蒼穹の絆 -Infinite Stratos meets FAFNER in the Azure-   作:フィアネン

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第6話

「…織斑教員。先日の襲撃事件、見事な対応だった。」

「いえ、結局私自身は何も出来ず仕舞でした。全部生徒と教員部隊が行った事です。」

「それでも、貴女はあの場で的確な指揮をし、正体不明機を撃墜した。これは十二分な功績だと思うがね。」

「恐縮です。」

「それに、僅かながらファフナーというモノの力もわかったのだ。我々にとっても、大きな収穫だったな。」

「しかし、アレは…正直、個人の手に余る力だと思います。その点において、委員長はどうお考えでしょうか。」

「暫くは好きにさせればいいだろう。彼が今までこの機体を試合で使ってこなかったことが、彼自身の自制を証明していると私は思うが、貴女はどう思われる?」

「しかし…。」

「彼は昏睡状態なのだろう?それなら尚更だ。要怜央はマークニヒトにかなり入れ込んでいる様子だ。無理矢理引き剥がしたところで、彼自身が取り返すか、或いは機体自体が彼の元に戻るか―」

 

二人はモニタに映された、ベッドに寝かされ呼吸器を着けられている怜央を見る。

 

「彼と君の弟君にはこれからも働いてもらわないとだからな。ISを男も動かせるようになるのかもしれないのだから…。」

 

それは、彼がこの状態になる一週間前、クラス代表戦の時に起こったのだった。

 

 

 

 

 

第一アリーナ、試合会場。第一試合は鈴の駆る”甲龍”、怜央の駆る”ラファール・リヴァイヴ”のマッチングとなった。

 

「まさか、アンタと最初に当たるとはねぇ。少し想定外だけど、どっちみち一夏も勝ち上がらないといけないんだから変わらないわ。」

「………。」

「だんまり?まあいいわ。その仏頂面も、アンタのプライドと一緒にぶっ壊してあげる!」

 

試合が始まり、鈴は怜央へと双天牙月(そうてんがげつ)を向け、一気に距離を詰めながら攻撃を始める。怜央はその初撃を何もせず回避し、ガルムを二丁持ちして鈴へと攻撃を始める。鈴がどれだけ距離を詰めようとしても、怜央は詰めてきた分だけ距離を引き離す。敵の得意レンジを潰し搭乗者の疲弊を求め続ける動きに、鈴は段々と苛立ちを覚えていった。その苛立ちが頂点に達した時、鈴は怜央へと叫ぶ。

 

「何よ!引き撃ちばっかり、寒いコトしか出来ないワケ!?コレでも喰らえ!」

「!!」

 

鈴は二個の浮遊ユニットから()()を形成し、怜央へと射出する。彼は直ぐに攻撃を察知し、手足の最小限の動きでそれを回避した。

 

「衝撃砲…昔と違って、だいぶ強力な武装になったな。」

「何、今の機動!?あんなに繊細な動き、今まで見た事が無い…!」

 

 

 

 

 

この試合を、千冬と真耶がいる監視塔で観戦している一夏・箒・セシリアの3人。特等席とも言えるその場で、一夏は疑問を漏らした。

 

「今の、何が起こったんだ?鈴が何かして、怜央がそれを避けたように見えたが…」

「今のは衝撃砲ですわ。空間を圧縮し、それに指向性を持たせて放つ第三世代技術。甲龍に装備されているものは”龍砲”と呼ばれていますのよ。」

「空間そのもの?つまりアレは威力が高い空気砲って事か?」

 

セシリアの解説を千冬が継ぐ。

 

「平たく言ってしまえばそうだ。空間自体を攻撃手段にしているため、肉眼でその攻撃を見切るのは極めて難しい。だが、要はそれを瞬時に見切って回避した。常にハイパーセンサ-での多次元解析を行っているか、或いは―」

 

 

 

