【完結】ザコの旅   作:クリス

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8話 モンベル ステラリッジテント2型 32,120円(税込)
8-1


 

 

 

 

 

「ここはこのxを代入して……」

 

 寒さもますます増してきた12月。人気もすっかりなくなった図書室で、ボクは一人テスト勉強をしていた。

 

「この公式が……」

 

 今日はリンはいない。さっき校舎の窓からビーノが走っていくのが見えた。たぶんテスト勉強でもするんだろう。

 

「あれがこうだから、えーと……」

 

 一人きりでいると独り言が多くなる。ボッチにとって、会話相手なんて基本的に自分くらいしかいないからだ。

 

 もちろん今は違うけど、身体に染み付いた癖はそう簡単に抜けるものじゃない。

 

 思い返してみれば、最近はいつも誰かと一緒にいたから、こうして一人で勉強するのはすごく久しぶりに感じる。

 

 ちょっと寂しいと思ってしまうのは、贅沢なんだろうか。

 

 そう思うと、なんとなく恥ずかしくなって思わず髪をかく。色の薄い黒髪が、指に絡まる。

 

「双葉ちゃんの髪ボサボサだね。だめだよーちゃんと手入れしなきゃ」

 

「ぴゃああ!?」

 

 突然真後ろから聞き覚えのある声に話しかけられて、身体がびくりと跳ねる。

 

「え、だ、誰ぇ?」

 

 慌てて振り返る。

 

「あはは、双葉ちゃん驚きすぎだって〜」

 

 ケラケラと笑う斉藤さんがボクを見ていた。なんだ、斉藤さんか。驚いた。

 

「がお〜たべちゃうぞ〜! ふふっ、なんてね〜」

 

 爪を突き立てるジェスチャー、猛獣の真似のつもりなんだろうか。斉藤さんも美人だから妙に様になる。

 

「勉強? えらいね」

 

「明後日テストだもん。ここなら人も少ないしさ。斉藤さんは?」

 

「わたしもちょっと勉強しようかなーって思って。それにしても双葉ちゃん、髪すっごいぼさぼさになってるよ」

 

 斉藤さんに指摘され自分の髪を撫でる。あちこち飛び跳ねた枝毛。指に絡まる髪。うん、いつもどりだ。

 

「せっかくだし梳かしてあげる。わたしけっこう得意なんだよ〜」

 

「え、悪いよそんなの」

 

「いいからいいから〜」

 

 ポケットから櫛を取り出した斉藤さんがボクの制止も聞かずに背後に立ち髪を梳かしはじめる。

 

「前から双葉ちゃんの髪どうにかしてあげたいなあって思ってたんだよね〜」

 

 櫛と斉藤さんの指がボクの髪を撫でていく。慣れない感覚に思わず身震いする。

 

「うん、やっぱり思ったとおりごわごわだ。双葉ちゃん、いつも何で髪洗ってるの?」

 

「えっと、石鹸だよ」

 

 固形石鹸で頭を洗って泡で身体を洗う。これぞジャスティス。リンスだのシャンプーだの、硬派なボクには必要な──

 

「だ、ダメだよ双葉ちゃんそんなことしたら!」

 

「ひゃ!?」

 

 温厚を絵に描いたような性格の斉藤さんからは想像もできないくらい声を荒げて注意され、思わず身体がびくりとする。

 

「そ、そんなにダメ?」

 

「ぜったいダメ。もう、せっかくかわいいんだからちゃんと手入れしないともったいないよ」

 

「か、かわっ?」

 

 聞いたこともないような言葉を言われ身体が硬直する。そしてだんだん恥ずかしくなってきて顔に熱が集まっていく。

 

「ぼ、ボクべつにかわいくなんて……斉藤さんのほうがよっぽど……」

 

「そう? わたしは初めて話した時からお人形さんみたいでかわいいな〜って思ってたよ」

 

「う、う、うぅ……」

 

