~ 作:アママサ二次創作
会談場所として指定されたフォン・ブラウン基地の会議室にブライト達が到着すると、すでにフォン・ブラウン側のメンバーとアナハイムの責任者が来ていた。また中にいた士官から基地司令と各艦隊司令代行も後5分ほどでやってくると告げられた。
ブライトがフォン・ブラウン市議会のメンバーに挨拶をしに行った一方で、アムロはアナハイム代表の2人から声をかけられる。2人のうち知っている相手、オクトバーからもう一人を紹介される、という形であるが。
「アムロ大尉、こちらアナハイム・エレクトロニクスフォン・ブラウン支部代表取締役アルマス・ワーランさんです」
「アルマスです。よろしく」
「ロンド・ベル隊MS隊隊長アムロ・レイ大尉です」
アムロは差し出された手を取りアルマスと握手を交わす。アルマスは大柄な体格に角張った顔立ちと、軍で鬼軍曹をしてそうな見た目をしている。実際後ろから所在なさげにアムロ達の方を伺っているルナマリアは、その見た目に若干怯えているようだ。
「私は個人的にだがサイコフレームの研究に携わっていてね。君の引き起こした現象についても聞いている」
「……そうですか。しかしあれは……」
自分が狙って引き起こしたものではない。
アムロがそう言おうとすると、アルマスはわかっていると言うように頷く。
「もともとあれらはわかっていることの方が少ないようなものだ。グリプス戦役時のZガンダムや第一次ネオ・ジオン抗争時のZZガンダムはサイコフレーム無しで異常なエネルギーを発生させたこともあるとデータからもわかっている。だから君がすべてを理解しているとは思ってはいないが、礼を言っておきたいと思ってな」
「礼、ですか?」
アムロがそう不思議そうに聞き返すと、突如アルマスが、彼に向かって頭を下げた。オクトバーが驚いているあたり、彼も何も言われていないのだろう。
「地球を救ってくれて感謝する」
「……それが、我々の任務でありましたから」
あくまで軍人であるがゆえの行動であると。アムロはそう答えた。アムロとシャアの関係など、人に言って伝わるものではない。
だが、アルマスにはアムロに礼と、そして謝罪をする理由があった。
「いや……ネオ・ジオン軍のMSギラ・ドーガ。そしてネオ・ジオン軍総帥シャア・アズナブルの乗機サザビーを製造したのは、われわれアナハイムなのだ」
そうはっきり言ったアルマスにアムロが驚きの目を向ける一方で、オクトバーはやはりか、という目を向けた。やはりアナハイムはやっていたのだな、という思いと、愚直なこの人の事だから、そんな事もはっきりというのだろうな、という思いが同時に沸き起こる。まさにオクトバーの感じているアルマスの人柄が現れた行動だった。
「そう……ですか」
「怒らないのだな」
「アナハイムはもともとそういう組織なのでしょう? 怒るというより呆れの方が強いですよ」
「耳が痛いな」
一方のアムロは、冷静な言葉を口にしながらもショックを受けていた。怒りの声を上げないのは、怒りをショックが上回っていたからだ。
シャアに言われた言葉。『地球に住む者は自分たちの事しか考えていない』『ならば今すぐ愚民どもに叡智を授けてみせろ』。彼の言ったことは、ある意味では正しいのだろう。
『地球に住む者』が自分たちの事しか考えておらず、愚かなのではない。
きっと『人間という存在』そのものが――。
「だからこそ、世界に人の心の光を……か」
人間が愚かであり、地球を破壊すると言ったシャアに対し、自分が咄嗟に吐いた言葉。果たして、人はそれで変わるのだろうか。
あの男のように人類に絶望し、可能性を潰すという形で先に進めようなどとは考えていない。だが――。
考え込むアムロに対し、アルマスは言葉を繋ぐ。
「その上で約束する。我らアナハイム・エレクトロニクスフォン・ブラウン支部は、人々のために尽くす。この状況ではフォン・ブラウンの人々のために。そしてもし戻ることが出来たのなら、すべての人々のために。私はもともと、そのためにアナハイムに入ったのだからな」
「……アルマスさん……」
彼の言葉は、失望に染まろうとしていたアムロの心に響いた。
こういう人もいるのだ。臆面もなく『人のために』と言えるような者が。それは、アムロの迷いを打ち砕く言葉だった。
