ほとんど有害   作:ryanzi

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最初の目的地に到着

『宇宙は大きい。むやみに大きい。言っても信じられないだろうが、

途方もなく、際限もなく、気も遠くなるほど大きい。

薬局はものすごく遠くて行く気になれないという人もいるかもしれないが、

宇宙にくらべたらそんなの屁でもない。

そもそも、かの銀河精神に見捨てられた惑星アツミには薬局はごまんと・・・』

 

最近の銀河ヒッチハイクガイドのまえがきはこんな風に始まる。

なお、惑星アツミとは実に不思議な星だった。

名前はみんな知っているのに、銀河史の表舞台ではあまり活躍しないのだ。

クリキット人の引き起こした戦争にも巻き込まれなかった。

そんな田舎の惑星だが、ちょっと都会の惑星チタよりも実のところガイドにおける記述量は多い。

あと、四つ葉のクローバーの発祥の地でもあり、それはどの宇宙種族の記憶にも刻まれている。

 

「・・・たったこれだけ?」

 

そんなことはともかく、環いろはは愕然としていた。

自分のいた地球に関する記述が『ほとんど有害』だけなのだから。

 

「う、うん・・・編集長に刈り込まれちゃってね」

 

フォードはばつが悪そうに言った。

 

「た、確かに戦争とかはあったし、環境問題もあったけれど・・・」

 

「えっと、そういう問題じゃない。

戦争やら環境問題は宇宙じゃありふれてる。

どこかの専門家が概念ゴミ箱に放り込んじまえというくらいにはね。

イギリスのクリケットという形で残るほどね。

でも、君のいた地球はとんでもない危険が潜んでいたんだ。

まあ、地球人の大半はそれすら知らずに、その危険で滅んでしまった」

 

「そうだったんだ・・・それで、その危険って?」

 

「魔女って呼ばれる怪物さ・・・その元に関しては知らないほうがいい」

 

フォードの真剣な面持ちから、いろはは聞かないことにした。

おそらく、かなりショッキングな真実であったのだろう。

 

「・・・まあ、宇宙は君のいた地球よりかは比較的安全さ。

でも・・・いろはさんの話が通じないような人たちもそれなりにいるけど」

 

「フォードくんがいてくれるなら、どんな場所でも大丈夫だよ」

 

正確に言えば、フォードがいないとどうにもならなかった。

今や死ぬことすらも彼から許されていなかったのだから。

 

「・・・ねえ、この船ってこれからどこに行くの?」

 

「宇宙の中心だよ。そこでちょっと腹ごしらえと行こうじゃないか」

 

「宇宙の中心⁉」

 

二人をこっそり乗せた宇宙船が超空間を抜け出す。

船の前方には巨大な構造物が立ちはだかっていた。

その周囲を公転している看板にはこう書いてあった。

 

SUSHI RESTAURANT

 

その構造物に関して、銀河ヒッチハイク・ガイドにはこう記述されている。

 

『・・・かつて、宇宙の中心ではビッグバン・バーガーバーが経営されていた。

しかし、数ある地球のいくつかが発祥の食文化が浸透したことで、そのバーは倒産した。

バーの倒産により、宇宙経済は十日間の氷河期を迎えたが、すぐに回復した。

すぐさま、スシ・レストランが開業したからだ。

そのレストランでの公用語および公用文字はエントロピアのものが用いられている。

ただし、彼らはいっさい経営に関わっていないので、あなたが人権派でも安心して食事できる』

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