関西人の関西人による関西人のための鉄道旅行記   作:柳芽帆奈

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第四十四話「ナイスですねぇ〜」

『上諏訪ー、上諏訪ー。ご乗車ありがとうございました』

 

 日野春を出てから48分。俺達が降り立ったのは諏訪湖のほとり、長野県は上諏訪駅。

 

 毎年、8月15日に行われる諏訪湖祭湖上花火大会などには多くの人が訪れ、乗降客数も県内第5位を誇る主要駅である。ちなみに、この駅の手前の信号場から岡谷までは単線区間になっている。東京の複々線をつい5時間ぐらい前まで見ていた身からすると、本当に同じ路線なんかと思ってしまうんやけど、そう思ってるのは俺だけでしょうか。

 

「「香里奈も(紗里も)そう思います」」

 

 彼女二人がなんかボケ始めた。

 

「やめとけやめとけ。読者はそのネタ知らんと思うから」

 

 もし知らない人はニコニコ動画で『ワイトもそう思います』と調べてみよう。

 

 そんな話をしながらホームを歩いて行くと、目的の場所に着く。

 

 目の前に見えるのは『素足で湯ったり、座ってのんびり』と書かれたえんじの暖簾と、岩の目隠し、その中にはいかにも暖かそうな足湯があった。

 

 実は上諏訪駅のホーム上には、上諏訪温泉から引湯してきた足湯があり、有効な乗車券や入場券があれば、タダで入る事が出来るのだ。まあ、実質乗車券代で金を取られてるようなもんだが。

 

「でも、こんなあっつい時に足湯って・・・」

 

「いや、暑い時に足湯をするのって案外健康に良いんですよ。冷房や冷たい食べ物で冷えた体を温めて、血行を良くして、不眠が改善したり、免疫機能の向上に繋がるんですって」

 

「へえ、そうなんや」

 

「じゃあ、早速はいろっか」チャポン

 

「「せやな(そうですね)」」

 

 ・・・やっぱり暑いな。

 

 それから数分後・・・

 

「そろそろ上がりますか?」

 

「そーd・・・あ、待って」

 

「「?」」

 

「折角だし、記念写真でも撮ろうよ!」

 

「記念写真?まあ、それもええな。旅の思い出にもなるし」

 

「そうですね、初めてのスリーショットですし」

 

 そう言って紗里はカバンの中から小さい三脚を取り出し、スマホに取り付けて湯船のへりに置く。

 

「はい、チーズ!」パチリ

 

「おお、結構ええやん」

 

「これ、待ち受けにしておきましょう」

 

「ほな写真も撮ったし、出るか」

 

「「ええ(分かった)」」

 

 その後は、改札を出て、信州そばの店に行ってお昼をとる。本場のざるそばめっちゃ美味かった。

 

 駅のホームに帰ってきた頃にはもうすぐ時間だったので、そのままやってきた13時13分発の松本行きに乗車。今回も座席が空いていなかったので、先頭車両に乗ってかぶりつきを楽しむ事にする。

 

 乗ってからしばらくして、岡谷駅に到着。ここから中央本線は、天竜川に沿って走る旧線と塩嶺トンネルでぶち抜く新線に分かれ、この電車は新線経由で走る。

 

 岡谷を出ると3本あるうちの両端の線路はカーブしながら上がって行き、真ん中の旧線を越えてそのまま塩嶺トンネルに突入。わあ、何も見えへん。

 

 しばらくするとトンネルを抜け、みどり湖駅を通る。

 

 それにしても線形が良く、しかも踏切が無い。全体的にきついカーブが多い中央本線で、都市部以外でこんだけ線形の良い区間は珍しい。まあ、まだ出来てから40年経ってへんしな。

 

 そんな区間を走っていると左手から単線の旧線が合流し、線路の数が増えて行き、最後に別の路線が合流して塩尻駅に到着。ここからは会社も変わって中央本線はこの駅からJR東海の管轄になる。

 

 ただ、中央本線はここから普通列車は1日12本で2〜3時間運転間隔が開くなど、本数がいつぞやの加古川線のようになってしまう。しかも、次の電車は13時45分発と時間は丁度良いが、途中の木曽福島で終点になってしまう。俺達が行くのは中津川なのでこいつには乗れず、14時50分まで待たなければならない。ただ、この時期、中央西線には救世主が現れる。

 

「救世主?なにそれ」

 

「それはな・・・これや!」

 

 俺が指差したのは中津川方面の電光掲示板。そこには『14:18 臨時快速 名古屋』と書かれている。

 

「快速?この区間に快速は一本もないはずですけど」

 

「本来はそうやねんけどな、実はこの時期だけ臨時で快速が出てんねん」

 

 その快速の名は『ナイスホリデー木曽路』。本来、中津川〜名古屋間で運転される定期の快速1往復が、土休日ダイヤ適用日のうちの特定日に限って塩尻〜名古屋間で運転されるというとってもナイスな快速だ。

 

 と言う説明をすると、

 

「へぇ、ナイスですねぇ〜」

 

 言うと思った!ノリのええ紗里の事やし、絶対言うと思った!