 冗談で言っているのか本気で言っているのかわからないけど、誉め殺しという未知の攻撃によって、ボクのクソザコメンタルは早くもキャパオーバーをおこした。

 

「あはは、ごめんね〜 恥ずかしがらせちゃったかな? お詫びに〜」

 

 斉藤さんがボクの髪に手を伸ばし何やら始めた。いつもリンの髪にいたずらしているおかげなのだろうか、妙に動きが手慣れている。

 

「はいできた〜」

 

 手鏡を顔の前に差し出される。

 

「うわぁ……」

 

 思わず感嘆の声をあげる。

 

 ボサボサだった髪は丹念に梳かされ光を放ち、耳を覆っていた野暮ったい横髪は耳を大きく出しながらサイドで三つ編みに編み込まれ、今までの野暮ったさが嘘のようにスッキリとしている。

 

「か、かわいい……」

 

 髪型一つでここまで変わるなんて思ってもなかった。まるで自分が自分じゃないみたいだ。

 

「でしょ〜? ちゃんと手入れすればもっとかわいくできるんだよ?」

 

「そ、そうなの?」

 

「そうだよ。だから双葉ちゃんもちゃんとお手入れしようね? わたしが教えるからさ」

 

 表情はいつもどおりニコニコしているのに、なぜだか妙に圧を感じる。

 

「ね?」

 

「……はい」

 

 その圧に耐えきれず折れると、斉藤さんはあっという間に元に戻った。

 

「ふふ、せっかくだし一緒に勉強しよっか」

 

「うん、そうだね」

 

 冬の学校。人気のない図書室で、紙と鉛筆の音がこだます。

 

 

 

 

 

「そういえば、さっき2階の理科室に大垣さんと犬山さんいたよ」

 

 そんなこんなでしばらく勉強していると、参考書とノートを見ていた斉藤さんがそんなことを言ってきた。

 

 あの二人まだ学校いるんだ。テスト大丈夫なのかな。とくに千明。

 

「なんかコンロ使っていろいろやってるみたい」

 

「コンロ? 新しいキャンプ料理でも研究してるのかな」

 

 なんにせよ今やるべきことじゃない。ちょっと気になってきたなあ。まだいるかな。いるだろうなきっと。

 

「気になる?」

 

「うん、ちょっと見に行ってこようと思う」

 

「じゃあ一緒に行こうよ。わたしも気になるし」

 

「だね、いこっか」

 

 勉強道具を片付け席を後にする。

 

 ぶっちゃけ勉強自体は余裕もいいところなので、そこまで必死にやらなくてもいいのだ。

 

 二人で図書室を後にする。さて、千明とあおいはなにをしてるのかな。

 

 

 

 

 

「いた」

 

 理科室の扉の窓をそっと覗き込む。奥の実験台で二人がなにやら怪しい動きをしている。

 

『なあ、これめちゃ熱くなってるけど、本当に大丈夫なのか?』

 

『一応ネットにはそう書いとるで。てかやるって言い出したのアキやろ』

 

 ここからだと二人が背になってよく見えないが、音的に何かを炒めているらしい。

 

 テスト勉強もしないでなにしてるんだろう。

 

「なんか、そうしてると探偵さんみたいだね。あんぱんと牛乳買ってこよっか」

 

「ちょっと食べたい……けど、それはあとにしよっか」

 

 これからどうしよう。まあいいか、べつに隠れる理由もないし普通に入ってしまおう。

 

 ドアをノック、中に入る。

 

「ダメだぞー テスト勉強しなきゃ」

 

「お、ロリ子じゃねえか。まだ──」

 

 振り返る千明。その瞬間、ジュっという何かが焼けるような音がした。

 

「あっつ!?」

 

「だ、大丈夫!?」

 

 突然悲鳴をあげて飛び跳ねた千明に慌てて駆け寄る。実験台の上を見ると、フライパンがコンロにかけられていた。

 

「ああもう、余所見するからや! 水出したから早う冷やしい」

 

「い、イヌ子だってさっきやらかしたじゃねえか……」

 

