大石からジェットカーに乗って3駅、御影駅に到着。この駅では優等列車を2本待避するために2番線に入る。
アズナスを撮影した後、特に何もすることもないので待っていると、通過放送が流れる。梅田方面は女性のアナウンスやけど、聞いてて安心する声やな・・・
『まもなく、1番線を電車が通過します。黄色い線の内側へお下がりください・・・』
その後、音楽が流れて2本目の電車、快速急行がやってくる。この駅のホームは急カーブ上にあるので、ホームが近鉄車両6両分を確保できず、快速急行は全列車通過しているのだ。ちなみに、1本目の直通特急は改札を出ている最中に通過しましたのであしからず。
「う、うるさいですね・・・」
今、快速急行が通過してるんやけど、車輪がキィキィ軋む音でめちゃくちゃうるさい。
さっきも言ったんやけど、急カーブ上に駅があるので制限速度も遅く、両数も8両と長いので通過時間が長いのだ。
十何秒かかってようやく電車が通過していく。長かったなぁ。
次に向かったのは二駅先の魚崎。
ここの巡礼も済ませて、神戸市を脱出。西宮の次の駅、今津に殴り込み、いよいよ我らがタイガースの聖地、KOUSHIENに足を踏み入れる。
「あー、ついたついた」
「虎党たるものここは外せませんからね!」
言って香里奈は甲子園にあるうちの1店舗、甲子園西口店の写真を撮る。この店は甲子園球場のレンガをモチーフにした店で、タイガースグッズも売っているという。流石です。
しかし、この店は2018年に開店したばっかの最新鋭の店舗なのに僅か3年でアズナスの看板を下ろすという、ある意味一番不憫な店舗なのだ。合掌。
この後、東口の店舗にも行って甲子園を制覇。字面だけ見ると、めっちゃすごいことやった風に見えるな。
「もう10時間近く乗ってんのか・・・いつ終わるんやろ?」
「でも、まだまだ店舗は残ってますからね。撮り鉄の意地にかけて、総一さんを置いてでも、撮りますよ!」
「ちゃっちゃと撮ってくれよ。読者も絶対飽きが来てるからな」
ただでさえ山場を作りづらい話なんやから、そろそろ終わらせておかな・・・
ホームに戻ると、次にやって来たのは阪神の初見殺し、快速急行は近鉄奈良行き。
一体何が初見殺しかというと、こいつ、停車駅が一定ではないのだ。
種別的には特急の下位互換にあたるこの種別、しかし、さっきも言ったようにこいつは特急停車駅である御影、土日ダイヤに至っては芦屋も通過するのだ。こういう『千鳥停車』は阪神のお家芸で、昔は特急が止まるのに準急が通過したり、甲子園→梅田間をノンストップで走ったりする電車があったりと昔はカオスそのものやって、だいぶマシになったんやけど、依然として、お家芸は継承されているのだ。
これに乗って次に向かったのは尼崎。言わずと知れた車庫の最寄駅やな。
尼崎にもアズナスはあるのだが、一旦なんば線から先に巡ることにしているのでここは素通り。
そして、西九条駅に到着。ここでも巡礼を済ませ、いよいよ2009年開業の区間へ。
ただ、この区間は防音シェルターのせいで眺めは最悪。せいぜい安治川を渡る時にチラッと見えるぐらいで、その後はすぐに地下区間に入ってしまう。くそう、にっくきシェルターめ。
ドーム前店は2009年に開業した区間の中で唯一のアズナスで、全店舗の中でも一番南側に位置している。難波は近鉄のテリトリーやからな。
ホームも吹き抜け構造でとってもキレイ。
「それじゃあ、尼崎まで戻りましょう!」
これでなんば線内は全て制覇。残すは阪神本線の大阪梅田〜尼崎間のみで長かったアズナス巡礼もようやく終わりを迎える。
そして、尼崎まで戻っていよいよラストスパートをかけていく。
まずは大阪市内最西端、千船駅。ここで直通特急の通過待ちをするので急いで改札まで降りて、巡礼を済ませる。おかげで、10分のロスを回避することが出来た。
「さあ、総一さん。急ぎましょう!」
次に姫島駅。ここを済ませると、阪神本社の最寄り駅、野田。ここを巡ると残すは一駅となる。
「つ、次で最後やな・・・」
「は、はい・・・」
既に半日以上も電車に乗り続けて俺も香里奈も疲労困憊。香里奈はさっきまで張り切ってたけど、やっぱり無理してたんやな・・・
そして、今回の巡礼最後の駅、阪神大阪梅田駅に到着。残るアズナスの写真を撮って行き・・・
パシャ
「こ、これで終わりか・・・?」
「はい・・・お疲れ様でした!」
「終わった・・・!」
5時に出発してから13時間19分、ついに今行けるアズナスの全店制覇に成功!
「・・・ふふっ、こうやって一緒に疲れるまで電車を乗り尽くしたのもいい思い出になりますね」
「最初、香里奈に巡礼やるでって言われた時はゲッって思ったけど、終わってみれば、楽しかったな・・・」
「そうでしょう、そうでしょう。まあ、今日は疲れたんで、帰りましょうか」
「おう、そうか。おつk「総一さん、ちょっと・・・」
俺が背を向けて帰ろうとすると、香里奈が呼び止めてくる。
「?なんや」チュッ「⁉︎」
気が付けば、香里奈が俺の唇に自分の唇を重ねていた。
「今日はありがとうございました。また遊びましょうね!」タッタッタッ
言って香里奈は顔を赤らめながら阪急百貨店の方に駆けていった。そしてあっけにとられている俺が一人残される。
「・・・香里奈」
(その不意打ち、ずっこいわぁ〜!)
こうして、アズナス巡礼はひとまず終わりを迎えた。
その後・・・
「ふぅ、ようやく帰れるわ。今日はぐっすり寝てまおうか・・・」
「あ、おったおった」ヒョコ
「にょわっ!びっくりした・・・作者の野郎か。どないしたんや」
「創造神に向かってその口は・・・まあええわ。総一、あんたに言わなあかんことがあんねん」
「なんや」
「実はあんたらな、武庫川と芦屋のアズナスを巡ってへんねん」
「は?」
「そんな訳で後二駅、今から行ってもらいます。すまんな、俺が書き忘れてもうたから、頑張って!」
「ふざけんなぁぁ!」
そんな訳で、総一は追加で武庫川と芦屋まで向かうことになるのだった・・・