酒保にて   作:平沢ヒラリー

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書き忘れてましたが、このお話の時代はゲームよりも少し前という設定で書いています。


第3話

 「そういえばさっき、白衣を着たのが何人かここに来たんだが。あれが科学研究室ってやつらかい」

 「うん、来てたか。ああそうだよ、妙な連中だっただろう」

 「やけに青っちろいやつらだったな。あんなのが海軍にいたとはね」

 「あいつらは軍人じゃなくて文官だからな。民間の研究所から派遣されてきたんだ」

 「道理でね、階級章を付けてないしここの使い方も知らないから変だと思ったよ。だったらひとことそう言えばいいものを」

 「自分たちから何かを言うような輩じゃないからな。普段から聞かれたこと以外、何も言わないんだよ」

 「面倒なやつらだな、指揮官は何も言わないのか」

 「あいつらがいないとKAN-SEN達の研究は出来ないからな。あまり好ましく思ってはいないだろうが」

 「まあそうだろうな、やけに臭うし不潔だったし、およそ海軍に似つかわしい存在じゃない。しかし、KAN-SENは女だろう。あんなのじゃさぞかし嫌わてるんじゃないのか?」

 「もちろん。やつらの所に行くよう伝えると、いつもうんざりした顔をされるよ。もっともあいつらにとっちゃあKAN-SENは単なる研究対象だから、好かれようとは思ってないだろうがな」

 「もったいない。この前の整備兵たちもだが、男として情けないとは思わんのかね」

 「KAN-SENを間近で見てたらそんな能天気な感情は湧かないよ、むしろ恐怖や畏敬の念しか出てこなくなるね」

 「そうか?そりゃ、軍艦の兵器を扱う女なんて下手に手を出したりは出来んだろうが、しかし」

 「それだけじゃない、こんなことがあったんだ。指揮官から頼まれて書類の入った段ボールを運んで時なんだがな。通りかかったKAN-SENの子が手伝ってくれたんだが」

 「いい子じゃないか、それがどうした」

 「重たい、と言って落としたんだよ。普通の女なら分かる、だがやつらは日ごろ数百キロはあろうかという大型の兵器を片手で持ったり背負ったりしてもなんともないんだぜ」

 「なんでだ?」

 「よくは知らんがなんでも、KAN-SENの装備はその子の身体の一部みたいなものだから重さを感じたりはしないそうなんだ。つまりやつらは腕や足を自由に取り外し出来るようなものなんだよ」

 「まあそれは、少し怖いかもしれんが。しかしいまさらじゃないのか、そもそも海面の上に浮かんで巨大な怪物と戦えるんだぞ」

 「たしかにな。だが、俺たちはKAN-SENのことを何も分かっておらん。そういう特殊な力があの兵装にあるとして、どうして人間がそれを使えないのか、本体の女たちはフネの記憶を持つというがなぜあの戦争の時代のものばかりなのか、女やフネの形ばかりで男がいないのはなにか理由があるのか。分からないことだらけなのにそれを建造して兵器として使っているんだ。危ういと思わんか」

 「そういうのを考えるのは上の連中の役目だろ。前にも言ったかもしれんが俺たちは目の前で起きたことに対応して動くだけ、それが軍隊という所だ。嫌なら出世するか辞めるんだな」

 「そうか。そうだったな」

 「貴様はどうもあれこれ考えすぎるからいかん。もっと呑気にかまえておかんと身が持たんぞ」

 「ああ。これも従卒なんてものを仰せつかったせいだろうな。俺もあいつらを遠くから眺めて目の保養にする立場のままでいたかったよ」

 「いまさら泣きごとを言うのはよせ、少し気晴らしでもしろ。そうだ、今度の非番で一緒に街にでも行かんか」

 「外出か、いいかもしれんな」

 「ああ。球を撞くか、それとも麻雀でもしようじゃないか」

 「球撞きはいいが麻雀は遠慮したいな、ひどい目に遭ったばかりだ」

 「何かあったのか」

 「いや、こないだKAN-SEN達と卓を囲んで大負けしたものでな」

 「何?ちょっと待て。貴様、KAN-SENを気味悪がっているのではなかったのか」

 「仕方あるまい、俺は基本的に彼女たちからの頼みを断れる立場におらん。指揮官が間に入ってくれたから助かったが、あやうく手持ちの金どころか貯金まで巻き上げられそうになった」

 「ふーん。やはり戦いの場に身を置いていると勝負運が強くなるのかな」

 「というよりほとんどのKAN-SENはコンピューターみたいなものを積んでいるから計算が速いんだよ。それで和了れる確率を計算しながら打つんだ、生身の人間じゃかなうわけがない」

 「負け惜しみはよせ。おおかた勝っていい所を見せようとでも考えたからだろう、ヘル(助平)な欲を出すからそんな目に遭うんだ」

 「そんなわけあるか、貴様じゃあるまいし。『ルールを覚えたばかりの初心者だから手加減してくださいね』なんて言うから油断してたらまたたく間に狙いうちだよ」

 「おいおい、そりゃカモから巻き上げる時の典型的な手口じゃないか」

 「ああ。だから、終わったあと空恐ろしくなったよ。KAN-SEN達は生身の女と接したことがないはずなのにどこでそんなやり口を身に付けたのかと」

 「おきゃぁがれ、たいがいの女はそれぐらいの手練手管は誰に習わずとも自然と覚えるもんだ。馬鹿馬鹿しい、心配して損したよ」

 「そう言うな、これでもこっちは色々大変なんだ」

 「まあ女のご機嫌取りが大変なのは分かるがな……どうだ、今度の外出では将校クラブにでも遠征して、女の心理を学ぶ実地研修といくか?」

 

 

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