 

「じゃあ、これに乗るんですね」

 

「せや。これ乗ったら名古屋到着が1時間も早なるからな」

 

 という事で、この臨時快速で一気に名古屋までワープする事に。しかし、この電車まちと思しき人達が集まり始めていたので列に並んで電車が入線するまで待つことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まもなく、4番線に電車が参ります。危ないですので黄色い線までお下がりください・・・』

 

 お待たせしました。いえ、お待たせしすぎたかもしれません!と言わんばかりに14時8分、これから乗る電車が4番線に入ってくる。気になる車両は313系1300番台。見たところ特に表示幕はただの『快速』のようだが・・・

 

 俺達は最前列にいたので席は容易に確保出来た。しかし・・・

 

「総一さんの横に座るのは私です!」

 

「いーや、あたしだね!」

 

 誰が俺の隣に座るのかで、彼女達が言い争いを始めてしまう。この小説っていつからラブコメになったん?

 

「まあまあ、途中で交代したらええやん。このままやったら人の迷惑になるで」

 

 その言葉でハッと気がついたのか、二人は顔を赤らめて座る。最初に隣に来たのは香里奈だ。

 

「す、すいません。つい熱くなっちゃって」

 

「もうええよ。次からは自重してくれ」

 

「はい・・・(あー、優しすぎます!もっと惚れちゃいますよ・・・/// )」

 

 それをみていた他の乗客は・・・

 

「コーヒー飲みたい・・・」

 

 あの、これって鉄道小説ですよね?

 

 そんなこんなで14時18分、座席を全て埋めて塩尻を出発。左を見るとさっき通った東京からの路線が分岐していく。この塩尻駅はもともと東京方面と名古屋方面の線路は繋がっていたが、長野への篠ノ井線と直通しやすくするために工事が行われ、線路が分断されてしまい、中央本線の東西を跨ぐ貨物列車や臨時列車などは塩尻でスイッチバックするか、塩尻を通らない連絡線を通らないといけなくなった。

 

 しっかしこの快速、何と言っても一番の売りは速達性やろう。さっき香里奈が言った通り、木曽方面と名古屋を行き来するためには高いお布施を払って特急しなのに乗るか、『遅い』・『少ない』・『短い』の三拍子揃った普通列車に乗るかしかない。しかし、この快速、中津川まではほぼ特急並みの停車駅で走ってくれるので18きっぱーにとっては非常にありがたい。ただし普通より10分速いだけというのはツッコんではいけない。

 

 電車はスイスイと進んでいき、車窓も風光明媚になっていくが、それと同じ様にスピードも落ちていく。ここの区間は峠越えの区間なのでカーブも多く、しかも、単線区間がちょこちょこあるので、いくら快速といえども、振り子装置のない313系ではスピードが出ないのだ。

 

 途中の駅でも乗り降りがあるが、乗客の数は少し増えたくらい。

 

 電車は上松、南木曽と過ぎていき、長野県最後の駅、田立を通過して、岐阜県に突入。そして中津川駅に着いたのは15時48分。ここから名古屋方面は電車も1時間に2本に増え、この8828Mも、定期の快速5744Mと番号を変えて名古屋まで直通する。

 

 しかし、さっき俺はこう言ったはずや。『中津川までは特急並みの停車駅で走ってくれる』と。中津川からは定期の快速になるが、その快速の停車駅は多治見までの各駅、高蔵寺、春日井、勝川、大曽根、千種、鶴舞、金山ととにかく多い。中津川〜名古屋間、21駅あるんやけど、停車駅の数は実に17駅。たった4駅しか通過しないのだ。これは高山本線の始発と最終の一部通過の普通列車より通過駅が1駅少ない。だらしないで!快速が普通に負けるなんて!さっきまで特急並みの停車駅で運転していたのに急に各駅に停まり始めるのを見ていると泣きたくなってまうような速達性だが、そこらへんはJRさんが需要をよく考えて作った停車駅仕方がない。

 

 中津川を出て、電車はのんびり各駅に停車していく。紗里も香里奈もとっくに寝てしまっている。俺も夢見心地になってきたのか、この辺りはあんまり覚えていない。次に覚えているのは多治見を出たあたり。ここからやっと通過運転を始めるが、4駅しか通過しないので全然快速の感じがしない。そして電車は各停区間に再び入る大曽根駅に到着。ここからまで来ると電車はかなり混雑してくる。この快速6両やからな。

 

 そして17時16分。中央本線の終点、名古屋駅に到着。ここまでで約10時間。まだ、関西は遠いな・・・

 

 




お待たせしました!三日ぶりの投稿でございます!
本当はもっと早く出来るはずだったんですけど、総文字数が74000字ぐらいになっていて、話数もこの話で四十四話だったのでゾロ目にしてまえ!と字数を調整してたらめっちゃ時間かかりました(汗)
それにしてもナイスホリデー木曽路、来年以降も走ってくれるんですかねぇ。個人的には結構面白いん列車やと思うんですけど。
それでは次回。感想等お待ちしています。
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