香里奈がふじかわの撮影に行っている間、俺と紗里はお土産を買うことになり、土産物屋を探していたが、どうやら改札内には無さそうなので一旦改札を出る事に。
「まさか、甲府で途中下車をするとはな」
「まあ、それも旅の思い出になるんだし、それもまた一興、だよっ☆」
「そんなもんか?あ、あったわ」
駅直結の商業施設に入るとすぐに土産物屋を見つけたのでそこに入る。
中には色々な土産物が所狭しと並んでいるが、俺はその中からあるものを選ぶ。
「そーくん、それ何?」
「これ?信玄餅やけど」
俺が手にしているのは、求肥という和菓子にきな粉と黒蜜をまぶした山梨名物、信玄餅。実は、俺の中では密かなマイブームになっている。もともと和菓子の類は好きな方やしな。
「へー、あたしは食べた事ないけど・・・そんな買う?」
紗里は俺が持っている信玄餅が15個ぐらい入ったカゴに目をやっているようだ。
「そら、本場やしな。あと、東京で土産買ってへんからヤケなってるんもあるわ」
「そ、そう」
後は、ほうとうや信玄餅のアレンジ商品などを買って、土産物屋を後にする・・・よう考えたら、東京に行ったはずやのに、買ったんはみんな山梨土産という訳の分からん事になったな・・・気を取り直して、時間を見てみると10時47分。もう香里奈も写真を撮り終わってるやろ・・・
「あ、総一さん」
改札の前で首からカメラを引っ提げた香里奈が待っていた。
「か、香里奈。今、土産物を買い終わったんやけど」
「そうですか、じゃあ行きましょう」
言って二人一緒に改札を通り、次の電車、10時58分発の松本行きが停まっているホームへと向かう。
「あ、信玄餅じゃないですか。後で食べてもいいですか」
「ちょっとぐらいならええけど、好きなん?」
「めちゃくちゃ好きってわけではないんですけど、和菓子は好きなんで・・・あれ?そう言えば平林さんはどこ行きました?」
「紗里やったら、トイレ行ってるわ。もう電車ん中で待っといてやって」
「そうですか・・・」
「・・・香里奈。どないしたん?そんな暗い表情して」
「・・・総一さんは、本当に私の事が好きなんですか?」
「えっ?」
「最近、平林さんがベッタリしてきて、彼女ばっかりに話して・・・あんまり構ってくれなくなってきた気がするんです」
「・・・」
「確かに、平林さんが総一さんに対して好意を持っているのも、貴方が人の好意を無碍に断れない性格であるのもわかります。ただ・・・私は白庭総一の彼女で、貴方の事が大好きである事。それだけは忘れないでいて欲しいんです」
香里奈の表情は今にも泣きそうな顔をしていた。
「香里奈・・・すまん。そんな思いをさせてたんやな」
「なんかごめんね。香里奈があたしのせいで苦しんでたなんて・・・」
「いえいえ・・・ん?」
「「紗里(平林さん)⁉︎」」
俺の後ろにいつの間にか紗里が立っていた。
「紗里、帰ってきてたんやな」
「うん。トイレから帰って来たら、なんか二人が話してたから・・・」
「それを聞いてたと」
「うん・・・あたしね、好きになった人にはついついベッタリして接しちゃうんだ。一年の時にフラれてから、諦めよう、諦めようと思っても諦めきれなかった。それだけはそーくんはあたしの中で大きい存在だったんだ。でも、その振る舞いで悲しんでる人がいる事をすっかり忘れてた。香里奈・・・本当にごめんなさい」
言って紗里が頭を下げる。彼女がこんなに真面目な口調で話すことはほとんど無いので本人の中でも相当反省しているようだ。
「いえ、平林さん。まだ総一さんの事、諦めきれないんですね」
「・・・うん。多分、一生諦めきれない」
「では、総一さんを私との共有財産にすると言うのはどうですか?勿論、正妻は私ですが」
ん?なんか香里奈がとんでもない事を口走った気がするんやけど。
「香里奈?今、俺の耳がイカれてへんかったら俺を、香里奈と紗里の共有財産にするって聞こえたんやけど」
「はい、言いました」
「それってまさか・・・」
「ハーレムです」
言いよった!こいつ言いよった!男子高校生の妄想ちゃうんやで!
「香里奈、一旦落ち着いてくれ。紗里の気持ちに押されたんは分かる。ただ、一時の感情でそれを決めるのは・・・」
「実は私、前々から考えてました。親にも相談しました」
親にも相談したんか⁉︎ 展開が序破QのQ並みに早すぎてついていけないんやけど!
「勿論、OKが出ました」
勿論ってなんやねん!よう親御さんOKしはったな・・・お父さん、現職の国会議員やろ。もう、読者が置いてきぼりになってる気がするんやけど・・・
「そーくん、あたしが彼女は・・・いや?」(ó﹏ò。)
なんか紗里が上目遣いで俺を見つめてくるんやけど。おい、作者!さっきまでしんみりしてたのにしっちゃかめっちゃかになってもうたやないか!