「ん〜? なんのことかさっぱりわからんなぁ」

 

「こ、こいつ、どさくさに紛れてなかったことにしようとしてやがる」

 

 よく見たらあおいの指に包帯が巻かれている。うん、あおいも火傷したんだな。

 

「なんのことやろなー 変なアキやなー」

 

「ふふ、なんか面白いね」

 

 熱い熱いとわめく千明、ホラ吹き顔で必死になかったことにしようとするあおい。そして呆れるボク。

 

 場所は変わっても、野クルは相変わらず騒がしい。

 

 

 

 

 

「へぇ、スキレット買ったんだ」

 

「ああ、この前しまりんのじいさんのスキレット見てから妙に欲しくなってな。甲府で買ってきた」

 

 シーズニングが終わったスキレットをやりきった顔で見る千明。台の上には木製のお椀もある。これも買ってきたんだろう。

 

 よく見ると周りにやすりとか木くずが散らばっているし、いろいろやってたみたいだ。

 

「でな、聞いてくれよ! せっかくいい感じの木皿だと思ったのに、注意書き読んだら水もスープもNGなんだとよ」

 

 たぶんホームセンターとかで売ってる安い木皿なんだろう。なんとなくスープとかダメそうって思ってたけど、やっぱりダメなんだ。

 

「なるほど、だからヤスリがけして表面のコーティング剥がせばワンチャンいけるんじゃないかって?」

 

「おう、そういうこった」

 

 きっとラッカーかなにかを剥がして油でも塗るっていう魂胆なんだろう。

 

 まあ悪い考えじゃないと思うけど……

 

「でも、そんなことしてて大丈夫なの? 明後日だよテスト」

 

「うぐっ……」

 

 ボクの言葉にバツの悪そうに目を背ける千明。やっぱり勉強してなかったか。

 

「あ、明日から本気出す」

 

「いや、それ絶対やらん奴のセリフやないか」

 

 あおいの視線の温度が絶対零度にまで下がる。この様子だと、あおいも千明に巻き込まれたんだろうなあ。

 

「い、いいんだよー! あたしは尻に火がつかんと動けん女なんだよー!」

 

「言っとることがダメ人間のそれやな」

 

「い、言ったなー! 吠え面かくなよー! あたしだってな、あたしだってなぁ!」

 

「ふふふ、ほんと面白いねこの子たち」

 

「いっつもこんな感じだよ二人は」

 

 まるでコントみたいな言い合いを始める二人を見て、ボクと斉藤さんが笑う。

 

 ピコン! そんなやり取りを眺めているとスマホの着信音が三つ重なって鳴った。

 

 野クルのグループラインになでしこからメッセージが入っていた。

 

「クリスマスキャンプやりませんか? だって」

 

 クリスマスキャンプ、たしかに悪くない。

 

 ちょうど冬休みと被ってるし、野クル二回目のキャンプにはふさわしいんじゃないだろうか

 

「ほぉ、ええやん。あ、でもうち無理やわ。クリスマス彼氏と過ごすし」

 

 なん……だと……?

 

 あおいの衝撃発言にボクと千明の顔が凍りつく。

 

 え、うそ? あおい彼氏いるの? いや、たしかにあおいめちゃくちゃかわいいしいてもおかしくないけど……

 

 いつできた? 相手は誰? あたまの中で疑問がぐるぐる回り出す。

 

「うそやでー」

 

 ……なんだ、うそか。

 

 あんまりにもあっさり告げられたから本気にしてしまった。

 

「にしても彼氏かー いいなあ彼氏、いくらでもタダ飯食えんじゃん」

 

「なにその典型的な悪女」

 

 もはや人扱いすらしてない。千明は人間をATMとしか思ってないのか。

 

 彼氏、彼氏かぁ……

 

「ボクは彼氏はいらないかなあ。だって」

 

 青いタンクにシルバーメッキのフェンダー。エンジンは2ストロークの単気筒。

 

 この世で最もかっこいいものを知っているボクに、彼氏なんて俗な存在は必要ないのだ!