「或いは、その武装の()()()()()()()()か、ね。それも訓練を積めるレベルで…恐らく、知っていたのであれば最初期レベルかしら。」

 

楯無は別の監視塔から観戦をしていた。彼女は、怜央が何か行動を起こせばすぐ自身のISを展開して動く準備をしている。だが、彼は純粋に試合をしているようで、何かの行動をしようとは考えていないようだった。

 

「何かをしようとしているのなら、動きに若干の遅れが出来る筈。ワザと手を抜くことも、それ以外の意図がある行動もしていない。」

 

読めない怜央の行動。それの懸念が強くなっていく中、楯無は呟いた。

 

「怜央君は、何をもってこの学園に来たの?その気になれば、ずっと単独で行動も出来た筈なのに…。」

 

 

 

 

 

鈴は連続して衝撃砲を撃つが、どの攻撃も当たる事は無い。中距離以遠での戦闘は性格的に苦手な彼女は、怜央の動きに段々と苛立ちを募らせていく。2分ほど射撃戦をしたのち、鈴は瞬時加速を使って距離を無理矢理詰め、両手に握った青龍刀を怜央へと振り落とした。だが、その攻撃は怜央が両手にそれぞれルガーランスとブレッド・スライサーを展開して防ぐ。

 

「やっとその槍を出して来たわね!その槍、まだ裏があるんでしょ!?」

「………。」

「そのずっと黙ってるの、気に入らないわね!」

 

怜央はその返答に右脚で蹴りを入れるが、それは反射的に反撃してきた鈴の脚に防がれた。第二世代と第三世代の抗いようのない出力差。それに負けたのはリヴァイヴの方だった。

 

「はッ、世代差ってのはどんな小細工をしても覆せないのよ!」

「ちッ!」

 

斬撃の応酬が始まる。その攻撃は互いに当たらず、しかしその空振りはどれも直撃すれば大ダメージに繋がるもの。それが続く中、鈴は段々と焦り始めていた。

 

(何、この反応速度!?龍砲を躱した時もそうだったけど、第二世代の癖に反応が早すぎる!)

(パワーで負けてても、反応は五分か有利まである。焦りさえしなければ、押し切れる…!)

 

それぞれの思惑が重なる中、鈴は賭けのような攻撃に出た。至近距離での龍砲射撃の後、今まで攻撃に組み込まなかった真下からの斬り上げを行ったのだ。怜央は当然のように衝撃砲と青龍刀を回避し、右手に高速切替で出現させたショットガン”レイン・オブ・サタディ”を彼女の胸に突き出す。

 

「しまっ―」

「…………ッ!?」

 

怜央が引金を引こうとしたその時、彼は絶好の機会を捨ててまでその場からの離脱を行った。直後、空からアリーナのシールドを突き破って何かが落下してくる。鈴も慌ててその場から離脱すると、轟音と土煙を上げて、その黒い物体―所属不明ISが3機、姿を現した。

 

 

 

 

 

「アレは…何か、嫌な予感がする!」

「ま、待て一夏!」

「織斑、落ち着け―クソッ、行ってしまったか。」

 

謎の悪寒がした一夏は管制塔から走ってフィールド場内へと向かう。それを追おうとした箒は何故か閉じたままの自動ドアに阻まれ、この部屋から身動きを取れなくされる。

 

「クソッ、どうして開かないんだ!」

「真耶、状況は!」

「何者かからのジャックによって、アリーナ内の管制システムが乗っ取られているようです!回復にはかなりの時間を要します!」

「仕方ない…!教員部隊はISを装備、事態の収束へ動け!扉の物理的破壊は許可する、部隊Aは閉じ込められた生徒の救出、部隊B・Cは襲撃をしてきたバカ共の鎮圧へと向かえ!生徒の安全を第一に動け、いいな!」

 

『『『『了解!!!!!』』』』

 

千冬はコアネットワーク経由での指揮を更に飛ばしていった。

 

 

 