(シャア。俺は貴様のようにはならんぞ。人間はきっと、進むことができる)
「……感謝します。しかし、そうした話は連邦軍司令官とフォン・ブラウン市の代表に伝えていただければと考えます」
「ああ、そうだな。研究者として君の話を聞いてみたいが、またの機会としよう。では」
そう言ってアルマスが離れていく一方で、アムロはオクトバーからデータの入った端末を受け取る。
「これは……νガンダムの改修案だな」
「そうです。すでに改修は始めさせていますが、目を通しておいていただきたいと思いまして。しかし……よく目を通す前に許可されましたね」
「νガンダムの完成度は予想どうりのものだったからな。あなたは俺の求めるものも理解してくれているようだしその点に心配はない。それに……俺はパイロットだからな」
「は?」
説明不足とも言えるアムロの言葉にオクトバ―は疑問の声を上げる。
「俺はパイロットしか出来ないからこそ、そのための機体は万全なものにしておきたいんだ」
「そういうことですか。許可感謝します」
「ああ。サイコミュの調整は時間が出来たときに顔を出す」
「わかりました。それと、チェーンさんの手が空いているのであればこちらに出向させてもらえますか? 彼女は私達よりあなたのことを理解しているようですから」
事実を知らずに尋ねるオクトバーに、アムロは寂しげに笑ってみせる。
「ああ。彼女は戦死したんだ……他にロンド・ベルに技術士官はいない。俺が今日明日中に目を通して要望を送るよ」
「は、え?」
技術士官が戦死、という説明に、そして何よりチェーンという自分の会話した人間が死んだという事実に、オクトバーは間の抜けた声を出すことしか出来ない。
「そういうことだ。これは借りていくぞ」
「え、ええ」
端末を持って席につくアムロを、オクトバーは呆然と見送ることしか出来なかった。彼はチェーンと親しげな様子だったにも関わらず、彼女の死からたった数日であのような落ち着きを見せている。自分ならば、どれだけの時間があれば立ち直ることができるのだろうか。
だが、同時に彼は理解していた。仲間の死をすぐに受け入れ、自分の任務を遂行しなければならない。それが彼ら軍人というものなのだ。
******
アムロが席についてすぐ、基地司令や各艦隊司令代行がやってきて会談が始まった。会談といってもそれぞれが持っている情報をすべて共有し、現状どんな事が起きているかを確認した上で、それぞれにどのような対策を行うかを話し合うことである。
まず現在フォン・ブラウン市が置かれた状況については、それぞれが各サイドや他基地、月面都市、地球との連絡や定期便がすべて途絶えている事を確認した上で、月軌道艦隊とロンド・ベル司令であるブライトから自分たち以外の未知の勢力が存在していることが説明された。
ロンド・ベルからはフォン・ブラウンにたどり着くまでの戦闘と先刻のロンド・ベル防衛戦について詳しいことが説明された。本来なら軍事行動に関して民間人であるフォン・ブラウン市側に説明するものではないのだが、この非常事態においてすべての組織の垣根を取り払って協力することが会議の最初に確認されていた。
一方月軌道艦隊からは、転移後のミノフスキー粒子が存在しない宙域で性能を遺憾なく発揮したレーダーによって発見された未知のMS、そして月面の施設について説明が為された。超遠距離望遠による光学映像によって出されたMSの画像はジム系統やジェガンに似たものであったものの、既知のどのようなMSのとも違うということが明らかになった。
また、その機体がこの世界のダガーという機体であることがルナマリアから説明された。
続いて、ジュドー、ルナマリアの順で尋常ではない事態が起きている事を示すためにそれぞれの事情が説明される。上官への名乗り程度なら暗記させられたものの、普段の上官への話し方は全くと言っていいほど身についていないジュドーの説明は遅々として進まなかったため、彼には特別に敬語無しで話すことが許された。
またルナマリアの説明に合わせて、鹵獲したインフィニット・ジャスティスの情報も開示された。その中には、彼らの知らない戦闘の記録であったり、機体のデータが入っていた。
