※あとがきにちょっとしたお知らせがあります。
22-1
年が明けて2ヶ月が経ち、今年も3月に入ろうとしていた。
道端の残雪もずいぶんと小さくなり今や溶けるのを待つばかり。静から動、冬から春へ、刻々と移り変わっていく。
長い冬が終わりを迎えようとしていた。
「って、言ってもまだまだ寒いよねー」
暦の上では春だけど、実際のところ冬と言っても過言ではない3月。当然のごとく山梨も冬の寒さに包まれていた。
「せやなぁ」
すっかり日も暮れた身延町。甲府のほうから家に帰ろうとしている車の赤いテールランプを眺めながらあおいと一緒にバイト帰りの道を歩く。
「3月でも雪降ったりするし、まだまだ油断できひんわ」
「そういえば何年か前すごい大雪降ったよね。自転車乗れなくてすごい困ったよ」
なにを血迷ったのか行けると勘違いして、擦り傷だらけになって帰ってきたのは今でも覚えている。
「あったなーそんなん。なんや懐かしいわあ。今年は降らんとええけどなあ……」
「さすがに今降られるとボクも困るなあ。そういえば自転車で思い出したけど、あかりちゃんの自転車どう? 調子悪いとか言ってない?」
「ううん。おかげさまでめっちゃ乗りやすうなったって喜んどったでー」
以前偶然あおいの妹の自転車を直したボクだったけど、しょせん応急処置にすぎないので、千葉の帰りに改めて整備しなおしに行ったのだ。
チェーンとスプロケットの清掃にブレーキワイヤーの張り直し。ヘタっていたブレーキシューの交換。我ながらいい仕事だったと思う。
「なあ、ほんまにパーツ代とか払わんでええの? なんやいろいろ交換したみたいやけど」
「気にしないでいいよ。家にあったの持ってきただけだし」
「おおきになー双葉ちゃん。やっぱ双葉ちゃんはほんま優しいなぁー そんなええ子はこうやー」
手を伸ばしてボクの頭を撫でるあおい。手袋越しだったけどすごく暖かくて思わず目を細める。
「あはは、くすぐったいよー」
とはいえまるで妹みたいに扱われるのは人生の先輩として納得がいかないので断固抗議する。
「もー言っとくけどボクのほうが年上なんだからなー」
「知っとるでー えらいえらい」
まるで聞いてない……まあいいや。あおいがしたいって言うならそのままさせてあげよう。
それも優しさというものだ。だからもっと撫でるのだ。
「そんでな。なんやサイクリングが趣味になったゆうてて今じゃいろんなところ行っとるんよ」
まるで誰かさんみたいやな。とつけくわえるあおい。嬉しそうな、それでいてちょっと寂しそうな瞳に夜の身延が映り込む。
「ちょっと心配?」
ボクが聞くとあおいが白い息をはきながらうなずいた。
「まあ……心配は心配やけど、こうやって大きくなるんやなって思っとる。姉としてはちょっと複雑な気分やけど」
「あはは、そんなんもんだよ。ボクも小学生のころよく自転車で海まで行ってたし」
「それえらい遠い気がするやけど……」
「そう? 甲府と同じくらいだよ?」
「三つ子の魂百まで……言ったもんやなあ……」
「どゆこと?」
「あ、気にせんでええでー」
まあいいか。
そんな風になんてことない話をしながら歩いていると、新早川橋にさしかかった。
いつもはここでお別れだ。押していたビーちゃんに跨りヘルメットをかぶる。
「気ぃつけてなー」
「うん。じゃ、またあし──」
『おーい!』
エンジンに火を入れようとしたところで後ろのほうからボクたちを呼ぶ声がした。
振り返る。千明がぜぇぜぇ言いながらこっちに走ってきていた。
「お、お前ら……バイト、早上がりだから……一緒にラーメン、食いに行こうって……ラインしたのに、置いてくたぁ、いい度胸じゃ……ねえか」
膝をついて呪詛を口にする千明。え? なんの話?