4組に割り当てられた観戦席で、簪は怜央と鈴の試合を見ていた。その隣には、怜央主導の特訓に参加していた1組の女子”布仏本音”が座っている。本音は簪へと話しかけた。

 

「れおれお凄いねー、リンリンといい勝負してるー。」

「当然でしょ本音、彼だって代表候補なんだから。」

「…ねえかんちゃん、かんちゃんってれおれおの事が苦手なの?」

「うん…どうしても、あの赤い目で話しかけられた時を思い出しちゃって。お姉ちゃんじゃないって、わかってるのに…。」

 

簪は、ある一件以降に同じ学園に通っているにも関わらず、姉と疎外になっていた。

『無能のままでいろ』と言われたあの日以来、互いに避け合うようになっていた。

話さない時間が長ければ長い程、互いに話を切り出す機会は減り、話づらくなるだけ。でも、そんな関係をダラダラと今でも続けている。

そのストレスを抱えたままの状態で起こった事は、怜央の存在のと、新型IS”ファフナー“の公表。彼が得たものを見て、簪はその都合よさと理不尽に苛立っていた。そんな時に、自身のオアシスとなりつつあった整備室に怜央から姿を現した時。自分の事を何も考えずに話しかけてくる彼へ、彼女は思わず本を投げていた。

 

「八つ当たりだったのはわかってるし、必要以上に強く当たってたのはわかってる。でも、どうしても私の中で…」

 

いつの間にか試合の観戦もそっちのけで、簪は隣に座っている本音にぽつりぽつりと話していた。しかしそれは、突然地面に起こった振動と土煙、間髪入れずに鳴り響いたブザーによってかき消された。

 

「な、何!?」

「非常シャッターまで!?何が起きたの!?」

 

彼女らは同席していた生徒と共に動揺するが、そんな暇は与えないと言わんばかりに通信が入る。

 

『更識妹、今どこにいる!』

「おっ、織斑先生!?今何が起こって―」

『何者かにハッキングされ、管制システムがダウンしている状態だ!教師陣が救出へと向かっているが、念のためにISを展開して待っていろ!緊急時には扉の破壊も構わない、とにかく生徒を守れ!』

 

言うだけ言って一方的に通信を切った千冬に、簪は震える。

 

「かんちゃん…。」

「守れ、って、言われたって…。」

 

藁にも縋る思いで周囲を見回すと、簪は逆にクラスの全員からの視線を受けていた。そのプレッシャーに気圧されながらも、彼女は自身のIS”打鉄弐式”を展開する。震える手で超振動薙刀”夢現(ゆめうつつ)”を呼び出した簪は、この後何が起こるのかと震えていると、目の前のシャッターがドシン…ドシン…と鳴り始める。その音に震える生徒らに、簪自身も震えた声で、皆をシャッターから遠ざける。

 

「あ、危ないから…離れて!」

 

その言葉に、ISを持たず自衛手段が無い生徒らはじりじりと後ろへと下がる。赤い非常灯だけが照らす観戦席の中、突然バリンという激しい音と共に、所属不明の黒いISが姿を現した。その巨大な腕の先には、ボロボロにされたリヴァイヴと…怜央の姿があった。

 

 

 

 

 

「何、あのISっぽいの…って、怜央、ちょっと!」

 

怜央は鈴の制止を聞かずに、一体の黒いISへと槍を構えて突撃する。3機のIS―コアネットワーク経由で、名称は”ゴーレム”だと判明した―は彼に気付き腕部のレーザー砲で攻撃を始めるが、彼は被弾せずに一体へと進んでいく。

 

〈あなた、聞こえてたでしょ?先生も言ってるから一度退かなきゃ!〉

「………!」

〈こんなときまで意地を張らないでよ!〉

 

リヴァイヴの声をも無視した怜央は、『普段通り』にゴーレムへと攻撃する。全身装甲の頭部へ―人間が貫かれれば確実に絶命する場所へ、槍を突き出す。しかし、手にした感触は肉を貫いたものではなく、金属を貫いたものだった。