 

「だって?」

 

「バイクが彼氏だもんね!」

 

 親指を自分の顔に突き立て渾身のキメ顔で言い放つ。

 

 そしてコンマ数秒で後悔した。

 

 ……

 

 …………

 

 …………………

 

「ロリ子、なんかめっちゃプルプルしてるけど大丈夫か?」

 

 純粋に心配する千明。

 

「顔真っ赤やし涙目やん。きっと、言ったあとで恥ずかしくなってしもうたんやろな」

 

 淡々と追い討ちをかけるあおい。

 

「わたしは嫌いじゃないな〜 そういうの」

 

 そして止めのクリティカルヒット。

 

 放課後の理科室。人気も少なくなった校舎にクソザコの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「死にたい……やだもう……」

 

 理科室の実験台に顔を突っ伏して羞恥心に悶える。

 

「ま、まあ、元気だせって。誰にでも黒歴史の一つや二つあるから」

 

 千明がボクの頭をポンポンする。嬉しいけどごめん、なんの慰めにもなってない。

 

 もうこれで何回目だよ! 何回自爆すれば気がすむんだよぉ!   

 

「ごめんな双葉ちゃん、からかいすぎてもうたわ。飴ちゃんあげるからそう落ち込まんといて?」

 

 顔をあげてあおいから差し出された飴を口の中でモゴモゴさせる。みかん味だ。

 

「ありがと……おいしい……」

 

 ちょっと元気が出てきた。顔をあげて頬を叩く。

 

 よし、山中双葉復活。

 

「そういえばさっきから気になってたんやけど、双葉ちゃん髪型変えたん? めっちゃ似合っとるやん」

 

「ああ、言われてみればボサボサじゃなくなってるな。そっちのほうが全然いいじゃねえか」

 

 急に褒められてさっきまでとはべつの意味で恥ずかしくなって後ろ髪を指でくるくるいじる。

 

「う、うん、斉藤さんにやってもらったんだ」

 

「へぇ、あの双葉ちゃんのボサボサ髪をなんとかしてまうなんて、斉藤さんすごいやん。そういうの得意なん?」

 

「うん、よくペットのトリミングしてるんだ。うちのワンコもほっとくとすぐボサボサになるんだよね〜」

 

「そうやったんか、うちもずーっと気になってたんよ。ほんまありがとうな斉藤さん」

 

「いえいえ〜 慣れてますから」

 

 なんか言外にワンコと同じ扱いだと言われているような気がしてならないが、きっと気のせいだと思いたい。

 

「もう石鹸なんかで洗っちゃダメだからね双葉ちゃん!」

 

「石鹸って……どうりでボッサボサだと思ったわ」

 

「双葉ちゃん……それはさすがに引くで」

 

「……はい、もうしません」

 

 三人から総スカンをくらいあえなく首を縦に振る。どうしよ、家にあるシャンプー使ってみようかな。

 

「ふふふ、そうだ! さっき言ってたクリスマスキャンプ、わたしも参加させてもらってもいいかな?」

 

 斉藤さんからの突然の申し出にボクたちは目を丸くした。

 

 言っては悪いけど、あまりこういうことに興味がなさそうだと思っていたから意外だ。

 

「最近みんなキャンプハマっててどんなのかなあってずっと気になってたんだよねえ。大丈夫かな?」

 

「もちろんええに決まっとるで! ちょうど誘おうと思っとったところなんよ。ええよなアキ、双葉ちゃん!」

 

「千明」

 

「ロリ子」

 

 一瞬千明と目を見合わせる。考えていることは同じようだ。斉藤さんに向き直り笑顔で頷く。

 

「ありがと〜 じゃあよろしくね!」

 

 これで五人になった。リンはどうするんだろう。できれば来てほしいけど、ちょっと難しいかな。

 

「それでキャンプのことなんやけど、一応うちら泊まりになると思うんよね。どないする?」

 

