蒼穹の絆 -Infinite Stratos meets FAFNER in the Azure-   作:フィアネン

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第3話

人工島付近の小さな山。そこで見つけた広い場所に怜央は降りる。学園寮に近く、 誰にも邪魔されない場所。そこで彼はISを解除し、待機状態である小さな竜を抱き締める。

 

「苦しかった…。やっとお前と話せるな、ファヴ。」

〈そんなに気を張る必要はないのではないか?〉

「いつ後ろから刺されるかわからないからね。平和過ぎるのがかえって不気味だよ。」

〈平和ならいいではないか。そこのどこか不満なんだ?〉

「不満っていうか…ただ怖いんだよ。誰がいつ俺の事を狙ってくるか。いつお前を奪われるか、いつお前に乗れなくなるか…。考え出したらキリがない。」

〈私だけに吐き出すのも、それらが原因か?〉

「こんな事、誰にも話せない。余計な事を話したらまた、居場所を失う。お前も知ってるだろ?俺が家を失って転校した先であった事。どこ行っても、中学になってもそれは変わらなかった。」

〈だったら、最初から居場所なんて必要ないと?〉

「俺にはお前が居ればそれでいいよ。お前と話せれば、それで。」

〈………。ところでだ、怜央。今回は6人だ。〉

「わかってる。歩兵4人、IS2体だな。」

 

怜央は戦闘モードへ思考を切り替えると、空から声が聞こえてくる。

 

『要怜央、あんた代表候補になったってね。お国としちゃあそれで守るつもりだろうけど、あんたは色んなとこに喧嘩売り過ぎたんだよねー。』

『まあ、前の奴らはそれはまあお粗末だったらしいけど、あたしらはそうはいかないわよ。』

 

「どいつもこいつも同じ事ばっかり…。」

 

怜央は立ち上がり、ファヴを前に差し出す。すると彼の身体が緑色に発光し、それが途絶えると彼はそこには居なかった。

 

『何!?』

『あいつは何処に行った!?』

 

4人の歩兵も円陣を組んで自動小銃を構えるが、周囲のどこからも怜央の気配を感じられていない。僅かに静寂の時間が訪れる。しかしそれも、直後に歩兵からの悲鳴によって静寂は破られた。

 

『な、何だ!?』

『おい、アレを…!』

 

一機のリヴァイヴが指差した先には、アンカーのような形状のモノで身体を串刺しにされ、宙吊りになっている4人の歩兵がいた。だが、これだけでは終わらない。

何故なら突如、その死体が翡翠色の結晶に覆われ、砕け散って消滅したのだから。

 

『な、何よアレ…!?』

『あたしに訊かないでよ!こんなの、報告にな―』

『ちょっと、どうし…ひぃっ!?』

 

会話を途中で止めた僚機に疑問を持ったリヴァイヴはそちらを向く。そこには紫色の槍に胸を貫かれた僚機が居た。錯乱状態になった彼女は僚機に向けてガルムを乱射するが、それは全て僚機の肉体に当たり、血飛沫が上がるだけ。過呼吸になりながら弾の出ないトリガーをガチャガチャと鳴らすが、目の前の状況は変わらない。

そして、その槍が上下に開くと同時に貫かれていた身体はISごと結晶体に覆われ、砕け散った。

 

『あ、ああ…助け』

 

全て言い終える前に、彼女は巨大なマニピュレータに掴まれて結晶体に覆われていった。それが砕け散ると紫色のナニカはその巨大な腕を下ろし、脱力をするかのようなジェスチャーをとる。

 

「これでやっと、明日も生きられる…。」

 

最早異常とも思わなくなった、ある種の日課。怜央は安堵の声を漏らしたのだった。

 

 

 

 

 

試合があるといっても、怜央は普段と変わらない。午前中は勉強し、放課後にはISに乗り、真夜中は一人で平穏な時間―たまに襲撃は来るが―を過ごしていた。

彼としては、本当に何の変哲もない日常だった。

そんなある日の夜、普段は窓から外へと出るのだが、それは既に楯無によって対策されていた。

 

「あら、また外に出るのかしら?深夜の空の散歩でもやってるの?」

「…まあ、そうなんじゃないんですか。」

「その物言いは相変わらずねぇ…。ねえ、たまにはお姉さん、怜央君の身の上話でも聞きたいんだけど、どう?」

 

