「よう。貴様がここへ来るとは珍しいな」
「久しぶり。ああ、ちょっと指揮官に頼まれごとだよ」
「なるほどね。しかし、ついこの前まで陸戦隊にいた貴様が指揮官の従卒に任命されるとはな」
「それを言うな、本人の俺が一番妙な気分なんだから」
「はは、やっぱりまだ慣れないか」
「そりゃあな。だいたい従卒なんてものは水兵から任命するのが伝統だろう」
「今は指揮官がフネに乗らないからだろう。それよりもっと大切な兵器を扱わなけりゃいけないからな」
「KAN-SENか。指揮官も大変だよ、あんな得体の知れないやつらをあいてにしなけりゃならんとは」
「いいじゃないか、ナイス(美人)ばかりに囲まれてるんだろ、うらやましいぐらいのもんだと思うがな」
「冗談言うな、あいつらはしょせん機械の人形だぞ」
「おいおい、めったなこと言うなよ。いまや我がネービーの切り札に」
「そうだな、あいつらが現れてから俺たちは見回りとおつかいがせいぜいの小間使いに格下げされちまったものな」
「仕方がないだろう、セイレーンとまともに戦えるのはKAN-SENだけなんだから」
「それだよ。だいたいあのセイレーンってのはなんなんだ?どこから現れて、何が目的で人を襲うんだ。海を占領していったい何をしようというんだ」
「俺が知るか。分かってるのはやつらがこっちを攻撃してくるから、こっちは身を守らなきゃならんということだけさ」
「で、そのためにキューブとかいう謎の物体から作り出したこれも正体がよく分からんKAN-SENを戦わせてる、と。妙だと思わないか?」
「何がだよ」
「セイレーンが現れたと思ったらキューブが発見されて、KAN-SENが出来て戦えるようになった。あまりにも都合がよすぎやしないか。セイレーンと戦うためにキューブを考案したとか、兵器としてKAN-SENを開発中にセイレーンが現れたとかいうのなら分かる、しかし実際は」
「……なあ」
「なんだ?」
「軍隊で考えていいのは『考えろ』と言われたことだけだぜ」
「……そうだったな。肝に命じておこう」
「そうしろ、その方がずっと楽だからな」
「気を付けるよ、どうもあの連中と顔を付き合わせてると、娑婆っけが出てきちまっていかん」
「そんなもんか、まあ見た目は女の子だからな」
「ああ。それもよく考えたらおかしな話だがな。よそにはフネの形したKAN-SENもあるんだろう、なんでここにはそういうのじゃなくて」
「おい、今忠告したばかりだ」
「おっと、すまんすまん。それより指揮官の用事を済ませないとな」
「ああ。で、何が入り用なんだ?」
「煙草をくれ。敷島か、なけりゃ誉でもいい」
「ほれ、ちょうど仕入れたとこだ。しかし煙草ぐらいならわざわざここで調達しなくても、将官待遇でいくらでも支給されるんじゃないのか?」
「そうもいかないんだよ、KAN-SEN達に煙草嫌いが多くてな。指揮官にも煙草を止めろとうるさいんだ」
「それで、支給を止められてしまったというわけか?」
「ああ。しかも施設のほとんどを禁煙にされてしまってな、休憩時間に決められた場所でしか吸えないんだ。指揮官と俺がそこに向かってるとよく『海ボタルの遠征だ』なんてからかわれてるよ」
「はは、気の毒に。まあ頑張って女たちの相手を務めてくれよ」
「けっ、ひとごとだと思って気楽に言いやがる。あーあ、早く通常勤務に戻してくれないもんかね」