まだジャスティスのデータベースの抽出は出来ていないものの、軍関係者やアナハイムのMSに携わっている人間にとっては、『核分裂型の原子炉で動き』『単体でジェガンの3倍以上の重量を持つ』機体という時点で自分たちとは全く異なる技術体系の機体であるということがわかった。
「なるほど。つまり我々は我々のものとは完全に異なる世界に何らかの理由で来てしまい、そこには我々の世界と同じような太陽系があり、すでにこの世界の人間が文明を築いて宇宙に進出しており、戦争も行われている、と。情報が確かであるなら信じざるを得ないが……なんとも奇妙な話だな」
それぞれからの情報が出揃ったところで、月軌道艦隊司令代行であるクラックス大佐が呟く。それはこの部屋にいるすべての人間が言いたいことであった。
「ノア司令」
「はっ」
「ルナマリア・ホークとジャスティスとやらのパイロットはどう扱うつもりだ」
基地司令であるカリス中将がブライトに向けて尋ねる。現在この世界に存在する地球連邦軍における最高階級者であり、続いてブライトと各艦隊司令が大佐として準最高階級者となる。
「彼らはいずれも戦闘の末に捕らえたものではありますが、いずれの組織も我々と敵対しているとは断定できません。我々はこの世界に生きる者にとっては突如として現れた異物です。また、いずれの組織との間にも何らかの条約は結ばれていません。であれば、2名は捕虜ではなく監視下においた上で情報提供を行ってくれる協力者、もしくは客人として扱うのが妥当かと考えます」
「ふむ。各人はどう思われる? フォン・ブラウン市代表並びにアナハイム代表の方々にもお聞きしたい」
カリスが尋ねると、部屋のあちこちでそれぞれに相談を始める。それにジュドーとルナマリアは不安げな様子ではあるが、アムロがそれを抑えていた。
しばらくしてフォン・ブラウン市側から発言が始まる。
「私はノア大佐のおっしゃる扱いで良いと考えている。また特例として彼女を出撃させたことについてだが、軍での通例の処罰がどのようなものであれ、彼女を我々の一員として扱うことを検討していく必要があると思う。我々はこの世界では、たしかに大佐の言うように異物だ。だが彼女の話を聞き人となりを信ずるなら、同じ人間である。技術の漏洩など注意すべき点は多数あれど、彼女が我々の仲間として活動するというのは、この世界の他勢力に対して『我々が意思疎通できる相手であり、人間である』という証明になる」
「つまり彼女をプロパガンダとして扱われると?」
「結果として、だがな、無論彼女の意思を尊重すべきではあるが、彼女の意思が先程の戦闘のようにパイロットとして戦うことなどにあるのであれば、それを前向きに検討すべきである、ということだ」
そう言うフォン・ブラウン市長の発言に対し、月軌道艦隊司令が声を上げる。
「私も同感です。ですが、そのためには懸念事項が多数あるということは理解しておいていただきたい。MSは軍事機密の塊であり、それは戦艦についても同様です。彼女は本職をパイロットとしているようですが、仮に彼女がそれを志望してもみだりに任せられるものではないでしょう。かといって工場の勤務のような労働であれば、客人としてもてなした方が相手の印象も良い」
「そうした話をするのであれば、彼女には退出してもらった方が良いでしょう。本人の前で便利なものの様に扱う話をすべきではない」
続く駐留艦隊司令代行の言葉を受けて、カリスがその旨を支持し彼女をジュドー、アムロと共に退席させようとしたところで、会議室の扉が開かれる。
「司令!」
「何事だ! 会議中であるぞ!」
息を切らして駆け込んできた士官は、息を整える間も惜しいと大慌てで報告する。
「フォン・ブラウン市上空に高熱源反応あり! 同時に光学カメラで異常を確認! 映像を会議室に回せとの基地司令代行の指示です!」
「……表示させろ」
「はっ」
士官が慌ててモニターを操作すると、会議室の大型モニターに光学カメラによる映像が映し出される。そこには、緑味がかった暖かな光が広がる様子と、そこから染み出す巨大な構造物が映っていた。
何が来るかな~、何が来たかな~
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