サモナーがダンジョンにいるのは間違っているだろうか? 作:アパオシャ
無事にオラリオに入った二人は、まずカジノへ向かった。
もちろん、彼らがギャンブル中毒と言うわけではない。彼らに足りないのは資金。そこでカジノ。
普通なら金に困ってカジノへというのは破滅へ一直線なのだが、彼らには普通の人や神の力を封印した神には見えない存在がついていた。
その名はアガリアレプト。かなり偉い悪魔で、どんな謎も瞬時に解明する力を持ち、ルーレットでは負けなしとなる。
「ああ...何で三回も一点賭け成功するの?私何か悪いことしましたか?」
顔を真っ青にしぶつぶつと呟くディーラーが、涙目で帰ってと懇願するが左門くんはわざとらしい惚け顔、いわゆる、ヘブライ語しかわかりませーんモードで煽る。
もちろん、そんなことしていたら柄の悪い男たちが集まってくるが、ゾロアスターの悪魔、
サルガタナスは鍵開けや透明化、瞬間移動を使いこなし、上司のネビロスより百倍荒事に強い悪魔と左門くんに称される悪魔。
第一級冒険者さえも一方的にボコれるポテンシャルをもつ悪魔にモルド...ではなくチンピラが勝てる道理は無い。
そんなこんなでたった四回のルーレットでカジノを経営難にしたアンリファミリアの面々(ふたり)は、種族を問わず数多の視線を背にその場を後にした。
「では、左門様。私たちはこれで失礼します」
「いやあ、これでレティっちに叱られずに済むよ」
「帰りにナッキー様を誘ってスイーツなんてどうですか?」
「いいね!じゃ!」
そういうとサルガタナスとアガリアレプトは瞬間移動で帰ってしまった。(ちゃっかり一億ヴァリス持って)
このように、召喚術に優れた左門くんでも強い悪魔を思いのまま操ることができず、たまに勝手に帰ってしまう。
本来、そういった偉い悪魔たちは左門くんに協力する義理など無いのだが、特訓の際に容易く自分達を召喚した左門くんを気に入っているのか、大抵のことは協力してくれる。
「なんや、あれ...」
同日、夜
「ロキ」
「わかってる。カジノの件やな?」
「ああ。何でも有り金のほとんどをふたりに持ってかれたらしいね」
「せや。うちもその場に居合わせとったんや。そしたらな?まるで何かを聞いてたようやった。何もないとこにいる何かに」
「フム。では僕も調べてみるからそっちも頼んだよ、ロキ」
ここは黄昏の館。オラリオで最強の一角を占める探索系ファミリア、ロキファミリアのホーム。
そこの団長室での会話。その話題はもちろん、左門くん。彼も知らないうちに、ヤバイ相手に目をつけられていた。
ほな、とロキが口にした瞬間、話し相手の団長、フィンの親指が疼き始めた。
それはフィンの危険を察知する直感の力。
親指に従い、フィンはレベル6の真価を発揮し窓から飛び降りる。神が落ちれば送還確実な高さだが彼の耐久ならば少し痛い程度で済む。
「なあ、ロキ。今非常に興味深いことを聞いたのだが、カジノへ行ったらしいな?」
扉に手を掛けていたロキは扉の前から聞こえる声に固まる。
その声は彼女にしては低く、怒っていることが容易に想像でき、ロキの手、いや全身が震え出す。
「じょ、情報収集の為にな?なんかうちの勘がビビってなってな?そんでそんで...」
震える体に鞭打って、扉を開けさせまいと踏ん張るロキだが、怒れるハイエルフには意味がない。
「ところで、ファミリアの資産が大幅に紛失する事件があって、100万ヴァリスほど金庫から無くなっているんだ。そして金庫室から出てくるロキの姿をラウルを始めとする数人が目撃している。さて、言い訳を聞こうか」
バレている。そう悟ったロキ。
今は扉を死守しているが、いくら魔導師とはいえ冒険者に敵うわけ無いロキは、頼れる眷属、団長を頼ろうと部屋を見渡したが、ロキの他に誰もいなく、何故か窓が開いている。
「アイズさん!空から団長が!」
奇跡的に聞こえた妖精の叫びがロキの希望を奪った。
黄昏の館。そこに生える木は、禁酒令を出されたぼこぼこの神が生る御神木としてロキファミリアの団員には有名だとか。
オラリオの経済の一端を支えるカジノの大事件は、勇者も無視できません。