「大丈夫? お茶飲む?」
とりあえず喉が乾いてそうだったので持っていたお茶を差し出すと無言で受け取って飲み始めた。
あ、全部飲まれた。
「ふぅ、サンキューな。ってちがーう! お前ら! よくも勝手に帰りやがったなー! ラインしたのに!」
ぷんすかっといった感じで怒る千明。もうしわけないけど話がまったく見えてこない。
「そないなラインきとらんで。なあ双葉ちゃん」
「うん」
だいたい来週伊豆行くのにラーメンなんて食べに行っていいのだろうか。いや、千葉行ってるボクが言える立場じゃないか。
「はぁ? んなわけ……あっ、送信されてなかったわ」
「アキー」
「へへ、めんごめんご」
ボクとあおいはそろってため息をついた。まあ、そんなことだろうと思ったよ。
「ほな、また明日なー双葉ちゃん」
「うん。あおいも気をつけてね」
「おい! あたし無視すんな! なーなー久しぶりに野クル初期メンバーでメシ食いに行こうぜぇ」
あおいとボクの間に入り込んで肩をがっしりと組んでくる千明。これ、うんって言わないと絶対離してくれないやつだ。
「うーん、どうしよう……」
ラーメンの話聞いてたらちょっとお腹空いてきちゃったなあ。
「あたしあそこ行ったことないんだよーめっちゃ気になるんだよー!」
「最後のが本音かいな……ていうか、あとちょっとで伊豆なのになに外食しようとしてんねん」
「あたしだってうまいもん食いたいんだよー! リンとロリ子だけ千葉いきやがってー!」
向こうでうまいもんさんざん食ったんだろーと詰め寄ってくる千明。まあ、ちょっとくらいならいいかな。
「調子に乗って餃子とか頼まないようにね」
ボクが言うと、千明は白い歯を見せてにっこりと笑った。
「へへっ、わーってるって」
「……しゃーないなぁ。おばあちゃんが晩御飯作っとるからちょっとだけやで」
口ではそう言っても口元が緩んでるあおい。なんか久しぶりだな3人でご飯とか食べるの。
「ありがとよお前らー! 愛してるぜー!」
「はいはい、早う行くで」
「じゃボク先待ってるねー」
「あ! 一人だけバイクとかずりーぞ! あたしも乗せろー!」
「捕まるからやめいや」
そんな懐かしさを感じつつ。キックペダルに足をかけるボクなのであった。
「これが洲崎灯台だろ」
「おぉ、おっきな灯台」
リンの細い指がスマホの画面をめくる。
「で、これが鶴谷八幡宮」
「荘厳ですなー なにお願いしたの?」
「交通安全」
「あは、めっちゃありきたりなやつだ」
「どうせなら世界平和にすればよかったかもね」
「逆に壮大すぎるわ。それで、これがフラワーロード。菜の花が綺麗だった」
「へぇ、ほんとに花が植えられてるんだ。千葉ってこんな道あるんだね」
「すごい気持ちよかった。途中でめっちゃめかぶ臭いところあったけど」
「めかぶ?」
恵那の目が点になる。
「あはは、あったねそんなところ。浜に海藻が打ち上げられててさ。それがめっちゃめかぶの匂いだったんだ」
「匂いがめかぶそっくりだったから笑っちゃったよな」
3人で走りながらめかぶだめかぶだって妙なテンションになってたっけ。楽しかったなあ。
「醤油持ってきてたんだし、かじってみればよかったかも」
「腹壊しても知らねーぞ」
「あはは、すごい楽しそうだね」
放課後の図書室に恵那の笑い声がこだまする。
伊豆キャンまで残すところわずか。ボクたちはいつものように図書室で旅の話をしていた。
「けど、これもうキャンプっていうよりツーリングじゃない?」
「一応、九十九里でご飯食べたし銚子の海岸でテント張ったし、キャンプでいいんじゃない?」
「普通のキャンプは片道370キロも走ったりしねーよ。もう二度とやらんわ」
「ふーん、ほんとにー?」
向かい側に座ったリンの顔を覗きこみながら聞くと、リンの目がキョロキョロと泳いだ。
「ま、まあ、春休みとか、ゴールデンウィークとかなら……」
「やったー」
「ニヤニヤすんな。ていうか、その前にキャンプ付き合えよな」
「うん、わかってるよ」
だって約束したもんね。どこがいいかな。やっぱ本栖湖とかかな。いや、それはリンにお任せしよう。
「ふふふ、そのキャンプ。ちょいと待ってはくりゃせんか?」
「……いきなりどうしたんだ?」
「恵那?」
いきなり変なことを言い出した恵那。ほんとにどうしたんだろう。
そんなボクたちをよそに、恵那が悪い笑みを浮かべながら一枚のカードを取り出しテーブルの上に置いた。
「マジか……」
「えっ……いつの間に?」
カードを見たリンとボクはそれはそれは驚いた。
なぜならそのカードは、運転免許証だったからだ。しかも恵那の顔写真付き。
「ふっふっふー、リンと双葉が千葉行ってる間に取ってきちゃいましたー」
誇らしげに笑う恵那。
原付一種なら1日で取れるから不思議でもなんでもないんだけど、まさか恵那が免許を取るとは思わなかった。
