デート当日の日曜日、俺は集合場所の地下鉄梅田駅にいた。
時刻は6時半を少し過ぎたところ。
MINEを見てみると、香里奈はもうすぐ来るらしい。
すると、
「総一さーん」
「おっ、こっちこっち」
阪急百貨店の方から何やら大きなカメラバッグを肩にかけた香里奈が手を振ってこっちに向かって歩いてきた。
「おはようございます。じゃ、早速行きましょうか」
「せやな、ハイこれ。切符代は払わんでええよ」
言って彼女に一枚の磁気カードを差し出す。エンジョイエコカード。Osaka Metroと大阪シティバスほぼ全線が乗り放題になるめっちゃお得な乗車券である。
「いいんですか?」
「まあ、600円やしな」
「それじゃあ、お言葉に甘えますね」///
「ほな、行くか」
そう言って俺たちはカードを改札機に通し、ホームに向かう。
俺たちが最初に着いたのは新大阪駅。
言わずと知れた新幹線のターミナル駅だが、俺たちは別に新幹線とかに乗るわけではない。
やって来たのは駅の両側を挟んで走る新御堂筋の陸橋。何故こんなところに来たかは撮り鉄なら知っているかもしれない。
「着きましたね!」
ここの陸橋からは新大阪駅の西側に広がる網干総合車両所宮原支所、通称『宮原操車場』が眼下に広がっていて、この陸橋にはフェンスが立てられているのだが、一部の場所は柵状になっていて、トレインビューには絶好の場所なのである。
「さぁ、この子の出番です」
待ってましたと言わんばかりに香里奈がカメラバッグを開けて見るからにカメラを取り出す。
「今日はえらい高そうなカメラやな・・・」
「ふふん、前の誕生日の時に買ってもらったので、D6っていうんです」
D6。鉄道部で同人誌を作った時にその名前を聞いたことがあったな。確か、最近出たプロ用の最高モデルのカメラやったはず・・・
「あ、あれですあれ!」
彼女の視線の先には多数の221系が。225系100番代の追加投入でJR京都線や神戸線を追われた221系が、転属先の奈良へ向かう前にここで疎開留置をしているのだ。
勿論、疎開留置なのでこの時期しか見られず、架線のない路線に電車が何編成も留まっているのもあまり見られる光景ではないだろう。
カシャカシャ
俺が出庫していく電車を見ている間、香里奈は真剣そのものの表情で写真を撮り続け、撮り終わったのは10分ぐらい経った後だった。
「ふぅ、なかなかいいのが撮れました」
「終わったか。ぼちぼち行くか」
「はい!」
「次はどこに行きましょう?」
「ほな、野田阪神行こう。ちょっと見てみたい所あるから」
新大阪からは再び御堂筋線で南下、なんばまで行き千日前線に乗り換える。
やって来たのは野田阪神行き。これで終点まで向かう。
「総一さん、野田阪神に何か珍しいものがあるんですか?」
「まあ、そのうち分かるわ」
「?、なんでしょう?」
そんなやりとりをして数分、終点の二駅前の阿波座を出た後にこんなアナウンスが流れる。
『・・・この電車は野田阪神駅2番線ホームに到着します。野田阪神駅2番線ホームにはエスカレーターおよびエレベーターがございませんのでご利用されるお客様は次の電車にお乗り換えください・・・』
「もしかして、これですか?」
「そうそう」
俺がまず行きたかった場所、それは野田阪神の2番線ホームである。
野田阪神のホームは2面あるが、発着する電車のほとんどは片方の1番線に入り、もう一つのホーム、2番線は到着後、すぐに森ノ宮の車庫に入る朝ラッシュの後や、夜のごく一部の電車、それとイベント用にしか使われない。
いわば『幻のホーム』なのだ。
さらに・・・
『野田阪神、野田阪神、終点です・・・』
「あれ、ホームドアがない」
このホームにはホームドアがないのだ。千日前線はホームドアが全駅に設置されていて、この駅にも1番線にはホームドアがあるのだが、本数も少なく、回送しか来ない2番線には設置されていないのだ。
「いつも使ってる路線なのにこれは知りませんでした。まだまだ勉強しないといけませんね」
「せやな。ほな、次んとこ行こか」
今回は二人のデート回前編です。私自身、彼女がいた事ないのでデートの描写力が皆無です。後編はもうちょっとくっ付けるかも?
それでは後編で。