酒保にて   作:平沢ヒラリー

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第2話

 「おい、頼んでおいた品は届いたか」

 「明日の便で着く予定だ、来たらすぐ運ばせるよ。しかし、無煙炭なんて何に使うんだ?」

 「バーベキュー大会だよ。食材は用意したんだが、ここにきてどうせやるならホットプレートより炭火がいいと言いだしたもんでな」 

 「おいおい。いくらKAN-SENさま達とはいえちょっと自由にさせすぎじゃないか」

 「発案者は指揮官だよ。それにこれはKAN-SENのために開くわけじゃない、整備兵の慰労が目的だ」

 「整備兵の?」

 「ああ、つい最近大規模な作戦があっただろう。あの期間中整備兵たちは休養どころかまともに眠る時間もなく働きっぱなしだったからな」

 「KAN-SENの整備ってのはそんなに大変なのか」

 「本体は人間と似たようなもんだ、休めば回復するし怪我しても専用の医療機器やら何やらで治せる。が、艤装の方はそうもいかない。こっちは普通に整備点検が必要だが普通の兵器よりも複雑でややこしいうえに交換用の部品も少ない。部品作りから始めなきゃいけない時もあるぐらいだ」

 「それは、聞いただけでも大変そうだな」

 「見ていて気の毒になるぐらいだよ。朝も夜も関係なし、交替で仮眠をとりながら働いてるんだからな。まさに月月火水木金金ってやつさ」

 「道理であいつらがここに来ると妙にくたびれてたり、異様に騒いだりすると思ったよ。それだけ忙しければ無理もないな」

 「まあ多少のギンバイ(物資のちょろまかし)は大目に見てやってくれ。そうだ、それと酒はあるか」

 「おお、ちょうどいいや。ダルマ(ウヰスキー)があるんだ、持っていってくれ。主計からの差し入れだ」

 「それゃありがたいな。と、言いたいが肉を食う予定だからなあ。ビールの方が嬉しいんだが」

 「そうか、じゃあ適当に用意するよ。何本ぐらい必要かな」

 「そうだな、KAN-SEN達も飲むだろうから」

 「え?ちょっと待て、KAN-SENは人間の酒を飲めるのか」

 「ああ、そうだが。何を飲み食いすると思ったんだ?」

 「いや、あいつらは機械なんだろう。それに何か、ガソリン製の特殊な食糧みたいなもんがあると聞いたことがあるが」

 「そりゃ連中の装備用だよ。あれは普通のガソリンで動くんだが、補充するには直接口から摂取する必要があるみたいでな、それで食い物みたいな形に加工してあるんだそうだ」

 「なんだそりゃ、普通に給油は出来ないのか?」

 「技術部のやつらが色々試してるそうだが、どうもうまくいかないらしい。理由は聞くなよ、俺もよくは知らないんだから」

 「だろうな。しかしということは、KAN-SENってやつは実は人間とそう変わらないのかね」

 「ああ、身近にいるとそう思う時もあるよ。ゲームが好きだったり、アイドルに憧れてたりとかな」

 「ふーん……なあ、だとすればだよ」

 「何だ?」

 「KAN-SEN達はポスる(寝る)ことも出来たりするのか?」

 「その質問は何度も聞いたがな、知らん。だいたい兵器にスタン(欲情)するなんてまともな男の考えじゃないぞ」

 「おいおい、あれだけボディナイス(肉体美人)な女たちならむしろ自然だろう。貴様だって知らないわけじゃあるまい」

 「女はブラック(玄人)でじゅうぶんだよ、利用する機会が増えたのは否定しないがな」

 「寂しいことを言うな、せっかくのチャンスだってのに」

 「指揮官みたくエム(モテる)な人ならともかくな。俺みたいなエフ(モテない)は今の環境は割り切らないと大変なんだよ」

 「そういうものか……整備のやつらも同じなのかな?」

 「どうだかな。けどヘル(Hな)本や動画なんかは人気みたいだし、やっぱり似たようなものじゃないか。いや俺よりもっと近いところでKAN-SEN達と接してるわけだから」

 「……『兵隊さんはかわいそうだね、また寝て泣くんだよ』か」

 「まあ、今度のパーティーじゃせいぜい楽しんでもらうさ。それじゃあこのビールも運んでおいてくれよ?」

 

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