窓枠に腰掛けて訊ねる楯無。怜央も強行突破は考えていないのか、椅子に座って返答する。

 

「聞いたって何も面白くありませんよ。」

「それを決めるのは私。何も話してくれなきゃそれすらわからないわ。」

「思い出も何もないのに、何を話せばいいんですか。」

「そうね…。例えば、ISに触れるキッカケとか、どう?」

「………。たまたま入った廃工場に、ISが何故か放棄されていた。それに触れたら、何故か起動した。それは”博士”の仕組んだ事で、俺は博士からISの事を叩き込まれた。それだけの話ですよ。」

「”博士”って、篠ノ之博士の事?」

「いいえ、男の人でしたよ。」

「名前はわかる?」

「俺も知りたいくらいですよ。」

「いつから乗り始めたの?」

「中学1年の夏から。」

「この事を知ってる人は?」

「博士が模擬戦に連れてきた人と、母だけです。」

 

(妙に素直に言うわね。これだけの情報には何の価値もないと踏んだのかしら。)

 

「それなら、あなたのISはその期間に製造されたって事?」

「製造?あー、まあ、そうなるんと思います。」

「何?歯切れ悪いわねぇ。その感じ、何か特別な事でもあったの?例えば形態移行したとか。」

「特別…そんな綺麗なモノじゃないですよ。もういいですか?日課を崩したくないので。」

 

怜央はそう言うと徐に窓へと歩く。楯無もこれ以上彼から話を引き出せないと踏み、窓枠から身を引いた。怜央は窓枠に足を掛けると、そこから躊躇いなく飛び降りる。

 

「ち、ちょっと怜央君!?」

 

楯無は窓のサッシから身を乗り出すが、直ぐオレンジ色の光と共に黒い大きな影が飛び去るのを見て、僅かに安堵した。だが、同時に彼に対する不安要素の懸念もあった。

 

(多分、どんなに茶化してもあの子は絶対に口を割らない。しかも、ある程度情報の重要度を理解してる。どんなに口を割らないといけない状況になったとしても、彼は―)

 

 

 

 

 

トーナメント前日の日曜日、怜央は自身に課せられた義務―週一回の倉持技研への出向―を果たしていた。と言っても初日という事もあり、簡素な検査のみに終わったが。それが終わると、怜央は話を切り出す。

 

「ところで、篝火(かがりび)さん。俺と同じ日本の代表候補の子が、ここの支援を打ち切られたって話でしたけど。」

「え?ああ、その事。もしかして君、更識さんから聞いたわね?」

 

ISスーツの上に白衣という何ともミスマッチな格好をした篝火ヒカルノ―ここ倉持技研第二研究所の所長を務める―はモニタから目を離し、怜央の方を向く。

 

「上からの命令なんだよ。現行の第三世代機より男性搭乗者の為の機体の開発、未知の新型ISの解析を優先させろってさ。」

「無意味に優遇されてますね、彼。素人が専用機を貰った所で何も出来ないのに。」

「案外キツい言い方するねぇ。まあ半分くらいは同意するけどさ、彼って千冬さんの弟君なんでしょ?それだけで自然と内外からの期待値ってのは上がるもんだよ。姉が姉なら弟もって。それに、何で弟君や君がISに乗れるのかを調べるのも、私らの優先的な仕事だし。」

「でも、筋を通せないのは信用されませんよ。事に相手は更識の人間ですし、あんな無下にしてよかったんですか?」

「妙に更識さんに肩入れするね、君。もしかして、何か言われたりした?」

「向こうが勝手に話しますからね、知らなくてもいい事を。身に覚えのある事ならともかく、身に覚えのない事で恨まれる覚えはありませんから。」

「でも、頭の固い上をどう動かすつもり?あいつら、並外れた固さだよ。」

「俺の機体データを取れないとなれば、真っ先に声を上げたのにって倉持は世界からもバッシングを受ける。簡単ながら、かなり痛いポイントだと思いますけど。」

「それは確かにそうだけど…本気でやるの?」

「『何もしなかった癖に』。あの人の言葉が気に入らなかっただけです。」

 

 

 