「最初は18になってから車の免許取ろうって思ってたんだけど、二人がすごい楽しそうだからわたしも乗りたくなっちゃったよ」
リンと恵那とボクの3人で、よく図書室で話してたっけ。バイクの話。そっか、恵那もバイク乗れるようになったんだ。
「これでもう背中を見送る必要ないよね。だからあんまり置いてけぼりにすんなよー」
そう言って、恵那はニカっと笑った。誰に向けての言葉なのか。ボクにはなんとなく想像がついた。
リンが恵那のことを大事な友だちだと思っているように、恵那もまたリンのことを大事な友だちだと思っている。
ただそれだけのことなんだろうな。
「そっか……そう、だな……うん、そうだな」
向けられた想いを咀嚼していくようになんどもうなずくリン。夕陽に照らされたリンの顔は、これ以上ないってくらい笑顔になっていた。
「今度、一緒にツーリングとか……行く?」
「うん!」
……ボクはちょっとお邪魔虫かな。山中双葉はクールに去るぜ。なんてね。
クールに去ろうとしたボクの手が横から伸びてきた恵那の手にパシっと掴まれた。
「て、言ってもまだバイクないから、まずはそれからだけどねー 双葉、なんかいいのない?」
さりげなく掴んだ手を解こうと試みるけど、思いのほか力が強くて解けない。これじゃクールに去れない。
恵那だってたまには二人きりで話したいとは思わないんだろうか。そう思って目配せする。けど、恵那は首をかしげるばかり。
「ふふ、どうしたの? 双葉」
……いや、これたぶんわかってやってるな。しょうがない。こうなったら奥の手だ。
「ごめんね。ボクこれからバイトあるからまた──」
「双葉今日なにもないだろ」
リンー! 空気読んでよー! ていうかなんでちょっとムッとしてるんだよー
「おやおやおやぁ? どうして帰ろうとしたのかね双葉くん?」
わかっているくせにニヤニヤ笑う恵那。
いつもは恵那がリンをからかっているのを笑いながら見てたけど、いざされる側になってみるとなかなか厄介。
「どうせ遠慮して帰ろうとか考えてただろ」
そして相変わらずムッとしているリン。しかもバレてるし。ボクのボッチ時代に培ったスキルが通用しないなんて……
よし、ここまできたらなんとしても二人きりの時間を作ってやるぞー
「えっと……あの、その、えとえと………」
「……なに?」
「はい、なにもないです」
作れませんでした。
力なく席に座り込む。ボクみたいなクソザコにうまい嘘がつけるわけがなかった。
「あはは、変な双葉。それでね、どういうのがいいかな? リンと同じビーノにしちゃおっかなー」
「おそろいとかやめろよ」
「うーん、キャンプするならやっぱカブとか──」
夕陽が差し込む静かな図書室。ボクたちは新しいバイク仲間を歓迎した。ストーブがごうごうと音を立てて燃える。
「うぅ〜さむさむ」
「さむいねー」
暗がりの南部町。ライトに照らされた自転車の赤い反射板を追いかけながらペダルを漕ぐ。
「べつにボク一人で行けるしついて来なくてもよかったのに」
いつものように、ボクの家に突撃してきたなでしこ(最近は勝手に入ってくるようになった。まあいいって言ったのボクだけど)と伊豆に持っていくつもりのお菓子を買いにコンビニまで走っていく。
「だって、あんまん食べたかったんだもーん」
「あんまり食べすぎるとまた桜さんに本栖湖何周もさせられちゃうよ」
「自転車漕いでるから大丈夫! それにしても、双葉ちゃんの自転車かっこいいねー」
なでしこが一瞬だけ後ろを見てそう言う。
「ロードバイク? ってやつだよね。かっこいいですなー」
「旅行用の自転車でランドナーっていうんだ。お母さんのお下がりなの。もう4年くらい乗ってる」
ボクは自慢するように銀のクロモリのフレームを手で叩いた。久しぶりに乗ったけど、やっぱ自転車もいいなあ。
「だから荷台ついてるんだ。いいなーわたしもそういうのほしいなあ」
「あとで乗ってみる?」
「えっ、いいの!? 乗る乗る!」
ちょっとしかギアの付いてないミニベロで鼻歌歌いながら南部町から本栖湖まで走れるなでしこが、18段変速で11キロちょっとしかないランドナーに乗ったらどんなことになるんだろう。
なんか開けてはいけないパンドラの箱に手をかけているような気がするのは気のせいだろうか。
と、ゆるふわフィジカルモンスターの誕生の予兆に戦々恐々していると、目的のコンビニにたどり着いた。
「さむさむっ、はやく中入ろ! あんまんがわたしを待っているー!」
「もー目的変わってるよー」
ペダルのトゥークリップから爪先を引き抜き自転車を降り、なでしこと一緒に暗闇の中に青白く浮かび上がるコンビニに入っていく。
「いらっしゃいませー」