「「さぁ・・・総一さん(そーくん)。どうするんですか(どーするの)」」
そんなん言われても・・・どうすれば・・・
〜♪
俺が悩んでいると、発車メロディが鳴ったので、急いで電車に乗り込む。これを逃すと次は1時間後なので、かなり大変なことになる。
ハァ・・・どないしよう。
そして、俺が出した決断は・・・
「・・・ハァ、分かった。こんな彼氏で良けりゃあ、付き合ってくれるか?」
「「はい!もちろん!」」
電車に乗ってから悩んだ挙句、結局、二人の頼みを断る事ができず、俺はクズ野郎になった。とどのつまり、香里奈に加え、紗里も彼女に迎えてしまったということだ。まあ、ここで無碍に断ると紗里だけやなくて、これに関してノリノリな香里奈まで失いかねへんかったからな。それに・・・紗里も好きやったことは事実やし。
「でも、そーくんも好きだったなら最初からまとめて付き合えばよかったじゃん」
「せやかて紗里、普通は日本ではハーレムは忌まれる事や言うのに・・・ラノベとかでハーレム物が人気なんも現実で出来ひんからってのが大きいんやで」
「フフフ、三人で堕ちてしまえば、怖くありませんよ。私の後ろにはいろんな人がいますから・・・」
正直、香里奈の家系って、親戚の人が、与党の最大派閥の元締めたる、幹事長の職についてたり、キー局の社長だったりでかなりバラエティに富んでるからな・・・しかも、本家本元の跡取り娘・・・何をしでかすか分からん。もしかしたら、本気で一夫多妻制の法律をこしらえてくるかも。
「別にいいじゃん。こんな可愛い二人の彼女に愛されるって中々ないよ?」
「そうかもしれへんけどさ・・・倫理的にぶっ飛んでいるって言うか」
どうすんねん、これでUAとかお気に入り登録が減ったら。いや、そんな問題やないか。
「しかも、ずっと立って話してたから気づかんかったけど、こいつオールロングやん」
そう、この小説にあるまじき展開すぎて全く気付かなかったが、今乗っている電車はオールロングシート、しかもさっきの電車の半分、3両編成だったので席はほぼ埋まっていた。
「座れないのは残念やな」
「まあ、空きが出るまで待ちましょうか」
「そーだね」
座席はほぼ満席だったのに対し、網棚は誰も使ってなかったのでそこに重い荷物を置かせてもらうことに。これでだいぶ身軽になった。
「あれ、そういえばここどこだっけ」
「確か・・・韮崎ぐらいでしたね」
「韮崎か。韮崎といえばあれやな、小林一三」
「ああ、そういえばそうでしたね」
「小林一三って確か、阪急グループの創業者だっけ。こことなんか関係あるの?」
「いや、その人な、ここの出身らしいねん。俺もずっと関西の人や思てたんやけど、Wiki見てたらここの出身やって」
「へぇ」
そんな話をしていると電車は日野春駅に到着。甲府から小淵沢まではこの駅と竜王駅しか待避線がないので、普通はこの駅でちょくちょくあずさの通過待ちを行っていて、この電車もこの駅で甲府を30分ぐらい後に出たあずさ13号の通過待ちで6分ぐらい停車をするらしい。
「「総一さん(そーくん)、一緒に降りましょう(ようよ)」」
二人が片方づつ手を引っ張って俺を車外に連れ出そうとする。まあ、ずっと車内にいても息は詰まるから、そういうのもええか・・・おわわわっ!
「そ、総一さん!」
「大丈夫⁉︎」
「だ、大丈夫や・・・」
ビックリした・・・段差ない思って普通にホームに出たら、普通に段差あったわ。嵩上げ工事してへんのかい。
せっかく来たんやし、駅名標でも撮っとこ。パチリ
そんな事をしていると接近放送が流れて、E353系が通過していく。やっぱりカッコええな。
「ほな戻るか」
多分特急を見送ったらすぐ発車すると思うのですぐに電車に乗り込む。
既に二人も戻っていたようだ。
「そーくん、香里奈。急でなんなんだけど、ちょっと寄りたいところがあるんだ」
「寄りたいところ?それってどこや」
「それはね・・・」
・・・大変なことになってしまいました。
なんと、総一に二人目の彼女ができてしまいました。ハーレム小説の仲間入りです。
自分でもまさか、ハーレムタグを出動させる羽目になるとは全く思ってなかったんですけど・・・
こんな闇鍋状態となりつつある『関西人の関西人による関西人のための鉄道旅行記』ですが、どうか応援してくれたら幸いです。応援の感想とかくれたらモチベが爆上がりします。
それでは次回。