帰りの車の中、ふと外を見ると海が広がっている。そういえば元の家も海の近くだったなと思いながら、怜央は目を瞑る。今日くらいは静かに過ごせるか、そう考えていたが―

ガシャン、バン!!と大きな音がし、車が大きく揺れる。それが何かと思えば、車の直上に一機、周囲に3機。都市迷彩カラーのリヴァイヴが隊列を組んで車を囲んでいる。

 

「要さん、少し揺れますが…っ!」

「必要ありません。俺が迎撃します。」

「ちょっと要さん!?何を!」

「適当な近くに止めておいてください。市街地近くだと騒動になりますから。」

 

速度が出ているにも関わらず車の扉を開け広げ、怜央は車外へと躍り出る。

 

「ニヒト。」

 

車の後方で翡翠色の輝きが迸り、紫色のIS…ファフナー・マークニヒトが出現した。

その時の運転手は、運転に必死だった為にその時の事を詳しくは知らない。だが、僅かに見えた出来事は、次のようだ。

ファフナーは背中から赤いレーザーを放ち、リヴァイヴのターゲットを全て引き受けると、沖へと誘導。そこでの戦闘は遠すぎて確認が出来なかったが、途中からスラスタの光が一つ、また一つと消えていくのが確認できた。それから程なく帰還したファフナーは、その姿が人型のそれとは大きく崩れていた。異様に細い胴体に、その上に乗っているかのような胸部。そして、肥大化し地面にまで付きそうな前腕、それに相応な巨大なマニピュレータ。そこに握られているのは、ファフナー身長以上は間違いなくある紫色の槍。何より目を引くのは、機体のいたる所にアクセントとしてある緑色のクリアパーツに、生身の下顎すら見えないオレンジ色のクリアパーツで構成された頭部装甲。パッと見て、ただの異質な全身装甲のISに見える。だが、確かにその機体には異常な所があった。

 

(人は…何処に乗っているんだ?)

 

そう、ファフナーは明らかに”中に人が乗れる形状をしていない”。肩部と胴体ブロックを繋ぐフレーム、脚部や各部関節を繋げる円柱状のフレーム、そして人が乗る事を考慮していないかの如く斜めに切られた関節。外見だけ見れば2mより少し大きい程度のロボットにしか見えない。

そんな運転手の疑惑も他所に、怜央本人は地面に発生した緑色の円型フィールドから浮かび上がり、機体は逆に沈んでいく。

 

「お待たせしました。」

「要君、あの機体らはどうしたんだい…?」

「消しました。…早く戻りましょう、この事を報告しないといけないので。」

 

車に入る怜央は、少し疲れた様子だった。だが、それより『消した』の一言…それに運転手は不気味な感情を彼に抱いていた。

 

 

 

 

 

「…つまり、ファフナーの解析後に突然襲われたって事ね?」

「はい。」

「車で送迎されている時、4機の所属不明機のラファール・リヴァイヴと戦闘が発生。その全てを撃墜した…これで合ってるわね?」

「はい。」

「でも…本当に撃墜したの?撃墜したのなら、そこに機体と搭乗者が残るはず。それなのに、何で機体の破片すら残らないの?それにパイロットは何処へ?」

「回収されたんじゃないですか?撃墜以後は俺にも何も解りません。」

「運転手に聞いたわよ。あなた、襲撃の時に車から飛び降りたらしいじゃない。もしかして襲撃される事がわかっていたんじゃないの?」

「こっちは奇襲された身ですよ。いつ襲われるか、そんな事俺が知りたいくらいですよ。」

「…ごめん、こっちも口調が強くなっていたわね。こうなる事は何となくわかっていたのに。あなたの出向に関しては、こっちもISによる警護をつけるようにするわ。でも、貴方ももう少し行動は控えてね。もしそれで怪我をしたとか言ったら許さないから。」

「…そうですか。」

 

(普段は一人の時を狙ってきてたのに、最近は節操がない。俺の立場が変わって、なりふり構えなくなってきたって事かな。)

 

(普通、奇襲を受けて車から飛び降りてまで迎撃をするなんてことは考えない。つまり彼は、こういう襲撃自体に場慣れしている可能性が高いわね。)

 

(慣れていくしかないか。行動も控えないと…。)

 

(怜央君、君は一体…?)