聞き覚えのある声。はっとして顔を上げるとコンビニの制服を着た恵那がレジの向こうに立っていた。
「あれ? なでしこちゃんに双葉?」
「えっ!? 恵那ちゃんここでバイトしてたの!?」
「コンビニでバイトしてるとは聞いてたけど……」
「ふっふっふ……バレてしまっちゃあ、しかたない。なでしこちゃんたちにはここで消えてもらおうじゃないかー!」
レジのバーコードリーダーを向けてくる恵那。銃のつもりなんだろうか。
「ふふっ、なーんてね。あーあ、ついにバレちゃったか」
スパイみたいでおもしろかったのにと笑う恵那。いつからバイトしてるんだろうか。リンと二人でツーリングした時の話的に1月ごろかな。
「教えてくれればよかったのに」
「だってそっちのほうがおもしろいでしょ?」
まあ、恵那らしいといえば恵那らしい。
「それで、二人はどうしたの?」
「えっとね! あんまん買いに来たんだ!」
「いや、伊豆キャンのお菓子でしょ?」
「ソ、ソウダッタネー ワ、ワスレテナイヨー」
忘れてたんだな。
「そういうことだから、ちょっとお邪魔するね」
「はいはーい、ではごゆっくりどうぞー」
仕事の邪魔にならないように恵那とわかれ、カゴを取りお菓子コーナーに足を運ぶ。どれにしようかなー
「眠気覚ましにガムとかいいかも……」
走ってると喉乾くしのど飴も買っておこう。小腹が空いたときのためにカロリーメイトも買っておこうかな。飲み物は……水でいいか。
「ポテチに、ビスケット……あっベビーカステラだ! わたしこれ好きなんだー みんなで食べたいし三袋くらい買っちゃおうかなー」
となりを見ると、なでしこがまるでかきこむようにカゴの中にお菓子を次々に入れていた。
「そんなに買ってお金大丈夫なのー?」
「大丈夫! お父さんがお小遣いちょっと多めにくれたから!」
「それお土産用のやつな気が……」
まいっか。なでしこだってそれくらいわかってて買ってるだろうし。あ、そういえばお母さんに伊豆キャン行くって言っとかないとな。
「お会計お願いしまーす!」
カゴにお菓子を満載してなでしこがレジに向かう。あれお金大丈夫なのかな?
「はいはーい……合計4234円になりまーす」
「…………へ?」
ぴしりと音がしそうな感じでなでしこが固まる。あ、お金足りなかったんだ。というかそんなに買おうとしてたのか……
「ど、どうしよう双葉ちゃん! あんまん買えないよー!」
「減らせばいいんじゃないかなあ」
というかそれしかないと思う。ボクが払ってもいいんだけどなでしこそういうの断るだろうし。
「だよねー……ごめんね恵那ちゃん。ちょっと戻してくるよ」
「ううん。しょうがないよ」
「……とほほ」
トボトボと去っていくなでしこ。ちょっとかわいそうと思ってしまうボクなのであった。
「じゃあ先にボクの会計すませてもらってもいいかな?」
「うん。わかった」
恵那がうなずいてレジで品物をスキャンしていく。そうだ。あれも買っておこう。
「あ、あとあんまん3つもらってもいい?」
「3つ? 2つじゃなくて?」
きょとんとする恵那。べつに不思議がることもないと思うんだけど。
「3つであってるよ。ボクとなでしこ、あと恵那の分」
「えっ? いいよ! 気にしなくて」
手を振っていらないと言う恵那。こういうリアクションされると俄然食べさせたくなってくる。少し前のボクもこんな風に見えてたのかなあ?
「聞こえないよーだ」
「……もう、しょうがないんだから」
渋々といった感じであんまんを袋に詰めていく。ちょっと予算オーバーだけど、まあいいか。
「伊豆キャン、楽しみだね」
お金を財布から出していると恵那がそんな話をしてきた。
「うん、恵那も楽しみ?」
「もっちろん!」
「そういえば、ちくわちゃんは来るの?」
「うーん、本当は連れてきたかったけど、まだまだ寒いからお留守番かな」
「そっか」
本音を言えば会いたかったけど、寒い思いをさせるわけにはいかない。けど、それももうしばらくの辛抱だろう。
「今度写真送るからそんな残念そうな顔しないの。あ、それでね。最近ちくわったらキャンプって言うとピクって反応するんだー」
「へぇ、クリキャンよっぽど楽しかったのかな?」
「そうじゃないかな」
あのときのちくわ、かわいかったなあ。また会いたいなあ。今度遊びに行っていいか聞いてみよ。
「ごめんおまたせー」
なでしこが戻ってきた。さっきと比べると、カゴの中身がずいぶんと減っている。心なしか表情もちょっと暗い。
「なでしこー! あんまん買ったから一緒に食べよー」
「えっ! ほんとっ!?」
ぱぁっと明るくなるなでしこ。そのあまりの切り替えっぷりに思わず笑ってしまう。
「あ、わたしももう上がりだし、よかったら途中まで一緒に帰らない?」
恵那が言う。断る理由なんてあるわけがない。ボクは笑顔でうなずくのであった。