そして同時に、彼の頭の中へと声が響く。

 

〈―たい…た…けて―〉

「何だ?」

〈痛い…助けて…。〉

「な!?ぐぁあ!!」

 

今までの襲撃者の時には聴こえなかった、明瞭なISの声。明確に助けを求めるその声を聞いてしまい、怜央は動きを止めてしまった。その隙を突くかのような敵の拳による攻撃に、彼は殴り飛ばされてしまう。

 

「何やってんの怜央!さっさと―何!?」

 

一体が鈴の元へと向かい、怜央への援護をさせまいと攻撃を始めた。その弾幕に対し彼女は衝撃砲を撃つが、重装甲であるゴーレムには効果が薄い。近接戦をしようにも、この弾幕の中では迂闊に近づく事すらままならない。鈴はただ相手の攻撃から逃げながら、怜央が二体の敵に集中砲火されるのをただ見る事しかできなかった。

 

「あんなんでも一夏の友達なんだろうから、せめて援護だけでも…って、え!?」

「鈴、大丈夫か!」

「一夏ぁ!?何で来たのよ、アンタISに関しては素人の癖に―」

「千冬姉に言われたんだ。戦わなくてもいいから、先生たちが来るまでに撤退をしろって!」

「でもそれじゃあ怜央がヤバいわよ!?アイツ今2機に絡まれてて―ッ!こっちまで捕捉されてるのよ!」

「おわっと!?…なら、せめてこいつだけでも俺らで止めなきゃな!」

 

ビームを躱しながらそう宣言する一夏。実際、ただここで撤退したところで教員部隊が後どれくらいで辿り着けるかがわからない状況。そのために、ある程度は専用機持ちが動くほかなかった。

 

「…いいわ。あたしの足は引っ張んないでよ!」

「俺だって特訓を重ねてきたんだ、何も知らない時とは違う!」

 

二人は決意を固め、目の前にいる一体のゴーレムと対峙し、それへと攻撃を始めた。

 

 

 

怜央はあの声を聴いてしまって以降、攻撃を満足に出来ずにいた。今までその程度の事で動揺すらしなかったのに、今は攻撃すらできていない。その事実が怜央を更に追い詰め、動きを鈍らせていく。反撃をしようとして出現させたヴェントもゴーレムの攻撃によって取り落としてしまい、あっという間にフィールド内の壁際に押し込まれる。壁に背中を押し付けられ、何度も巨大な腕で殴られるうちに背面ユニットのシールドは破壊され、観客席のシールドにもヒビが入っていく。ついにシールドが耐久値を超えた時、怜央とゴーレムは隔壁を突き破って観客席へとなだれ込んでくる。非常灯のみに照らされた薄暗い室内は、その時に日光の激しい光に晒された。

 

「何!?…え?」

 

突然差し込んできた日光に簪は目を細めるが、徐々に目が慣れてくると、目の前に機体をボロボロにされた怜央の姿を見た。先程まで中国の代表候補生と互角に戦っていた筈の搭乗者が、ここまで一方的に損害を受けている。背面ユニットはほぼ全損し、ルガーランスも刀身の中ほどで折れてしまっている。弐式での実戦をほぼ経験した事がない簪にとって、この事実は彼女を恐怖に陥れた。

 

「どうして、こんな…。」

「れおれお、しっかりして!」

 

本音が彼へと駆け寄るが、気絶しているのか怜央は反応を示さない。未だ簪は一歩も動けない中、目の前のゴーレムと目が合ってしまう。その頭部は5つの目が不規則に並べられた異形の姿。その機体の銃口がこちらへ向けられるまでの間、彼女の時間はスローモーションになっているように感じられていた。

 

(怖い…誰か、助けて…!)

