アレスのところに英雄がいるのは間違っている   作:織田三郎ノッブ

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幼年時代
始まり


日本のとある病院。その病室に少年がいた。彼は何かしらの病を患っているのだろう。その証拠に手足は細く、骨が浮き出る程にやせ細っている。その手には一冊の本が握られていた。彼は黙々と本を読んでいる。その本の題名は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』。世間では『ダンまち』と呼ばれ、愛されているライトノベルだ。

 

「……………」

 

最後の1ページに手がかかる。もう何度も読み返したのであろう、そのページの先は折れ曲がっていた。本を読み終えたのか、彼は満足げに本を閉じた。少し間を開けて、彼はスマートフォンに手をかけた。開いたアプリの名前は『Fate/Grand Order』。そのアプリゲームの中で、彼が好きなキャラクターは赤色の獅子のような鬣をもつ偉丈夫『イスカンダル』と、これまた赤色の髪の筋骨隆々の男『レオニダス一世』である。この2人は彼の憧れそのものだ。彼の生きる活力となっていると言っても過言ではない。 

 

「かっこいいなー」

 

彼はしみじみとそうつぶやくと眠りに落ちた。

 

 

少年は望んでいる。このただ浪費する日常からの脱却を。終わりが見えているこの人生は自らにとってあまり価値のあるものではなくなってしまった。他人の環境を、他人の人生を羨み、妬み、憧れることすらもうできない。体はとうに死へと歩みを進めている。真に生きているのはその心だけ。ゲームといえど、ライトノベルといえど、それが生きる活力を与えていることは偉大なことであり、死に対してもがくことのできるのも偉大なことである。

 

故に与えよう。巌のごとき肉体を。君が望みし環境を。新たな人生を。君の身に幸の多からんことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ラキア王国。世界の中心たるオラリオの西部に位置する君主制国家である。緑豊かで肥沃な大地を有し、王都に巨大な王城と城下町が存在する豊かな国であるのだが、君主たる《アレス・ファミリア》団長兼国王マルティヌスは戦神アレスに深く盲信し、ひたすらにアレスの言うことを聞く傀儡と化しており、愚王と呼ばれるほどに国民らの評判は悪い。さて、そんな国王と、王妃の間に今子供が生まれようとしている。

 

「マルティヌス様!産まれました。王子様でございます」

 

乳母は抱える赤子を王に見せる。その赤子は綺麗な赤色の髪をしていた。

 

「それでこの赤子の名前はなんと?」

 

白髪の老人が長い髭を撫でながら疑問を投げかける。

 

「ラクラスだ。ラクラス・ウィクトリクス・ラキア。アレス様がお決めになさった名だ。良い名だろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてという訳でラクラスだ。まあ私もよくわかっていないのだが、これは転生だよな。そうだよな。そうだと言ってくれ。夢とかだったら泣くぞ。なぁ。

 

「………」

 

え?声出ないんだけど。あ、赤ちゃんだからか。よし、気を取り直して。と、とりあえず転生だとしたら、ダンまちの世界だということはわかった。アレスとか言ってるし、マルティヌスとかラキアの愚王の名前だよな。そっかーあの人が俺のパパかー。え?テンションおかしいって?そりゃ興奮すんだろ。ダンまちに転生だぜ?ラキアだけど。もう一度言うぜ。ラキアだけど。大丈夫かな?この環境でレベルアップなんてできるか?あ!、けどマリウスって言う王子様はLV3だっけ?あれ?マリウスって生まれてないっぽくない?なんかこの感じ。そっかー俺が兄ちゃんかー。よし、兄ちゃんムーブかましてやろう。フ、ヘヘヘへ

 

「へ?」

 

気づくと目の前に赤髪の筋骨隆々の武人がいた。

 

「ようやっと気づきなさったか」

 

え?ナンデ?レオニダス?ナンデ?

 

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