「ふぉぉ! 双葉ちゃんこれすっごい走りやすいよぉー!」
「あんまり遠く行きすぎないでよー」
ボクは歓声をあげながら暗がりの中を爆走するなでしこを見送りながらそう言った。
「双葉ってロードバイクも乗ってたんだ」
隣で恵那が自転車を押しながらなでしこが操るロードバイクを眺める。
「バイクに乗り換えるまではずっとあれでいろんなところ行ってたんだ。たまにはあの子も乗ってあげないとなあ……」
「双葉ってほんと乗り物大好きだよね。将来バイク屋さんになっちゃえば?」
「それもありかも。ていうかなでしこどこまで行くつもりなんだろう」
すっかり遠くまで行ってしまってもはや豆粒にしか見えない。
けどなでしこの気持ちもわからなくもない。ボクも生まれて初めてロードバイク乗ったときはすごく感動したっけな。
「あ、戻ってきたみたいだよ」
恵那が指差す。豆粒みたいな大きさだったヘッドライトの灯りが猛烈な勢いで大きくなって、ボクたちの前で止まった。
「双葉ちゃん! これすっごいね! ちょっと漕ぐだけでぐーんって進んで!」
手をぶんぶんと振って感動を伝えようとするなでしこ。よっぽど衝撃的だったらしい。
「びっくりしたでしょ?」
「うん!」
「あ、もしかしてなでしこちゃんハマっちゃった?」
「えへへ、ちょっとほしくなっちゃった。これでキャンプ行ったらきっと楽しいんだろうなあ。ま、お金ないんだけどねー」
自転車を交換しながらなでしこが笑う。たしかに、いい自転車って高いんだよね。
「実際どんくらいなの? 双葉」
「ママチャリに比べたら高いけど、普通に乗る分なら5万円くらいのやつで全然十分だよ」
「へぇ、けっこう安いんだね。お金貯めて買っちゃえば? なでしこちゃん」
「5万円、バイト代2ヶ月分くらい……ほんとに買っちゃおうっかなー あ、でもキャンプグッズも欲しいし。わーん、どうしよ双葉ちゃん!」
「まあ焦って決めることでもないんだしゆっくり考えなよ。そうだ。よかったらボクの自転車しばらく貸そうか?」
「えっ、いいの? だって……」
さっきお母さんのお下がりって言ったのを気にしてるんだろうか。
「うん。どうせ全然乗ってないしさ。乗ってくれる人に乗ってもらったほうがこの子も喜ぶだろうしね」
そう言ってボクは自転車のドロップハンドルを叩いた。
「試しにキャンプとか行ってみて、それで本当にほしくなったら改めて買えばいいじゃん」
「ありがとー! 双葉ちゃん」
「詳しい話はまた今度しよっか。でもその前に伊豆キャンだけどね」
未来の話をするのも楽しいけど、今は目の前にあるキャンプのほうが大事だ。
「そっかあ、来週から伊豆キャンだもんねえ。楽しみだなー」
「だよねー」
「だねー」
3人で伊豆に思いを馳せる。
海を眺めながらで温泉に浸かったり、伊豆のおいしいご飯を食べたり、みんなでテントでアニメ見て夜ふかしとかするんだろうなあ。
楽しみだなあ。きっと……ううん、絶対楽しいんだろうなあ。
「カピバラ温泉、見てみたいよねー」
「金目鯛バーガー、どんな味なんだろう」
「西伊豆スカイライン、早く走りたいなー」
そろいもそろってもののみごとに目当てのものがバラバラ。なんだかおもしろくて3人で一緒に笑う。
伊豆、どんな旅が待ってるんだろうな。
そして数日が経ち……
とくに緊張することもなく、いつものようにドアベルを鳴らす。ほどなくしてドアの向こうから足音が聞こえてきて玄関のドアが開いた。
「いらっしゃい、双葉」
ドアを開けた部屋着姿のリンがボクを見て微笑んだ。
「今夜はよろしくねリン。おじゃましまーす!」
リンと一緒に家の中に入りいつものように元気よくあいさつする。
「いらっしゃーい双葉ちゃん」
廊下の向こうからひょっこりと顔を出した咲さんがにっこりと笑った。
「すいません咲さん。お世話になります」
「そこ寒いでしょ? ささ、早く上がって上がって」
咲さんに急かされるままリンと一緒に廊下を歩く。
伊豆キャンを明日に控えた今日。ボクはリンの家に泊まるために家にお邪魔していた。
「今さらだけど、泊まらなくてもよかったんじゃない? 今夜新城さん来るんでしょ? 明日南部町で落ちあうのでもよかったのに」
暗に邪魔じゃないかとたずねる。けど、リンは気にもしてない様子。
「それこそ今さらだろ。何回遊びに来てると思ってるんだよ」
「それもそっか」
言われてみれば今さらだった。もう来すぎてリンの家の間取りとか覚えちゃってるし。なんなら歯ブラシとかも置いてある。
「あとは一応念のため一緒に出発したほうがいいかなって。お母さんもそっちのほうが安心だろうし」
車で拾うとかならともかく、原付で行くのなら一緒に出発したほうがいいか。
「あと、話変わるけどこの前話してた荷台とUSB電源届いたよ」
「あ、届いたんだ」