 

どれだけそう願ったところで、自身を助けに来る「ヒーロー」なんてものは存在しない。恐らく今彼女が考えるヒーロー像に最も近い事をしてくれる人は、彼女の後ろで気絶しているままだ。

ゴーレムは明確な攻撃意思を持った行動をとる。IS搭乗者としても暗部の人間としても初めての、試合ではない命がけの戦い。ピリつく空気の中、簪は勇気を振り絞って呟く。

 

「お願い…力を貸して。打鉄弐式!」

 

コアがその思いに同期するかのように、機体の出力、演算能力が上がっていく。ゴーレムは既に腕部ビーム砲のチャージを終えており、今にも発射せんと簪へと銃口を向ける。彼女はそれに構わずゴーレムへと体当たりし、体当たりと荷電粒子砲”春雷”の接射によって大きく後ろへと退ける。思わぬ反撃を貰ったゴーレムは簪へと目標をシフトするが、彼女は間髪入れずに手に持っていた夢現で右腕部を切り裂き、ビーム砲を一門破壊した。

 

「やった…!きゃあ!!」

 

それに油断してしまった簪は、ゴーレムからの蹴りを真面に受けてしまい、まだシールドが生きている場所へと叩きつけられてしまった。再び敵がビーム砲を構えた事に彼女は目をぎゅっと瞑るが、突如として観客席の内側から飛んできたビームによって敵は吹き飛ばされる。恐る恐る目を開くと、そこにはふらつき、折れた刀身を展開したルガーランスを構えた怜央が立っていた。

 

「油断なんて…するもんじゃないよ。」

「あ、あなたには言われたくない!そんなボロボロになって…!」

「こんな程度、どうってことない…!」

「ダメだよれおれお!そんな状態じゃ戦えないよ!」

 

本音は必死に外部からリヴァイヴを解除しようとするが、何度行っても操作をIS側から拒絶されてしまっていた。最早ダメージレベルなど関係無しに戦えない状態の怜央を、二人は必死に引き止める。

 

「本気で言ってるの!?あなたのリヴァイヴ、もうマトモに形を保ってないじゃない!」

「邪魔しないでくれ!あいつらさえ殺せれば今日を生きれるんだ!こんな所で、俺は…!」

「あなた…この間から何を言ってるの!?人を殺すだとか、今日を生きれるだとか!意味わからない!」

 

怜央はその言葉も聞かずに前に出ようとする。その時、リヴァイヴからの声が聴こえてきた。

 

〈いい加減にしてよ!あなた、そこまでして死にたいの!?あなたも私ももう戦える状態じゃないの!こんな事を続けたら、本当にいつか死んじゃ―〉

「黙れ!」

 

怜央の突然の叫びは、二人を黙らせた。

 

「俺は白騎士じゃないんだ!俺は白騎士(アイツ)のように、誰かの命を見捨てるような事なんてしない!」

 

「あなた、何を…」

 

「これ以上何かを失うつもりはない!これ以上何かを奪われてたまるか!」

 

怜央は簪を押しのけると、あれだけ操作を受け付けなかったリヴァイヴが自動的に解除され、スーツからコネクタが消滅する。彼はふらつきながらも再び自身の脚で立ち、指を広げて腕を前に突き出した。

生々しく残る指輪の痕に、左手に大きく残った傷跡。左手の薬指についていた指輪が消え、それと同時に10個の指輪が全ての指へと装着される。腕の神経が僅かに光ると、再びコネクタが彼のISスーツの穴を塞ぐようにバチリと接続された。

 

「奪われるくらいなら、先に敵から奪ってやる…!」

 

するとヴゥン…という音と共に、翡翠色の結晶体が怜央の足先から発生していく。徐々に結晶体に覆われていく怜央を他の生徒は不安がりながら見るが、その結晶が彼自身を覆い尽くし、機体のシルエットを形作った時―竜は目覚めた。

 

「かんちゃん、これって!?」

「これが、ファフナーなの…!?」

 