 ああ、そういえばそうだった。斉藤さんはたぶん何も持ってないだろうしテントに泊まりこみっていうのは難しいか。

 

「デイキャンプっちゅうのもあるから寝袋なくても全然大丈夫やで」

 

「あ、それなら大丈夫。お父さんにキャンプ興味あるって話したら、お金出してくれるらしくて。今度道具買うんだ」

 

 な、なんて太っ腹なお父さんなんだ。ボクのお母さんはクリスマスプレゼントくらいしか送ってくれないのに。

 

「何から買ったほうがいいかな? やっぱりテント?」

 

「いや、まずは寝袋だな。テントはうちらのに入れば……」

 

 何かに気がついたように言いよどむ千明。少ししてからボクも気づいてしまった。

 

「あ、待てよ。無理じゃね? 今五人だから……」

 

「ちょっと、厳しいね」

 

 テントは一応二つあるけど、三人で入るのはちょっと無理がある。

 

 よし、ここはボクがクソザコ野宿野郎としての本領を発揮する時がきたということだな!

 

「なら、ここはボクが野──」

 

「ダメに決まっとるやろ」

 

 あおいがボクの頭にチョップする。

 

「いたっ、な、なにすんだよー! まだなにも言ってないじゃないかー!」

 

「どうせ野宿する言うんやろ? ドヤ顔でなにアホなこと言っとんねん。んなもん却下や」

 

「だな」

 

「あ、あはは」

 

 しかめっ面に苦笑い。うーん、我ながらグッドアイデアだと思ったんだけどなあ。

 

「ダメ?」

 

「ダメ」

 

 そっかあ……野宿ダメなんだあ。楽しいのになあ……

 

 あの人間としての底辺を行く妙な解放感がたまらないのに。

 

 まあ、ダメならダメでべつの方法に変えるだけだ。

 

「わかった。しかたないからボクもテント買うよ。どうせそろそろ買おうと思ってたしね」

 

「え、お金大丈夫なのか? この前バイト探してただろ」

 

 千明が心配してくる。そっか、たしかにバイト探してるってなんて聞いたら普通はお金ないと思うよね。

 

「ふっふっふ、こう見えてもボク実はけっこうお金持ちなんだよ」

 

「そうなん?」

 

「うん、1学期に週7くらいでバイト入れてたらめちゃくちゃ貯まってた」

 

 具体的には原付の新車を一台買えるくらいには貯まっている。

 

 バイク買ったり免許取ったりしたうえでそれだから、本当ならもっと貯まっていたのだろう。

 

「週7って、休みねえじゃねえか」

 

「わぁ、大変だったね」

 

「さすがに一つのバイトじゃダメだから掛け持ちしてね」

 

 あの時は大変だったなあ。コンビニやってスーパーやって……思い返してみればよく務まったと思う。

 

 あの時は夢に向かって一直線だったから、とくに考えてなかったんだろうなあ。

 

「だからお金のことなら気にしないでいいよ」

 

 もちろんこの調子でポンポン使えばあっという間に底をつくのはわかっている。

 

 いいかげんバイト先見つけないとなあ。なんかいいのないかな。

 

「野クルで一番いいテント買っちゃうもんねー ふはは、うらやましかろー」

 

「くそう、ブルジョワめぇー」

 

「みっともない嫉妬やめいや。そんならテスト明け、みんなでカリブーなんてどうや? 斉藤さんもどう?」

 

「カリブーってアウトドアショップだよね? いいなあ、わたしも行きたい」

 

 満場一致。なでしこだけいないけど、きっと聞くまでもないだろう。

 

「よし! じゃあテスト明け、みんなでカリブー行くぞ!」

 

「「「「おー!」」」」

 

 人気の消えた放課後の校舎、四人の掛け声が吸い込まれていく。なんだか楽しくなってきたぞ。

 

 12月。今年も残すところひと月を切っていた。




用語解説

主人公の髪
ゲリラ豪雨に遭ったシベリアンハスキー(命名、大垣)
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