 

 

 

 

その日の夜、怜央は食堂で夕食をとっていると、彼の元へつかつかと足音が近づいていく。彼はそれも気にせずに食事を続けるが、真正面にトレーを置いて座った相手を見て手を止めていた。

 

「…更識さん、何?」

「あなた、何を言ったの。」

「何をって、何の話。」

「とぼけないで。あなた、倉持技研に何か言ったでしょ?余計な事、しないで…!」

「何なんだ、ほんと。」

「え?」

 

怜央から思わぬ言葉が飛び、簪は言葉を詰まらせる。

 

「最初会った時は『何もしなかった癖に』だの『私から倉持を奪った』だの言った癖に、いざ向こうに掌返しされた途端にコレかよ。くだらねぇ。」

「くっ、くだ…!?あなた、私の苦労も知らないで!」

「そっちだって俺の事を知らない癖に。」

 

互いに食事も忘れて睨み合う。この間、話を横で聞いていた女子たちはこの会話の動向に注目していた。境遇は違えども、今はどちらも日本の代表候補生。しかも女子だけの空間だけに、男女の喧嘩というのはある一種の娯楽として見られて仕方がないのかもしれない。

だが、結局怜央が残りの食事を食べ切り、話を切るように立ち上がった。簪はお盆を持った彼を、座ったまま睨んでいる。

 

「麺伸びるほど睨むなんてご苦労な事だな。」

「あっ!?………っ~!あなたのせいだから、バカ!」

「知らねぇよほんと…。」

 

彼はそう言うとすぐ食器を返し、食堂から出ていった。一人席に残された簪は悔しいような怒りたいような、そんな複雑な感情を抱く。そんな彼女を他所に、事の顛末を見ていた外野は小声で話していた。

 

「要君、やっぱどこか掴みどころがないよねー。」

「そうそう、ミステリアスで、クールで格好いいよね!織斑君とはまた違った方向性だし!」

「あなたってそればっかり…。」

「にしても彼、どうしていつもあの大きなカバン持ち歩いてるんだろね?」

「さあ、参考書でも入れてるんじゃない?いつも昼休み勉強してるらしいし。」

 

(確かに、私は彼の事を何も知らない。でも、あなただって私の事を何も知らない癖に、勝手な事言って…!)

 

(珍しいのもいるもんだ。あの人、変な事で怒るんだな。)

 

 

 

 

 

「もー!怜央君、どうしてこう君は上手く立ち回るとかそのー、そういう事ができないのよ!」

「…先輩、何の話です。」

 

部屋に戻って最初に聞こえてきたのは楯無の怒声。今日はよくわからないが怒られっぱなだと思いながら彼は自分の机へと向かう。

 

「君、本当に仲良くなるって事が出来ないんだね。どうしてそこまで頑なに人を避けるのよ?」

「…まあ、普通は避けますよね。このご時世に女性だけの学校に来たんですから。」

「そういう事じゃないの!ほんともう…上手く話を逸らそうたって、私の前じゃそうはいかないわよ?」

「いいですよ、別に。」

「え?」

「物理的に離れればいいだけの話ですから。」

「ちょ、ちょっと怜央君!?」

 

彼はまた窓へと行き、その外へと身を投げ出す。明らかなその拒絶に、楯無は頭を抱えるのであった。

 

「露骨に避けられると、流石のお姉さんも傷ついちゃうな…。」

 

その言葉は夜風に漂い、誰にも届くことは無かった。

 

 

 

 

 

決闘当日。アリーナの観戦席には全ての一年生と、僅かながら試合を観戦しに来た上級生が席を埋める。この試合の注目すべき所は、間違いなく男性搭乗者の活躍だろう。それも相手をイギリスの代表候補生が行うのだから、誰しもが興奮するイベントである。

だが、そんな事を他所に第二ピットではその代表候補生二人が自身の機体の整備を行っていた。

 

「驚きましたわ、男性なのにISの事を機体レベルでご存じなんて。」

「そうしないと生きてけなかったしね。」

 

セシリアの方へと顔を向けずに会話をする怜央。その手際良さに彼女は舌を巻いていたが、ふと怜央の手を見ると、ある異変に気付いた。

 

(左手で工具を?それに―)

 

「怜央さん、指のその痕は…?」

「ん?ああ、これ。ファフナー乗ってたら、気付いたら痕になってた。最初は消えてたんだけどね。」

「そんな痕になって、大丈夫なのですか?」

「別に?日常生活に支障はないし、もう2年はこんな感じ。最初は気味悪かったような気もしたけど、もう慣れたよ。」

「そうですか…。」

 