結晶体が砕け散ると、そこには怜央でなく、紫色の異形のIS”ファフナー・マークニヒト”が立っていた。マークニヒトは近くに落としていた紫色のルガーランスを拾い上げると、再び目の前に現れたゴーレムへと対峙する。ニヒトは槍を敵機体へと向けると、その腕部と欠けた槍の先から結晶体を発生させ、欠損したルガーランスを修復した。ルガーランスの開いた刀身は真っ赤に発光し、その刀身からはチャージをするかのようにスパークが発生する。その刹那、赤黒い奔流がゴーレムへと襲い掛かった。

 

 

 

 

 

一夏と鈴は、未だに来ることが無い教員部隊を待ちながらゴーレムに対し必死に抵抗を続けていた。最早怜央の状態の確認をする暇は誰にもない。鈴は龍砲を撃ちながら一夏の近接戦の援護を行い、一夏は鈴が作った隙を狙って攻撃をする。

 

(零落白夜はエネルギー消費が激しすぎる、だから…!)

「攻撃の直前を狙って発動するんだよな!」

 

一夏は直進加速をしながらゴーレムの懐に入るが、わかりやすい攻撃はほぼ回避されてしまっていた。それを見かねていた鈴も、一夏の攻撃直後に自ら近接攻撃をするが、敵機のダメージコントロールが上手なのか致命的ダメージには至らない。

 

「怜央とは違う、何か別の違和感があるわね…!」

「もしかしたら、人が動かしてない?」

「一夏、それは絶対に無いわよ。ISは人が動かさないと稼働しないんだから。」

「でも、アイツから何も声は聞こえてこない。口が堅いにしては、動きに人間らしさを何も感じないんだ。」

「確かにそうだけど…だからと言って、中に人が入ってたらヤバいわよ?その剣、雪片なんでしょ。つまり、単一固有能力(ワンオフ・アビリティ)は…」

「ああ、わかってる。だから、なるべく人を傷つけないように無力化するつもりだ。」

「全く…無茶言うわね!」

 

呆れながらも、ニヤリと笑う鈴。再び二人は並んで浮遊し、再度アタックを仕掛けていく。しかし、段々と対策されているのか、敵機の行動はより最適化されていく。攻撃が段々と当たらなくなっていくことに一夏は焦り始める。

 

「どうにかして攻撃を当てねぇと…!」

「一夏、焦らないの!」

「でも、このままじゃあ…ん?アレは…。」

 

一夏は何か手は無いかと周囲見回すと、地面にヴェントが落ちているのが見えた。恐らく怜央が落としたであろうそれを見て、一夏はある事を思いついた。

 

「鈴、俺とお前のポジションを交換しよう。」

「は、はァ!?何言ってんの、アンタのISには射撃武装なんて…!」

「いや、あそこに銃が落ちてる。アレを俺が使って援護する、鈴の方が近距離の戦いは上手いだろ?」

「期待していいのね?」

「伊達に怜央から教わってないさ。」

 

真剣な目で鈴を見る一夏。そのやりとりの直後、観戦席から出てくる赤黒い奔流がフィールドを横切っていく。ボディを真っ二つにされながら吹き飛ぶゴーレム。その後に出現したのは、紫色の竜。その機体を見て、二人は言いようのない悪寒に襲われる。

 

「あの機体って、まさか―」

「多分、アンタの想像通り…噂の新型IS”ファフナー”だと思うわ。」

「って事は、中には怜央が乗ってるのか?」

「恐らくはね。でも、アイツがリヴァイヴじゃなくてファフナーを出してきた。つまり、それほど状況は悪い可能性があるわね。」

 

そもそも彼の機体が不気味だとは誰も口にはしない。今は目の前の敵に集中しようと、二人は各々の武器を構え直し、ゴーレムへと対峙する。

IS学園創立以来の、襲撃者との混戦が始まった。

 

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