「今お父さんが点検に出したビーノ取りに行ってるから、戻ってきたら取り付けるつもり。手伝ってもらってもいい?」
「もっちろん」
「二人ともーお茶入ったわよー」
「はーい。行こ、双葉」
「うん!」
ドアの隙間から差し込む夕陽がどんどん濃くなっていく。ボクは出発の時が刻一刻と近づいていくのこの身で感じるのであった。
「できた……」
「かんせー!」
パワーアップしたビーノを眺め、二人で歓声をあげる。荷台にUSB電源、そしてスマホホルダー、どれもバイクでの旅をサポートしてくれる便利アイテム。
整備から帰ってきたばかりのビーノが、ピカピカの外装を誇らしげに輝かせていた。
「最後に電源だけ点検してっと……リン、スマホビーノに繋いでもらってもいい?」
「わかった」
リンがスマホをビーノに接続したのを確認して、キーをオンにする。すると、バッテリーに連動してスマホの充電が始まった。
オフにする。よし、今度はちゃんと充電されないぞ。
「……どう?」
後ろからリンが恐る恐るといった様子でビーノを覗きこんでくる。
「うん、大丈夫。ちゃんとリレーが動いてる。ヒューズも大丈夫そうかな」
ボクが言うと、リンがほっとしたように息をはいた。
ヘッドライトの配線から分岐させようかとも思ったけど、やっぱりちゃんとリレーを使っといて正解だった。これならしっかり役目を果たしてくれるだろう。
「ありがと、手伝ってくれて。わたしこういうの詳しくないしめっちゃ助かった」
「ボクも昔つけようと思っていろいろ調べたんだよね。またなにかあったら言ってよ」
ちなみにリンから相談を受けて3日ほど調べまくったのは内緒だ。おかげで無駄にビーノに詳しくなってしまった。
「うん。そのときはよろしく」
「二人とも、大丈夫そうかい?」
ガチャリと音がして振り向く。リンのお父さん、渉さんが立っていた。心配して見に来てくれたらしい。
「うん、終わったところ」
「へぇ、なかなかいい感じじゃないか。だいぶ走りやすくなっただろう」
できあがったビーノをしげしげと眺めて感心する渉さん。
「もうナビの案内に悩む必要ないな」
「だね。これからはどう見ても直進なのに音声だと斜め右って案内されてバイパスに案内されて死にかけたり同じところをぐるぐる回ったりしなくてすむってわけか……」
「やけに実感こもってやがる」
「リンも一人で走ってたらいつかわかるよ……」
基本的に優秀だけどたまにポンコツになるんだよなあ、あのナビ。最近は道見ればなんとなくわかってきたけどさ。
「うん、僕の出番はなさそうだね。そういえば話は変わるんだけど双葉さんのバイク、少し変わった?」
渉さんがボクのビーちゃんに目を向ける。渉さんの言うとおりボクのビーちゃんにも少しだけ変化があった。
「あ、ほんとだ。荷台ついてる」
シートの後ろ、テールランプの上に荷台を取り付けた。オークションでたまたま売ってたから買ったのだ。
「あのシート、かっこよくて好きなんだけど荷物が積みにくかったんだよね。でもこれでもう安心……高かったけど」
絶版車のパーツは全体的にお高めなのだ。数が限られてるからしかたないんだけどね。
「たしかにこのタイプのシートは載せづらいかもしれないね。咲も昔ぼやいてたよ」
荷物が載せづらいシートってことは、もしかして咲さんけっこうやんちゃなカスタムしてたのかな? 気になる。
「あとは……ハンドルも変えたんだ。前より高くなってる」
「はい、間にハンドルポスト挟ませてかさ上げしました。低いほうがハンドリングはいいんですけど、長距離走るならこっちのほうがいいかなって」
「なるほど……よく考えてるんだなあ」
「これでも普通のバイクに比べたら低めですけどね」
「いいんじゃないかな? 伊豆は峠が多いからね。とくに下りはバイクと身体の距離が近いほうが──」
「お父さーん、双葉ー」
呆れたようなリンの声。ゆっくりリンのほうに顔を向けると、むすっとした顔のリンが腕を組んでボクたちをじとーっと見ていた。
「あ、ああ、ごめんリン」
「ご、ごめんね」
「べつに……怒ってないけどさ。おじいちゃんも来るんだし、もう戻ろうよ」
「そうだね、戻ろっか。ごめんね双葉さん」
「いえ、全然こちらこそ。あ、また話変わっちゃうんですけど、咲さんって昔どんなバイク乗ってたんですか?」
「咲かい? けっこうすごいやつ乗ってたよ。たしかヤマハの──」
「あなたー!」
声がする。振り向くと玄関の前でおたまを持った咲さんが立っていた。
そしてリンとそっくりな顔をむすっとさせてボクたちを……正確には渉さんを睨みつけていた。
「双葉ちゃんに恥ずかしいこと言わないでよもー!」
顔を赤くしておたまを振り回す咲さん。いつも思うけどそんなに恥ずかしいもんなのかな。
ボクも同じ年になればわかるのかな?
