関西人の関西人による関西人のための鉄道旅行記   作:柳芽帆奈

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第二十五話「船場行ったら屑鉄おってさ」(中編)

「おおー。近くで見ると、大きいですね」

 

 バスを降りて少し歩くと見えてきたのは、道路の横にある鉄骨に囲われたスペース。今俺たちがいるのは北急の新駅『箕面船場阪大前駅』の建設現場の近くに最近出来た工事現場を上から眺められる商業施設のオープンデッキ。ここ船場地区はもともと大阪市の船場地区から繊維問屋が集団で移転して出来た繊維の街だが、延伸が決まってからは再開発が進み、大学のキャンパスも今年ここに移転してきて、今、北摂で一番アツイ地区となっている。

 

「シャッターチャンス♪、シャッターチャンス♪」

 

 香里奈は嬉々とした表情で、バッグから彼女が愛用する一眼レフ、D6を取り出す。

 

「・・・」

 

 日頃は明るく、笑顔の多い彼女もこの時の表情は真剣そのもの。元々、クールビューティーな見た目をしているだけに、近寄り難い雰囲気を醸し出している。

 

 そんな状態が数分続いて・・・

 

「・・・よし。いけました」

 

「出来た?写真はまとめて見たいから次行こか」

 

「はい」

 

 オープンデッキを後にして次に向かったのはここから少し歩いたところにある船場北橋と呼ばれる陸橋。ここからは工事現場を間近に眺められる。まあ、本当は新御の本線を通るバスから撮影すればいいのだが、状況によっては乗客や運転手の迷惑になることもあるので今回はしない。

 

 周囲を見回して迷惑にならないことを確かめて撮影を行おうとした。が・・・

 

「あれ・・・?」

 

 ここで気になる人を見つけた。その人は小太りの男性で、どうやらその人も北急の工事現場を撮りに来たように見えるが、彼のものと思しき荷物が歩道いっぱいに広がっていて、それを通行人が退けたりしようとすると、顔をしかめて「ボクの荷物に勝手に触るな」と声を荒らげたりするので、先程の香里奈とはまた違う意味で近寄り難い雰囲気が漂っていた。

 

「あれ、ちょっと迷惑ですね」

 

「やな。ちょっと言うてくるか」

 

 このまま放置するのもアレだったので、俺は注意をしに行く。

 

「あのー」

 

「な、なんだよ?」

 

「ここの荷物、人が通れなくて困ってるみたいなんで、ちょっと退けてくれます?」

 

「なんだと?ボクに指図するな!通れないんだったら迂回すればいいじゃないか!」

 

 うわ、なんて自己中な・・・。一筋縄ではいかなさそうやな。

 

「でも、みんな困ってるんですよ。俺達も撮影しに来てるんで別に撮るなとはいいませんけど、ちょっと退けてもらえたら・・・」

 

「うるさい!警察でもないくせにガキが口を出すな!同じ撮り鉄ならわかるだろう」

 

 こう言って聞くに耐えない罵声を浴びせてくる。俗に言う『屑鉄』というやつである。困り果てた俺は香里奈に警察を呼ぶように言う。

 

「香里奈。もう埒あかんから警察呼んでくれるか?」

 

「は、はい」

 

「な、何するんだこのガキィ!」

 

 言って男は香里奈の携帯を奪おうと飛びかかる。幸いにも香里奈は俺の後ろにいるので、俺が盾になって男を止めようとする。

 

 しかし、

 

「何をしてるんだ!」

 

「えっ?」

 

 ちょうど通りかかったパトカーから二人の警官が降りてきた。男が驚いている隙に俺たちは距離を取る。そのあと、男は先程までの威勢が嘘のように縮こまって警官の一人に連れて行かれた。

 

「怪我はなかったですか?」

 

「はい。荷物が通行人の邪魔になってたんで注意したら突然逆ギレしてきて・・・」

 

「そうだったんですね。分かりました、御協力感謝します」

 

 そう言ってもう一人の警官も荷物を片付けてパトカーに戻っていく。

 

「はぁ。大丈夫やった?」

 

「はい」

 

「・・・ちょっと休憩するか」

 

 その後、近くのカフェで少し休憩してから撮影を再開。しばらく撮影していると、彼女の顔にも笑顔が戻っていった。

 

 約1時間後、撮影を済ませた俺たちは次の駅の予定地に向かって歩いていく。

 

 




いかがでしたでしょうか?
今回は撮り鉄のマナーの要素をちょっと絡めてみました。ちなみに、香里奈ちゃんは小さい頃から徹底的に父親にマナーを叩き込まれているので、こんな事は絶対しません。
それではまた次回、リクエストも待ってます。
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