彼女には、怜央が本当に考えている事なんて何一つ解らない。彼が今までどのようにISと関わってきたのか、何故今になって姿を現したのか。

 

「どうして、今回の決闘…貴方も試合に出ようとお考えになったのですか?」

「あんたと戦ってみたかった。」

「え?」

「織斑君の関わる試合なんてどうでもいいんだよ。素人が、ましてや代表候補なんかに勝てるなんて最初から思ってないし。あの時の会話、あんたの意図は汲めたけどぶっちゃけどうでもいい。でも、あんたのISのBT兵器には興味がある。それだけだよ。」

「貴方、今この決闘をどうでもいいと仰ったのですか!?」

「どうでもいいよ。他のクラスの事なんていちいち首突っ込んでられない。疲れる。」

「何ですって!?そもそも私なんて、ISの出自だというだけでこんな極東の国に行くハメになったのですよ!」

「なら、来なきゃいいだけ。ISの訓練なんて何処ででもできるよ。」

「アラスカ条約がある上で仰っているおつもりですか!?」

「あんな形骸化したの、バカ真面目に守ってる方が少ないんじゃないの?ISなんてアングラな所で幾らでも運用されてるよ。で、どうすんの?あんたが先にあいつと戦うワケ?」

 

セシリアはハッとして時計を見ると、もうすぐ試合開始時間である。

 

「私が先に行きますわ!…そうだ要さん、この戦いには私の祖国と、私自身の代表候補生としてのプライドがかかっていますの。下手な事を仰るのは許しませんことよ…!」

 

彼女はそう言うと、自身のISを身に纏って出撃する。その背中を見ていた怜央は、小さく呟いた。

 

「崇高な心を持った貴族サマねぇ…。くだらね。」

 

怜央は再び背を向け、自身のISの整備を始めた。と言っても、今回彼が使うのは今まで放課後の訓練で使っていたリヴァイヴであったが。彼にとって最高の状態に仕上がったそれは、まるで彼の事を喜び、受け入れているかのようにも見える。何と無しにそれに右手を触れた怜央は、再び"声"を聴いたのだった。

 

〈…い、おーい!聞こえる?私の声!〉

「…幻聴じゃ、ない?」

〈そうよ!だって今、あたしに触れてるじゃない!〉

 

彼は顔を上げると、そこには動かないものの鈍く光を放つリヴァイヴがいる。

 

〈ね?言ったでしょ!〉

「…何の用。」

〈あー、酷いわ!折角お話しできる相手が見つかったのに、そんなテキトーにしないでよ!〉

「俺だって色々やる事があるんだ。悪いけどこれで…」

〈待って待って!男の子だからってそんな悪い事はしないわよ!だって、私はリヴァイヴに入ってるから同調率は誰でも低いし、専用機になったコアの子だって洞調律が最高になった時に初めて、それも搭乗者の子の意識が消えてまで―〉

 

「機体如きがベラベラ喋ってるんじゃねぇぞ!」

 

怜央は左手を握り締め、機体の表面に拳を叩きつける。

 

〈痛っ!?ちょっと、何を………え?〉

 

怜央は長い息を吐きながら、だらりと右手を下ろす。

 

〈どうして、泣いてるの?〉

 

「………。」

 

〈どうして、ずっとつらい事をしてるって解ってるのに、やめようとしないの?〉

 

「要さん、終わりましたわよ…って、どうなさったのですか?」

 

「………。」

「ちょっと、大丈夫ですの?」

「ただ状況に絶望して泣くだけ。二度とそんな事はしない。」

「要さん、お聞きに…!」

 

セシリアが手を伸ばそうとしたその瞬間、怜央は彼女へと振り返る。

 

「次は俺の番だ。先に行ってるよ。」

 

怜央はそう言うと、自身が整備したリヴァイヴへと搭乗する。その瞬間、スーツの穴を塞ぐようにコネクタが出現、バチンと音を立ててスーツへ、怜央の身体自身へと接続される。彼はその痛みに僅かに身体を跳ねさせるが、呻き声は一切出さない。

 

「行くぞ。」

〈う、うん!〉

 

リヴァイヴへと一言そう告げると、機体と肉体の境界から翡翠色の結晶を生やしながら、彼はアリーナの空へと飛んでいった。

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