「べつに恥ずかしがることないじゃないか。なあ双葉さん」
「はい! めっちゃ気になります!」
「わたしも気になる……」
けどそこまで頑なに隠されると余計に気になるのが人という生き物。たぶんキラキラしているだろうボクの目と、リンのちょっとキラキラしている目が咲さんを射抜く。
「リンに双葉ちゃんまで!? もー! 3人してなんなのよー! あなた! 絶対教えないでよ! あとご飯、もうできるからね!」
そう言ってぷんすかと戻っていく咲さん。ちょっとからかいすぎたかも。
「はいはい。じゃあ僕たちも行こうか」
「だね」
「ですね」
道具を片付けて家に戻る準備をする。今日はどんなご飯なのかな。楽しみだなあ。
そんな時だった。遠くからバイクの力強いエンジン音が聞こえてきたのは。ボクとリンはこのエンジンの音を知っている。
ヘッドライトの向こうに見覚えのあるシルエット。
「おじいさん、来たみたいだよ。リン」
ボクが言うと、リンは笑顔でうなずいた。今夜はきっとにぎやかになるだろうな。
近づいてくるバイクを見ながら、ボクはそんなことを思うのであった。
「二人とも、準備のほうは大丈夫? 忘れ物とかない?」
テーブルの向かいに座った咲さんがお茶を飲みながらボクとリンに聞いてきた。
「はい。ボクは大丈夫です」
「わたしも大丈夫」
「なにか足りないものあったら気にせず持っていっていいからね」
渉さんが付け加えるように言う。
「なに、二人なら心配するようなことはないだろう。なんせ原付で銚子まで行くくらいだからな」
そう言って、新城さんがニヤリとボクたちを見た。
「あの時はほんとにびっくりしたわあ。リンから写真がきたと思ったら、お父さんが映ってるんだもん」
その時の集合写真は印刷してボクの部屋のコルクボードに飾ってある。楽しかったなあ。また行きたいなあ。
「私も驚いたよ。まさかリンとあんなところで会うなんてな」
新城さんはこう言ってるけど、ビーノのスクリーンを届けるためだけに愛知から来ているこの人も十分びっくりだと思う。
けどまああのトライアンフなら大した距離じゃないか。
「二人にとってはもう伊豆なんて大したことないだろうが、十分気をつけるんだぞ。あそこは車の流れが早いからな」
「はーい」
「はい」
友だちと食卓を囲むのとはまた違う暖かさを一身に感じながら返事をする。
お母さん今ごろどうしてるのかな。いつもだと、そろそろ家に帰ってくる時期なんだけど。あとで連絡してみよ。
「そういえば双葉ちゃんのお母さん、ちょうど二人が伊豆から帰ってくる日に帰ってくるのよね?」
「え? なんで知ってるんですか」
ボクが驚いて聞くと、咲さんが不思議そうに目を丸くした。
「あら? もしかして聞いてなかったかしら? 私、けっこう前にツイッターで双葉ちゃんのお母さんとお友だちになってたんだけど」
なにそれ今初めて知ったんだけど。
「いえ、まったく。どうせこっそり帰って驚かせようとでもしてるんだとおもいます。あの人そういう人なんで」
で、ボクが驚かなくてしょんぼりするまでがワンセット。
うろたえたときのクソザコっぷりを見ると親子なんだなあとしみじみ思う。身長も大して変わんないし。
「そ、そうなの……」
「まあ、でも……」
つぶやきながら緩んだ口元を手で隠す。そっか、久しぶりにお母さんに会えるんだ。
やばい、めっちゃ嬉しい。
「嬉しそうだな、双葉」
「べ、べつにそんなこと……ちょーっとはあるけど……」
照れ隠しするボクを見て志摩家のみんながニコニコと笑った。この人たちと知り合いになれて、本当によかったな。
ボクは改めてそう思った。
「あ、忘れてた。双葉ちゃん、ちょっとあなたに渡したいものがあるの」
「渡したいもの、ですか?」
咲さんに聞くと、ちょっと待っててねと言って廊下の向こうに消えていった。
渡したいものってなんだろう。考えていると、咲さんが手にボトルみたいなものを持って戻ってきた。
「これ、私が昔使ってたバイク用の携行缶なんだけど、よかったら双葉ちゃんにあげるわ」
「えっ! くれるんですか?」
「古くてもうしわけないんだけど、中は錆びてなかったしパッキンも交換したし大丈夫なはずよ」
「あ、ありがとうございます」
革のホルダーに包まれた銀色に光る携行缶を受けとる。容量は1リットルくらいだろうか。ホームセンターで売ってるような安いやつじゃない、すごいちゃんとしたやつだ。
「伊豆はガソリンスタンドも少ないし、これがあればなにかと安心できるんじゃないかしら?」
「はい……でも、これ本当に受け取っていいんですか?」
ステンレス製らしいボトルそのものも高いだろうし、分厚い本革のホルダーなんて、買ったらいくらになるんだろうか。
「いいのよ。こんなおばさんが持っててもしょうがないしね。それに双葉ちゃんにもう怖い思いをしてほしくないのよ」
怖い思い……きっと本栖湖でのガス欠のことを言ってるんだろう。
「だから、ね?」
咲さんはボクを見てにっこりと笑った。こんな目で見られたら受け取るしかないじゃないか。
ほんと、なんでボクの周りの人ってこんなに優しい人ばっかりなんだろな。
「……ありがとうございます。大事に使わせてもらいます」
またいつかちゃんとお礼持っていこう。けど、まずは無事に帰ってこないと。
お母さんも待ってることだしね。
「ふぁぁ〜 ねむい」
リンが目をしょぼしょぼさせながら大きなあくびをした。
「そろそろ寝よっか」
「だなー」
パチンと部屋の照明が落とされ部屋が暗闇に包まれた。
なんやかんやでボク専用と化しつつある布団に潜り込み天井をぼんやりと眺める。
「そういや双葉が風呂入ってる間に千明からライン来たんだけど、二人の誕生日プレゼント買ったってさ」
3月4日はあおいとなでしこの誕生日。せっかくみんなで伊豆に行くんだから、ついでにお祝いしようということになったのだ。
「そっか、二人とも喜ぶといいんだけど」
「わたしも一回見てきたけど、あれならきっと喜ぶと思う」
「リンが言うなら大丈夫そうだね」
「なでしことばったり出くわしてびびったけど」
「そんなに入り浸ってるんだ」
そういえば2月に入ってから一回もキャンプ行ってないってぼやいてたっけ。
カリブーでキャンプ成分を補給してるのかな。
「ちょっと悪いことしちゃったね。ボクたちだけ千葉行っちゃって」
「べつにいいんじゃない。楽しかったんだし。お土産たくさん買って帰ったんだから大丈夫でしょ。実際千明めっちゃ喜んでたし」
殻付きのピーナッツ買ってきたら最初はピーナッツかよって言ってたくせに結局誰よりも食いまくってたのはよく覚えている。
「それもそっか。明日何時くらいに出る?」
「遅くても4時くらいには出たいかな。起きなかったら起こして」
「もー少しは自分でも起きなよー」
「わかってるー おやすみー」
最近のリン、ボクのほうが早起きってわかってるからか一緒に寝ると自分で起きようとしないのだ。まあいいけどね。
そうこうしていると、部屋が静かになった。身体の力を抜いて布団に身をゆだねる。
「楽しみだねリン」
「……うん」
ベッドの向こうでリンが小さく、けど力強く返事した。
「あーあ、綾乃もこれればよかったんだけどなー」
バイト嫌じゃーってラインしてきたのはつい昨日のことだ。やっぱ大変なのかな? コンビニバイトって。
「あ、言い忘れてたけど、アヤちゃんが3月の中ごろにキャンプしようだって。双葉のほうにも連絡いってるんじゃない?」
ボクのスマホ夜になると自動でおやすみモード入るから、気づかなかったのかな。
「わかった。明日確認してみるね」
「今度はなでしこも一緒に4人で行きたいって。どうする? ……って聞くまでもないよな」
「うん、よろしくって言っといてー」
「うぃー」
真っ暗な部屋で話しているとだんだん意識にもやがかかってきた。明日も早いし、そろそろ寝てしまおう。
「せっかく……なびみやすくなったんだし……あしたは、さきはしってよお」
「めんどおい」
「じゃあこうたいこうたいでー」
「わかったぁ」
ボクもリンも全然呂律が回らない。きっと寝ぼけてるんだろうな。と、沈みゆく意識の中で考えた。
いよいよ明日か……なんかあっという間だったな。
「いっぱいたのしもうねー、りん」
返事はない。帰ってくるのは寝息ばかり。きっと寝ちゃったんだろうな。
まあいいや、ボクも寝ちゃお。目を閉じる。意識が沈んでいく。
エンジン音と風の音、流れていく海や木々。リンやなでしこたちの笑い声。頭の中に雑多な光景が泡のように浮かんでは、泡のように消えていく。
3月。春がもうすぐやってくる。
用語解説
ランドナー
荷物を積んだ状態で長距離サイクリングに耐えられるようにフレームなどが丈夫に作られた自転車。見た目はロードバイクそっくり。頑丈だけどちょっと重い
クロモリ
クロムモリブデンの略。自転車のフレームによく使われる。ちゃんと手入れすれば一生もの
トゥークリップ
ベルトと靴の形にそって作られたクリップで構成された器具。ペダルに取り付けて足が離れないようにできる。
あと2話、全24話で終わる予定です。番外編の更新は完結させてからになると思います。最後までよろしくお願いします。
あとツイッターで没にした挿絵投稿してます。興味があったら作者ページからどうぞ。